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■桜散るまで④ 【大神】【桜散るまで】

別にウシワカは結婚しても良かったんじゃ…と思います。そういうキャラって良くいるし。でもアマ公☆一筋なのがウシワカの偉いところ?

 ■桜散るまで ④


ナカツクニのあちこち妖怪はうじゃうじゃ出る物の。
神木村の悲しい風習は続いている物の…。
それから平穏とも言える数年が経った。

以前女王と、ウシワカの関係が噂されて、すぐ立ち消えてから。
ウシワカは彼女に会う時は御簾越しや、侍女に立ち会いを求める様になった。

彼は全く女王を恋愛対象として見て居なかったので、ごく普通に気安く接していたが、向こうはどうも違ったらしい…なかなか、やっかいな状況だった。

久しぶりに都へ来たイッシャクにそう言ったら。
「ハァ…アレに気がついてねェのは、オメェだけだったと思うぜ…!!」
かなり呆れられた。
そして、彼はため息を付いた。
「なあ、丁度良い折だ。オメェ…知り合いを…イヤ。オイラが口出す事じゃねぇな」
「…え?」
書き物をしていたウシワカが話掛けられたので顔を上げると、イッシャクは頭を困った様に搔いていた。
そして急に真剣な表情になり。

「…オメェ。自分が月の民だって、覚えてるか?」
そう言った。まるでこう言えば、分かるだろう。と言わんばかりだった。
「もちろん。片時も忘れたりはしない」
ウシワカは苦笑した。
この時の彼は、それを自分の役目や贖罪に関する警告として受け取った。
「まあ、あんまりこちらの人間に入れ込みすぎないように、気を付けるンだな。寿命がそもそも桁違いな訳だし、ま、オイラやアマ公なら良いケドよ!」

イッシャクはそこまでしか言わなかった。
しかも、あえて冗談めかし明るく言ってしまった。

「…イエス」
ぽつりと呟き、微笑んだ青年は、こう見えてすでに何百年も生きているのだ。
…俺が言わなくても。コイツなら予見とかでその正しい時期を判断出来るだろう。
実際今、そうしようと時期を計っているのかも知れない。

その頃、陰特隊はその規模をやや縮小していた。
家庭を持ち現役を退く者が出る、しかし、入れる者は少しづつ減らす。
そうしているのは、ウシワカがナカツクニの人々との関わりを減らそうとしているからなのだろう…。

ウシワカの耳には入っていないが、いや。まだ誰も口にしていないが。
程度の差はあれど。多少情勢が落ち着いた今…おそらく皆、この、青年の外見や出自を怪しみ始めている。ようやくと言っても良い。
彼はこの都に来た当初。人々には二十を少し過ぎたばかりか、その半ばぐらいと見えた。

それからもう八年。
この青年は、当然だが、全く変わっていない。

人間、成人すれば若い内はそれほど外見に変化はない。特に二十代から三十代の前半はほぼ変わらないと言っても過言では無い。
しかも若く見える者はいるし。…要するに一目で人物の年齢を看破する事は難しい。

女王と並ぶ事がもうあまり無いので、気がつかれて居ないのか…。
しかし、口の堅い隊員達はともかく、かつて都を守ったウシワカを知る者がまだ大勢いる。
むしろ皆がこの風変わりな隊長を受け入れている。

「ハァ…まあ、まだ良いか」
イッシャクはため息を付いて、その話を切った。

元々、幾つだと明言もしていないようだし、彼は最近特に都を留守にする事が多いので、そう言った者と会うことはそれほど無いのだろうが…。
…いざとなったら、十年ばかり姿をくらませれば良いか。そんな事を何となく思いながら。
彼も、長い寿命を持つ故、時期を少し読み違えたのかも知れない。


それからまた一年。
ウシワカの周りには微妙だが確実な変化が起き始めていた。
さわさわと、まとわりつくような、奇異を見る視線…。
かつて都に結界を張ったあの時、同じ年くらいと思っていた陰特隊の若者や、戦いの後に新しく入った親衛隊員の若者。そう言ったものと並ぶとその外見の若さが、一際目立つのだ。

…この青年は、本当に人間なのだろうか。妖怪が化けたり、とりついたりしているのでは無いだろうか。

彼の重要さやその年らしからぬ老成した人格を知って居る誰もが、今まで通りに接しようとしている。
しかし、ふとした瞬間、そんな事が頭をよぎる。

「ウシワカ殿は、何時までもお若いですなぁ…!」
その言葉がある者の口を突いて出たとき。運悪く何人かがちらほらと周りに居た。
その者は、そこそこ年齢を経ていた為、若者の外見とかそう言った事に疎く、タダ思った事を口にしてしまったようだった。
「おや。そうかい?サンキュー」
ウシワカは、いつも通りに笑った。

