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長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■桜散るまで⑤(終) 【大神】【桜散るまで】

一応終わりです。しかしこんな終わり方でいいのか…。って言うか月の民って無駄に悩み多そう。そして何気に怖いタイムラグが…。
※次回、女王サイドの行動を書いた補完話⑥をアップします。

■桜散るまで ⑤(終)


ミーが都に留まることに決めたのは、やはり居心地が良かったからだと思う。

ナカツクニの人々は基本的に大らかで、月の民のように、ほんの少しの差異で他人を迫害したりしない。
恐ろしく、いや、ミーは実際に恐怖を感じていたが…それは本当に穏やかな日々だった。

それと同時に、いつか…この日常がまた自分のせいで突然、壊れてしまうのではないか。
そんなことも考えるようになっていた。

しかし、崩壊は、もっと「別の形」でやって来たのだ…。



■ ■ ■


「え…?」

ウシワカは一瞬、耳を疑った。
隠居していた元隊員の一人が、死んだのだ。
明月館に本部の機能を移してから、まだ二、三年程しか経っていないというのに。

「なにぶんお歳でしたから。ご葬儀はすぐに…隊長にもご出席していただきたいのですが」
ウシワカの様子が、おかしい?
「あ、ああ、分かった…出るよ。…こちらではどうやっているんだい?」
隊員は、首を傾げた。

「ミーはココの出じゃないから…このままの格好で出ても良いのかい?ユー達は?」
困った様に言うウシワカを、ああ、とうなずき隊員は眺めた。
「我々はこのままで。これは隊員の礼装ですから。…その点だけで見れば、隊長のお着物でも問題無いかと思いますが…いささか、派手だと思われてしまうかも知れません」
ウシワカは頷いた。
その点は自覚があったようだ。

「えーと、何処にしまったかなぁ…」
仕事を早めに切り上げ、自分の部屋をあさる。

彼は自分で仕立てる以外にも、女王から度々に必需品と称して着物や装飾品を色々を渡さていた。
換えの着物や最礼服等、絢爛な飾り櫛に扇や履き物…そのどれもが最高級の品だ。
そしてそのどれもが使われていない。

確か、その中に喪服もあった気がする。
断れる物は断って、仕方の無い物だけは受け取ってそのままほったらかしにしていたが…。
うっかり捨てなくて良かった。サイズも変わっていないし、大丈夫だろう。

…おそらく、似合いはしないだろうが。
「ああ、見つけた」


…その元隊員は、彼の弟子に看取られて往生したのだと言う。
最初期の隊員として活躍した彼は、老いてさらに祈祷師として人望厚く、多くの弟子たちにより盛大に弔われた。

濃紫の羽織に黒の袴…喪服に羽衣をかぶる訳にもいかず、仕方無く一つにくくった長い金の髪は、皆の好奇の視線を浴びた。今では、彼と関わりの多い者はあまりいない。
誰もが、突然現れたこの煌びやかな人物は何者なのかと、この者も、故人の弟子なのかと不思議そうにしている。

「…」
ウシワカは、それにはかまわず、その穏やかな姿を見た。

…こんなに老いたのか。

…ずっと、そのままの、退いた時の姿で在るものだと思っていた。

ナカツクニの作法に則り、手を合わせた。
皆がすすり泣いている。彼を慕う者は多かった。
自分も、彼には色々助けられた。

…度々、これからこのような事があるなら、身の振り方を考えなければいけない…。
ウシワカは、一人眉を潜めた。
自分の大失態に歯がみする思いだった。
…急な事で逃れられなかった。

いや、自分は…確かにかつてこの者の最後を予見していたのだ。

あの少女を見た時に。
彼女が彼を看取る未来がはっきりと見えた。だから彼女を彼に預けたのだ。
日々に追われ、寿命の違いというモノを失念していたのだ…!

…これ一度きりにしなければいけない。
こんな、ミーがナカツクニの人の死を悼む等と言う…はっきり言っておこがましい事は。

ウシワカは、少しは悲しんでいるように見える表情で、そんな事を考えた。

久しぶりに会った彼女はすっかり、美しくなり。
これを期に故郷へ戻ると目に涙を貯めて言った。
陰陽師様。いままで本当にお世話になりました」
「…、ユーも良く頑張ったね。…これから、元気で」
少し笑い、それだけ言うのが精一杯だった。
彼女は微笑みかえした。

