読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■桜散るまで② 【大神】【桜散るまで】

戦国っぽい戦闘シーンとか書いてみようかなんて思うんじゃ無かった。結界とか適当です。雰囲気で読んで下さい…。

■桜散るまで ② 

何か、確実な地位で彼をこの都に留めておきたかったのです。
だから彼の者に力を与えました。

…初めから、分かっていたのです。
妾があの者に恋い焦がれるようになるということは。
幼き日、初めて彼の者の姿を予見してから。

妾は、妾の未来にあの者の姿を見る度、喜びと、切なさを抱いていたのですから。

女王の身でありながら…この國の人々が、苦しむ事になるというのに。
その日が早く来ないかと、そればかり。
なんと、我が身の罪深きこと…。

しかし、真に消えない罪を背負っているのは、あの者なのでしょう。
…当たり前の幸せを望むのは、酷と言う事も、分かって居ました。

だから、せめて。


■ ■ ■


「ミーは、二、三日留守にするから。その間、言ったことをやって置いて」
ウシワカは、出し抜けにそう言った。
「は?」
若い隊員が、聞き返したのも無理はない。
確かに当面の指示は細かく受けていた。しかし、怪我もまだ癒えぬうちに、一体何処へ行こうと言うのか。
言い出したのも、なにか唐突だった。
ごく普通に朝、皆に今日の任務を説明し。
さあ、これから取りかろう、としたその矢先だったのだ。
…まさしく、「風がそよいだから行ってくる」と、聞けばそんな事を言い出しても不思議でないくらいだった。

最年長の隊員が、何処かを見やるウシワカに何かを感じたらしく、言った。
「もしや…、貴方も予見の力をお持ちなのですか?」
「イエス。急がないと…後はユーに任せる」

言うなり、突風と共に飛び立つ。
「!」
周りに居た親衛隊員や、陰陽師たちが尻餅をついた。
見上げると、ウシワカはすでに彼方へと飛び去っていた。


それから三日後。ウシワカは小さな少女を連れて帰ってきた。

「はて…隠し子ですか?それとも妹ですか」
迎えた最年長の隊員が言った。
他の隊員も、戸惑っている。
「…」
少女は、目の前の男集団に目を白黒させている。
六つか、七つの少女だった。
不健康な感じはしないが、痩せていた。
髪を二つに分け、それぞれを低い位置でくくっていた。着物は赤の何処にでもある木綿で、細い帯は萌葱色。
前髪は振り分け髪で、数本だけ真ん中に垂らしている。
とても可愛いが、ウシワカには似ていない。しかし母親に似たのかも知れない…。

「ノー。預かったんだよ。この子は祈祷師にするよ。ミーは面倒を見れない事が多いだろうからユーの弟子にしてもらいたい。一緒に暮らすと良いんじゃないかなぁ?」
先程の、最年長の者に言った。
「おや…」
言われた隊員が驚く。彼は都のすぐ近くに家を持っていた。
頰を緩め、子供の頭を撫でる。
「しかし、隊長。孫が出来る様で嬉しいですが…私はここ最近隊長のせいで家に帰れておりませんし、料理もいまいちです」
この者は一人で暮らしていたのだ。
ウシワカはそれを知っていて、また術の修得具合を見て彼を選んだのだが…。

「ユー、料理出来る?」
一応、少女に聞いてみた。
「おそうじとか、せんたくなら、できます」
料理はやはり出来ないらしい。
「うーん。女王と相談するよ」

「おや妾をよびました?ウシワカ」
そこに女王が立っていた。散歩中です。と言った風に。
「ああ、今…」
二人とも予言が使えるので、意思の疎通は早いらしい。
報告もあるからと、子供を先程の隊員に任せ、二人で神殿に入っていった。


神殿の一つの間で、ウシワカと女王が対峙している。
女王は一段上に座る。
「カムイでは、大神とオイナ族の青年が双魔神を倒した。これであの國も少しは落ち着くだろう」
「…たいした物だ…」
女王は感心した。