周りで聞いていた少なくない若者達が、見つめていた。
…予言の力を持つ彼だが。全て人の心を読む訳ではないのだ。


■ ■ ■


むしろ、そう言った事は、苦手だった。

「…ハァ…」
神殿に、呼ばれ。なにやら勢揃いされて、頭を下げられたウシワカは、深いため息を付いた。先帝を初め。ヤマタイ一族や貴族の重鎮。
だが、女王の姿は無い。
皆よくもそろったものだ…。

人の心が読めない訳では無い。
だが、月では皆の心根が辟易するほど汚いので、あえて読まなかった。
タカマガハラでは、自分を受け入れた天神族に対して、読心など考えもしなかった。
ナカツクニでは礼儀上、必要が無ければしない。そんな事をしなくても、予見は出来るし、特に不便は無かった。
しかし、この光景を予見したときにはっきり言って、うんざりした。
仕方が無いので、ただその日を待った。
当然、あっさりと断るつもりだ。
…しかし。

「今回は、特に話があるというわけでは…ないのだが」
先帝が言った。
…そう。実はこれ一回だけでは無いのだ。
あと少なくとも、もう一回。そしてその時は…。
「ハァ…キング。ではミーは忙しいので、コレで」
そう言って、立ち上がろうとする。
すると、なにやら話掛けられて、引き延ばされる。
都での暮らしはどうだとか、最近どんなことがあったとか。
ウシワカは適当に答えた。
「特に不自由は無い。最近の行動については口外できない」
表面上は取り繕いながら。いや、少し不快感を出しながら。

「ウシワカ殿、本日は呼びつけて申し訳なかったの」
そうして一刻ほど後ようやく返された。

…ため息を付いた。
実はコレは自分だけでは無い。他にも親衛隊員の実力者。貴族の子息などが最近呼ばれて居る。その誰もが独り身で男。
…要するに、重鎮達が本格的に女王の婿を探しているのだ。
候補達をみなに見せ、選定する。評判だけで無く本人の人柄を確かめる。

通常は、一年ほど掛けて。
だが、それを待たず、あっさり自分が選ばれてしまうのが分かる。

試しに、皆の心を読んでみたが。正直、気分が悪くなってしまった。
先帝は別に嫌いでは無い。しかし…。
さっさと断りたいが、話が来ないうちでは断る事も出来ない。

それに加え、先程から後を付けてくる気配を感じる。
いや、ここ最近ずっとそうだ。
部屋がいじられていたり。隊員や都人に評判を聞き回られたり。
要するに、素行を調べられているのだ。
まあ。いつも適当に撒くが。私室は特に何も無いので問題無い。
在るのは換えの着物やイッシャクが描いた大神の絵、それが数十枚くらいだった。

わざと女と遊んでやろうか…。ふとそんな考えが頭をよぎった。
しかし、それはそれで後始末がめんどくさい…。

「ハァ…」
ため息を付き、角を曲がる。ひょいと消える。

先程から見ていた者は、角を曲がったウシワカを、見事に見失った。
「ああ…!!また逃げられた!…ってかもう無理だろ…」

ため息を付きつつ、貧乏くじを嘆いていた。


■ ■ ■

「イッシャク君」

ウシワカは遠くカムイを訪れた。
ヨシペタイを軽々と通り、ポンコタンの入り口へと来る。
「オウ、まあ入れ」
イッシャクが飛び出して来て言った。


ウシワカはこの村に伝わる秘宝を使い、小さな村の中に入る。
「今アマ公はいねぇぜ」
「分かってる」
ウシワカはあえてソレを見計らい尋ねて来たのだ。
「ま、いつも通りの有様だけど」
イッシャクが扉を開く。
絵を描いていたようで、彼の住居には大きな下絵が広げてあった。
下絵だけでも見事だ…。それだけに、彼も複雑だろう。
ウシワカはそう思ったが、顔には出さなかった。
しかし、イッシャクには看破されてしまったようだった。
「…ハァ。まあ、百年後まで、まだ先は長いンだ。オイラの事は気にすんな」
「ソーリィ」
ウシワカは謝った。
イザナギがオロチを撃つまで大神の信仰を広めるのを、止める。
三人で、そう取り決めた。
「…だけど、イッシャク君…ミーは迷っているんだよ」
ウシワカが、珍しく、弱音らしき物を吐いた。
イッシャクは、それを遮って言った。
「ウシワカ。俺は…。今すぐじゃねぇけど、いずれ頃合いを見て所帯を持つつもりだ」
「…」
ウシワカが、黙り込む。
「だから、オメェも、覚悟を決めろ。どんなにあがいても時は早まらねェんだ!」
「…ソーリィ、イッシャク君」
ウシワカが謝った。