ウシワカには、彼女の死に様が目に見えていたのだから。
彼女も…そうなのだ。
…逃れられない宿命を負っているのだ。

皆と別れ、一人になり、いつもの着物に着替え。
纏めていた髪をほどいて。

この髪を切ってしまおうかと、考えた。


■ ■ ■


ウシワカは髪を切らなかった。
十年もすればまた元に戻るので、意味が無い。

それから十年ほど。
彼はただひたすら、自分の罪を忘れない様に、研究に没頭した。
彼の作った仕組みにより、ナカツクニの治安は安定しつつあった。

しかし、それを彼が始めた物だと言うことは、すでに皆が忘れ去っていた。
彼が、地上から姿を消すとき、自分の痕跡を必要な物以外全て、消したのだ。

もっとも…都人の記憶は自然に任せたが。
彼等には何も責はないのだし、害も無いし。放っておけばそのうち忘れる。

隊員には仮面を付けさせ。
そして女王とは、いつからか御簾越しにしか話をしなくなった。
…ソレが当然になっていた。

彼女が、倒れるまでは。


時折、咳き込むので心配はしていた。
彼女の隣には侍女がいつもついていた。

そして、死期が近いことも予見していた。
…一度、見せてもらったが。悪い場所はなかった。
疲弊、としか言いようがない。
あの時の結界がかなり彼女の命を減らしていた。
それに…もともと、ヤマタイ一族の巫女は総じて短命だった。
強い神通力を持つ血族の弊害のようなモノだった。

それでも、人々は容赦なく彼女にすがる。
彼女もまたただの人であるのに。

支配者の重責。
それに一人で耐えられるほど、彼女は強く…なかったのだ。

いくら威厳を持つ女王でも。中身はたおやかな優しい女性。
彼女に親しい者はそれに気がついていた。いや、知っていた。
この偉大な女王には…支えが必要なのだと。

だから、皆、ウシワカにそれを望んだ。
イッシャク君も、自分にそれを進めた。一時でも、良いのではないかと。
罪ばかりにとらわれる事は、無いのでは?
天人が人と交わった、そんな伝承がナカツクニには存在しているらしい。

そしてその子供は、ごく普通の人として育ったと言う。

…実際、可能なことだった。
ウシワカは妖怪をサンプリングするついでに、ナカツクニの人々の遺伝子も解析していた。

さまざまな違いがあった。

しかし生殖と言う一点では…月の民とほぼ変わらなかった。混血が可能なのだ。
…わかった時点で、彼は調べるのを止めた。
仮に子供ができたとして、その子供が本当に人として成立するか、そんなのは確かめる必要性の無い、どうでも良い事なのだ。
彼が当たり前の月の民なら、喜んでサンプルを集め、設備を整え、研究の為に下衆のように子供を製造しただろうが…。



久しぶりに神殿を訪れた。
…彼女と会うのは、これで最後になるだろう。

「ウシワカ殿…」
先帝が沈んだ顔で出迎えてくれた。彼も、老いた。…髪の毛が真っ白だ。
しかし、その彼より女王が先に逝く。
彼はこの先もまだ、己の役目を果たす。
「…」
ウシワカは会釈した。この穏やかな人物に自分は幾度も助けられた。

「どうか、女王に会ってやって下さい…」
俯いてそう言った、先帝の様子に同情のようなものを感じた。
取り残される悲しみ。
だが、自分にそんな資格は無いと思い直した。


「来たよ、クイーン」
ウシワカが言った。
ここは、以前夜とぎをさせられそうになった場所では無い。
もっと公的な、皆に会う為に用意された病床だった。
彼女は床に伏してなお政務に励んでいたのだ。

御簾の向こう…一段高い場所に布団が敷かれ。
その上に薄っぺらい影が横たわっている。

返事の代わりに、小さな咳が帰って来た。

それは合図だったのか。侍女が御簾を上げた。
「どうぞ…中へお入り下さい」
侍女が言う。

通常ならこんな事はあり得ない。しかし、今は。
「失礼するよ」
ウシワカは少しかがんで壇上に上がった。

その時その部屋には、先帝やヤマタイ一族など側近と言える者達がいた。
「皆様…」
ウシワカを御簾に入れた後。侍女が、深く礼をしそう言った。

皆が無言で席を外し。
御簾が静かに下ろされた。


■ ■ ■


「変わってないね」
ウシワカは無理やり笑ってそう言った。
女王は微笑んだ。
かなりやせたと思うがの…。そうつぶやいた。

「お主と話すのも、これが最後ですね」

彼女はそう言った。
彼女の予見の力はかなり弱くなっていたが、それでもそのことは分かるらしい。
いや、単に死期を悟っているだけかも知れない。
…死相が見える。これは、明日まで持たない。