「オロチも祠に封印したし。…これであと二年くらいは、奴らもおとなしくなる」
ウシワカは言った。
「ええ。それまでに兵を増やしておかねば」
女王も頷いて言う。

この頃、すでに妖怪の軍勢が都を攻めてくるという予見を女王がしていた。
無論ウシワカも。

「結界は…いつ頃から出来ますか」
女王がウシワカに聞いた。
妖怪の群勢に攻められたら、都と言えどひとたまりも無い。
…強力な結界が必要だった。
しかし大規模な結界、しかも出入りが自由な物で都を、地下や空まで覆うとなると…女王だけでも、ウシワカだけでも難しい。
「隊員や兵達を鍛えないといけないから…そうだね…ギリギリまで」
「…分かりました。では丁度、半月前まで。組めますか?」
「イエス」
あっさり言った男に対し、女王はため息を付いた。
祈祷をし、神通力を高め、術式に乗っ取り…しかもヤマタイ一族に伝わる術にウシワカが手を加えるらしい…そして結界を張る。
そのすぐ後に、彼は妖怪の群勢と戦うのだ。
自分は結界を張れば出番は終わり。しかしこの者は…。

「妾は、…命をかけても良かったのですが」
女王が言った。
ウシワカがいなければ、この術で間違い無く自分は命を落とす。それほど重たい。
「気にしなくて良い。ユーが死んでは意味が無い。それに上手く行けば少しは休める」
女王には、その未来は見えていなかった。
「今ユーが落ちれば、この都は滅ぶ。この國も」
ウシワカが真剣な表情で言う。

そうなった時には…この男が、都を捨てるのだろう。言ってしまえば妾の…いや女王の有用性があるから、この者はここにとどまっているのだ。
ウシワカ自らが原因とは言え、あえて人を助ける必要も無い。
言ってしまえば、ただの善意。

…その優しい心根が、心配でならない。全てを差し出せてしまうような。

この者は、オロチを封印して傷も癒えぬうちに、カムイで英雄達と双魔神の戦いを見とどけて手助けをし。クトネシリカを祭壇に収め、さらに将来北の守りとなるあの少女を見つけ、連れて帰ってきたのだ。

女王はため息を付いた。頼り切りで情けないが、他に代わりを出来る者は居ない。
「少しは休んで下さい。…疲れているのでしょう」
結局、それだけ言った。
「ノープロブレム」
ウシワカは笑って言った。…そんなもの自分には必要無い、そう言うように。
女王はもはや呆れる他ない。もう一つ、ため息を付いた。

そして、ウシワカはカムイやナカツクニの様子、先程の少女の事も語った。

あの少女がカムイから帰る途中、妖怪に襲撃されたナカツクニの最北の村でだた一人生き残ったこと、都で陰陽術や占術を学び、将来はまた故郷に戻り、祈祷師として都との連絡を担う事になると言う事。
そして、自分はかまっていられないので隊員の一人の弟子にする事。
「それは良いんだけど…彼女はまだチャイルドだから」

女王はウシワカの言わんとする事を察した。
どうも、やはり。
この者も男の類にもれず、家事やらそういったことには少しは疎いようだ…。
すっかり失念していたのだろう。
それに、別に子供が嫌いというわけでは無いようだ。
ウシワカが浮かべている表情に、女王は少し微笑んだ。

「フフ。男所帯では食事など大変です。勉学に集中していただく為には神殿から世話人を出すのが良いでしょう…。そうですね。お主の給金から引いておきます」
「オーケー」
ウシワカは笑って立ち上がった。