イッシャクは、この時、ウシワカが酷く陰鬱な表情をしているのに気がついていた。
ウシワカが陰気くさいのはいつもの事だが、ここ最近は特に酷い。
わざわざ訪ねて来たことと言い、これは、おそらく何か良くない未来でも見たのだろう。
「また、予言か?」
「いや…今はまだ良い」
ウシワカはそう言ったきり黙り込んでしまった。

しばらく、その場を居心地の悪い沈黙が支配する。

口を開いたのは、ウシワカだった。
「…イッシャク君。ミーは陰特隊の本部をどこかに移そうと思う」
少し唐突とも言える話題だった。
イッシャクは、ウシワカがあえて話題を変えたのだと思った。
ウシワカは、良くそう言う事をする。おまけにめったに話の確信や本心を語らない。
それが人の目には、どこか信用ならないとか、うさんくさいと言った風に映るのだろう。

…しかし、コツさえ掴めば、それなりに考えを読むことが出来る。

「その様子じゃ、また蒸し返されたか」
「…平たく言えばそうだ。それに最近、周りが騒がしい」

どうやら、自分の出自が怪しまれ始めている。しかも、かなり深くまで調べている者がいるようだ。ついでに、女王との縁談。ウシワカは言った。

「もちろん断るけど…、まったく」
ウシワカは腕を組み、迷惑そうにしている。
…ソレを見たイッシャクは意地悪く笑って、少しは真剣に言った。

「良いじゃねェか。軽く、受けちまえよ」

「!!」
ウシワカは、その言葉に息を呑んだ。
「いや。本気で、どうだ?…別にあの女王を嫌ってないんだろ…?」

イッシャクの勘…いや、他の誰が見ても、それは明白だった。

ウシワカ自身は、自覚が無かったのかもしれないが…そして今はどうかは分からないが…。以前は彼女に安らぎのような物を感じて居たようだった。
もしかしたらウシワカの傷ついた心が無意識に誰かを求めていたのかもしれない。
…彼は怪我は治したモノの、心を癒やす間もなく、動き初めてしまったのだ。

それはそれで、どちらにとっても…哀れな話だ。

いずれにせよ、いつか必ず。
表面上だけは完璧な、その実、中身は『つぎはぎ』だらけのこの男には限界が来る。
コイツが狂ったら。…はっきり言って、この國はおしまいだ。
だからこそ、イッシャクはあえてウシワカに言ったのだ。
もちろん…友人として、その精神的な負担を少しでも減らす為に、何かしてやりたいと言う気もあった。

「イッシャク君、でもそれは…!」
「出来ねぇか?」
「当然だ、ミーは…」
ウシワカが、口ごもる。
「ミーは月の民だ。ナカツクニの人間じゃない」
戸惑ったようにそう言った。
「そうじゃねぇだろ。アマ公に…遠慮してる、それだけだろ?」

イッシャクは、少し迷ったが、決定的な言葉を言うのを避けた。

なにより、確信が無いのだ。
自分が感じたところ、ウシワカはアマテラスに懸想している。
だが、それがどういった感情なのか、言ってしまえば男女の情愛に近い物なのか。
それとも、たった一人で、大神の従者であろうとしているだけなのか…?
それが、分からない。
いや、もしかしたら、今となっては…本人にも、分からないのかも知れない。

「なあ、ウシワカ、ナカツクニには。ナカツクニの人間が天人と交わった、なんて伝承が山ほどあるンだぜ?カムイにもな」
「ッ…!」
ウシワカは、イッシャクの言わんとする事に対して、恐怖とおぞましさを感じている様だった。
イッシャクは構わずに続ける。
「だれも、アマ公も、…死んだ天神族も。お前を責めたりしな」
「…聞きたくない!!」
ウシワカが耳を塞いで叫んだ。

「ちったぁ、幸せになっても、良いんじゃねぇかって!!言ってンだよ!!」
イッシャクは、ついに大音声で怒鳴った。
「…っ!」
襟を捕まれたウシワカが、膝立ちになったイッシャクを見上げている。

「…正直、それがお前には良いと思う」
イッシャクは、ウシワカを離し呟いた。ウシワカに背を向け座る。


「…ミーに、そんな資格はない…」
しばらく後、ウシワカの声が聞こえた。

彼は泣いてはいなかったが、声はか細く、震えていた。

「…グッバイ…」
ウシワカは程なくフラリと立ち上がり、勝手に出て行った。

イッシャクは出て行った彼を見ないまま、深くため息を付いた。

 


