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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■桜散るまで① 【大神】【桜散るまで】

捏造大神小説です。中編、完結済み、全5話です。 ※すごい捏造です。

語りは西安京のいつかの女王。何人か捏造キャラが出て来ますが名前は無しです。

桜散るまで①と、①おまけ、②前話が入ってます。

■桜散るまで ①

その者に出会ったのは、妾が庭を散策していた時…。
とても寒い日だったのを覚えています。

妾は、動揺を抑え、彼を殿上に招きました。
彼は、自らを予言者、と称しました。

彼を陰陽師達の長にしたのは妾です。
すでに…妾には未来が見えていました。

この先にはあの者の力無くしては、都は立ちゆかぬと言うこと。
妾とあの者は、これから長く…共に都を守ることになるということ。

しかし、あの者にとっては、所詮、ほんの瞬きほどの間。



…これは妾が散るまでの。


■ ■ ■


その日、都に呼び寄せていた陰陽師や、祈祷師達が謁見の間に集められていた。
この謁見の間にこれほどの人が集められたのは初めてだろう。

彼等の表情には、焦り、困惑等…色々あるが、楽しそうにしている者は一人もいない。

…ナカツクニに厄災が広がっているのだ。

カムイに端を発したその厄災、あまりにも大きなそれは、力のある祈祷師であればあるほど、絶望を抱くモノだった。
招請された者も居たが、多くは自らこの女王の御元、西安京へと訪れた。

…卦が、ことごとく『都へ行け』と指していたのだ。
そしてそれは…ナカツクニでおそらく今、一番強い予見の力を持つヤマタイ一族の女王。彼女の託宣を受け取るためだろう。…他に考えようが無いのだ。

今は、女王の力にすがって、まとまるしか無い…。
それがこの厄災を生き残り民達を、自らを守る唯一の術だ…。

ここに居る祈祷師は、概ねそう考えていた。

…平素、祈祷師らは団結して何かをすると言う事は殆どしない。
彼等は神通力により協力の必要があれば分かるし、そうで無ければあまりお互いに関わらない…自分達の能力の危険性を承知しているのだ。
異端が集まってしまっては、迫害される危険がある…あえて危険を冒す理由も無い、と。

しかし、妖怪があふれる今となってはそうも言っては居られない。
…自分達の力で何かしなければ…。
要するに一人では、統率された妖怪の軍勢には太刀打ち出来ない、そう理解出来る程度には強い力を持つ者ばかりが集まっていた。

しかし集められた中には、それほど強い力を持っていない者も混じっている。
今回の事を予見すら出来ないような…占い師程度の者だ。そう言った者達は招請されてきたのだろう。
その他に、いかにも、戦いを専門とする者達。
…どうやら、素質のある者を片っ端から集めたらしい。この広間にいる大勢の者達の共通点と言ったら、常人よりは強い神通力を持っていると言ったことくらいだった。

そして、それ以外には。
皆の、爛々と輝く目が、全てを語っている。
理由は様々であろうが…ここにいる者は皆、戦う気概があるのだ。
あるいは何かをしたいと願う者達なのだ…。

殿上には御簾が下ろされ、女王はまだ姿を現してはいない。
御簾の近くには貴族の重鎮がそろっている。

御簾の脇の扉から、ヤマタイ一族が現れる。どの者も表情は硬い。
そして最後の一人が立派なこしらえの席に着いた。
…今の女王に位を譲った、ヤマタイ一族の先帝。
そして、程なく。
御簾の中に、それほど大きくない人影が見えた。
ゆっくりと進み、台座に座る。

「あげよ」

その人影…女王が命じた。
数名の侍女が、一礼し粛々と進む。
儀式的な動作で、御簾があげられる。

『おお…』
誰とも無く、感嘆のどよめきが起きる。…若い。
しかし、今の状況を思い出しすぐに治まった。

殆どの者は、女王の姿を見るのは初めてだった。
二十歳にも届いていないような。細く、美しい、たおやかな女性だった。
そのどこまでも清廉な神通力には、敬服せざるを得ない。
静かで、しかし決意を感じさせる面持ちだった。

