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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱船ヤマト5 タカマガハラ④ 【大神】【長編】

そのうち天岩戸の中限定ですが筆神達も出てきます(全部外に出したら絶対集収つかない…)あと脱線しまくりの番外編とかも…。

今日はここまでです。

 

■箱舟ヤマト5 タカマガハラ④


「へぇ、ここだったんだ」

その日、ミーはアズミと書庫に来ていた。
ミー達がいつも使っている建物に隣接して建っているその円筒形の建物には、書物や巻物が天井までぎっしり詰まっていた。真ん中に簡素なテーブルが置かれている。
ミー達の建物の広間より少し狭い。

「ここは、初めからこの場所に建っていたんですよ」
まず書庫があって、そこにくっつける形で今の建物を建てたのだという。
昔、アマテラス君は前任の老人と適当に村をぶらついていたらしい。
「ほとんど放浪者のようでしたね」
森で野宿したり、その辺で寝たり。お風呂に入らなかったり。さすがにそれはアズミ達には真似できない、布団で寝たい!頭洗いたい!テルマエ最高!…ロマエって何?という事で交代に際して天神族が総出でここを作ったのだという。

「あ、辞書」
ミーはタカマガハラの辞書を見つけた。あるんだ…こんな物。
それは殆ど使われていないようだった。
「ココには、タカマガハラの歴史を記した物もあるんですよ」
それは興味深い。文字をマスターしたらまた来よう。
ここで勉強しても良いが、少々埃っぽいので、あまり勉強には向かないかもしれない。
他の本ばかり読んでしまうかもしれないし。調べ物に使う分には良いが。

「鍵は月の方に預けておきますね。いつでも使って下さい」
アズミはもうココの本は読み尽くしてしまったのだと言った。
たまに読み返しにくるくらいだと言った。
「サンキュー」
ミーはいくつかの本を持って書庫から出た。

アズミは、村の様子を見回りに行くとかで、まだ言葉が話せないミーは今回は遠慮した。
仕事?の邪魔をしてはいけない。もう少し言葉を話せる様になったら一緒に行こう。
まあ、それほど時間はかからないだろう。ミーがそう言うと。
「あら、お気になさらなくてもいいんですよ。皆も月の方に興味津々ですから」
アズミは笑って飛んでいった。彼女は収穫された野菜や地質の管理もしているらしい。
ミーは天神族の骨格ってどうなっているのかなぁ…なんて思いながらヒラヒラと手を振った。

「ン?」
丁度良い木陰を見つけた。ココで辞書を読もう。
季節は今、初夏。タカマガハラは風が良く通るので過ごしやすい。
ページをめくる。

ミーがここに来てからだいたい三月が過ぎた。

言葉は毎日必死に勉強した甲斐あって、聞くだけなら問題なく理解出来るようになってきた。
後は発音だが、陰陽術の訳の分からない呪言に比べれば楽勝と言っていい。むしろ、月の言葉より明らかに音が少ない。これはラッキーだ。逆なら大変だっただろう。
そんな事を考えつつページをめくっていたら読み終わってしまった。
さて、もう全部頭に入った。
賢く産んでくれた両親には感謝しなければ。

そう言えば他にも本を借りてきた。辞書の近くにあったものを、適当にタイトルだけで引っこ抜いたが…まあ順に呼んでいこう。

『正しい犬のしつけ方』
『犬のきもち 11月号 ~日本犬特集~特別付録☆柴犬カレンダー付き』
『我が子に着せたい!月のカワイイ子供服』
名犬ラッシー

あっという間に読み終わった。大変興味深かった。今後の参考にしよう。
しかし…11月号の付録が失われていたことは絶望した。
ミーの物を持って行ったのは一体誰だ?
…まあそれは良いとして、かなり時間が余ってしまった。

今日はアマテラス君はどこぞに出かけてしまったし。
やっぱり、昨日彼女の真骨頂を食べてしまった事を怒っているのだろうか?
激マズ!って言ったのがいけなかったのかもしれない。