それから一年と数ヶ月が過ぎ、また再び秋が始まろうとしていた。

ウシワカの伝説的なしごきに耐え切った陰陽師と親衛隊員や兵達は、かなりたくましくなっていた。
「良いかい?妖怪相手に一人で挑んではいけない…必ず陰陽師と…」
ウシワカは今日も刀を振るっていた。
妖怪の群勢が都に。その事実を伝えられた当初は皆怯えるばかりだったが。
今では皆、都を…いや、女王とウシワカを守る使命に燃えている。

「ミーはもうすぐ祈祷に入る。結界を張り終えた後では、おそらくミーは役に立たない」
結界。
彼が女王を手助けするつもりなのだと、もはや兵は皆知っていた。
…命を賭す覚悟で。しかも、その後加勢するつもりだとも言っていた。

正直、皆、「頼むから無理はしないで下さい!」と叫びたかったが、彼の力無しでは勝つことは難しいだろう。
幾度も稽古を付けてもらった。だが、彼に打ち込めた者は殆どいなかった。
全く本気を出さず、涼しい顔でさばかれる。
彼が皆を指揮するのはもはや、あたりまえの事と言えた。

しかし今回ばかりは、彼がどうなるか。

不安そうに見上げる者もいたが、ウシワカを見て、その考えを振り払う。
この恐ろしい青年が、何者かは分からないが、その神通力と彼の性らしき物を信じるしかない。
この青年は、勝つ気なのだ。そして、その未来が見えている。
この若者は全て、それを元に行動しているのだ。
常人とは真逆の理念だが、理解もしがたいが…不安を感じる者達にとっては、それは明確な指標になった。

ウシワカは続けて語る。
「妖怪は、普通なら、明らかに不利とみたら引く。それに人と同じく恐怖という感情も持っている。しかし群勢となると、話は変わってくる…」
戦の前に彼が皆と話すのはこれが最後。
居並ぶ者は皆黙って彼の言を聞いていた。
…しかし、命がけだというのに、彼は何処か楽しそうにさえ見える。
「フフフ…この都が落ちれば、ナカツクニは…この惑星は妖怪の國となる。敵の親玉もそれを分かって虎視眈々とスキを狙っている…だけど、心配はいらない」
皆が首を傾げる。
この異国の青年は時折よく分からない単語を使う。そうしている間も話は続き。

「こちらにも、切り札が在る」
ウシワカは最後に、そう言って笑っていた。


■ ■ ■


それからすぐ、女王とウシワカは揃い美輪湖のほとりに作られた大祭壇に座した。

四方に護摩を焚き、音を鳴らし。
ヤマタイ一族に伝わる、しかし誰もやったことの無い術を成すために。

そして半年。都人は毎日、女王の無事を祈った。
彼等には女王と共に並ぶ青年の事は知らされていなかった。

その予言された日が近づくにつれ、都には、近隣の平野や遠方の山などに妖怪が増え、村や町が壊滅したと言う報告が多く寄せられた。
だが次第に、白い狼に村や街が救われたという噂も聞こえる様になった。
しかし、目の前の状況が近づく中で、それはあっという間に人々の記憶から消えていった。

予言の時まであと二日。
ここしばらくの空にはだだひたすら暗雲が立ちこめ、雷鳴が轟いている。
まさしく何か悪い物の襲来を予感させた。
人々はただ待った。祈るように。

そして。空気が変わった。

「えっ…!?」
都の人が、誰とも無く顔を上げた。

生暖かかった風が冷たくなっている。空が真っ青に晴れ。
皆が我先にと家屋から出て来た。これはまさしく!!
「女王さま…!!!」
大歓声が上がった。

武装し集っていた雑兵達も、歓声を上げた。

「女王様と、ウシワカ殿は!?ご無事か!?」
「隊長っ!!」
しかし喜ぶ雑兵を尻目に親衛隊員と陰陽師達、数十人は美輪湖へと駆け出した。

結界は張られた!!しかし彼等は、どうなった!!

