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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■二百年、みんなと【大神】【桜散るまで】

例えばこんなウシワカ。大神中編「桜散るまで」の別バージョンみたいな物です。

■二百年、みんなと


涙は勝手に流れるものだけど、人に見られてはいけない。
だけど、ヒミコが死ぬと分かったとき、うかつにも彼女に見られた。

「女王ヒミコの行いは覚悟の上」
笑わなければ。何も感じないように。
間違えないように。

今、ミーはきちんと笑えているのだろうか。

■ ■ ■

予言に従いこの都に来て、もうどのくらいになるのだろう。
陰特隊を設立したのは、そう言えば必要に迫られての事だった。
ナカツクニの人々は、いきなり現れた妖怪に対処する術を全く持っていなかった。
ミーがカムイをうろうろしている間に、相当な人間が、食われた。
やっぱり、助けられなかった。

早く、何とかしなければ。全ての元凶は、自分だった。
ヤマタノオロチを倒すのにあと百年かかる。…ただ黙っている訳にはいかない。

当時の女王の元を訪れ、予言者として進言した。
ヤマタイ一族の神通力は大した物で、ミーが来るのも分かって居たらしい。
のんびりしてる暇はなかった。
さっさと全てを話して、協力を取り付けた。

都には、一応、それなりの神通力をもつ祈祷師がいた。しかし、いきなり妖怪があふれかえった状況に対応できるだけの戦闘能力を持ち合わせてはいなかったし、彼等同士のつながりも寄り合い程度だった。
コレではダメだ。はっきり言って神通力がもったいない。

自分が教えるのが一番てっとり早かった。
ミーは同時期に女王が都中から集めていた素質のある者達の長になった。
陰陽術を整え、実践し、教授する。また普通の人々に扱える破魔札や護付も作った。
都は丁度良い霊域に造られていたので、ソレを利用して強力な結界を張った。

文字の通りに、国中を飛び、戦った。
アマテラス君もイッシャク君も戦っていた。
時は瞬く間に過ぎていった。

だが、忙しい日々の内、次第にミーは危機感を抱く様になっていった。

兆候はいくらでもあった。
あるとき、ミーに都のヤマタイ一族がそろって頭を下げた。
女王の婿になって欲しいと。
もちろん断った。

またあるとき、古参だった隊員達が家庭を持ちそのうち現役を退き始めた。
ミーはとりあえず十分な手当を出しておいた。

あるとき、その者達が。
あっさり寿命で死んでいくのを見るに至って、ようやく。

…あまりに短い人生にぞっとした。深く関わっては、いけなかったのだ。

ミーは奇妙な事に、いや、またしても周りの人に恵まれてしまっていた。
そして、その人達は、全てミーより先に死ぬ。
時折その悲しみが、ミーの罪の意識を上塗りしてしまうこともあった。
このままでは、彼等…天神族の事を忘れて、しまう。


実は、イッシャク君はそれとなく警告してくれていた。
自分はコロポックルだし、アマ公は神様だからまだいいが、あまりナカツクニの人に入れ込むのは止めた方がいいのかもしれない、と。
かなり曖昧な言い方で。
…彼なりに気を遣ってくれたのだろう。イッシャク君にはそう言う礼儀正しいところがある。いや、もしかしたらミーの人格を信頼してくれていたのかもしれない。
その程度の事は自分で処理できるはず、と。
だが、色々な面でまだ未熟だったミーは全く理解出来ていなかったのだ。正直、月の民はナカツクニの人々に比べ、かなり思考能力の発達が劣っていると思う。
体が丈夫で寿命も長いせいか、のんびりしているといってもいい。危機感が全く足りてないのだ。

ミーは突然の思いつきを装って、一気に事を進めた。
あまり個人と関わってはいけない。なので隊員達に仮面をつけさせる事にした。
明月館を造り、初心を忘れない様に気をつけることにした。
都の人とも極力関わらない様にした。

…都に来てからせいぜい二、三十年ほどしかたっていなかったが、ミーの出自が各所で怪しまれていた。そのうち余計な興味を持って調べる輩が出て来そうだった。いや、実はいた気もする。
馬鹿に出来ないもので、当時からすでにミーが妖怪を呼んでいる、というほぼ当たっている噂…というか伝説まであったらしい。
妖怪をばらまいた元凶として、無駄な恨みを買うのは避けたかった。
なにより、集団で敵討ちされたら、ミー自身がまあそれでもいいか…などと思ってしまわないとも限らない。まあ、考えにくいけど。
その度に記憶を消してもいいが、あの術は多数が相手だと齟齬を生む可能性があるので面倒だ。
あまり関われなければそのうち忘れられるだろう。
実際、十年ほどでミーの周りは全く静かになった。
隊員達とも入れ替えのスパンを上げる事で上手く行っていた。

ミーは敵に対抗する術を練りつつ、アマテラス君達と予言の者をじっと待っていた。

ようやくその時が来て、オロチは討ち取られ、生け贄も必要がなくなったが、その代償はあまりに…大きかった。

アマテラス君が死んで…。
…ただ一つの光が、消えてしまったのだ。
正直、ミーは相当参っていた。

いや、今はこの話は、よそう。

とにかく、ソレからさらに百年、いい加減悲しみにも慣れた。単純に飽きたのかもしれない。アマテラス君の死に比べれば、天秤にかけて…他の人の死に心を動かされることも、もうない。
だがいつからか、全てを隠すために、笑わなければいけなくなった。
それでもいい。
悲願を達する為なら。天への道をこの手に入れる為なら。