その様子を見て、今日の今日まで、都の対応の遅さに憤っていた祈祷師達も、やはり彼女がただ手をこまねいていた訳では無かったのだと理解した。

女王の言葉を皆、待った。

「方々、突然の呼び出しに、ご足労頂き、心より感謝いたします」

女王が初めに口にしたのはねぎらいの言葉だった。
深く頭を下げている。
「じょ、女王…」
皆が焦った。特に、ヤマタイ一族の者や貴族は。
今のはいささか弱った様子の先帝の言葉だ。

女王はかまわず続ける。

「いまナカツクニは未曾有の危機に瀕しています。突然わき出た妖怪どもが、人々を食い、殺して回っているのは…妾より皆の方がよくご存じかと思う」

皆がざわついた。
女王が自らの力のなさを、素直に嘆くとは…。
それにしても…先程の事と言い、ずいぶんと直接的な物言いをするお方だ。

「妾たち、力の有る者が手をこまねいている訳にはいきませぬ、妖怪に対抗するには、皆の力を合わせるしか無い。ナカツクニの民達の為にも。…ここにいる祈祷師達や占者方は、ただの祈祷では、妖怪を滅する事は出来ないと分かっていらっしゃる事かと思うし、武人達も個々の力のみで敵う敵の数でも無いことと…おわかりのはずです」

皆が、黙り込んだ。
実際、自分達は何も出来なかったのだ。この都に助けを求め、女王にすがるしか。
個々は力を持っていても、相手が多すぎた…。そして強すぎたのだ。

「妾は、今より妖怪から民を守る組織、『陰陽師特捜隊』を作ることとします。あなた方は全てその長の配下となり、それぞれの役割を持って、ナカツクニの平安を守る事に従侍していただきたい…異論はありませんか?また質問のある者は、今」

異論は上がらなかった。もとより女王は…覚悟のある者のみを集めたのだ。
しかし、質問が上がった。

祈祷師としてかなり高名な者だった。無言で手を上げている。
皆の視線がその者に集まった。
「そこの方、どうぞ」
ここの広間に皆を集めた貴族の代表が指す。
指されたその者は名乗り、座したままで言った。

「妖怪の跋扈する今に至っては異論はありませぬ、が恐れながら…組織の采配は優れた『神通力』をお持ちの女王がふるわれるのでは無いのですか?名より実とも言います。…万が一、お飾りの組織であるなら我々祈祷師は必要ないでしょう」

神通力、と強調した。

…言外に、自分より力の劣る者…ましてモノの分からない、神通力も持たぬ貴族などを長にするような組織に入る気は無い、とかなりキッパリ言っている。
そして、祈祷師は誰もが彼の意見に頷いている…。
神通力の扱いはそれに長けた者にしか理解が出来ない物なのだ。
…この女王が分かっていないとは思えないが、万が一、圧力などと言う可能性もある。

女王は、初めてニコ、と笑った。

「ごもっともです。命がけである故に、沈む舟には乗れないというのは当然です。フフフ…しかし、御心配には及びませぬ。ふさわしい人物を用意いたしました…いや、飛び込んで来たと言った方が正しいのですが。…ウシワカ?」

「ハァ…やっぱり長かったね」

殿上の、柱の陰に隠れていたらしい人物が姿を現す。
その珍妙な姿に皆がどよめいた。…ナカツクニの者では無い。

「ミーの事は、そうだね…陰特隊だし…隊長って呼んでくれるかい?」

言われた祈祷師が、他の者達もあっけにとられた。
今まで、同じ空間にいて、何故この人物に気がつかなかったのだろう…。

この者の放つ、恐ろしい神通力に。

女王が清廉なら、こちらは…壮絶、と言ったものだった。
あちらの態度はいたって穏やかなのに、こちらは震えてしまう。
…気がつかなかったのは、彼がそう望んだからに相違ない。
この者の異常さが判る者は、驚きに目を見開いている。

質問をした祈祷師は、周りで首を傾げる『分かるほど力の無い者』を、今すぐこの場から追い出したい、とすら思っていた。

都へ行けと…卦が出るはずだ。そう納得した。…女王も人が悪い。
「分かりました、ウシワカ隊長、とお呼びいたします」

「サンキュー」
その者は、異国の言葉を発して笑った。


■ ■ ■

ヤマタイ一族や、貴族達の重鎮はあっけにとられていた。

初め、いくら女王の推薦とはいえ…何処の誰とも知れない異国の者には組織の長を任せるのは反対だと言う声があったのだ。

だが、女王が連れてきた人物。彼はあっさり元祈祷師達に認められてしまった。
武人達はまだ不思議そうにしているが…あっという間に、周りの様子を感じ取った元占者達にも尊敬のまなざしで見られている…。