ウシワカは差し出された手をとった。

「妾は、お主に会えて、本当に幸せでした」
彼女は静かに微笑んだ。

その言葉を聞いた途端、ウシワカの手が、震え出す。
目を見開いた。

幸せ。
彼女は自分と出会って、幸せだったのか。
結局自分は、彼女が望む事は何一つしなかったというのに。

女王を見ていたら、ウシワカの中にある思いが閃いた。
そうか。

…自分は、彼女と出会って『幸せ』だったのか。

彼はその事実に気がついてしまった。

空を見つめて女王が呟いた。
「ウシワカ、最後の時まで…そなたが天へ帰るその時まで、妾は」

女王が、告げようとした。しかし。

意外にも、この者は先程から何かに震えている。
彼女の手に震えが伝わってくる。
彼は何かを言いたそうにしているのだが、歯の根が合わず、言葉が出ないのだ。

「ミーは…ユーのことを」

そうして、絞り出されたその声色は不思議だった。
今までに女王が聞いたことの無い色をしていた。

「ミーと…本当によく似てる、って思ってた」

ウシワカは、ぼろぼろと泣いていた。
「…」
女王は、はっとし、彼を見た。

それは、彼の精一杯の。
「すまぬ」
起き上がって無理に微笑む彼の涙をぬぐいたい。しかし体が効かない。

女王はくうを見つめた。
今となっては自分の、予見の力は殆ど無い。
だからこそ、分かることがある。

これだけは、この者に言っておかなければ。
残しておかなければ…。




そしてその言葉を聞き。
青年は去って行った。

■ ■ ■

平静を装いながら神殿を出たウシワカは、庭に佇んでいた先帝と少し話をした。
彼の後ろには供が静かに控えている。

「あの子は結局…誰も受け入れませんでした」
女王は、今でも独りだった。
強力な神通力を次代へ残すのは女王の務めのはずだが、彼女はそう言った話がある度に笑って断っていた。

「弱音一つ、わがまま一つさえ言わずに責務に没頭して。実の娘ながら、朕とは大違いじゃった。…あれの母に似たのかもしれませぬ」
この先帝は、女王の父親だった。

ウシワカは、父が語る娘の様子に首をかしげた。

「かなり我が儘な性格だと思うけど…いつも泣き言を言っていたし」
初めこそしとやかだったが。明月館を作った辺りからは、愚痴を言われたし、よく八つ当たりで鞠などをぽいと放られた。あれは軽そうだが当たると意外と痛い。
そう言った。
先帝は苦笑した。
「…それはそなたにだけです…。しかし…そうじゃったのか…やっと、分かりました」
「…?」
ウシワカが不思議そうにする。
先帝は微笑んでつづけた。
「失礼ながら…朕は、すでに数百年生きている相手になぜ、あれほど娘が夢中になっているのか、常々不思議に思っていたのです…。老人に恋をするようなモノでは?…と」
ウシワカは黙って聞いていた。

「…ウシワカ殿」
先帝が、優しくほほえみかけた。
ウシワカの肩を叩こうとして止める。

「あなたは、まだお若いのですね。見た目の通りに」
そう言った。

そう言われたウシワカは、いつものように微笑んで言った。
「確かに月の民としてはミーはまだ若い。…いやナカツクニの人と比べても…そうだろう」

先帝は、女王に紹介された時から、この青年を好ましく思っていた。
強力な予見の力を持って生まれた娘が、時折早く会いたいと言うので、何か自分の身内のような気がしていたのだ。
失礼だと思いつつも、自分の息子の様に接していた。
そして、やはり彼はそんな事を失礼だとか思う様な、小さな人間ではなかった。
「朕が見込んだとおりです」
そのつぶやきに、ウシワカは首を傾げたが、ふと何処かを確かめるように見た。

これは未来を覗くときの彼の仕草だった。

そして言った。
「…世継ぎの心配はいらないよ…四年後、ユーの一族にふさわしい者が生まれる。それまでユーが」

「ええ。皆をまとめましょう」
先帝は頷いた。
女王も、おそらくそれが分かっていたから、独り身のままでいられたのだ。
この先帝は、ほとんど都から出たことさえ無い彼女に訪れた幸運を、神に感謝していた。

…その後、先帝はウシワカにたまには酒でも飲みましょう。そう言った。
二人はお互いに笑って別れた。

その様子を皆が感動をもって静かに見守っていた。

だから、その次に起こった出来事を…誰も予測は出来なかったのだ。


■ ■ ■



「そんな、まさか!!」

誰もが、その知らせに耳を疑った。

昨日の明朝、女王は息を引き取った。それは都中を大きな悲しみに色に染めた。
しかし、都人が驚いたのはそこでは無い。

女王は死期を悟り、自らの葬儀の手配もしていた。偉大な女王の崩御の知らせを受け、すぐに執り行われた葬儀には幾人か、姿を現さない者がいたらしい。
先帝もその一人だった。

そしてその先帝が。



両島原の海岸に打ち上げられた、異国の青年を拾って帰ったきたのだ。



先帝は戻るなり、屋敷の者に、「日が昇る直前、死した女王が夢枕に立ったのだ」と青白い顔で語った。

今まさに、ウシワカが両島原で入水しようとしている。妾はいけぬ。最後の術に通力を使い果たし。父上の枕に立つのがもはや精一杯。あの者を!一刻も早く!