■ ■ ■


自分は、一体何をしているのだろう。

天への道を、歩む気が…いいやアマテラス君を歩ませる。
それだけがもはや生きる意味。

仮に、女王と交わり…!
そして。
「っ…!!」
吐き気がする。彼女を嫌いでは無い。それでも吐き気がする。

ウシワカは一人、雪を踏み分け、ヤマトへと向かった。
雪が降り積むクトネシリカの祭壇。
そこに立ち尽くし、いつしか膝をつく。

そして、額を祭壇にこすり付けて嘆く。
「…死にたい…っ…」

百年後、アマテラスが死ぬ。
そんな予見…!!どうして、イッシャクに打ち明けられよう!!??

その光景が見えていながら、信仰を広めさせない。
ある意味正しく、ある意味、無茶苦茶とも言える理由を付けて。
なぜなら、その先の出来事がさらに見えるから。
大神の信仰を広めるのは、彼では無く、彼の息子でも無い。
…分かるのはそこまでだ。
では彼の孫なのか?そもそも彼の血筋なのか?
その時、死んでしまったアマテラス君は、一体、どうなっているのだ!?

…この目のせいで!!余計な事ばかり見えるのに!肝心な事は見えない!!
いっそ!くりぬいてしまおうか!!?

短刀を取り出し、ガタガタ震える。
…だめだ!また死ねない…!!
倒れ伏した自分を、アマテラスが見つける光景が見える。

「っ…うう、ぁあああ…!!」

そのまま、日が沈み。気温はさらに下がる。
彼はいくらか自分を傷付ける事は出来たが、そこまでだった。


■ ■ ■

倒れたウシワカを見つけたのは、やはりアマテラスだった。

「ハァ…このアホは!またかよ…」
イッシャクが自分の部屋で眠るウシワカを小突く。

…こんな事は、これまで度々あったのだ。

しかし一時の、嵐のようなモノだ。
過ぎれば、また元通りのインチキ野郎に戻る。

それが良いことなのかはイッシャクには分からなかった。

翌朝。
まだ少々項垂れたままのウシワカがぽつりと言った。
「アマテラス君…、ユーは百年後オロチと戦い…いや…」
イッシャクは、ウシワカがアマテラスに語った内容に絶句した。

「…ハァ。っとに」
そして、ウシワカはしばらくして、元のインチキ野郎に戻り。
都へと戻っていった。


ウシワカが数日ぶりに都に帰った途端。
神殿から使いが来た。

神殿に着いて座した途端。
先帝を初めとするヤマタイ一族達が頭を下げた。

先帝が言った。
「ウシワカ殿。どうか、どうか…女王を娶ってくだされ…」
ウシワカは笑った。乾いた笑いだった。
「あはは!娶る?言葉が違うんじゃないかなぁ?…どうせ婿入りって事だろう。そんなのミーは」
「分かっております、女王たっての申し出なのです。貴君にご迷惑はおかけいたしません」
先帝の弱り切った様子に、貴族の一部は苦い顔をしている。
こんな若造の何処にここまでする価値があるのか。とでも言いげだった。

「…ノー。ミーは女王には興味がない」
ウシワカはあっさり言った。
「そこを、どうか、何とか…」
先帝達はひたすら土下座だ。

「そもそも、女王は何をしているんだい?最近姿が見えないけど」
ウシワカはわざと言った。

「女王は…。貴方様を思うあまり、お倒れに」
分かっていた答えに、ウシワカはため息を付いた。
「キング」
ウシワカは、ふざけた態度を止めた。

「…ミーはユー達の言う、月から来た人間だ」
ウシワカは、頭巾をむしり取り、普段見えない長い髪を解いた。

どよめきが広がる。
その中、ただ一人、先帝は動じず。言った。

「分かっております。女王が、私に全て打ち明けてくれました。貴方の素性、またアマテラス大神に仕えるお方である事…、さらに、数百年の寿命をお持ちである事も」

ウシワカは苦笑した。
あの女王は相変わらず、ただ嘆いているようでぬかりない。
先帝以外は、信じられない話に目を白黒させている。

「そう。なら話は早い。ミーはアマテラス君の為に生きると決めている。この都に留まっているのは、長い目で見て、大神の利になるからだ。女王の求婚を受ける気は無い。結局先に死んでしまうし、ミーが彼女にしてやれることも無い…」