瞬く間に、一つの組織ができあがってしまった。
武人は首を傾げているが、この様子では時間の問題だろう…。

「おお。さすがはウシワカ殿」
そう言ったのは先帝だった。…彼は女王にウシワカを紹介された折にさっさとウシワカの味方になった一人だった。
女王を絶対とするヤマタイ一族はともかく、他の貴族は彼がさすがに若過ぎるのではないかと渋っていた。

…実は女王と青年が相談し、そう言った貴族やらを納得させる為にわざわざ彼等も呼び、大仰にしたのだ。
そしてもう効果は十分と見た青年が言った。

「彼等と話したいんだけど、オーケー?」
他のモノはもう邪魔と言わんばかり。…言わないだけマシだ。
「フフ…良いでしょう、妾達はこれで。方々くれぐれも、この者をよろしくお願いいたします…」
最後の言は、居並ぶ者達へ。

女王達が去り。謁見の間にはウシワカが残った。
そして皆に言った。
「さてと。ここに居る皆には是非、ミーの部下になってもらいたい…と言っても、普通に宮仕えだと思ってもらってかまわない。もちろん今ここで断る事も認めるし、給金もちゃんと出る。除隊も任期も自由だ。役割も各々の適正に合わせてミーが割り振る…いかにも腕っ節の弱い者やお年寄りに無理はさせられないしね」
皆のほっとした様子が伝わってくる。
青年は笑った。
「アハハ、ソーリィ。この組織の隊員は、基本的には妖怪退治、情報収集する者、後はその情報を元に妖怪への対処を普及や術、妖怪の研究をする者…に分ける。組織の中での上下は無い。ミーが全ての指示を出すから」

…と言う事は、要するに。

「要するに、ミーの命令が無いと動けないって事だね。絶対と言っても良い。でも意見や質問は自由だから。疑問に思ったことは何でも聞いてオーケー、答えられる事には答える」

手が上がる。
「あの、ミー…とか、オーケー?とはどういう意味ですか」
すぐに聞かれた。
「あと、そーりい?とは何でしょう…?」
他の者からも。

「あ、そうか…」
ウシワカはざっと意味を説明した。
皆の興味に火が付いたのか、どんどん手が上がる。

ウシワカがその中から一人を指名する。
「まだこれから説明していただけるかと思いますが…禁止事項とかはあるのですか?これだけはダメという」
指名された者が言った。
「うーん、特に無いけど、親衛隊とは協力してもらうことが多いだろうから、喧嘩はしないように。ミーは一応、親衛隊へ命令する事も出来るから…仲間と思って良い。とりあえず質問は後で。必要な事を済ませよう」

ウシワカは低い卓の上に積み上げてあった巻物を取り。
名簿らしき巻物を開き、役割ごとに読み上げた。


■ ■ ■

「…フゥ」
深夜、皆が引き払い、ようやく自室へと戻ったウシワカがため息を付く。
明日からは忙しくなる。

「よう、おそかったなァ!」
机の上でピョンピョンと跳ねる物体から声が聞こえた。
「ああ、ソーリィ、イッシャク君。来てたのかい?」
ウシワカが微笑む。

ここは、陰特隊の急ごしらえの本部、その一室だ。
「どんな案配だ?」
イッシャクが聞いた。

「まあ、成功と言った所かなぁ…、女王が準備してくれていて本当に助かった。この國の武人は思いの外強いみたいだけど。妖怪相手にはまだ経験が無いから、早く破魔札を作った方が良い」

ウシワカは苦笑した。
ヤマトが墜落し、怪我をしていたウシワカは傷が癒えてすぐにこの都に来た。
…女王に会って、実はまだ二日しか経っていないのだ。
彼女の存在が無くてはこうは上手く行かなかっただろう。

ウシワカが続ける。
「…ある程度までの雑魚ならともかく、強力な妖怪はミーが直接倒すしかない」

イッシャクもウシワカの言うところを分かって居る。
だから、今日こうしてわざわざカムイから一人、会いに来たのだ。
「…まあ、鍛えていけば、大物以外はそのうち何とか出来る様になんだろ」
イッシャクは言った。
ウシワカは頷く。実際、イッシャクの剣術は妖怪相手でも立派に通じる。
またカムイの戦士も、自分が寝込んでいた間にアマテラスが鍛えていた事もあり、妖怪になんとか対抗出来る様になっていた。