…あんまりにも美味しそうに食べるので、ちょっと囓ってみただけなのに…。

自分の罪を思い出したら泣けてきた。だがもうやらかした事はリセット出来ない。
少し前に行ける便利なアイテムなんてこの世にはおそらく存在しないし…。
もしあっても大変使いにくい代物にちがいない…百年単位でしか飛べないとか。

「おや、月の方」
そんな事をもやもや考えていたら、向こうから歩いてきた人物に声を掛けられた。
スサドだ。
「Hello」
ミーが月の言葉で答える。
スサドもミーの勉強を手伝ってくれたので、ミーが聞くだけなら出来ると分かっている。
「どうでしょう、ご一緒に、今晩飲みませんか?」
酒を見せて言ってくれた。ちゃぷん、と音がする。
「AHAHA!Yes.」
ミーは笑って言った。それは面白そうだ。いろいろ聞きたい事もある。
「マルコも一緒ですよ。ふふ、男だけで飲みましょう」
「OK.thanks!」
どうやらマルコも入れて男性陣で飲むらしい。
ミーが頷くと、スサドは、では夕食後、と言って去って行った。ミーも手を振り返した。

時間が空いてしまった。ミーは仕方が無いので、地面に小枝で文字の練習をした。
『慈母アマテラス大神』と三千回書いた。その文字は大分上手になった。
日が落ちてきたのでそろそろ帰ろう。夕食の準備を手伝わなければ。

■ ■ ■

夕食時、やっと再会出来たアマテラス君に大真骨頂をしこたまあげた。
「ワン!」
どうやら昨日のことは覚えていなかったようだ。
フフフ、お茶目さんだなぁ!ユーは!
長椅子に腰掛けハグをする。今日一緒にいられなかった分、思いっきり撫でる。

今、向こうでは例のごとくハクバとスサドが皿を洗っている。
余談だが、ミーは食事の後片付けからは外されている。
以前、一度皿洗いも手伝ったのだが、お皿が何故か手から滑り落ち全滅した。
その時はハクバにあわてて止められた。ミーは刃物の扱い以外は本当に不器用な男なのだ。

「月のお方、お待たせしました」
アマテラス君に今日あった事を話していると、スサドに話し掛けられた。
「アマテラス君、じゃあまた後で」
断腸の思いでアマテラス君と分かれ、スサド、マルコと一緒に外に出る。

「月のお方と一緒に呑めるなんて、嬉しいですなぁ」
マルコが言った。
「me.too」
ミーも笑った。
「何処で、呑むんだい?」
ミーはタカマガハラの言葉で聞いた。この國の言葉は語尾がイロイロあったり、一人称がやたらと多かったりするのでミーは今、自分に合った言葉を探している最中なのだ。
きちんとキャラ立てができるまではココの言葉はあまり使わないようにしている。
ミーという一人称は個性としてぜひ残したい。
…うっかりキャラが変わってしまったら皆が困惑してしまうしね。アハハ!

「外の丘で飲みましょう」
スサドがそう言って敷物を持ち出す。
ハクバはつまみを沢山用意してくれていた。ミーは彼女の細やかさにはいつも感動する。
ミーはそれを持ち、三人でぶらぶら歩いた。

途中、皆はどのくらい呑めるのかを聞いてみた。
さっき、凄くハクバが残念そうにしていたので気になったのだ。
「彼女は…恐ろしいウワバミです」
スサドとマルコはそろって青くなった。
いくら呑んでも顔色一つ変わらないのだという。つきあうと絶対つぶれるハメになる。
「月のお方も、誘われたら全力でお逃げ下さい」
そんな事マジ顔で言われても…。
「う、うん」
あ、キャラ間違えた。

…ミーは実は酒にあまり強く無い。

量はかなり飲めるが、すぐ顔が赤くなるし。酔いも回る。ハクバのように本当に強い人はどれだけ呑んでも顔色一つ変わらない。アズミはものすごく弱く一滴も飲めないらしい。
男性陣はどちらもそこそこだと言っていた。…今度ハクバに出会ったらミーは逃げよう。
「へぇ…気を付けるよ」

