絵、時々文章なブログ(姉)

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■箱舟ヤマト8 タカマガハラ⑦ 【大神】【長編】

前の話とセットです。今回は筆神と…あれ、もしかして温泉旅館?そうか女将さんか。料理は舟盛りとか懐石っぽい感じです。旅に出たい…。京都とか?お伊勢もいいなぁ。筆神はとりあえず十二支順で。彼等はまたそのうち出ます。

 

■箱舟ヤマト8 タカマガハラ⑦


ミーは一つ深呼吸して、死地に足を踏み入れた。
「ハロー!」
やっぱり笑顔って大切だよね!

『…』
彼等の目は、獲物を見つけたまさにそれだった。

ミーはさすがに居すくんだ。
ひるんだミーを見逃すような筆神ではなかった。
結論から言うと、ミーは全てくらった。

まず、断神だった。
大きく飛び上がり、大剣を構える。
鋭い剣撃かと思いきや、それはフェイントで、剣を放り投げ、ミーのむき出しのふくらはぎに噛み付くと言う凶悪な攻撃だった。
「痛ーッ!!!」
普段あんなでかい剣を振り回すアゴに噛み付かれたのだ!三針縫う大けがだ。
ふらついたミーを見て、凍神、撃神が突進してきた。
ミーは見事にはね飛ばされた。全身打撲だ。
その先には弓神が待ち構えていて、恐ろしいハンマーでぶっ飛ばされた。
どこかの骨が折れる音がした。多分腰椎だ。
「ぶっ!」
飛ばされた先はおろし金のような蘇神のうろこだった。顔面を激しく擦り剥いた。
これは痛い。せめて地面なら良かった物を…!そのまま巻き付かれ締め上げられる。
「うわぁあ!!」
イヤな感触がしたと思ったら、濡神が袖の中に入ってきた。袖の中に蛇!!これはもう動けない。ミーは蛇がノーなのに!!全身が総毛だった。瓶は何処行った!
バコ!
風神の後ろ足に蹴飛ばされて飛んだ。うん。そういう攻撃がいいな。でも骨折。
「ゆ!ユー達、ちょ、ミーは…ゴブッ!」
再びバコンと蹴られ壁に叩き付けられた。あ、お星様…。
「グゥっ!!」
いたいけなミーの上に鉄球が落ちて来た!?…と思ったらそれはメタボな幽神だった。
中身が少し出た。そのまま猿三匹の出す騒音に合わせ鳥に根性焼きされた。
ミーは心に永遠に消えない傷を負った。
そこから立ち直れないミーに、猪がボールを投げつけた。
ああ、よかったこれで楽になれる。
そのボールはなぜかゆっくり見えた。ちなみにここまで十秒足らず。

「ニャー」
あ、まだいた。

「ユー達!ミーの何がいけないんだい…!?」
筆神達が一斉にギャーギャー言った。
だが壁神の半刻に及ぶガラス引っ掻き攻撃のせいでミーは彼等が何を言ってるのか全然分からなかった。
しかし、それは向こうも同じだったらしく、結局その場はお開きになった。
ミー達は手を振って分かれた。また明日!
さて今日の晩ご飯はなにかなぁ?

…って、あれー?

■ ■ ■

「アイムほーむ…」
ミーは死地から生還した。
例のごとく自分が今生きている事が信じられなかった。
ハクバが夕食の準備をし始めたばかりだったので、笑顔で『ミーも手伝…』と言ったら皆に止められた。

しょうがないので、夕食と聞いて起きたアマテラス君を眺めていた。
何か黒ずんでるような…。
あれ、そう言えば…ミー達、ばっちい?
そうだった。月ではまともな風呂に入れる訳も無かった。体を拭くのがせいぜいだ。
…思い出したらゆっくり湯船に浸かりたくなって来た。
「ハクバ、下のお湯って使えるかい?」
ミーは聞いた。
浴場はミー達の部屋以外に、きちんと男女犬別に分かれた物がある。スサドのこだわりだ。

「あ。丁度沸いています。おすすめしようと思ってました。まだ夕食まで時間がありますからどうぞ入って下さい」
ハクバは苦笑して言った。さっきの筆神騒ぎの間に用意しておいてくれたらしかった。
「サンキュー、助かるよ。アマテラス君!おいで。先に洗ってあげる」
ミーは言った。
「…」
あ、なんか乗り気じゃない。仕方無いなぁ。ミーはいやがるアマテラス君を抱えて、浴室へ向かった。

「とりあえず、ユーを洗ってしまおう」

犬風呂の扉を開ける。ここは洗面所は無くいきなり浴室だ。そんなに広くなく、浅い浴槽がある。ミーはアマテラス君を犬用シャンプーでザブザブあらった。慣れた物だ。湯船にたまったお湯で綺麗に流す。
そのうちシャワー付けても良いなぁ。スサドに相談しよう。
あっという間に洗い終えた。もはや目を瞑っていても出来る。体を軽く拭いてあげた。

「はい。じゃあ今日は、マルコにでも乾かしてもらって」
確か彼は広間で暇そうにしてた。
ミーはアマテラス君に便利なドライヤーを渡した。新しい手ぬぐいも首にかけてあげる。
アマテラス君は、ぱた!としっぽを振ってドライヤーを咥えて出て行った。

あ、着替えを持ってこないと。
ミーはいったん自分の部屋に行った。広間ではマルコがアマテラス君を乾かしていた。
アマテラス君は気持ち良さそうにしている。フフフ、笑ってるみたい…。