…問題は、その『大物』だった。

「十六夜の満月に…傷ついたオロチが生け贄を欲する」

椅子に腰掛けたウシワカが俯いて言った。
…その目には、その光景がはっきりと見えているのだろう。
「ハラミ湖に落っこちたってデッケェ化け物か…クソッ!」
イッシャクも悪態を吐く。

方舟ヤマトがカムイのラヨチ湖に落ちたように、オロチはアマテラスと戦い、傷つきナカツクニに落ちた。
巨大な黄金のヘビを見た辺りの人間は皆、おそれて別の村々へと避難した。
…そしてそのまま、オロチは暗雲立ちこめる平原一帯を根城にしている。

オロチから一番近い村は、神木村。
ウシワカによれば…これから百年。毎年生け贄が選ばれる事となる村。

「なぁ。やっぱりアマ公の信仰をオイラが広めた方がいいんじゃねぇのか?」
イッシャクは言った。

ウシワカは、イッシャクに「オロチが倒されるまで、信仰を広めないようにして欲しい」と言ってきたのだ。

ハァ!?信仰は大神の力の源だろォ!?少しでも力が強い方が良いに決まってらァ…!
オイラの役目を邪魔する気か!?このインチキ予言者野郎!!

と言うイッシャクと頑として譲らない病み上がりのウシワカは、ウシワカの出発前にカムイで大喧嘩したのだった。

ウシワカは、その時と同じようにきっぱり言った。
「ノー、信仰は水物だ。毎年生け贄をおさめなければいけない百年の間では、逆にアマテラス君の神格が落ちる可能性がある」
「それは分かったけどよ…あー!もう!」
イッシャクが目をそらす。ブツブツ文句を言いながら頭をかきむしっている。
ウシワカは動じなかった。
「アマテラス君が、万が一にでも邪道に落ちる事があってはいけない」

イッシャクは思った…確かに、すがっても、百年も何もしてくれない神など、だれも信仰しないだろう。
ウシワカが、カムイでとつとつと語った事に寄れば、一度神としての『信頼』を失ってしまったらそれは致命的な敗因になってしまうのだと言う。

「『神でなくなった神の末路は、悲惨』…か」
イッシャクが、ウシワカがかつて言った言葉をなぞった。

ウシワカが静かにため息を付き、頷く。

「ユーには、百年後、イザナギがオロチを退治した後に存分に活躍してもらうよ。英雄イザナギと共に戦った天照大神…その信仰はすぐに広まるだろう。それまで打つ手が無いのが悔しいけれど。オロチは確実に討ち取らなければ…」

生け贄。結局それを止める手立てがない。その事実。
そして、タカマガハラを滅ぼした仇をのさばらせておく…ウシワカの目には怒りがあった。

イッシャクもため息を付く。
「…まぁ、アマ公も待つことに納得してんだ…。オイラはソレまで腕を磨いておくぜ。妖怪退治もな。まずは、そのオロチを何とかしてェトコだが…お前ェ、本当に一人で大丈夫なのか?」

アマテラスは、これからカムイで、ある青年と共に双魔神に挑む。
そしてウシワカは、ぴたりと時期を合わせたようにナカツクニに恐怖を振りまき始めるオロチを、全力で封印する。
「もう、時間がない。ミーがやるしか無い…予言が正しいのなら、上手く行くだろう…」

ウシワカが立ち上がり、窓の外を眺める。
窓の外には、明日満ちようとしている月があった…。

〈おわり〉
 
■ ■ ■

■桜散るまで ①おまけ

おめぇのアホさは筋金入りだ。

全く、陰特隊?とか言うのを作った、その日の夜に一人でオロチに突っ込んで。
何とか封印したモノの、大怪我しやがってよ。
はるばるハラミ湖まで拾いに行ってくれた、女王に感謝すんだなァ!

つうか、いきなり部下を路頭に迷わせっちまったら、どうする気だったんでぃ?
…予言予言予言って!振り回されるこっちの身にもなって見ろ!
アマ公が「ストレス」とやらでハゲたらどうしてくれんだィ!?