「ワウ」
気がついたらすぐ後ろにアマテラス君がいた。ハクバと大量の酒を乗せて。
皆が戦慄したのは言うまでも無い。


翌朝。ミーは丘の上で寝ていた。いや、倒れていた。
「大丈夫ですか?月の方」
なんかデジャウ。…アズミだ。彼女が白衣の天使に見える。
「…」
ミーは自分が今タカマガハラで生きている事が信じられなかった。
何とか親指と小指を立てる。

…とりあえず三日酔いは確実だ。

四日後に知ったが、アマテラス君とあのウワバミ来てしまったのは、ミーが「アマテラス君、じゃあまた後で」と言ってしまったからだそうだ。
さすが、妖怪の思考は大胆だ。ミーの罪がまた一つ増えた…。

■ ■ ■

「ふぅ…」

ようやく酒が抜けきった。
ミーは洗った髪を上げ、湯船に浸かりほっとする。白を基調とした明るい浴室はそれほど広くは無いが、とても上手く作ってありくつろげる。
今日はアマテラス君は来てくれるだろうか?ここ数日はミーが酒臭いので一緒に寝てくれなかったのだ。いや、昼間はそばに来てもくれなかった…。
夜は天岩戸やアズミのところに避難していた。
「ん?」
あ、見えた。アマテラス君がこの部屋の扉を開けて部屋に入る姿が。
…良かった、来てくれるみたいだ。けどもう少し遅い刻みたいだ。
それまで何をしようか?まだかなり時間がある。
とりあえずそろそろ上がろう。ミーは十数えてから上がった。それが月の伝統なのでしょうがない。

ドライヤーで髪を乾かし終えた。アマテラス君が来るまであと一刻半。
そうだ、少し笛でも吹こう。この前の饗宴では手元が狂ってさっぱり吹けなかった。
ミーは適当に羽織りをはおって、バルコニーに出た。さすがに夜着一枚だけでバルコニーに立つのは良くない。

笛の音はあまり遅い時間だと迷惑だが、まだ問題ないだろう…。
丁度アズミが二つ隣で欄干に腰掛け歌を歌っているし。いつ聞いても上手だ。

ミーはアズミの歌に合わせて吹き始めた。
彼女に教えてもらったタカマガハラの明るい曲を。

…その時は、この曲を吹くと、涙が流れるようになるなんて、思いもしなかった。
曲が終わると、いつの間にか聞いていた皆が拍手してくれた。

「フフフ…あと少し」
なんだかドキドキしてきた。
それにしてもミーは一体どうしてしまったんだろう?
アマテラス君と初めて出会ってから約三ヶ月。彼女に会うのが楽しみで仕方ない。
いつでもアマテラス君が入ってこられるように扉を少し開けておくのが習慣になってしまった。
とりあえず、笛を枕元に置き、着ていた羽織をその辺に脱いでベッドに寝転んだ。
枕に顔をうずめる。冷たくて気持ちが良い。
扉の方を向いて横になる。
…アマテラス君、早く来てくれないかなぁ。待ちくたびれちゃうよ。
まるで恋人同士みたいだ、と考えて苦笑する。
アマテラス君は大神で狼。ミーは忌まわしい月の民。そんな事、間違ってもあるわけがない。
恋愛に錯覚はつきもの…でもミーはさすがにそこまで錯覚できない。

…アマテラス君まだかなぁ。待つのは嫌いじゃないけど。じれったい。

…アマテラス君は、ミーの事どう思っているんだろう?少しは気にしてくれているのかな…、うーん…。

「ワゥ…?」
ポアッとしたアマテラス君が部屋に入ってくる頃には、ミーはそのまま眠ってしまっていた。
初夏とはいえ、アマテラス君が羽織りをかけてくれていなかったら、ミーは風邪を引いてしまったかもしれない。
だが結局、側で丸まっていたアマテラス君が暑苦しくて、夜半過ぎに一度目が覚めた。

〈おわり〉 

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