「では、せめて、お子だけでも…」
ヤマタイ一族の一人が言った。
「それは、ここに居る者の全員の意見かい?」
この場には、貴族やヤマタイ一族の他に、彼女に近しい侍女達もいた。
ウシワカは、その侍女頭に言った。
「おそれながら。神殿の総意です。それが可能であるのならば、どうか…」

ウシワカはため息を付いた。
「…得体の知れない者に、女王を差し出すつもりなのかい」
「もし不可能であるなら、せめて…女王を抱いていただけませんか」
先帝が、恐ろしくはっきりと言った。
ウシワカはため息を付く。
子供を与えることは不可能ではない。しかしわざわざそれを言うつもりなど無い。

「あれは、昔から…貴方様しか見ておりませぬ。それこそ、お会いする前から…。朕も貴方の人柄を信頼しております」
ウシワカは、また一つため息を付いた。
まさか、そこまで自分が思われていようとは。それに皆が必死すぎて、断るのに相当、時間が掛かりそうだ。
「買いかぶり過ぎだ。ミーは…うーん、そうだね…」

何と言えば、納得してもらえるのだろう?
都にはまだまだ用がある。ここで上手く断らないと、角が立つ。
かといって、受け入れるのは論外。
この人達の気合いの入れようでは…。ウシワカが一言でも「いいかも?」と言ったら即、女王の寝室行きだ。


「「むぅ……」」


微妙な静寂の中。
両者、一歩も引かずに睨み合った。

「あっ」
そして突然、ウシワカが手を打った。
これなら、イケルかもしれない。

「アハハハハハ!そっか」

笑い出したウシワカに、皆がたじろぐ。

今の所、こちらが有利なはず。
これから、さらに幼少期の話や苦手な針の修得物語などを交え、女王の為に、この難敵を陥落するのだ。
日夜続けた特訓の成果を今こそ出し、寝室で支度をして待つ女王に是非ともこの長髪イケメンをお届けしなければ!!

すでにウシワカの為に湯が用意されていた。準備は万端と言う奴だ。
それは言い換えれば、幼気な青年の貞操の危機を意味するが…。
女王の幸せは、西安京の幸せに違いない…!!だから。ご決断を!!
…そんな神殿の者達を余所に。ウシワカは笑って。




「ミーはアマテラス君以外じゃ立たないんだよ。フフフ、ソーリィ!」


「「ええええええーーーーっ!!?」」
爆弾発言に、広間が戦慄した。
ウシワカは、さらにまくし立てる。

「ミーの部屋に、アマテラス君の姿絵が沢山あっただろう?それはもちろん、そう言う用途のモノ…つまりオカズだ。そういう事だから。アハハ!女王と話を付けてくる」

彼は、あっさりと言って、立ち上がった。そして、あくまで朗らかに笑い、広間の奥へと進む。
皆、突然の『かみんぐあうと』にあっけにとられてしまい動けない。

「お、お待ちを!」
貴族の一人が、周りを代表して立ち上がった。
奥の扉へ進んでいたウシワカが、振り返らずに立ち止まる。
「あの、貴方様は、本当に月からいらしたのですか…!?」
この者は、一番言ってはいけない事を言ってしまった。


「キジも鳴かずば、撃たれないのにねぇ…?」


「「ヒィィィィッーーー!!…おや、私達はなぜココに?」」

次の瞬間、一部の貴族達は、ウシワカの出自を綺麗サッパリ忘れて居た。
いや、というか今年の記憶を全部ぶっ飛ばされた。

振り返ったウシワカの虫ケラを見つめるような笑顔に、皆が顔を引きつらせる。

「じゃあ、グッバイ!」
ウシワカは扉の奥にひらりと消えていった。


■ ■ ■


「やはり。ダメでしたか」

奥で、女王は普段着のままでいた。一応布団は敷いてあった。
「ハァ。疲れたよ」
ウシワカが女王の私室には入らずに、ふすまに軽くもたれて言った。
彼は手にした羽衣をもてあそんでいる。

「…ウシワカ。貴方の出自を皆に語ってしまい…申し訳ありませんでした」
女王は頭を下げた。しかしその目には堅い決意があった。
「ノープロブレム。…いずれは、貴族はともかく、ヤマタイ一族には…話す必要があったからね。けどユーは本当にミーをこれからも、ここに置く気なのかい…?」
ウシワカがため息を付いた。
「ふふ」
女王は微笑むばかり。
結局、この騒動はそろそろこの場所を去ろうとしているウシワカを…何としても都に留めたいと言う女王の謀のようなものだったのだ。

「それで…気は変わりましたか?」
女王が言った。

ウシワカは答えず。
明るく笑って去って行った。

〈おわり〉

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