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■箱船ヤマト6 タカマガハラ⑤ 【大神】【長編】

なんかもう別に滅亡しなくても良い気がしてきた…。このシリーズのウシアマ成分は、しらを切れるこのくらい!有っても無くてもオッケー。まあ一応無しかな と思って書いてますが…あやしいふたりって萌えますよね!三百年越しのウシアマが裏テーマだったり。あと今更ですがアマテラスの呼び方はとりあえず彼女で統一 してあります。アマテラス君って何回も打つの大変。

※月の民に関する設定というか、他の設定も全てでっち上げです。ゲームとはこれっぽっちも関係有りませ ん☆

 

■箱舟ヤマト6 タカマガハラ⑤


タカマガハラに着いてから、もうすぐ一年が経とうとしていた。

ようやく春の声が聞こえてきた。
ミーは天神族の言葉も全く問題なく使えるようになっていた。

タカマガハラには月と違い、四季というものがあった。
ミーは冬が苦手だった。…これは月の民の特性というよりは個人の差だろう。
天神族は相変わらずあの軽装で過ごしていた。
彼等は、やはり人間とは根本的な作りが違う種族なのかもしれない。
そう言えばいつも少し光ってる気がするし。

「アマテラス君、おいで」
その日、ミーはアマテラス君と、タカマガハラに点在する遺跡を探検しに来ていた。

ミーは、丘陵の上のにある遺跡の庭の隅っこの、壊れた生け垣に腰掛けている。
こちらにアマテラス君がやってくる。

少し向こうは切り立った崖だった。
ここからだと、眼下の森が良く見える。
その反対の…ミーの真後ろ、かなり遠くには、高くそびえる白い山がうっすらと見える。あの山のてっぺんの雪は夏でも残っている。山の反対側には大きな湖もあると聞いた。
眼下の森、そこがしばらく続き、その先に天岩戸の森があり、天神族の暮らす平野がある。

ちなみにこの遺跡まではアマテラス君に乗せてもらってきた。
なんだかアマテラス君がミーを背中に乗せてみたそうだったので、乗ってみたのだ。
少し重いのではないかと心配したが、平気そうだった。
乗り心地は神通力が働いているのか、意外なほど良かった。アマテラス君の優しさに感動した。
アマテラス君の背に揺られ、着く頃にはお昼になっていた。

「遺跡の探検の前に、ランチにしよう。お腹すいたでしょ?疲れてないかい?」
「ワン!ワン!」
アマテラス君は元気そうだ。よかった。
ミーは笑って、ハクバが持たせてくれたお弁当箱を取り出す。
蟻が寄ってきそうだったので、生け垣に腰掛けたまま食べる事にした。
お弁当箱を生け垣に置く。

「わ、美味しそう」

中身はぎっしり詰まっていた。タカマガハラの料理は基本的に月で食べていたものと変わらない。でも、ハクバの作る物はとても美味しかった。手伝いがてら、教えてもらっていたりもする。

素材もいいし、腕も良い。美味しくないわけがない。
ミーはニコニコしながら手を合わせた。
タカマガハラはどこの水も澄んでいて、一応調べてみたが、飲んでも大丈夫だった。果物もそこら中になっている。汚れた川しかなかった月とは大違いだ。

とりあえず遺跡の方を向いて食べることにした。アマテラス君もそちら側にいるし。
マルコに存在を教えてもらったこの遺跡は、確かにデートには丁度良い。

初めてこの辺りに来たときには、タカマガハラの意外と起伏に富んだ地形と、点在する過去の文明の足跡に驚いたものだった。
ココには、過去、天神族以外の民も多く暮らしていたのかもしれない。
遺跡の中には月の文明で作られたとおぼしき物もあった。
詳しく調べてみないと分からないが、おそらく、建物の様子から二千年以上は優に経っている。…ミーの、おじいさんくらいの年代か。会った事は無いけど。

月の民は、およそ千年から千五百年ほど生きる。
しかし、大抵は寿命が来る前に死ぬ。
…その殆どが、自殺だ。まあ実際は安楽死のような物なのだが。

月には、歳を取り、長々と生き続けるのはみっともない、と言う風潮があった。
ある程度の年齢に達した者のところには、まあ、来るわ、来るわ。
そっち系の手紙やらDMやら。あと墓の資料や化粧品広告、はたまた整形の案内とかも。
それを見ながら潔い死に方について、ぼちぼち考えたりするのが一般的だった。