部屋で着物を脱いだ。タライに浸けておく。後で洗おう。浴衣と羽織を着て、着替えとか石けんとか手ぬぐいとかお風呂用具一式を詰めた手桶を持って下に降りる。

ちなみに浴衣は白地に紺でアマテラス君の模様が沢山入っている物だ。
ここに来たしばらく後、浴衣があった方が便利なのでハクバに仕立ててもらった。柄違いが三枚ある。
…この反物をマルコの店で見つけた時は心臓が止まった。もちろん買い占めた。
紺色の帯の先っぽには『大神』と白い糸で刺繍が入っている。これもハクバの心使いだ。この浴衣が出来た時の感動を思い出したら泣けてきた。

ミーは男湯の扉を開ける前に一応聞いた。
「ハクバ、夕食までまだ時間はあるかい?」
「大丈夫です。あと一刻はあります。今日はごちそうにしますから」
それは楽しみだ。

■ ■ ■

ミーは、脱衣所で着ている物を全て脱ぎカゴに詰めてからお風呂場の扉を開く。
もちろん浴衣は綺麗にたたむ。

…ン?今日は手ぬぐい着用だよ。なんか誰かが見てる気がするし。

湯船から暖かい湯気が立っている。
ミーの部屋の物は白が基調だが、ここは黒い石作りの浴槽だ。湯船の大きさはミーとスサドとマルコが並んで入れるくらい。体を洗う場所もだいたいそれと同じくらいか、やや広いくらいの大きさで、大変心地よい空間だ。
蛇口からはきちんと水とお湯が出るが、タカマガハラにシャワーは無い。

さて、まず体と髪を洗おう。
そう言えば、ここには羽用シャンプーなる物が存在する。初めに見たときは笑った。
天神族はお風呂好きなのかも知れない。アマテラス君とは大違いだ。
ミーはバシャバシャ頑張って洗った。ヘチマは痛い。
…ようやく体と髪を洗い終えた。濡れた手ぬぐいを絞ってそれで髪を上手にまとめ…。

…。

やっぱり何かじろじろ観察されている気がする。

ミーは用意のまだ濡れてない手ぬぐいを巻いた。今日はこれで入ろう。

浴槽の側へ行き、しゃがんで温度を確かめる。少し熱いけど、まあ良さそうだ。
「はぁー。…ナイス!」
浴槽に浸かり、ぐーっと伸びをする。安らぎのひとときだ。
基本的にココが男湯で固定だが、時々、ハクバの気まぐれでお風呂場の入れ替えをする。
女湯は檜で出来た丸い大きな桶みたいな浴槽で、良い香りだ。

…まあその場合はいいのだが、以前犬風呂が当てられてしまった時は悲しい事になった。
ミーは浅い浴槽で頑張るマルコとスサドをよそに自室でお風呂をいただいた。
まあ一週間くらいで元に戻ったし、彼等もそれなりに楽しんでたみたいだった。

「はぁ…」
ミーは今、浴槽に腕を組んでもたれかかっている。手の甲にアゴを乗せる。こうしていると…かっぽん。…という音が聞こえそうだなぁ。なんて考えつつ。
さて、そろそろ上がろう。ああ、ちゃんと十数えないと。

「ワン、ワン、ワン…、(略)…わん、ワン!!よし」

十数えたミーは、ざばーっとお風呂から上がった。
あ、この手ぬぐい絞らないと…。

って…誰だい?覗いているのは!

■ ■ ■

「フゥ、良いお湯だった…。アマテラス君、ドライヤー貸して」
やっぱりお風呂はいい。生き返った。ミーは広間の片隅で長い髪を乾かし始めた。
出力最大でガンガン乾かす。もうすぐ夕食が出来てしまう。

「ウシワカさーん、出来ましたよ」
ハクバに呼ばれた。このくらい乾いていれば問題ない。いそいそと席に着く。
ミーは久々の団らんを楽しんだ。ハクバの料理はやっぱり美味しい。アマテラス君も大量に食べていた。
食事の後、ミーは仕上げに軽く髪を乾かす。綺麗に梳く。長いと大変だ。
「歯を磨いちゃって下さいね」
片付けをするハクバに言われた。
「あ、オーケー」
忘れるとこだった。ハクバのルールは絶対だ。いつも通りマルコと一緒に洗面所を使う。いやがるアマテラス君の歯磨きもしてあげる。虫歯になったら大変だ。

浴衣に羽織のまま、長椅子に座りくつろぐ。やっぱり、家っていいなぁ。
隣で寝そべっているアマテラス君を撫でる。ふさふさの毛並みが気持ちいい…。
「アハハ!ミー達すっかり綺麗になったね。明日、月から持ってきた機材を運ぼうかなぁ…」
「手伝いましょう」
スサドが言った。
「サンキュー…」
ミーはそう言って微笑んだ。


「あれ…?」

翌朝、ミーは目を覚ました。隣にアマテラスが寝ている。
ここは、タカマガハラの自分の部屋だ。
眠ってしまったのか…。月ではあまり眠らなかったので、やはり、疲れていたのだ。
筆神達にいじめられたせいかもしれない。
きちんと布団が掛けてあった。スサドあたりが運んでくれたのだろう。

「アマテラス君…」
まだ眠っているアマテラスを撫でた。

ミーは滅亡してしまった月であったことを思い出した。
あと少し彼女が来るのが遅かったら、自分は常闇に…。

彼女と、共に。
ミーは戦う。
タカマガハラは絶対に守らなければ…。

ミーは、硬く拳を握り締めた。

…今思うと、それは全く…本当におこがましい考えだった。

〈おわり〉 

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