「隊長!!女王!!」
陰陽師達が駆け寄る。何処にそんな力が有るのか親衛隊員を押しのけて。親衛隊員達は驚いた。
美輪湖の大祭壇にいた者は全て、辺りの砂地に倒れ伏していた。
木々は根元からなぎ倒され、祭壇の護摩や板張りの床はバラバラに吹き飛んでいる。
皆、様々な場所に倒れていた。
「大丈夫か!」
慌ててそれぞれを抱き起こす。どうやら一帯に余波が及んだようだ。

「女王様はどちらに…!!」
直後、神殿に待機していた医師達や侍女が駆け付けた。

「…ん」
まず女王が、かろうじて残った祭壇の上で目を開けた。他の者達も次々に目を覚ました。
辺りが歓声に包まれる。
「っ結界は!!」

女王は、がばと起き上がり、術中が嘘のように薙いだ美輪湖を見た。
…その中心に、大きな鳥居が出現していた。
これぞ、守りの礎!!

思わず笑顔になる。自分は、やり遂げたのだ…!
ウシワカの助けが無くば全く、…不可能だっただろう。
女王はウシワカも当然気がついているものと思い、彼の方を見ようとした。
「隊長!!隊長!?」
「しっかり!」
しかし、聞こえたのは陰陽師達の切迫した声だった。
ウシワカは少し離れた所に倒れていた。
伏したまま、ぴくりとも動かない。

最悪の事態!?
「ウシワカーーーーっ!」
女王は我を忘れて叫んだ。

そして、その時。
女王の目に妖怪の群勢が両島原の上空に現れる光景が見えた。
…幾ばくも無い!!
予見した女王は、女王としての本能で叫んだ。
「備えよ!!すぐ敵が現れる!!」
「…っ!!」
陰陽師達は、いや、親衛隊員達も動けない。
ウシワカが倒れたままなのだ!
女王はウシワカと皆の間に入った。

「この者は死んではおらぬ!!何としてもたたき起こします!だから!早く!!」


■ ■ ■


「っ!!」
神殿に運ばれたウシワカが目覚めたのは、翌日、昼すぎの事だった。

女王の言で着物は倒れた時のままだった。
目覚めて直ぐに、ウシワカは状況を視た。
すでに妖怪と兵は抗戦していた。
妖怪の活動の本領は夜だが、あるいは自分が不在と見てわざわざこの時刻に仕掛けてきたのかも知れない。…これほどの数があればそんな事は問題にはならない。

ウシワカは、…常闇め!!と悪態をうち、枕元にあった刀を腰に差し立ち上がる。

そこには笛と高下駄も用意されていた。直ぐに身につける。
「羽衣は!?」
ウシワカが髪を素早く紐と水色の櫛でまとめながら言った。
「ここに!」
女王が慌てて差し出す。
ウシワカは羽衣をかぶり、その場から消え失せた。


両島原一帯の空が、黒く染まっていた。

おびただしい数の妖怪が陸からも、とにかく突進してくる。結界を一歩出るとそこは雷鳴と共にすさまじい妖気が渦巻き、辺りはまるで夜だった。
妖怪の爪や太刀は鋭く、状況は劣勢だった。

「列を崩すな!!」
「ぎゃああああーーーーー!!」
あちこちで妖怪に殺されていく者の叫びが聞こえる。
それでも今は何とか対応しているが、とにかく数が多い。奴らは倒しても倒しても、空から、地から、風からと沸いてくる。
人で倒された者は群がられ食われる。その光景は皆を怖じ気づかせた。
妖怪はただ理性も恐怖も無しに突っ込んでくる。

戦力ではやや不足か十分に拮抗しうるはず、実際殆どの雑魚妖怪にはなんとか対応が出来ている。大物には、陰陽師を含め数人から十数人でまとまって掛かる。

だが、こちらには今絶対的な指揮官がいない。
…その事実が皆の士気に大きく影を落としていた。
敵の数には切りが無いし、士気揚揚にさえ見えるのに、こちらには決定的な切り札が無い。
大きく分けて三カ所に布陣した指揮官達もよく持ちこたえているが…このまま戦いが長引けば、皆の体力も尽き負けてしまう!

