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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱船ヤマト1 月 【大神】【長編】

月滅亡を捏造。

※このシリーズはずっとウシワカが語りです。

 

■箱舟ヤマト1 月

月の民っていうのは、愚かな、忌まわしい種族だ。

さらに長命だから始末に終えない。


ミーが生まれた時にはすでにいくつかの勢力が争っていた。

そんなご時勢だったから予言の力を持つ者は恐れられ、ミーもずっと命を狙われていた。
神通力をもつ一族にかくまってもらっていたんだけど、まあそいつらもろくでもなかった。

結局、売られてしまった。

まあ、その理由も、奴らの実験につきあうのがイヤになったミーが、月が滅ぶ、皆死ぬって言う生まれてからずっと見えていた予言をしてしまったからなんだけど…。

そして連れて行かれた場所は、なぜか月の王宮だった。

しかし、そこにいるはずの王族は全て一室に閉じ込められていた。
…といっても、王と王妃、幼い王女、あとは家来だけだったけど。
ミーはついでに同じ場所に押し込められた。どうやらまとめて殺す気らしかった。
この様子では、もうすぐにでも始末されるのだろう。ミーはまあ、それもナイスかと思った。
どうせそいつらも…直ぐに死んでしまう。予言の時が近いのが分かっていた。

王は、瀕死の重傷だった。王妃と、幼い王女がすがりついて泣いている。
家来は呆然としていた。
見ていて気持ちの良い光景ではなかった。幼い王女が昔の自分に重なった。

その時、未来が見えた。

ミーが、その王女を脱出ロケットに押し込めている様子、そして、一人方舟を動かす様子。
…ミーだけが。つまり、他の者は殺される…?
見たところ、他の者は、女や書記官ばかりでまともに戦える者はいなさそうだった。
戦う者は先に始末されたのだろう。
ミーは、ずっと刀が使えることを隠していたから、うっかり混ぜられたようだった。丁度、懐には笛を模した武器があった。あ、コレは実は親の形見なんだけどね。
本当に、愚かな連中だった…。

とにかく、時間がない。ミーはまだ生きている王妃に話かけた。王は事切れていた。
「王女は、助かるかもしれない。ミーが脱出ロケットに乗せる未来が見えた」
その時には、もう、部屋の外に無数の足音が響いていた。
「!」
王妃は驚愕して見つめた。他の者はその足音におびえ、聞いていないようだった。
「ロケットは何処にある?」
「…東の、竹林の光る竹の下に。解除コードは…!」
その時、ドアが開いた。
「きゃぁあああ!」
悲鳴が響く。奴らが入って来た。
「早く!」
ミーは王女を抱え、刀を抜いた。
「貴様!?それは!」

「月は滅ぶ!!その未来は変わらない!!なのに貴様らはまだこんな事をするのか!!」

ずっと感じていた怒りだった。月のもう一つの王族に生まれ、しかし親族を殺され、殺した奴らに飼われ。そこから逃げだし、かくまわれ、またくだらない実験の対象となった。結局、自分の予言は、何のためにあったんだ?

ここにいる者…、全員助ける。

「言ってなかったけど、ミーは強いよ。解除コードを!」
「『ササベキョウ』です!王女を頼みます!」

ミーは、光剣を手に、戦った。あっという間に、死体の山を作る。
恐れた奴らは逃げ出した。そう言えば、人を殺すのは初めてだった。
「他の奴らも始末する!ユー達は逃げるんだ!!」
部屋の外で戦い、部屋の中の者に、声をかけた瞬間だった。

轟音がとどろいた。

建物の照明が消える。直ぐに足下に非常灯がつく。
「コレは…?何が」
「おおお!!」
その時、奴らが歓声を上げた。
「ついに目覚めたか!」
「とこやみの、すめらぎ!!」