ミーが知っている者でも幾人かが、納得して死んでいった。
若い内はいい。しかし、歳を取った体でさらに何百年も生き続けるのは、苦痛なのだ。
惰弱な月の民の精神構造に対し、寿命が長くなりすぎてしまったのでは無いかとミーは思っていた。
自分もいずれ老いて…静かに命を終える事を望む様になるのかもしれない。
…もしかしたら、ミーの体質的に望めない可能性もあるが。
自分の事だけに全く、…ぞっとしない話だ。
だが正直、ミーの神通力の強さは異常だった。だからある一族に目を付けられてしまったのだが…。

そう言えば、その一族には老人も多かったなぁ。
神通力を持ち、陰陽術を操る事の出来るそれなりに特別な一族にとっては、月の一般人の風潮など無意味なものだったのだ。…まあ、今更か。


■ ■ ■

この一年、ミーはアマテラス君と本当に良く遊んだ。
朝起きたら、泥だらけのアマテラス君がベッドの大半を占領していたり、うなされて起きたらミーの上で、彼女が丸くなっていたり。そんなのはもう当たり前になっていた。
その度、寝室は別にしてもらった方が良かった…と少し後悔するのだが、やっぱりカワイイので結局許してしまう。

平和そのものだ。
しかしミーは最近見えた予言のせいで、言い様の無い不安を感じていた。

それはタカマガハラの平野に、妖怪が少しづつ現れる様になり、アズミが子供達を庇い、怪我してしまう…というモノだ。

これは、アマテラス君の許可を取った後に皆に伝えるつもりだ。
ミーが予言者だと告白する事になるが…皆の安全には代えられない。

アズミの事は、ミーとアマテラス君で気を付け、本人や他の者に伝えるのは止めておく。
怪我もたいしたことは無いようだし、いたずらに彼女を不安させてはいけない。
ミーの予言は外れないので、どうあっても避けようがない出来事だし。
幸い、予言の正確な時期が分かっている。二十年ほど後だ。
それまでに、ミーは妖怪がどこからなぜ出てくるようになるのか、調べるつもりだった。

実は、タカマガハラには、少しだが妖怪がいる。これは天神族なら皆知っている。

だが、天岩戸のある森には結界があり、そこから平野には出てこられない。だから戦えなくとも問題ない。
それほど強い妖怪でもないしアマテラス君が時折、妖怪牙目当てにからかったりするくらいだ。
しかし予言で見た妖怪は、少し性質が違う様に感じる。有り体に言えば、凶暴なのだ。

ココの妖怪は、まあ、何というか、餌が足りているのでおとなしい。
この前、天邪鬼とか言う緑の妖怪が美味しそうにリンゴを囓っているのを見た。
別にそんなザコを倒しても仕方が無いので放っておくことにした。
しかし向こうが、通り過ぎようとしたミーを見つけた途端にこの世の終わりかという悲鳴を上げ、脱兎のごとく逃げ出した。これは試してみたが、どの妖怪でもそうだ。
…少し傷ついた。

そもそも妖怪なんて月で少し相手したくらいなのに。彼等独自のネットワークでもあるのかなぁ?

まあそんな事は良いとして、この予言については早急に調べなければいけない。
ちょうど研究に使えそうな施設が、天岩戸の近くにあったので、そこをアマテラス君と修繕して使うつもりだ。
画龍は便利だが、アズミが言うには、自然に風化した物には使えないらしい。
少しズレた例だったが、放ったらかしにした畑には使えなかったと言っていた。
…これは単純に限界があると言うことか。機械いじりは得意なので、二人で一緒にイロイロすれば問題は無いと思う。フフフ。

「…って言うことなんだけど。アマテラス君、どうかなぁ?」

ランチを囓りながら、アマテラス君に自分が実は予言者だと打ち明け予言を話し、聞いた。
「ワフ」
アマテラス君は、ランチにパクつきながら答えた。
オーケーみたいだ。
ミーは『犬のきもち』のおかげか、アマテラス君とだいぶ意思の疎通を取れる様になっていた。
しかし…付録はことごとく奪われていた。
ミーは今も全力で犯人を捜している。容疑者はあの四人だ。

