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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■盟友⑤ 【大神】【長編】【挿絵あり】

■大神(長編) 盟友(大神) 小説(挿絵あり) 小説

※あれ、この話挿絵付きだっけ!?(忘れてた)…一応付けときます。

カイポクが少々かわいそうですが番外編でフォローが入る予定です。もう気がついてる方もいたかと思いますが、このシリーズは二号さんだらけです。※この辺か次回くらいから多分捏造が酷くなっていくのでご注意下さい。

■盟友⑤

 

「おやすみ、ピリカ」

私は、すでにぐっすり眠っていたピリカを布団に入れた。風邪を引かないように暖かい布団を着せる。…今日は寝られそうに無かった。

まさか、こんな事があるなんて。
オキクルミとサマイクルと私。
いつまでもこの村で一緒にいられるものと思っていた。

…彼は、私の事をどう思っているのだろう?
私を置いて、不死になって、村を、このカムイを離れていってしまう…?

私と一緒になってはくれない…?

初めこそ、おもしろ半分に聞いていたけど…彼の話の途中からそればかり考えていた。

サマイクルもその場に居なかったら、私はどうしていただろう?
私は、いてもったっても居られず、家の外へ飛び出していた。

(お前の足には、霊力が宿っているのかもしれんな)
昔、オキクルミにそう言われた事があった。彼が認めてくれている。
褒められたことが嬉しい。結局は私はいつもの照れ隠しをしてしまったけど。
…彼は、ぶっきらぼうだけど、いつだって優しかった。

雪道を一気に駆け、オキクルミの家にたどり着いた。つい先程までぱらついていた雪は止んでいた。

…何かがおかしい。もしかして、彼はいない?

家には火が入っている様子が無かった。

私は人の姿に戻り、おそるおそるオキクルミの家に足を踏み入れた。
やはり、誰も居なかった。灰の様子からして火を消したのはそれほど前ではなさそうだ。
そう、たぶん私たちが帰ってから直ぐくらい。

入れ違いになった…?

ここから行くとしたら村しかない。でも、ここから村へは一本道のはず…途中で会うはずだ。

…意識して違う道を使ったりしない限りは。

私は、いやな予感がした。薄暗い中ふと足下を見ると、あの小瓶が転がっていた。

まさか!?

はじかれたように手を伸ばす。

中身は…よかった、まだ入っている!

オキクルミはたぶん…きっと、入れ違いにサマイクルの元にでも行ったのだろう。
彼は、迎えが来るのは明日の夜だ、と言っていた。
それならまだ話せる。

なんとしてでも止めなければ…!
私はまだオキクルミに何も伝えてさえいないんだ…!

私は、彼を探しに出ようとした。その時、ふと気がついた。
「迎え…?」
彼はそう言っていた。…まさか。

私は、おそるおそる、小瓶の紐を解いてみた。
「………これ…!!」

中身は、ただの酒だった。

■ ■ ■

…猪突猛進のこいつにしては珍しい事をしたものだ。
サマイクルは感心していた。

「…もうすぐ迎えが来る」

ラヨチ湖のほとりで、オキクルミはそう言った。

「嘘をついていたのか」
サマイクルは驚いた。しかし、納得した。どうりで必要以上に落ち着かない様子だった訳だ。カイポクは話の途中から上の空だったが。
「一応、嘘では無い。現に日付は変わっている」  

カイポクと分かれた後、サマイクルは長老にこのことを話すか否か考えていた。
そこに当の本人が尋ねてきたのだ。

「この湖も見納めか…いや、この國もか」
オキクルミは薄氷に包まれたラチヨ湖を見てつぶやいた。

「本当に、行くつもりなのか?」
サマイクルはオキクルミに話しかけた。風が、また出てきた。
「…こうなることは必然だったのだ、あの後…やつが―」
「―…?雨か?」

オキクルミの言葉は風にかき消され、サマイクルは空を見上げた。
(流れ星―?)

星かと思われた物体は地上に近づいて来ていた。かなりの速さだった。
その時、遠くにもう一つ流れ星が見えた気がしたが、一瞬の事で、すぐ見えなくなった。

粉雪が舞い上がり…
意外なほど静かに、その物体は着陸した。

「お答えをいただきに参りました。月の女王、カグヤと申します」
カムイの大地に降り立った少女は、しとやかにそう告げた。

■ ■ ■

サマイクルは、初めて間近で見る月の人間に驚いていた。空を飛んできた鉄の塊にも。
…黄金色の髪、奇妙な着物…見たことの無い目の色。
肌は雪のように白かった。

「…遠いところをよくいらした…」
我に返り、それだけ言うのが精一杯だった。

「!!…、お騒がせしてしまい、申し訳ありません…あの、直ぐに去ります」
カグヤはサマイクルに気がつき、慌てて頭を下げた。
そして、真剣な面持ちでオキクルミに向き直った。
オキクルミさん」