しかしその中で陰陽師達は、信じられない程冷静に、自分達の役目を果たしていた。
結界を張り、破魔札を使い、式を飛ばし兵達を援護する。
槍を振り回し突き刺して雑魚共を蹴散らす。
…有り体に言えば、攻撃を受け手を無くしても、そのまま戦い続ける、と言った風だった。
「もうすぐ、隊長がいらっしゃる!!」
「それまで耐えろ!!」
陰陽師達は口々に叫んだ。
彼等が言うならそうなのだろう。陰陽師の結界で援護を受けた親衛隊員の一人が駆け出す。
相手はやっかいな鬼灯!しかしひるんでなるものか!!
しかし。
「ぐぁああ!!」
悲鳴が聞こえた。
上空から舞い降りた複数烏天狗に、背後の陰陽師が攻撃されたのだ。
血しぶきが上がった。
陰陽師は体勢を崩し、敵はそのまま一刀両断の構え…!

「させないよ」

その隊員は、後に何が起こったか、分からなかったと語った。
虚空から出現したウシワカが、妖怪を両断したのだ。
キィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
と耳を劈く悲鳴を一体が辺りにとどろかせ、ソレが鳴り止まぬうちに他の烏天狗も討ち取られた。
ウシワカは羽衣をふわりと風に揺らし、とん、と着地した。

「ソーリィ!遅くなった!!」
光剣と刀を携えたウシワカに、皆が一時、状況を忘れて駆け寄る。
「隊長っ!!!お待ちしておりました!!」
「ウシワカ殿!!」
その様子は遠くからも見えた。見ていたモノ達はうっかり両手を挙げ叫びそうになった。
「おい手を止めるなよ!」
親衛隊員の一人に怒られた。しかしその者もうれしそうだった。

ウシワカはいつも通りだった。不敵に笑う。
「一気に立て直すよ!!あははは!腕の一本や二本ならミーが直してあげるよ!!」
「…ハイっ!!」
いや、少し高ぶっている?
しかしこの人が言うと本当にやってしまいそうで怖い。
…近くの妖怪の腕はあっという間に持って行かれた。その次の瞬間には真っ二つに。
辺りを警戒しつつ、ウシワカは言った。彼が指示を出す間は他の者が盾を引き受ける。
「ユー達は都の側に。親衛隊は砦の援護に回って」
「はっ、承知しました!!」
「長引けば不利だ。ミーは敵を引きつけて一掃する。ユー達は援護して」
「ハイ!!隊長、お体は!」
「アハハ!!ノープロブレム!!」
ウシワカは盾からこぼれて襲い来る敵をあざやかに切り捨て、言った。
その様子はとても楽しそうだった。
ウシワカはさらに数匹を一振りで切って続けた。
「…とは行かないなぁ。でも、もうすぐ大神が来る」
「大神?」
ウシワカは答えずに、飛び上がり、敵のただ中に切り込んでいった。


■ ■ ■


…正直、人間では無い。彼はきっと妖怪だ!

見ていた者は残らずそう思った。
ウシワカは宙に浮き、水の上に立ち、妖怪を細切れのように殲滅する。
しかし、妖怪は恐れること無く、その殆どが光剣を携えたウシワカ目掛け集まっていく。
まるで彼だけを狙っているように。

彼が駆けつけてから格段に地上の妖怪が減った。
傷ついたものは援護に下がる事ができた。皆が統制された動きで妖怪と戦う。
しかし、陰陽師達は気をもんでいた。
…ウシワカは先ほどからコレと言った神通力を使っていない。札を使ったりはしているが…それだけだ。
やはり結界を張るのに通力を使い果たしてしまったのだろうか?