それだけ言うと、その愛しい姿は光を残しふっと消えた。

その言葉の通りに、先帝は幾人かを秘密裏に呼び寄せ、海原に向かった。
すると浜近くの漁師小屋に住む者が、ちょうど外に出ていた。
…もしや、何か手がかりを?と思い話しかけると、その漁師は、戸惑ったように言った。

「実は、昨日。日が沈んだ後、あの遠くの岩場の上に、人影…のようなものを見たんです。遠かったし、あんな所まで渡れる人間なんていないだろうし…幽霊だと思って、おっかなくて」

白い着物のソレを見て。それから家で布団をかぶってずっと震えていたが、ふと、明け方の今頃になって、もしかしてあれは本当に人だったのではないのか?と思ったのだという。

「都にいなさる、金の髪の天人さまかと、思って」
ならばその姿をもう一目確かめ拝もうかと…。しかしもう夜が明けてしまった。おそらく消えているだろうから、せめてあの岩場だけでも拝んでおくべきかと家の前に出て考えていたところを今、先帝達に声をかけられたのだと言った。

…連れてきた十人ほどの供達がみな青ざめていた。
金の髪。それは間違い無く…!
しかし、昨日の今日で信じられない。入水…、そんな事する方とも思えない!!
その時。先帝が、普段の様子からは信じられないほどの大喝をした。
「何をしておる!!!はよう探せ!」

先帝達は女王の死を悼むどころの話ではなくなった。

この辺りに詳しいその漁師と共に、居たという岩礁やその周辺、両島原の浜辺を探し。

そして半刻ほどの後。

一人の者が、海岸に打ち上げられた、藻屑のように小さな姿を見つけたのだ。

白い衣が鮮血に染まっていた。手には脇差しを堅く握っている。
黒い鞘が波間に漂っていた。
水もおそらく大量に飲み。意識がない。

とにかく、手当をしなければ!
彼を死なせてはならない!!


■ ■ ■

日が半分ほど上がり、その間も葬儀は進められていたが、一方でバタバタと慌ただしく先帝の屋敷に人や侍医が入る様子に皆が首を傾げていた。
一人の者が、もしや先帝のお具合でも悪くなったのか?と使いに出るらしい先帝の供に聞いた。

「先帝ではありませぬ、今はまだ」
そして駆け抜けていった為、詳しく聞きそびれた。

そして、葬儀が一段落し日が真上を少し過ぎた頃。
ようやくこの驚くべき事態が、二人の側近に伝えられた。
「このことは、決して口外せぬように」
そこからは話は漏れなかった。

しかし、その頃には、当然、列席者に何かがあったらしいと感づかれてしまっていた。
昼少し過ぎ、屋敷に陰特隊の隊員が一人だけ呼ばれた。
偶然それを見て居た貴人達が、そのおかしさに気がついたのだ。

先帝の屋敷に収められる程の貴人の加持祈祷なら、隊長のあの青年を呼ぶのが筋だ。
彼の祈祷には定評があるのだ。
しかし、そうでは無かった。
そもそも、先帝では無いとして、その屋敷に入れる様な者には心辺りが無い。
よほど近しいものでも、女王の死したこの時に、この待遇は無いだろう。
…ここにいる位の高い者達でも無理だ。
そこまでひそひそと話していたとき、一人の者が、あっ、と叫んだ。
「まさか…、いや、もしや。ウシワカ殿のお姿が、…ない」

皆が絶句した。

いや彼が、葬儀に出ないというのは、彼の性分から見ても、それほどおかしな事でも無い。
彼はその拠点を空に浮くおかしな建物に移しているし、近頃あまり都に姿を見せない。
見せないのだが…。

…しかし、万事に洗練され、そつのない彼の事だ。
一目くらいは会いに来るのではないだろうか?

だが。
…まさか。彼の身に、何か?
「そんな、まさか」
皆が、誰とも無く、少し乾いた笑いをする。

しかし、そのまさかだった。

喪中の時というのは、不思議なもので人々の勘が冴え渡るのだ。

確定を避けていた重臣達を尻目に、うわさだけが都人の間を駆け抜けた。


■ ■ ■


話はさかのぼる。

女王と分かれたウシワカは、明月館に戻り、人払いをした。
何もする気になれなかったので、少し苦笑し。…実際には大きな声で笑っていた。
とりあえずもう休もうと湯浴みをした。

私室に戻り。椅子に座って、濡れた髪をぬぐう。
しかしそのまま肘を付き、考える。

自分は、…あの女性を、確かに愛していた。

自分は、彼女と同じく…幸せだったのだ。

「あははは…!?」

そんなことは、許されない、自分が全ての元凶でどれだけの人を殺したと思っている?自分が愚かで無ければこれほど彼女を苦しめず、もっと上手く生きていけた!子供の一人や二人簡単に作り、邪魔なら殺せば良いのだ、ソンナみんなにとって幸せな未来があったはず、予言なんて関係ない。天神族が死んだのは自分のせいだが、はっきり言って、自分のせいでは無い、そう、全てはこの役に立たない自分のせい。ああ、やはり自分が悪いのか。

