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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■桜散るまで⑥(おまけ) 【大神】【桜散るまで】

こちらは「桜散るまで ⑤終」の続きです。完結後の補完話みたいな感じ?
女王(ヒミコじゃないです)独白です。良かったらどうぞ。
ほんのりウシヒミ?

■二百年、思い


『その者は不思議。
いつもニコニコしていて、飛んで居て。
たまに笛を吹くのです』

その日まで、妾はそのひとの存在を知らなかった。

■ ■ ■

(この方は、とても陽気なのでしょうか?)
妾はその楽しそうな様子を見て、その隣で微笑む、今より大きくなった妾…その姿を見て。

(ああ、この方のお嫁さんになりたい)
予見ができる妾にとって、この現世はつらい事が多かった…。
持って生まれた強力な神通力。
それは、妾から外出を取り上げ、代わりに沢山の勉強、修練、訓練。
そして…時には厳しい罰を与え。
しかし、彼の笑う楽しそうな姿が見られるのなら…この力を厭うことはしない。
そう自らを励まし、妾は幼き日々を泣きながら乗り越えました。

民の為、この都の為。
妾の贅沢な身の回りの物は全て、租によってまかなわれている。
でも、予見した…彼の為にお守り袋に刺繍する。その未来。
贅沢品よりも、そうして自ら紡いだ物の方が何倍も尊く感じる。
そして実際にそうなのでしょう。
妾は、勉強の合間を、寝る時間を毎日少し削って、侍女達に針を教わりました。

ちくり、ちくり。
(いたっ!)
針はあまり得意では無かった。…人には向き不向きがあるのだと言われたけれど。
それでも。妾は、その時までに針を覚えなければいけない。

幾日かが過ぎ。針はずいぶん上達した。
(これなら…)

「ずいぶんお上手になられましたね。そうです、帯などに刺繍をしてみてはいかがですか?」
侍女に言われ。妾は微笑んで、色々なものを作りました。

刀帯、付け襟、匂い袋、財布、巾着、扇入れ…果ては飾り紐まで。
身につけるあの者を想像する。
…それは幸せな時間でした。

「あの方は、いつ来るのでしょう…」
父上にそう言った。
「…」
父上、妾は早く、彼の者にお会いしたいのです。
そう言う妾を、父上は少し悲しそうに見つめた。

きっと、彼に会えば、幸せになれる。
いいえ、今でも十分幸せです。民に思われ、民を思い。
皆の為に祈祷し、平穏を祈る。

…しかし、それだけではいけないのじゃ。

「父上、今のうちに、備えなければ」
父上は、もう少し、遅くても良いと言ってくれた。
「いいえ。もはや妾が立つしかないのです」
妾が女王になったのは、まだ十三の時でした。
しかし、立派な大人です。
妾は、父上に言いました。

「…心配いりませぬ、あの者が来れば…」
来れば。

来るときは。

厄災と一緒に、彼は来る。

「あ、ああ、…ああ!!」
彼は、笑ってなどいなかった。
すべて、妾の我が儘だった。
父の胸の内で泣きじゃくる妾は、幼き子供だった。

そして。
そのまま月日は過ぎる。


「いよいよ…明日…」
妾は、床に入ったものの、なかなか寝付けませんでした。


■ ■ ■


とん。とその者は庭に降り立った。
「ユーが、この都のクイーンかい?」

「クイーン?…妾は女王です」
肌がとても白い。
この方は…人間なのだろうか。

ずっと見ていた予見の人物。でも、はっきりとくっきりと宝玉の様な瞳がこちらを見る。
いざ目の前にしても信じられない。

「…ソーリィ、女王。ユーに話がある」
「よく、ここへ」
妾は何とか微笑んだ。

「そなたがここへ来る事は知っておりました」

そう妾が言ったら、その者は驚いたようだった。
「これから、できる限りあなたをお助けいたします」
「…」
その者は、黙っていた。
「妾は、この都と、國を守らなければ」

「…ここは冷えます。あの、妾と中に、お入り下さいますか?」
「イエス、…お心使い、ありがとう」
そう言って、その者はすこし微笑んだ。
あの者から『ありがとう』などと聞いたのはソレ一度きり。