聞いてるのかよ!このアホンダラァ!!


[newpage]


なんとか生還したウシワカは気がついた途端に散々、耳元でイッシャクに怒鳴られた。
「うるさいなぁ、ゴムマリ君は」

その様子を周りで、部下達が心配そうに見ている。
イッシャクは、その様子に呆れた。
「ったく…こいつ等もヨォ…なんか術でも掛けられてんじゃねェのか?まだ三、四日だぜ?なぁ、女王サン?」
「フフ、仲が良いのは良い事です」
ウシワカの側で看病をしていた女王が微笑む。

三日前、この女王が、わざわざオロチとの激闘で傷ついたウシワカを助けに行ったのだ。
自らと、たった数人の供だけで。
ウシワカは自室に敷かれた布団で横になっていた。
女王を見たウシワカは、とても申し訳無さそうにした。
「ソーリィ、クィーン。迷惑を掛けてしまった…」

女王はニコニコ笑っている。

その様子を端で見ていたイッシャクは、はっきり言ってウシワカに匙を投げ付けそうになった。
「おめぇら…ハァ…」
だが、結局ため息を付いただけだった。

その翌日、事情を知らなかった部下達はいきなり大怪我をした隊長を見て度肝を抜かれた。
本人は平然として、部下にした者に稽古を付けようか、術の指導をしようか…?と一人でゴニョゴニョ言っていた。
しかし突然、手をポンと打ち。
「この秘宝をクサナギ村に持っていかないと…」
と懐から何かを出して、フラフラ飛んで行こうとした。

「た、隊長!?」
周りで見ていた隊員はまた驚いた。今、飛んだ!?
「ま、待って下さい!お怪我が!」
「そうです、お体にさわります!」
「っていうか、何で飛べるんですか!じゃなくて、我々が行きます!」
慌てて皆で捕まえ、布団に押し込めた。

…陰特隊の公式の初仕事は、再び布団に詰め込まれたウシワカの代わりに「水晶のヘビイチゴ」という秘宝を、クサナギ村の風神宮に奉納する…という物だった。

「隊長、滞りなく完了しました」
「オーケー」
布団に押し込まれたウシワカは言った。
なにやら半身を起こし、符の様な物を作っている。
「それは?」
「破魔札だよ。これをナカツクニ全土の商人に卸売りする。売値は庶民が簡単に手が届くくらいに設定してもらって…、他にも数種類。様々な薬品とかも。これからユー達にも作り方を教えるから、その生産を担ってもらうよ」
周りの陰陽師達は、顔を見合わせた。

「…隊長、分かりましたから。休んで下さい」
そう言ったのは、壮年の陰陽師だった。
「これが終わったら」
「ダメです」
もう一人が言う。
「あと一枚」
「お休みなさい」
筆を取り上げ布団をかぶせる。

「…ハァ…」
ウシワカはため息を付いた。

陰陽師達は、自分の達の仕事を早くも理解しつつあった…。

〈おわり〉

■ ■ ■

桜散るまで ②前話

はぁ…!はぁ!!
息が苦しい。どれだけ走ったのだろう。
父は、強かった。かつては武人として名を馳せた、村の英雄。
まとまった妖怪が相手でも、何とかさばけるくらい。
なのに!

…今日の空は何か、気色が悪い?
私はそう思っていたのか、いなかったのか。
良くわからない。いや、何か、落ち着かなかったのかもしれない。
…本当にそれだけだった。
だから一人山の近くで遊んでいた…。そして、山に逃げ込んだ。

その年若い娘…イヤ、実際はまだ子供。その細い手足は傷だらけだった。
着物の背は大きく破れ、あちこちに爪の跡が付いている。
その姿を追うのは、空を飛ぶ、太刀を持つ不気味な五首の龍。
ギィィィィ!
壊れた引き戸の様な、耳が痛い声が辺りに響く。
しかし、聞く者はいなかった。
唯一戦える父は、この妖怪に食い殺されたのだ。…母も。
村の皆は他の多くの妖怪に。
そして自分も、もうすぐ皆の所へ逝くのだろう。
「あっ!!」
草履が破れ、山道に転ぶ。
あの妖怪は、逃げる事しか出来なかった私を狩る事をたのしんでいる…!
それだけがくやしい!!