「アマテラス君…!」

ウシワカはそうつぶやいた。
実際には叫んでいたが。

一時でも、大神以外の者に心を捧げてしまった。
それが許せない。

ウシワカは立ち上がり、おもむろに脇差しを取り。
私室からふらりと出た。

白い着物のまま、彼は誰にも会わず、都を出た。
そこまで彼は自分の行動を自覚していた。

しかし、そこから先はまったく覚えて居なかった。

■ ■ ■


予言、予言。
予言。その通りに行動する。
うんざりだ。
自由が欲しい。生まれてこの方、そんな物にお目にかかったことは無い。
だから彼女を似ていると思い、そのそばで甘えた!
そしていつの間にか愛していたらしいが。
だが、所詮は鏡。
自分の哀れな姿を投影していたに過ぎない。

自由が欲しい。ただの一瞬でも構わない。

何も考えず、何も思わず、絶対に救われたい。
あの娘はすでにソレを手にしようとしている。
それに心底腹が立つ。

…なぜ?

ふと立ち止まる。
それは、自分が幸せだからだ。
彼女に死んで欲しく無い…からだ。
そして、彼女と添い遂げたかったからだ。

「…」

気がついたら、目前は暗い海だった。
…気がついただけで、彼は正気に戻った訳では無かった。

自分は、ココでは死なないらしい。
なぜなら、まだ先の未来が見えるから。
自分の死を予見してはいないから。
…本当にそうだろうか?

死ぬときは誰もが突然だという。
脈々と予言が続いていても、関係無いのでは無いか。
ならば本気で…試してみよう。

月明かりに、逆手に持った刃が輝いた。


■ ■ ■

いつか、限界が訪れる気がしていた。

旅の途中で、女王の侍女からの知らせを受けたイッシャクはアマテラスと共に、都へ駆けつけた。

だが、全くこの可能性は、考えもしなかった!
時折、自分達にだけ見せる弱い姿。それなら大丈夫だと。
ある意味カムイにいる時だけ気を付けていれば、平気だと思っていた。

まさか、ウシワカが都でこんな大事件を起こそうとは!!

どうやら、発見が早かったようだった。
彼は間もなく蘇生した。

しかし失った血液は多く、その肌は死人より青白い。
そして未だ目を覚まさない。

「クゥーン…」
アマテラスが心配そうにしている。

「大神殿、申し訳ございません…イッシャク殿も」
先帝がアマテラスとイッシャクに頭を下げていた。

彼等は、幾度か女王やウシワカを交え会った事があった。気心も知れている。
イッシャクが先帝の心情を読み取って言った。
「…気にすんな、先帝の親父サン。コイツ、昔から…時々アホをやらかすンだ。まあ、俺達の前だけだったんで、…油断してた」
イッシャクは歯がみし、頭を搔いていた。
明月館に本部を移してから、ウシワカはあまりアマテラスやイッシャクに会いに来ることはなくなった。
用があるときや、アマテラスがウシワカに会いたがった時は、都まで出向くのが常になっていた。
彼は、ごく普通に出迎えたし、ここ数年は何も無く。

先帝は食われた天神族達の事を知らない。ヤマトを彼が運んだことも。

イッシャクはもう二十余年も経っているし、ようやく心の傷も落ち着いたか、と思っていた。しかし、やはりまたソレが原因なのだろうか。
…それとも何か別の事なのだろうか。
勝手にウシワカの過去を話すわけにもいかず、イッシャクが沈黙していると。

「…いいえ、我々が、彼を苦しめていたのです」
先帝がため息を吐くように言った。

先帝の言葉の指すところはイッシャクにはよく分からなかった。
「どういう事でィ?」
先帝は先程から涙ぐんでいる。
「朕達は、…皆で彼を、女王の『夫』として扱っていたのです…大神様にのみお仕えする方と知りつつも、その意味を、本当に分かろうともせずに。幾度も…彼を苦しめたのです」
イッシャクは、ウシワカの顔を見た。
「…それは、本人に聞いてみねぇと分からねぇが、そんな事くらいで…」

「生前の女王から彼に送られた衣装、調度品、待遇はまさしく…『夫』に対するモノでした。…彼の人柄に甘え、我々も、少々やりすぎていたのです。ウシワカ殿は口では大神様と言いつつも、本心では我らの女王を愛しているに違いないと。だから女王の為に都に残っていたのだと…幾度も注意したのですが、皆聞きません」
先帝は首を振ってため息を付いた。
イッシャクも。
「ハァ…まあ、コイツも女王が嫌いって訳じゃないはずだぜ」
そこまでされたら、多少は重かったかも…とイッシャクは思ったが別のことを言った。
この都の人々は、結局、女王至上という考えなのだ。