そして、殿上に。
彼は居住まいを正し、名乗り。語り始めた。

…それは、到底妾には、計り知れない話でした。
妾の力では、全く視ることの出来ない、天の國、天の神。天人達。
そして、その全てを壊したのが、この者。

「女王、貴女の力を…貸して頂きたい」
そう言って、深く頭を下げた。
妾が言うことは一つ。
「分かりました。そなたが天へ帰るまで、大神を天へと返す時まで…その手助けをしましょう」

「ただ…一つ、条件が」
「何だい?ミーに出来る事なら何でもしよう」
その言葉は、重かった。

もしこの時に夫になってくださいと申したら…。きっと、なってくれたのでしょう。

「笛を…、聞かせてもらえませんか」
妾は微笑んだ。
そして、ウシワカも。

それから、日々は楽しき物でした。
でも、時折。
ウシワカが無理をしているのが、伝わってくるのです。
笑っていれば、隠せていると、彼の者は思っているのでしょうか。
彼を思って、幾度も泣きました…。

「女王様、もし…、ウシワカ殿の事がお好きなら、女王様から、思いをお告げになってみてはいかがでしょう?」
在るとき、見かねた侍女が控えめに言った。
「…妾から?」
それは、晴天の霹靂だった。
「ええ、このまま思い悩んでいては、お体を崩しますよ」

「おそらく…駄目と分かっているのです。それでも告げよと?」
妾は言った。

「…言わないよりは、言った方が」
「人間、好かれていると知ると、その者の事を好きになると聞きました」
「あの者は、女王のお気持ちにまだ気がついていないのやも知れませぬ…」
侍女達が口々に言う。

「…では、そなた達も、立ち会ってください。一人では…とても…出来ませぬ」
考えただけで顔が熱い。

その時、ふと未来が見えた。
「…あっ!?もうすぐウシワカが飛び込んで来てしまいます!何と言えば良いのでしょう?」
妾は大いに焦った。
なぜあの者はこんな所にわざわざ飛んで現れるのか。

「私の事を、どう思いますか?コレだけで十分です」
…そうなのだろうか?
「後は、『あどりぶ』です!女王様、頑張って下さいまし!」
「あ、もう来る!位置に付かねば…!」
妾は、慌てて部屋から続く回廊に出た。

深く息をすう、はく。…よし。

…結局、ものの見事に失敗した。
そしてしばらく泣き寝入りする羽目になり…それから、あの者はどこか余所余所しくなってしまった。

「うしわか…うう、シクシク…」
枕はスッカリ涙でぬれて。

「女王様…おいたわしや」
「何か、良い方法は無いものか…?」
妾は侍女に聞いた。
「もう、いっそ、先帝様に彼を婿にして欲しいと言ってみては?」
「しかし、彼の者は…」
「異人でも、女王様からの言なら、誰も文句は言いませんよ」
「貴族と同じくらい、しがらみのない男というのは、「ぽいんと」の高いものなのです!」
「それに彼の能力なら申し分無いはず!」
侍女が口々に言う。
「そうでは無くて…」
妾は困った。
「早速、婿を選びたい所存を伝えて参りましょう」
「えっ…」

妾は出て行った侍女達にため息を付いた。
…妾も、嘆いてばかりはおられぬ。彼の者は、もう都に未練はあるまい。
いつここを去ろうか、そんな事を考えて居るのでしょう。
しかし、妾達には…。
「…今しばらく、我が儘を言わせて貰おうか…」
すっと、背を正す。
しかし直ぐに、ため息を付く。
「ああ、ウシワカの腕に抱かれたい…」

そう言ったら、それを、いつの間にか妾の部屋にいた父上に聞かれていた。
妾は引きつった。
「ようやく婿を選ぶ気になったと聞いて、来てみれば…全く」
「…むぅ」
「お前は、本当に母に似ている。女王…ウシワカ殿をあきらめる事は…できるかの?」
「彼より…良い者が居れば。もう、従いましょう。…皆で探して下さい」
妾はそっぽを向いてそう言ってしまった。

色々、候補が挙がってきた。
妾は、面談の様子を隠し部屋から見ていた。

…、そうきたか。
重臣達は、妾が面食いと踏んで、とにかく容姿の整った者を集めてきた。

まずは一人目。

重臣の一人が、隠し部屋から覗く妾の隣で、その者についての情報を読み上げる。

「まず、この方は、親衛隊の中でも、若いのに筋が良いと言われております。気質はどちらかと言えば愛される弟タイプ、家族構成は、祖父が一人。両親は早くに他界して、とても苦労したそうですが、そのおかげで人柄も良くなり、家事もこなすことが…」