…結局この犯人は見つからなかった。もっと以前に奪われていたのかもしれない。

その後、色々な事をアマテラス君と話しながら、ランチを楽しんだ。
最近皆と話したこと、明日の予定…。高下駄の良さ。
ミーは元々会話が好きなのかもしれない。

ランチを食べ終え、アマテラス君と庭の散策をしてみる。
遺跡の庭に、灰色の門のような物があった。所々崩れて、壊れている。
「画龍で直せないかい?」
アマテラス君に聞いてみた。
「くぅーん」
ダメみたいだ。…これは建物と違い月の物のようだが。相当古い。

これじゃあ使えないなぁ…。

幽門扉…、時間を行き来できる門。書庫で実際にそんな物があると知ったときは驚いた。

タカマガハラの別の遺跡には壊れずに残っている物があるかもしれない。
そう言えば、ナカツクニという國にも同じ物があって、かつて天道太子という者に天神族が管理を任せたらしい。やはり昔、月、タカマガハラ、ナカツクニの三国には交流があったのだ。
ロマンはある…だが今のところ、特に使う理由も無い。でも、もう少し調べてみようか。
とりあえず『故障中』と書いた紙を貼っておいた。

「アマテラス君、そろそろ帰るかい?」
ミーはアマテラス君に話し掛けた。お昼も食べたし。ここにはアマテラス君は何回も来たことがあるのだろうし。

だが、アマテラス君は遺跡の庭を探検し始めた。
穴を掘ったり、花を切ったり。壁を壊したり。来るのは久しぶりなのかもしれない。
「フフフ。じゃあ、もう少し遊んでいこうか。探検が終わったらミーに声をかけて」
ミーはそう言った。
「ワン!」
アマテラス君は、遺跡の奥に駆け出していった。
さて、今からどうしよう?
アマテラス君はミーがどこにいても匂いで直ぐ見つけるので、この辺りをフラフラしていても問題はないだろう。

とりあえず遺跡の端に空いていた大きな穴から建物に入ってみる。
「…月の物か」
どうやら、外見だけがタカマガハラの物だったようだ。内装は陰気くさい。
だがココは、天岩戸近くの物とは違い、研究施設ではないようだ。
立地や外観からしてもとは別荘だろうか。
…なにやら壷を壊す音がする。

アマテラス君の邪魔をしちゃノーだよね。
遺跡の周りを見てみる事にした。奥の部屋から裏庭に出られた。

「ン?」
水の綺麗な池があった。
覗いてみると、魚が沢山泳いでいた。

「ワン!」
「アマテラス君」
建物の中を探検していたアマテラス君が輝玉を使い出て来た。
池のほとりに突っ立っていたミーに話しかけて来たので、キラキラしながら答えた。

「ホラ、見てご覧。魚が沢山いるよ。釣り竿でもあれば釣りができるんだけど…」

すると、アマテラス君が何かを出す仕草をした。
彼女は何か長い棒のような物をミーに見せた。

「おや!それはもしかして、釣り竿かい?貸してくれるの?」
聞いてみた。アマテラス君の手では釣り竿は持てないだろう。
アマテラス君は、ちょっと考えて…釣り竿を引っ込めた。
「ええっ、貸してくれないのかい?」
ミーは少しアセアセした。ちょっと釣りがしてみたかったのに。
「頼むよ、ベイベー」

天神族と違い緑の三角が見えないミーは、とりあえず頼み込んだ。
アマテラス君は少し迷っている。
「クゥーン…?」
もしかしてわざとなのかも?ミーの反応が見たいのかなぁ。

「そ…そこを何とか!イジワルしないでよ」

「…ワン!」
やっと貸してもらえた!
「サンキュー!」
ミーは笑って受け取った。ユーはホントにカワイイなぁ!アマテラス君をハグして撫でなでする。
フフフ。きっと今…。
『ウシワカに釣り竿を、…貸し出す!…冗談じゃない』なんて思ってたのだろう。
緑の三角つきで!


■ ■ ■

さあ。釣りをしよう!