「…しかし、それは、我が身を押し殺して、役目のように都に留まり、娘の我が儘を聞いてくださっていただけだったのです。我らが彼を苦しめていたのです!」

どうやら先帝としては、死んだ娘の我が儘で、ウシワカを都に無理矢理預かっていると言う心持ちだったのだ。
それでも十分ひいきだが…。

「ハァ。まあ、そんなに気にするなよォ…勘違いかもしれねぇし」
本人に聞いてみないことには。

まだ目覚める気配も無いし、先に女王を弔ってやってくれと言うイッシャクに感謝し、先帝は屋敷を出て行った。

その後、イッシャクは、以前ウシワカがアマテラスに対して、どういう思いを持っているのか理解に苦しむ、と考えた事を思い出した。

「ハァ…」
まだ青白いウシワカを見て。深くため息を付いた。

■ ■ ■


今回、事情をいち早くに話した二名の側近や屋敷の者には箝口令を敷いてあった。
それに早朝の事だったのでウシワカが運び込まれるのを見た者はいない。

しかし、先帝が殿上に姿を現すと、重臣達が心配そうにこちらを見た。
女王の墓前なので取り繕っているが、すでにその場はその話で持ちきりだった。
先帝に近い者が近づく。
「あの若者はご無事でしょうか」

「お前、それを何処で」
先帝は少しばかり隠し事が下手だった。うっかり言ってしまった。
そして、しんと静まっていた広間にその声は大きく響いた。

「やはり、ウシワカ殿が…」
「まさか、女王の後を…」
「そんなばかな…」

先帝は青ざめた。
先程、イッシャク殿に、彼の名誉の為に言わぬと誓ったばかりなのに…!
しかし、粛々と儀式が進むので、皆はそれ以上聞いてこなかった。

ようやく棺を霊廟に安置し。もはや重臣達がその場にいる必要は無くなった。
明日まで女王と共に居るのは、侍女やヤマタイ一族の巫女達だけ。それが習わしだった。
こればかりは親と言っても先帝とて男なので、一緒に外に出た。

その霊廟から出ると、先帝の供が待ち構えていた。
「…」
先帝に耳打ちする。先帝はため息を付いた。そしてそして歩き出そうとする。
しかし、周りの視線に捕まった。
もはやこれ以上隠すのは無理という気もするが、先帝は何も語らずその場を去ろうとした。
そもそも、自分の屋敷に運んだのは失敗だったかも知れないが、あの時は気が動転していて、いや、もしかしたら女王の霊が再び瀕死の彼を救ってくれるのではと思い、…運び込んだのだ。
結局の所…全て、自らの失態だった。
供を先に行かせる。

「彼の、…あの方のお志を守れると誓うか。これから先、そう勤めると」
先帝は、重臣達に言った。
それは自分にたった今、課した事だった。娘の為、そこまでしてくれた。彼の為に。

皆が驚いたが、頷いた。

先帝はおもむろに語った。
「…ウシワカ殿は、昨夜、海に入られた」
重臣達はさっと顔色を変えた。

「…彼は、生きているのですか?」
まさか。
女王の死、姿を見せないウシワカ、帝の屋敷に入った陰陽師がいたらしい事、そして医者。
…そこから導き出される結論にはだれもが半信半疑だった。

だが、皆が言っていたそのまさかだったのだ。
問題は…。
「一命は取り留めた。今気がつかれたそうだ」

皆がほっとした。良かった…!
しかしまだ信じられない。
…途端に痛ましい思いがしてくる。
「しかし、どうしてご自害、など…」
「帝は、今から?」
「我々は、どうすれば…?」

先帝を見た。
おそらく、自分達はここで待つことになるのだろう。
そして、先帝と目を覚ました本人が相談の上、今後の対応が決まる。
しかし先帝が重臣達…事情を先に話した側近…ヤマタイの長と貴族の長を抜き七名。

その者達に先帝が重々しく告げたのは、意外な言葉だった。

「…先に言った覚悟の在る者は、朕と共に、屋敷に参れ」

「!」
皆が顔を見合わせた。

■ ■ ■


「ミーが…?」
「…!覚えて居ないのか」

屋敷では、イッシャクが目は開けた物の、起き上がれないウシワカに話掛けていた。
そうして不思議そうに返って来たのがその答えだった。

海の底の綺麗な光景を見た気がする。
それだけ言うと、彼はまた眠ってしまった。
これにはイッシャクは唖然とした。
何があったか知らないが、正直コレでは迷惑のかけられ損だ。