だけど、やはり…そのツケは回ってきた。
ミーが成し遂げるにせよ、失敗して死ぬにせよ、おそらくこの子の死を見ることはないのだろう…。

ヒミコが生まれたときそう思い、どこかで油断していたのかもしれない。

ミーは、よほどやっかいなモノの下に生まれたのだろう。あるいは自らがそう望んだ結果なのかもしれない。やっぱりさっさと死んだ方がよかった。

でも、今更だけど、…死はやはり怖い。この國に来て、常世が長いと思う様になってしまったゆえに、余計。
それに何回か試したけど、悪運が強い上に丈夫だから、時間の無駄だった。
死について考えるのは止めた。
いや逆に、きっと、凄くほっとするのかもしれない。もう悩まなくて済むと。
でも、もし成仏出来なかったらそれは、イヤだなぁ…。

そんなミーに、潔く覚悟を決めた彼女を止める資格なんてあるはずも無い。
何より、ミーはソレを切望している。歓迎している。
いや、狂喜している!
それで一つでも多く、妖怪を殺せるなら。

そう散々言い聞かせて、結局。
アマテラス君達の前から消えて、一人になった途端。


関を切ったように、涙が止まらない。


このまま消えよう。
とっくにヒミコの弔いも済ませた。
残った者達でどうとでもするだろう。
だから、どこかへ。消えたい!

しかし、足が動かない。
まるで何かに絡め取られたかのように。
本当にそれで、いいのか?
何かに聞かれる、気がする。でも、それは気のせいだ。
いくら、うめいても、立ち上がれない。
馬鹿みたいにずっと叫び続けた。

「あれ…?」
そしてふと、思い出した。

(最後の時まで…お主を護る。だから)

昔、誰かが言った言葉を。でも、いつだ…?
膨大な記憶がつぎはぎになっていて、全てが曖昧だ。
でも、なにか少し心が軽くなった気もした。
ちゃんと立てる。とりあえず、進もう。
もしかしたら何食わぬ顔で、いられるかも?そんな気もした。

…一応戻ってみるか。まあ実際、どっちでもいいしね。

結局、戻ってみたら案外、冷静でいられた。
それからまた、しばらくして。
ついに、玄冬の蝕が訪れた。

■ ■ ■

ふと、幻灯機から顔を上げると、周りにいた者達が都の警備に出払っていた。
…勝手にやってくれるので助かる。丁度良いとばかりにミーは外に出た。
おそらく、こんな時に残っているのは一人だけ。
「カモノ君」
外に出て、入り口にいるカモノに声をかける。まあ彼にでも適当に別れを言って出て行こう。
「…なんでしょう」
真面目な彼はいつも通りに聞いてきたので、ミーも、いつも通りに笑って言った。

「後の事は頼んだよ。ここはもう必要なくなるから、好きにするといい」

こう言えばきっと、彼は、何か聞き返すのだろう。
それはどういう意味ですか?とか。
そうしたら、はぐらかして飛んでいこう。
「…」
だが、彼は全くの無反応だった。
「…?ねえ、カモノ君?起きてるかい?」
ミーが、目の前で手をヒラヒラ振ると、彼は、慎重に口を開いた。
「アベノに…少し可愛そうな事をしてしまいました」

「…へ?」

ウシワカはポカンとした。なんでアベノ君?

「彼に、無理を言って、ここの番を代わってもらったんです」
「…それがどうかしたのかい?」
別に、今は関係もない話だ。
そんなウシワカを見て、カモノは笑っている。

「…本当は隊員達は皆、貴方がどこから、なぜ来たのか知っていました…これから何処に帰るのかも。ウシワカ隊長、くれぐれも、お気をつけて」


■ ■ ■

「え…?」
今、とんでもないことを聞いた気がする。
何を?

「ちょ、今…!」
思わず聞き返す。そんな、まさか!?
「ただしアベノは知りません。…不憫な事をしてしまったものです」
「まさか!?どうやって…!?」
ウシワカは驚いた。記録や記憶は一つ残らず抹消してきた。自分と遠くカムイの伝説を結ぶ糸はもう何一つ無いはずだ。誰だって…恐ろしく聡いイッスンさえも、上手くはぐらかして気がついていないのに!
カモノはくつくつと笑っている。

「女王達のお礼、…というよりは二百年越しの壮大な意趣返しだそうですよ。都に変な建物を造ったり、無駄にウザいし、仕事をしない、はちゃめちゃな問題児への」

方法は内緒です、と彼は続けた。
「まさか…」
ウシワカは呆然とした。
裏で、そんな。いや、なら、ミーは凄く間抜けじゃないか!?
でも、今まで、ずっと…?


みんなが…?


「ああ、すっきりしました…。隊長、行ってらっしゃい」
カモノが手を振る。

「ほら、泣かないで」
カモノは手ぬぐいを差し出す。

この國の人々はいつも、優しかった。

ミーはいつも、思い出したくなかったから、忘れたフリをした。
でも、本当は何一つ忘れたりしない。…そんなやわな頭じゃない。

そうだ、あのクイーンに言われたんだ。彼女が死ぬときに。

(最後の時まで…お主を護る。だから)

だから生きろ、…と。


今、ミーはきちんと笑えているのだろうか。

 〈おわり〉  

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