「ってアマテラス君、針と糸が無いけど…」
構えてみたものの、竿だけじゃどうにもならない。
「ワン!」
アマテラス君がしっぽを振った。
ああ、そうか。アマテラス君が画龍で何とかしてくれるのか。
ちょ、隅っこに輝玉を置かない。気になるじゃないか。

「よーし、狙うは鮭か鯛だ!ハハハッ」
ミーは笑って言った。まあ、この池に海の魚がいるかは分からないが。
「ワフ!」
まかせろ!とアマテラス君が吠える。
ミー達は釣りを始めた。

「ン!かかったよ!」
ミーは頑張って引っ張る。中々大変だ。もっと岸に近づけないと。
「よいしょ、よいしょ!っと」
ヨシ、今だ。
「イズヒア!」
ばしゅ。

「って何でミーを切るんだい!魚を切るんだよ!」
逃げられてしまった。

気を取り直してもう一度。
「よいしょ、よいしょ!ヨシ!」
「えいっ!」
バシュ!!
今度は上手く行った!魚を勢いよく釣り上げる。
…なんかサンマが釣れた。まあ、いいか。
「アハハ!もう一回やろう!」
釣りって楽しい。

ミー達の共同作業の結果、サンマが二匹、メダカが三匹、鯛が一匹、シャケが二匹、あとなんかオキクってのが一匹釣れた。
いらないのはもちろん池に返した。
「ふぅ、アマテラス君。そろそろ帰ろうか」
いけない。つい、夢中になってしまった。ミー達はこれ以上余計な物を釣らない内に帰る事にした。

…それにしても、釣りってファンタスティック!

「アマテラス君。ミー、将来釣り師に…」
「グゥ!」
…え?ダメなの?…まあ、ユーがそう言うなら。

「フフフ、ハクバに料理してもらおうか。メダカはマルコに売ってしまおう」

小物も無駄にはできない。ミーとアマテラス君は笑顔で遺跡を後にした。


「あれ、もう着いちゃった」

あっという間に、動作テストを兼ねて、森の近くに動かしたヤマトが見えるところまで戻ってきた。
…決して手抜きではない。

ヤマトを道なりに通り過ぎる。
ミーは…アマテラス君に言い出せなかった。

この舟の中で見た、もう一つの予言のことを…。


■ ■ ■


「あら。アマテラス様。ウシワカさん。おかえりなさい」

ハクバだ。
木に吊してあった何かをはずしていた。…変な形の網の中に魚らしき物が入っている。
「ただいま、それは?フィッシュかい?」
異臭がする。
「アジの干物です」
「へぇ…。あ、今から何か手伝おうか?」
少し浮いている彼女に聞いた。
「じゃあ、布団をお願いします。アマテラス様は、水浴びを」
「クウン」
「オーケー」

この建物のいわゆる家事全般は彼女が握っている。

曰く、家事が趣味だったから指名された、では、やりましょう。とのことだ。
アマテラス君も彼女にはおとなしく従う。
ミーもだ。ふかふかの布団を抱えて中に入る。

「そうだ、魚を釣ってきたよ。良かったら使って」
アマテラス君が、どこからか鮮魚を取り出す。気にしない、気にしない。
「まあ!立派。お刺身にしましょう」
ハクバは新鮮な魚を見てバサバサ跳ねて喜んだ。アマテラス君をナデナデしてくれた。
アマテラス君は嬉しそうだ。
「ミーも手伝うよ」
刺身は得意だ。

「ウシワカさん、フフフ、いつも助かります」

ミーは、よくハクバと料理を作っている。
彼女が作る料理が美味しかったので、興味を持ったのだ。
大量に作って大変そうだったし、下ごしらえくらいは手伝えないかと思ったのだ。
まあ、後は見て盗むよ。と言ったら、笑っていた。
これに関してはスサドはあまり役には立たないのだという。マルコは明らかに食べる係だ。

「たまに、アズミは羽を燃やしたりするんです。卵落としたり」
ハクバが笑って言った。
「そう言えば、この前も扉に挟んでたなぁ」
アズミは真面目だけど、少しおっちょこちょいなのかもしれない。ミーは刺身を作り終えて、じゃがいもの皮を剥きながら笑った。
ハクバが言うには羽は足の小指みたいなモノらしい。
「って、その例え。アハハ」
彼女は面白い人だ。
前世の記憶が他より多くある分、ひねくれてしまったのだと自分で言っていた。

そうこうするうちに、料理が完成した。
今日の料理はナカツクニ風だった。
アジの干物は美味しかった。刺身も新鮮だ。皆で平らげた。

食事の後アズミ達にタカマガハラに妖怪が出てくる、と言う予言をしたら、あっさり信じてもらえた。
アズミ達は驚いていたようだったが、特に忌避されることも無かった。


■ ■ ■

自室に戻り髪を解いた後、一人考えた。

…ミーの予言の力は、一体どこから来ているのだろうか?…と。

月にいた頃は、生まれ付きの物だと思っていた。

月の陰陽師には予言の力を持つ者もいた。
…予言の力を持つ者は陰陽師にならなければ、不安定な情勢の中では命を狙われて殺されたり、利用されたり、もっと言えば道具として幽閉されたりしてしまう。
逆に、陰陽師になった者達は、その力でそれなりの地位を築く事が出来た。
そういった者達と接して、ミーはいくらか安心した。