その時、先帝が重臣を連れて…屋敷へ来たと言う知らせが入った。
部屋の外にいくつもの気配がし、イッシャクは焦った。
「何ィ!オイ、帝!ちょっと待った!!」
慌ててふすまから廊下に飛び出し、皆を押しとどめた。

「話が違うぜ!」
イッシャクはプオーと怒った。…見事に皆そろっている。
「イッシャク殿、申し訳ありませぬ…すでに皆の知るところとなってしまいました…」
重臣達は、この跳ねる物体を不思議そうに見ていた。

「…、何か考えがあンだな?あえて全員連れて来たって事は」
だが小さい割に、驚くほどの知性がある様だ。
怒りつつ冷静に人数を数え、状況を把握していた。

七名の重臣に二名の側近を足し、今、彼等はまさに勢揃いしていた。

「いえ」
「ってオイ」
先帝の言葉に、イッシャクが脱力する。

「しかし、これから先のためにもと思い…、今は?」
「また寝ちまった。ハァ…」
その言葉にイッシャクは少し考え、彼等を部屋に通す事にした。
「まあ、寝てるから、静かにしてくれよォ…。話は別の部屋で」

ふすまが静かに開けられる。

それは、はっきり言って衝撃的な光景だった。
皆が顔色を無くし、絶句した。

部屋の真ん中に、布団が敷かれ。そこに青年が横たわっている。
だが、体中傷だらけなのだ。
自ら切り裂いたのか、首や腕に包帯が幾重にも巻かれ。
波に巻かれ岩に当たったのか、顔や体には無数の細かい傷が。
顔色は、はっきり言って女王と良い勝負。

まさしく、かろうじて死の縁から帰って来た、そんな様相だった。

「まあ、顔色は俺が来たときよりはマシになったなァ。…出るぞ」


先帝を含めた彼等は隣の間に集まった。
「ひでぇだろ。っとによ。腹もかっさばいて、まあ浅かったみてえだったケド。咽は忘れたのか?そこまで徹底的にやっといて…さっき、何も覚えて無いと抜かしやがった」
イッシャクがため息を付く。
「おいたわしや…」
「そんな…」
「…信じられない」

「またいつもの癖が出ただけかもな…一発、怒鳴れば正気に戻るだろ」
イッシャクはやれやれと頭を搔いた。

「あの、癖とは…?」
一人が聞いた。
イッシャクはため息を付いた。
これからのこともあるし、まあここらで目的を話した方がいいか…。

「まあ、話せば長いんだけどよ…、まああいつは月の民だ。あの白い狼は…」

イッシャクが語った話を、事情を少しは知っていたつもりだった先帝と、重臣達は驚きつつ聞いた。
まさか、あの青年にそんな壮絶な過去があったとは。そして、今も戦っていたとは…。

真面目に語りながら、イッシャクはだんだん、とてつもない貧乏くじを引かされた面倒臭い気分になっていた。

そして、先帝と重臣達が勝手にウシワカに、これからも便宜を図ると堅く約束し、そそくさと去って行った。
都の方はコレで大丈夫だろう。
あとは、あのアホ共だ。

イッシャクはウシワカが持っていた『あるもの』を探すため、立ち上がった。

■ ■ ■


翌日、ウシワカが目を覚ますとそこに、大きなイッシャクが居た。
イッシャクは明月館の部屋をあさり、ウシワカがガメていたポンコタンの秘宝を探し出したのだった。

「あれイッシャク君?…ここは何処?さっきまで何やってたっけ…」
ウシワカがそう言ったら、いきなり蹴飛ばされた。
「オメェ、海に入って女王の葬式すっぽかした。反省しろ」

「え…?っ」
頭痛がする。
そうだ、何となく都を出たのは覚えて居るが、その先は…。
痛いので体を見ると、まあ見事に傷だらけだった。
海というと…まさか。

「そのまさかだ。このアホ!」
それから二刻半。怒髪天のイッシャクに散々説教された。
何とか起き上がった物の、まだくらくらすると言うのに…。
そう言ったらさらに自業自得だと怒られた。

そして、彼はウシワカに言った。
「お前等、いい加減はっきりさせろ。見たところ、お前の不安定さの原因はソレだ」

「ワウ?」
ウシワカのそばで行儀良く、途中あくびをしてパタンと耳を閉じ眠っていたが…お座りをしていたアマテラスが首を傾げる。
一方のウシワカは、多少心辺りがあったのか黙り込んだ。
イッシャクが続ける。
「アマ公に仕えたい。イヤ、本当はいつも一緒に居たい。ケド天神族を滅ぼした負い目があってそれができない。そうなんだろ?さっさと洗いざらい告っちまえ!!」