実際、ウシワカの神通力はゼロに近かった。先ほど神殿から飛んだ、…あれで使い果たした。飛びまわれるのは、羽衣の力に寄るところが大きい。
今の彼は筆技さえも使えない。正直、爆炎が使いたい…!
「キリがない…!」
切っても切っても沸いてくる。その時。
「っ!?」
ぐらり、と体が傾き同時に視界が白く染まった。

ウシワカが落ちた。
「隊長!!」
ウシワカの動きが一瞬止まったと思ったら、妖怪の剣撃をまともに浴びたのだ。
さらに無数に切られまっさかさまに落ちる。
地上から援護していた隊員が駆け寄る。彼の体に、妖怪が食らい着いている!
式を飛ばし、ウシワカを守る。他の者も、ウシワカの周りに結界を張る。
やはり、無理がたたったのか!?
急がなければ!

駆け寄る間にも、妖怪でウシワカの体は埋め尽くされる。
やはり妖怪は彼だけを狙っているのではないか?幾度目かのそんな考えがよぎった。
ウシワカの首さえ取れればそれで良い!そう言っているような異様な光景だった。
「隊長っーーー!」
結界はもう破られている!彼が死ぬなど!!

ギュュォォォォ!!!

突然、辺りに強烈な突風が吹いた。
「っぁーーー!!?」
「うわぁあああーーーー!!」
駆け寄ろうとした隊員もろとも、ウシワカに群がっていた妖怪が吹き飛ばされる。
その直後、何かの巨大な爆風と熱風が辺りを燃やし尽くす。
巨大な火の玉が砂を削り、吹き飛ばし。巻き込まれた妖怪の姿を一瞬で消滅させた。
「新手か!!?」「な、なんだアレは!!」「隊長っーーーーー!!」
とっさに地に伏せた隊員達が叫ぶ。

「グゥゥゥゥゥ!!!!!!」

炎と妖怪が消え、黒く削り取られた大地の真ん中に、白くて大きな一匹の犬が、血まみれで倒れた青年をかばうように立ちはだかっていた…。


■ ■ ■

「アマテラス君…!!」
ウシワカは無理やり起き上がった。そしてその犬に抱きつく。
「わりぃ!遅れた!!」
ぴょん、と何かが飛び出す。
「イッシャク君!…ベリィ、…スロウだよ!!道草でもしてたのかい!?」
「話は後だ!!こいつ等、一気に追っ払うぜ!!アマ公!!」
「ワン!!」

それからの戦いは不思議なものだった。
ウシワカと、白い犬…イヤ、狼が、お互いの背を守るようにして、戦っている。

何か不思議な力が働いて居るようだった。
手負いのウシワカに背後から妖怪が近づこうとすると、木が生えてソレを遮り。
またこちらの味方に群勢が迫るといきなり妖怪達の首が飛ぶ。
炎が起きたかと思えば、辺りに豪雨が降りそそぎ、雷が天から降り注ぐ。

見る物全てが、あっけにとられ、強風のただ中に居る者達を眺めた。

そして瞬く間に、妖怪どもの無限の屍が出来る…と思いきや。
その狼に切られ、燃やされ、見えない剣の様な物で細切れに切り刻まれた妖怪達は、全て光となり、散っていった。

陰陽師達には、妖怪が徒花を咲かせるのがはっきり見えていた。
もちろんそれだけでは無い。
白いオオカミ、その光の筋と深紅の隈取りを纏った神々しい姿!!
地に足を付けるとそこには草花が乱れ咲き。
背にしょった雷を纏う巨大な剣をすさまじい速さで振り回している。

アレは…一体!?なんなのだ!!