大きな影が、上空に。真上に覆い被さるように…。
(お父さん!!)
少女は目を瞑った。
青白い龍がくわえた刀が振り下ろされ。
少女の首が飛ぶ。
頭を失った体はハネ飛び、木にぶつかる。


しかし。そうはならなかった。
地を這う様に飛んで来た大きな鳥が、ものすごい速さで少女にぶち当たって来たのだ。

ギイャァアアアアアーーーー!!

妖怪の断末魔の叫びが聞こえて血しぶきを見て初めて。
ガタガタ震えていた少女は、自分が何かに抱えられたのだと言う事を知った。


■ ■ ■

「…大丈夫かい?」

しばらく後、ようやく落ち着いた少女に、その青年が話し掛けた。
「…、あ、ありがとう、ごらいます」
泣いていた六つほどの少女は、何とかそれだけを言った。

この村は、ナカツクニの最北にある村だった。
しかし、二日前。妖怪の群れに襲われ、全滅した。
彼女だけが、なんとか山を逃げ回り続け、ようやく青年に助けられたのだ。

山中の小川で少女を手当し、落ち着いたのを見計らって、青年が名乗った。
「ミーは、ウシワカ。都の陰陽師だ」
「おんみょうじ…?」
聞き慣れない言葉だった。
「ああ、ソーリィ。この辺りで言う、祈祷師だよ」
この辺りは、カムイの文化が色濃い。
祈祷師と聞いて、少女は明らかにほっとした。
「きとうし様…」
「この辺りで無事な村は分かるかい?」
ウシワカはしゃがんで、岩に座る少女に目線を合わせ言った。

この人は、優しそうだと少女は思った。
「となりの…、…ううん」
近くの村は、ダメだろう。少女は俯いて、この辺りで一番大きな村の名前を言った。

ウシワカは少女を連れて、その村へ飛んだ。
…死者の埋葬を頼まなければ。
この少女に村の惨状を見せるか迷ったが…やはり止めておいた。少し覚悟させる時間も必要だし、だれか、大人たちと一緒の方が良い。
この少女は納得してそのまま着いてきた。

…そこはこちらの地方では確かに一番栄えた村だった。街と言っても良い。
しかし、今は、何処の家も扉を閉ざしている。
ウシワカは、迷わず歩き、長の家を訪ねた。

街の者は、まず少女の家族から探すと言ってくれた。
長も自ら出向いて来てくれた。
少女は泣きじゃくっていた。


…そして夕刻。
作業はあらかた済んでいた。
…と言っても、殆ど死体は食われていたのでやりようがなく、荒れたいくつもの村が本格的に片付くのには時間がかかるだろうが…。
村の外れに佇んでいたウシワカに話掛ける者がいた。

陰陽師どの、あの子供の事なのですが…、私の家に迎えましょう」
街の長だった。
項垂れた様子であの子一人くらいなら大丈夫です、と言った。
村の中心では大人たちが、家族らしきモノに被さったムシロの前ですすり泣く少女を慰めている。
皆も涙ぐんでいる。

「長…、彼女には、高い神通力がある」
「なんと」
ウシワカの意外な言葉に、長が驚く。
ウシワカは続けた。
「おそらく、直前で…予感の様な物を感じて逃げたのだろう。だからミーが間に合った」
「そうですか…!」
街長は、嬉しそうだった。この寒い地方の祈祷師達は、妖怪達に真っ先に狙われ、また人々の盾となり。
もはやこの一帯では祈祷師自体が、この長の街位にしか居ないというありさまだった。
その為、街長は、ウシワカに少女と共に街にとどまってもらいたいとさえ考えていたのだ。

そして、そう告げたが。ウシワカに首を振られた。
「ミーは、都で役目がある…。この近くへ来たのは、カムイを見た帰りだった」
「カムイを…」
この地方の住人は、カムイには足を踏み入れない。
昨今の厄災のおそらく原因らしいという地に、恐ろしくて近づけないのだ。
その地から帰って来たという陰陽師に、長は驚きを隠せない。
しばらく、カムイの様子を語った。