予言は別に、自分だけが出来る訳では無い。予言を持つジレンマも皆感じていた。
幼い頃から、月の滅亡が見えていた自分にとっては、彼等のありようは一応の慰めでもあったのだ。
いろいろあって陰陽師となったミーは、当たり障りの無い予言ばかりしていた。どうせ皆滅ぶ。今更言っても仕方ない。…そう思って。

予言は外れない。占いと違って。
月は滅んでしまう。…それは言ってはいけない事だった。
まったくため息が出る。そんな事が分かっていたら振る舞いも適当になる。
だが他の予言者のイキイキとした様子を見るに、ミー以外にはその予言が見えていないようだった。
彼等の力が足りないのか?…と当時は思っていたが、何か…根本的に違う気がする。

言ってはいけない予言。
だが…その予言を、ミーは幼い頃…父にこぼしてしまっていた。
『月は滅ぶから、皆で逃げないといけない』
その後、起きた恐ろしい事は、ミーの脳裏に焼き付いている。
結局、全て無かったことになった。
ミーは力を隠すことになり、父はミーに刀を使った戦いの方法を無理矢理たたき込んだ。
親心だったのだろう。

その父が、反逆者として始末された事にミーの予言が関わっているとしたら?
何も知らない母がついでに切り捨てられたのも、ミーのせいということになる。
常闇の皇…月の技術で造られた…化け物。
あれは、一朝一夕で創れるものではない。ずっと前から作っていたのだろう。
でも、もしかしたら、あの時いやな偶然が重なったのではないのか?

ミーの予言…それを言ったのは、二度だけ。
一度目は父に。
そして、あとの一度は…奴らにだ。
ヤマトの周りで死んでいた、王宮でクーデターを起こした連中。…そいつらに、
言ったのだ。ミーは。

『もうユー達の実験につきあうのはごめんだ。どうせ今から、一月も経たないうちに、月は滅ぶ…』

奴らが、常闇を作っていたのだ。
…いや、他にも…。協力していた者は…いるだろう…。
だが、常闇の作動のきっかけを作ったのは、ミーの予言かもしれない。

今…月は、どうなっているのだろうか?
タタリ場が無くなった今、本当に生き残った者は、いないのだろうか?
月へ行かなければ…。

月を喰らった常闇が、タカマガハラに来ないとは言えないのだ。

少し前、ヤマトについて調べる為に入った時に、はっきりと見えた。

タタリ場の消えた月で、常闇と対峙する自分。
…予見された月の常闇はただそこにあった。

常闇は、今、闇を出すことも無く力を貯めているのだ。
奴のエネルギーが何かは分からないが、活動し、休止する。そういうモノなのかもしれない。
いや、そう決めつけるのは早計だ。
月へ行き、常闇に関するデータを探さなければ。
アマテラス君や天神族に害が及ぶなど、あってはならない。
滅亡なんて、月だけで十分だ。
月の民として、アレを討ち取らなければ…。

「ン?」
扉の外にアマテラス君の気配がする。そう言えば今日も来るって見てたんだっけ。
物思いにふけっていたミーは扉をあけてやった。

「ウェルカム」
今日は、遺跡から帰ってきてすぐ水浴びしていたので、あまりばっちくない。
ミーは微笑んだ。

「ワゥ?」
しかしミーの元気のなさがアマテラス君には分かってしまったのか、首を傾げる。
「アマテラス君、いいよ。入って」
ミーはアマテラス君を中に入れてあげた。

もしかしたら…ここにはもう帰ってこられないかもしれない。
アマテラス君や天神族にも、もう会えなくなってしまうかもしれない。

ミーは膝を突いて、アマテラス君を見つめた。
「アマテラス君…ミーは、月に行くよ」

彼女には。本当に、感謝している。

慈母。
彼女のその呼び名を知ったのは、言葉を教えてもらい始めてすぐの事だった。
丸いつぶらな瞳がミーを見る。分かっているのかいないのか。ポアッとしている。

「まあ上手く行けば一月くらいで帰って来るつもりだから。ドントウォーリー!」
ミーは立ち上がり何時もの調子で笑った。
「さて、そう決めた事だし。出発の準備でもしようかなぁ」
月の状態も調べるつもりなので、イロイロ必要だ。月は壊滅状態だろうから、食料とかも自前でないと。これは明日、ハクバと相談してみようか。
ミーは右手に持った笛で左肩を叩きながら、必要な物を準備しようとした。