「大神…!!!」

先程ウシワカの言を聞いていた、ただ一人の陰陽師だけが、呟いた。


■ ■ ■

日が落ち、夕暮れの薄明かりが消える頃…。
妖怪の群勢は引き上げ、また全て骸となり。
人は皆、血と汗にまみれて荒い息を付いていた。

白い狼が大きく、大きく遠吠えしたのが、戦いの収束の合図だった。

…今ウシワカや、親衛隊の者達が死者を餡刻寺の庭に集め、確認している。
血だらけの着物に簡易的に包帯を巻いたウシワカの足元には、恐るべき強さを誇った、あの謎の白い狼がぴたりと付いている。
なにやらその狼には妖精がとりついている様で、時折ソレが狼の額の上でのピョンピョン跳ね、ウシワカと何かを話している。
「結界は?」
「もちろんノープロブレム、後は残党を狩るだけだ」
「ン。っていうか…顔色ワリィぞ。倒れんなよ」
「クゥ?」
「フフフ。サンキュー、アマテラス君…」

その時、ウシワカに親衛隊員が近づいてきた。
日が暮れるので、引き上げますか?と聞かれた。
ウシワカは少し、周りのおびただしい死体を見た。

自分が来なければ、死なずに済んだ者達。

「…イヤ。今日は皆と明かそう。今夜はあまり冷えないし。…知らせはやってあるよね?」
親衛隊員が頷く。その親衛隊員の目にはウシワカに対する信頼があった。
「火を焚きます」

ウシワカは都に帰りたい者は返したが、殆ど残った。
海岸で、道ばたで。暗い夜を炎が照らす。
「人ならぬ者達はどうして、この世に生まれて来たのでしょう…」
最年長の隊員が言った。その顔は沈んでいる。
ウシワカ達は今、屍となってしまった隊員や、細切れになってしまった知り合いのそばで火を焚いて集まっていた。
ウシワカの周りに集まったのは親衛隊の者や、指揮官や陰陽師

その近くで彼は木にもたれ、膝の上で眠る狼を優しく撫でている。
ぽつり、と呟いた。

「彼等は、大昔に作られたんだ…。個々に罪があるわけじゃ無い、だけど…ミー達から見たらやはりその存在が間違っているんだろうね」

ウシワカのつぶやきを聞いた一人が言った。
「私は…、彼等がそこまで悪いモノと、思って居なかったんです…」
その言葉に、皆が反応した。
その者は、少し慌てて首を振って言った。
「妖怪を擁護するわけではありません。奴らが人々を食うのは事実です…でも、以前私が震えながら投げた在りの実を、美味しそうに食べていました。ホントに喜んで…お辞儀までして。私は笑ってしまいました…貴方は、彼等を殺す事をどう感じて居ますか?」

その者は、我ながら甘いと思うが、その出来事がずっとわだかまりになって居たのだと、少々申し訳無さそうに語った。
…先程のウシワカの言を聞き、この青年の考えを聞いてみよう、と思ったのだろう。

ウシワカは白い狼に目線を落とし、語った。
「彼等は確かに無邪気な一面も持っている。知能も、個性も、感情もある…それでも、ミーは奴らを憎んでいる…。一匹たりともこの世に残す気は無い。だから殺すんだ。…闇に生きる彼等を救うなんて事は、神様にしかできない」

…強い内容とは裏腹に、その声色は悲しそうだった。

ウシワカが、眠る狼の頭を撫でる。
狼の耳がピクリと動き、薄目を開けた。うっかり手に力がこもってしまったのだろうか。
「ソーリィ、アマテラス君…うわ、ばっちぃ」
「ゥ」
ウシワカは、するりと起き上がりペロリと顔の傷を舐めた狼にほほえみかける。
狼の頭の上からこぼれた小さな光を拾い上げて、頭に乗せ直す。

彼等は、ずっと一緒だったのだろう…。
そう感じさせる光景だった。

「た、隊長…、もしや、その狼が…」

陰陽師の一人が言った。
彼には、その狼の真の姿が見えている。


「…」
しかし、返事は無かった。
ウシワカは、白い狼にもたれ、スヤスヤと眠っていた…。


〈おわり〉 

広告を非表示にする