「一緒に来ていただけますか、それとも…」
カグヤは、やや堅い表情でオキクルミに問いかけた。
「…こいつともう少し話す間はあるか?」
オキクルミはそれには答えずに逆に聞き返した。
「えっ!…あ、はい、少しは。…あの」
カグヤは何か言いかけて、結局そばに控えた。おそらく、返答が気になるのだろう。
アセアセと落ち着かない様子だ。

そんなカグヤを他所にサマイクルはオキクルミの言葉を待った。
オキクルミは、何かを思い出すように遠くを見つめた。
そして、フッと笑った。

「結局…ヤツに上手く乗せられたのかもしれん」

「だが、この命はもとよりアマテラス達に助けられたものだ。…その恩を返す時が…いや、罪を償う時が巡って来た…そう思うことにした」

オキクルミが、今また氷に包まれているラチヨ湖を眺める。
玄冬の蝕を思い出しながら。
「…一年前、俺はあの船に乗り込もうとしているアマテラスを見て、その先に、俺達凡人には立ち入る事が許されない神々の領域があるのだと直感した。それは正しかったと思う。だが…他人事だと思っていたら、まさに我が身に降りかかってくる事だったとはな。全く、開いた口がふさがらないとはこのことだ」
ククク…と笑うオキクルミは楽しそうだった。

「この剣は持って行くぞ」

「…おい。どさくさに紛れて。…それは本来カムイの物だぞ。貴様の一存で動かして良い物ではない。しかも明日は山興しだ。無ければ格好がつかん」
「チッ…。仕方ない」
オキクルミはクトネシリカを残念そうに見つめた。

「あの…、ご心配には及びません」
二人の側いたカグヤが口を挟んだ。
「ウシワカさんに言われて、代用品をお持ちいたしました。外見は多少違いますが、性能的には同じ物です」
そう言って、ロケットから剣を取り出した。

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「…持って行け」
サマイクルは、ため息をついた。反則だらけのこの状況ではもう致し方ないとあきらめたようだった。

「サマイクル、すまんが明日カイポクをなだめておいてくれ。…おそらくもう帰っては来られん」
「では、本当に、来ていただけるのですね…!」
カグヤがほっとしたような笑みを浮かべた。

「フン、とっとと行け。全く…いつも面倒事ばかりおしつける」
サマイクルは呆れたように手を払った。

幼い頃から、ずっと一緒に育ってきた。
もちろん、カイポクがオキクルミの事を好いていると言うことなど百も承知だった。
オキクルミの方もまんざらでもないと言う事も。

だが、どうせ誰にも止めることはできまい…。

この村を共に守る。
そんな決意を固めやっと一年、オキクルミはまた、全てを置いて出て行く。

そして結局、それが、いつも正しいのだ。

…よし、カイポクの代わりに一発殴っておくか。

「あの、そろそろ…」
サマイクルの不穏な思いはカグヤの声にかき消された。
「では、後は頼んだ」
オキクルミは言うが早い、さっさとロケットに乗り込んだ。あるいはサマイクルの周りを漂う不穏な空気が見えたのかもしれない。
その様子を見たサマイクルは、最後のあがきを試みた。

「だが、カイポクの事だ。あの足で天まで駆けかねんぞ」
その時のことを考えると、少しは我も溜飲が下がるものだ。
そう言おうとしたが、笑ってしまった。
「グッ…」
オキクルミは思わず声を上げた。本当にありそうで困る。
それを聞いていたカグヤが笑った。
「ふふふ、では、行きましょう」

ロケットはオキクルミとカグヤを乗せ、飛び立った。
にわか雨のように水滴が落ち、サマイクルは先程の雨はこれだったのか…
と的外れな感想を抱いた。その日の星空は綺麗だった。また、雪がちらつき始めた様だった。

「…!オキクルミーっ!!」

カイポクの声が聞こえ、サマイクルがはっと振り返る。
彼女は結局、間に合わなかった。


「絶対に!私の事を忘れないで……!!」

■ ■ ■

オキクルミはもうあの薬を飲んでいたんだ…!

私は、必死で走った。ラチヨ湖に向かう。
まだ分からない、けど、彼がもし嘘をついていたとしたら?
いや彼は、嘘はつかない。けど本当に、ほんとに偶に。こういうことをするのだ。
何か目的の為には。

「…!」
足が、思うように動かない…
いつしか、私は、仮面の下で泣いていた。

…私は、何時だって、彼の無事を祈ることしかできない!
いくら足が速くても、絶対にオキクルミには追いつけない…!!
雪の上に膝をついてしまう。

それでも、せめて、今は行かなければ。
彼とは、きっと、もう…

結局、私は間に合わなかった。
それでも、叫ぶ事はできた…



また雪が降りだす。


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