…今思えば、奴らは、アレに利用されていたのかもしれないね。

「タカマガハラへ!」
「こんなところに、もう用は無い、引き上げるぞ!」
ミーはとりあえず切り捨てた。
一人を捕まえ、尋問する。
「とこやみとは、何なんだ!」

「知らない」

ぞっとする、答えが、返って来た。
知らない、だと!?
とりあえず、そいつは切っておいた。
「…」
敵は引き上げ、辺りは死体が転がるだけになった。
ミーは、予言を変えられたのか…?
そう言えば、抱えたままの王女は震えている。
「ああ、ソーリィ…、プリンセス。立てるかい」
床に下ろした。

王妃が駆け寄ってきた。
「ああ、カグヤ姫!」
「母上!」
「ああ、ありがとうございます!」
暗い王宮の回廊で、皆に感謝を述べられる。
「ノー、まだ油断出来ないよ、とこやみのすめらぎ…いやな予感がする」

「…、貴方は、まさか…?」
王妃が言う。かつて、この國の片隅においやったミーの顔を、覚えていたのだろうか?
しかし、そうこうしているうちに、王宮を衝撃がおそった。

その階は、崩れた。

■ ■ ■

王宮の外は、もはや火の海だった。空は暗く、嵐が吹き荒れる。
その中心にいたのが…常闇だった。

ミーは、泣き叫ぶ王女を抱え、生き残った者、…十名に満たなかったが…と東の竹林に来た。
光る竹に仕込まれたパネルを開き、コードを入力する。
埋まっていたロケットが姿を現した。
「…一人用か。王女」
そのロケットは、コールドスリープ機能の付いたものだった。…行き先は、分からない。
ミーはカグヤを下ろした。
「ミーは、王宮に丈夫な結界を張る。ユーはいったん避難して、また必ずココに戻ってくるんだ。死んでいった皆とのプロミスだ。…オーケー?」
「イヤです!皆で!…いいえ!私も残ります!!」
彼女は涙を払い、そう言った。その姿に昔の自分が、やっぱり重なった。
「…良い子だ」
ミーは彼女を抱きしめた。そして、気絶させた。

王女を乗せたロケットは、無事に飛んでいった。
しかしボサボサしている時間はない。
「ヤマトに!…生き残った者を、脱出させなければ」

走り、道すがら聞いた。
「ミーは予言で見ただけだ、ヤマトは何処にある!?」
この王宮に来たのは今日が初めてだった。
「救いの箱舟は、北の祭壇です!」
途中、幾人か生き残りを見つけた。怪我をしている者はミーや他の男が背負った。
他の者を捜索する猶予は無い。今も王宮は攻撃を受けて崩れ、タタリ場が迫ってきている。
結界を張ったところで、正直、中に閉じ込められた人が生き残れるか分からない。
常闇もそのままだ。どこかに脱出するしかない。

王宮の庭から祭壇のある森が見えるところまで来た。
皆の顔色が悪い。
…息が苦しい。
この辺りはタタリ場に包まれ始めていた。

「シット!タタリ場が…!!この先、進めるのか…!?」
ミーは何とかなる。しかし、他の者は?
祭壇の周りの森を囲む、瘴気が見える。方舟はその奥深く…、ここから、見えない。

「ウシワカ様!あなただけでも、お逃げ下さい!」

突然、名前を呼ばれ、振り返った。
書記官の一人が、ミーを見上げていた。

ミーのことを、知っている…?

他の者も。ミーを見つめていた。
女の、一人が言う。
「…王女様を、救って下さって、ありがとうございます…!」
また、一人が。
「私達は、王と王妃の元に参ります…」
そして、また。
「王族の、貴方様がお逃げ下されば…思い残す事は、ございません」