カムイに生まれた英雄の話に、街長は驚きを隠せないようだった。
その極北の地に住まう人々の力強さにも。

そして、ウシワカは言った。
「長、折角のご厚意を無下にして申し訳ないが。あの娘は都で預からせていただきたい…」
「都ですか?」
街長が、彼の突然の申し出に驚いた。
「ミーは、予見の力も持っていてね…一時ココを離れ学んだ方が、彼女にはいいようだ…
祈祷師として独り立ちしたら、こちらに返すから、その時は長に後見人となってもらいたい。おそらく十年ほど後になると思うが…彼女の力はこの地方の守りとなるだろう」
ウシワカはそう言った。
「おお…、そうですか…」
「あと、これからこの地方で祈祷師の欠員が出た場合、都に…」
「おお!!それは助かります…」
「街の祈祷師とも話したい。発つ前に一応彼女の事も紹介しておこう」
「ぜひ」

その後。
一応彼女の意思を尊重したい。
そうウシワカは言った。
…この國の人は、故郷からあまり、いや、頑なに離れたがらない。
故郷と言う物に思い入れが少なかったウシワカには少々理解出来ない考えだったが。
街長はしっかりと頷いた。

「では、聞きに…」
かなり村の輪から離れた場所で話していた二人は、異臭のする方へと進んだ。

「…わたし、イヤな感じがしたのに、言わなかったの…ごめんなさい…」

少女は村人たちの欠片の上に被さったムシロにひたすら謝っていた。
長とウシワカが近づくと、周りの者達は、そっと場所を空けた。

少女は気がつかずに、ムシロの前で泣きながら、土に頭を擦り付けている。

「っ、なんでも気がついたら、すぐ言っ、えて…みんなが言ってくれたの…に」
この少女は、なるほど、賢い。
それに確かに、普通の少女では無いようだ…。
長は、微笑み手を差し出す。
「…このお方が、お嬢ちゃんを祈祷師にして下さるそうだよ」

その言葉に少女がはっと、顔を上げる。
自分を救ってくれた、陰陽師
空を飛べる、凄い人。
「ほんと…?」
その顔は、期待に満ちている。しかし。

「ノー、ダメだ。ミーは忙しい」

ウシワカは無情に首を横に振った。
「!!」
子供は衝撃を受けた。
長が何か言いかける。たった今、都に行くと話がまとまった所なのに、何を言うのだと不思議に思って、しかし。
その目を見た時に、彼の考えを理解した。
「悪いけど…ユーにかまってるヒマは無いよ。今、このナカツクニは、とても危険な状況だ。ミーを初め、力の有るモノは…いや、そうで無い者達も。協力して少しでも被害を減らさなければいけない…。命がけでね。それがユーに出来るとは思えない。ミーはもう帰るよ。アハハ!…グッバイ」

そう言って、きびすを返す。

「イテ」
しかし、立ち止まった。弱点である羽衣を捕まれたのだ。
少女に唸られてにらまれた。しかし、わぁああ!と泣き叫ばれた。
その少女は、泣きながら、ぜったいがんばりますから、置いていかないで!
と叫びまくった。わぁわぁと騒がしい。
羽衣をしっかりとたぐり寄せ、てこでも離さない気だ。

ウシワカは、困ったように。しゃがみ込んだ。
「ハァ…、ミーは忙しいから。都の他の陰陽師に任せる事になるけど」
おねがいしますと大声で近距離で泣き叫ばれた。
「それにユーはずっと都にいられる訳じゃ無い。大きくなったら、またココに戻って来て…助けられなかった分、ここの人達を守るんだ。一生を掛けて」
もちろんやりますと泣きながら言った。

「わたし、…つみをつぐないます」
ウシワカが、ため息を付いた。

周りの大人達は、突然の事に驚いていたが、あまりに幼い決意にもらい泣きし始めていた。
まだ、こんな六つ、七つの少女が。
自分達はひたすら恐れるばかりだったと言うのに…。

しばらく後ウシワカは、困ったように笑った。
「オーケー、じゃあ行こう」
しゃくり上げたままの少女を抱き上げる。
周りの大人達が、口々にがんばれよ、とか、よかったね!とか。とても嬉しそうにしている。少女はなんだかよく分かっていないようだ。
若干キョトンとしている。
「長、まずは街へ行こう」
「ええ。おい…後は」
長が後を任せる。皆は、力強く請け負った。
その先程までと全く違う様子を見た街長は微笑んだ。
…悲壮な状況下でも、勇気づけられる出来事はあるのだ。

そして、それこそが希望なのだと。

〈おわり〉 

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