「あれ?」

しかし裾に抵抗を感じて、見ると、アマテラス君がミーの裾を咥えていた。
「…」
ちょっと、顔が怖い気がする。なにか怒らせるような事をしただろうか。
「ワウ!」

「…ひょっとして…罠だって言いたいのかい?」
「ワン!」
アマテラス君がミーを止めている。

確かに、あのタタリ場が消えるなんて…わざと呼び込まれているのかも知れない。
けど、罠だとしたら一体何のために?…月の民を根絶やしにしたいのだろうか。
それでも、行かなければ。
…この思考さえもが罠で無ければいいが。
月で常闇は奴らを操っていたのではないかと思う。
そうでなければあのタイミングでミーが王宮に連れていかれたりはしなかっただろう。
そう、危険だ。…でも、常闇をそのままにはしておけない。

「アマテラス君。これはミーの問題だ」
…彼女は、常闇とは関係がない。その時はそう思ったのでミーはアマテラス君に言った。

アマテラス君はいつも通りポアッとしていた。
けどやっぱり少し心配そうに見えるのは気のせいだろうか…。
そうだったら、嬉しい。

ミーは準備を再開した。


■ ■ ■

翌朝、皆に自分は予言に従い、一度月に帰ってみると伝えた。

いろいろ調査するので少し時間がかかるかもしれない、と。
もし、自分が死んだときの為に、常闇の存在は話しておいた。
「多分、今は休眠してるんだよ。だから大丈夫。いろいろ調べて来る」
何も情報が無ければ、予言の通りに常闇の近くまで行くつもりだったが、それはさすがに言わなかった。

「…私は、月へ行くのは止めた方がいいと思います」

そう言ったのは、ハクバだった。
ミーは、少し驚いてそちらを見た。
まさか引き止められるとは思っていなかった。まあ、予言の通りにタタリ場が消えているなら大したことでもないしと、笑って送り出してくれるだろうなんて考えていた。

彼女は涙ぐみながら言った。
「すみません。でも…折角、ウシワカさんは助かったのに、まだ恐ろしい怪物がいる月にあえて行くのは危険だと思います…」
「ハクバ!…」
アズミが彼女をたしなめようとしたが、言葉をつなげられなかった。
アズミが心配そうにミーを見る。

…まさか死ぬ気じゃ無いですよね?大丈夫ですよね?…そう顔に書いてある。

天神族は、本当に皆優しい。
ハクバの泣き方は少しわざとらしいが、それでも彼女が本心で心配しているのが伝わってくる。
スサドやマルコは、どよんとした空気を纏いこちらを見ている。まるでミーの葬式に出る事が決まってしまったかのような雰囲気だ。
「……」
二人とも無言だ。

イヤあの、…そんなに心配しなくても良いのに…。

「ソーリィ、いや、サンキューかな……ここには必ず帰ってくるよ。ノープロブレム」
ミーは微笑んだ。
結局、何とか納得してもらえたようだ。

ミーはアマテラステーブルの下で丸まっていたアマテラスをのぞき込み、話し掛けた。
「アマテラス君。ミーが帰るまで…」
「ワウ」
そっぽを向いた。丸くなって、寝る態勢だ。
耳もパタンと閉じている。
さすがは大神。…ミーは芸の細かさに少し笑った。

ミーは、テーブルの下に潜り、アマテラス君の隣にしゃがみ込む。
「アマテラス君」
耳元でささやいたら、ぴくぴくと耳が立ち動いた。
フフフ…聞いてる。薄目だ。
さて。彼女には、なんて言おう?ミーは一応帰ってくる気だし。
そもそもアマテラス君って、ミーにとって、一体何なんだろう?

まあ、いいか。アマテラス君だし。

「ミーが帰るまで、浮気しちゃダメだよ」

にっこりと笑うミーがいた。
去り際、テーブルに頭をぶつけそうになったのは、みんなには内緒だ。

〈おわり〉
 

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