「そんなのイヤだ!!皆で…」
思わず言って、はっとした。
自分は…カグヤと同じ事を言おうとしている。あの、初めて会った従兄妹と。

背負っていた者は、事切れていた。

■ ■ ■

「今から張る結界は、五百年は持つ。何も通さない…。常闇の攻撃、タタリ場も。だが、ミーが解くまで出る事は出来ない」

使える入り口を見つけ、皆を中に入れた。事切れた者も。
瘴気が、迫っている。
この結界は、もともと、人を閉じ込める為の術だ。
「ユー達は…、そうだね。王女が戻るまで頑張って。ミーはどうなるか…そもそもヤマトってちゃんと動くのかい?…まあいいか。あの竹藪辺りはカグヤが降りられるように…何とかやってみる」
自分の髪を数本抜き、編んだものとミーの血で複雑に術を組みながら言う。
恐ろしく難しいが、やるしかない。カグヤと血がつながっていて良かった。
王宮には、おそらく自活できる設備も有る。無事かは分からないが。

後は、笛を使って、ミーの全ての神通力を注ぐだけだ。
笛を取り出す。

「…はい、ありがとう、ご…」
女が礼を述べようとする。
しかし、突然その女が、一人で飛び出した。

血しぶきが、飛ぶ。

「!!?」
他にも、幾人か。出て来た。
ミーは、もう術式に入ってしまい振り返える事が出来ない。
「なにが―」

「ウシワカ様!早く!」
「妖怪が!ぐわぁああ!」
「きやぁああああー!」
「うわぁああ!」
ミーの背後で悲鳴が響く。見ていた者が、駆け出そうとした。
「来るなぁ!!!」
とっさに叫んだ。
そして、全霊を込め、笛を奏でた。

この場に似つかわしくない、涼やかな音色があたりに響く。
途中、何かに背を切られ、足に噛み付かれたが、無視する。

髪が宙に浮かび、長い糸になり、王宮を囲む。

上手く行った…!

「はぁ、はぁ…!はぁっ」
群がって来た妖怪をなんとか始末し。
ひざを付いて、息をする。そしてようやく横たわる数人を見る。
息のある男が一人いた。
「しっかりするんだよ、ユー!ヤマトに…」

その者を背負おうとしたら息絶えた。

「シット!」
ミーは地面を殴った。
結界を張ったが、遅かったかもしれない…!
奴らの姿はまさしく、月の昔話にある妖怪そのものだった。
もし、崩れた王宮の中に、妖怪が入り込んでいたら…!
「ユー達!妖怪が中に入り込んだかもしれない!!早く安全な場所を探すんだ!行って!!」
「…はいっ…」
残った者達は青い顔で頷いた。そして、去って行く。
…女性、ばかりだった。
「どうか、無事で…」
ミーの声が、闇の中にむなしく響いた。

そしてミーは、タタリ場の中を一人、歩いていた。
時折襲い来る妖怪。
気配にむかって剣を振るう。
息が苦しい。目はあまり役に立たない。
神通力も殆ど使い果たしてしまった。
…全く自分の神通力には呆れるばかりだ。
この先も、結界は五百年は持つ。例え王宮の中身が妖怪だけでも。

「っ」
何かにつまずく。
…死体。妖怪にやられたのか、瘴気で死んだのか。
ヤマトに近づくにつれ、ソレは増えていった。
そしてそれを、妖怪が嬉しそうに喰っている。

だがミーを見つけると、愚かにも飛びかかってくる。
無論、切り捨てた。

そしてついに、ヤマトの元にたどり着いた。
祭壇に剣が収められ、そこから虹の橋が、かかっている。
扉は、開きっぱなし。
…誰か、乗っているのだろうか?
あるいは、妖怪が?
なぜか、入り口の下にはココまでたどり着いたらしい者が何人か、折り重なって倒れていた。
入れなかったのか?…結界でもあるのか?

ミーは、祭壇の剣を見つめた。おそらく、コレが扉を開き、虹の橋を架けるものだろう。
これは、必要かもしれない。
しかし、抜いたら、虹は消え、確実にあそこまでたどり着けはしないだろう。
だが。

「フフフ、アハハハ!!おあいにく様!ミーは、飛べるんだよ!!」

その剣を抜き、ミーは方舟ヤマトに乗り込んだ。
中に妖怪がいたら、全て切り捨てる覚悟で。
弾かれるなら、結界ごと切るつもりだった。

舟はミーだけを受け入れ、扉は静かに閉じた。

〈おわり〉

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