「ぅぬ…」
「お、少し気になりますか?」
問答を四半刻くらい聞き、妾は見切りを付けた。
「いや、少し趣味が合わない気がします。次じゃ」
次の者が入ってくる。
「この方は、貴族の学者の家系に生まれ、英才教育を受けております。その才気はすばらしく…」
「むむ…、少し不健康そうです…次!」
そうして、二十人ほど影に隠れ、朝から面談した妾は、ヘトヘトになった。

「はぁ…次!」
もはや数秒でそう言っていた。
「次は…ああ、この方は、よくありませんな。何処の出かも分からぬし。きっと田舎者でしょう。さっさと追い払いましょう」
「ん…田舎者か。なら仕方無いの」
妾は菓子をつまみながら言った。

「ヤレヤレ、一体何の用だい?ミーは忙しいんだけどなぁ…」
「!!!」
がばっと、穴を覗く。ついに来たか!
「ついに来たか!!重臣達よ!良い男を見つけておるでは無いですか!!」
「…女王様」
呆れた様子の重臣に妾は言った。
「なるべく引き延ばしてください、勅命です」
「…ええと…女王様…一人の持ち時間というモノが…」
「妾達はお互いの事をもっと知らなければいけません…!彼の秘密をできる限り暴くのです。…父上に!この紙を!」

妾は、侍女を呼んで紙を持たせた。


(くす…)
そんな事もありましたが…結局、妾の思いは成就せず。
程なく体を崩しがちになってしまいました。
もとより、丈夫な方では無い。覚悟は出来ていましたが…。
やはり思いは募るばかり。

何より、妾が死した後のあの者が心配でなりませんでした。
大神と約束した手前、天へと帰るその時まで。あの者を守らなければ。

妾は考え、策を練りました。

―ウシワカは、生きとし生ける者達に予見を与える。
その者の未来を覗き、見通す―

(…ならば、妾が死したら?
死んだ者には未来はあるまい?)

その考えに囚われた妾は…迷いに迷って、その道へと進んで行きました。
魂を留めるのに、自らの残り少ない命をさらに削り、残り全ての通力を使うなど…。
女王としてあるまじき…民への裏切りに等しい愚行。
妾は何とおろかな…、民に申し訳が立ちません。
けれど、あの者が好きだったのです。

それでも、最後まで迷っていました。




けれど…妾の死の床で…あの者が泣いているのを見たら、ああ、決して後悔はしない、妾の道は正しい。これから先も、霊体として絶対に守ってみせる。
…そう覚悟を決めてしまったのです。

あの者が去った後、妾は起き上がり仕上げを行いました。
この事を知るのは、妾の侍女一人。
そうして妾は死に…。

…。
…。

それがまさか、あのような事になるとは。悔やんでも、悔やみきれません…。
妾は一体、あの者の何を見ていたのか…。
何とか彼を助け給えと請願し、泣く事も出来ぬ体で泣き…。

…それからもう二百年。

そろそろ妾の魂が消える時が来たようです。
私はもう想いを尽くしました。
死してなお、見守る事が出来て…さいごまで。本当に幸せでした。

然れども、そなたは、あの男を愛してはいけません。
そなたは、妾と…同じ事をしてはいけません。

…いいですか?ヒミコ…?


■ ■ ■


「こんな方法が、あったのでおじゃりますか…」
千里水晶の前で、ヒミコは亡霊の存在した場所を眺めた。

胸の鼓動が早くなる。
ああ、もし妾が、妾にも…。
妾にもそのような事が出来たら。


…それは夢物語だった。
二百年、女王の魂を受け入れ守っていたこの千里水晶は…ヒミコと共に消滅する。
彼女に出来る事と言えば他の女王達と同じく、意趣返しにこっそりと、ウシワカを驚かす算段をする位。

死してなお、しがみつく事はヒミコには出来ない。
だけど、それも悪く無いと思ってしまうのは。

「ウシワカ、好き…でおじゃる」
涙が頬を伝う。

〈おわり〉

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