「…うっ」
痛いところを突かれた。
実はウシワカはアマテラスの姿絵を見ては毎晩泣いていた。
まさしく、その通りだったのだ。
仲直りがしたい…以前の様に接してあげたい…。
でも、おこがましい。アマテラス君に罪は無くても、自分には大ありだ…!
それはこの都に来てからずっとそうだった。
…いい加減、それは止めるべきかも知れない。

「な、仲直りしろって事かい、ベイビィ…」
「…イラッ…」
イッシャクはにらんだままだった。何を言いたいのか、察しろと言わんばかり。
要するに。その先までか。
ウシワカはイッシャクの視線に多少ビクビクしながらアマテラスを見た。

相変わらず。



なんて神々しい…。


端から見たら、その姿は「早く撫でて!」とワクワクしているタダの犬に見えたが、とにかくウシワカの目にはそう映っていた。
アマテラスのしっぽが畳に当たりバシバシ鳴っている。

ウシワカは、そんなアマテラスに手を伸ばそうとして、うっかり一瞬ためらった。

「コラ」
イッシャクの声に、ウシワカがびくっとした。

イッシャクが、鬼のような形相でこちらをにらんでいた。
そのあまりの恐ろしさに、ウシワカとアマテラスはだらだらと冷や汗を流した。

「お前ェ!!いつまで訳分かンねぇ態度を取って、アマ公を焦らす気だ?このアホ!ぎくしゃくした間に挟まれる、俺の気にもなって見やがれ!!女王なんかに遠慮して、イヤ、それを言い訳にしてまで自分の気持ちを隠してよォ!もう女王は死んじまったんだ、女王の姉ちゃんに迷惑かけんのもいい加減にしろォ!!この、コノコノ!!インチキ野郎!!!」

言い切ったイッシャクはゼーゼーハーハーと息を付いた。

最後の方は締め上げ、蹴飛ばし。ウシワカの髪の毛を掴んでばかばか殴っていた。
アマテラスもとばっちりを食らい情けない「キャイン!」と言う悲鳴を上げた。

「イッシャク君…」
この友人は、本当に。

彼は怒ってそっぽを向いている。


ウシワカは、微笑んでアマテラスを抱きしめた。
「キャワン!」
この感触も、久しぶりだ。涙がこぼれる。
とっても暖かい。
「でも、やっぱりヨダレはノー…!」
ウシワカはキャンキャン言うアマテラスに、涙ごと顔をベロベロ舐められながら、今回だけだよ、と笑って言った。

「ハァ…」
大きなイッシャクが、その様子をため息を付いて見守っていた。


それから二週間が過ぎ、ウシワカはみるみる快復した。
そろそろ床払いをし、明月館へ移動する事が出来るだろう。
しかし。

「アハハ、アマテラス君!コラ、ヨダレはノー!だって」
「ワン!ワン!」

「…」
元の大きさのイッシャクは、今日も憮然と頬杖を付いた。
こいつ等…イチャイチャしやがって。

いや…本来はこのべったべたが正しかったのか。
不安定になるわけだ。
片時も離れないで、一緒の布団で丸くなる。食べ物は分けて食べる。

…やってらんねェ。
「…俺もそろそろ、所帯でも持つかなぁ…」
イッシャクは遠い故郷を思い、深く深くため息を付いた。


■ ■ ■


しばらくウシワカとアマテラスは明月館で過ごした。
そんなある日、ウシワカがぽつりと呟いた。

「イッシャク君、ミー達はしばらくナカツクニを回ろうと思う」
都は自分の件でまだ大騒ぎをしているし。
これは当分出て行けそうに無い。
重臣達が全て口を閉ざしたので、庶民は何か、色々噂に尾ひれを付けて、まれに見る純愛だの、悲恋の末に非業の死を遂げたらしい…だの、好き放題言いまくっている。

「しばらく都に用は無いし…いっそ、このまま十年くらい姿を消して、ある日突然、ひょっこり舞い戻ってみるのも良いんじゃ無いかなぁ?」

「あーハイハイご勝手に。俺は嫁探しでもしとくわ」

ユーの祝言には行くよ、とニコニコと言うウシワカにイッシャクは面倒臭そうに手を振った。
ふと、ウシワカが晴れやかな表情になり。

「ミーは、この國の事を未だほとんど知らないのかもしれない…色々な伝説とか、文化とか、遺跡とかそんな事を調べようと思う。小耳に挟んだ龍神族や雷神族とかにも会ってみたいしね。南の國を見てみるのも良いぁ…」
そう言った。
その足下ではアマテラスがワンワン吠えていた。


出立の日。ウシワカとアマテラスは女王の墓参りをし。
墓が見えなくなるくらい、沢山の花を手向けた。

門に見送りに集まった者達…先帝や重臣やら、お手紙下さい!と号泣する部下達。
そう言った者に見送られ。


「じゃあ、行ってくるよ!」
一人と一匹は広大なナカツクニへと旅立った。

〈おわり〉

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