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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


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長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト12 タカマガハラ⑩ 【大神】【長編】

■大神(長編) 箱舟ヤマト(大神) 小説

シリーズ第一の難関、筆技習得を何とかクリア!…できてると良いなー。

丸はホント難しい…初プレイ時にミカン 爺のイベント攻略に四十分もかかったのは私だけだろうな…。

※一応新章スタート。いきなり飛んで五年後で す。

この章はバトルやダンジョン攻略が多めになるはずです。シリアスありつつ、アホもありつつ…っていつも通り?

今日はここまでです。続きはまたそのうち。

 

■箱舟ヤマト12 タカマガハラ⑩


ミーは筆技の修行の為、今日も天岩戸に籠もっていた。


「お猿君。ちょっと休憩しようか」
「フォ」
ミーはお猿と一緒にため息を付いた。
その瞬間、今までいた空間がパシュンと消える。


この五年で、修得した筆技はようやく十一。
上位技も取得し、ついにあと一つ桜花「花咲」を残すのみだ。

アマテラス君の司る光明はミーごときが使って良い物では無いので、修得はしないことにした。…と、言うのは建前で。
要するに。

ミーはマルが絶望的に下手くそだったのだ。

他は何とかなった。しかし、肝心のマルが…あの魔の図形が…上手くかけない。ちゃんとやってるのに何でコレだけ判定がノーなのか、さっぱり分からない。
今日も朝から散々、お猿に×の旗を上げられた。
このお猿はミーに…本当に良くつきあってくれていると思う。もうコレばかりやって半年以上になる。
しかしまさか筆技の習得がこんなに大変だとは思わなかった。
自分の不器用さに何度も歯がみした。

初め、ミーの絶望的な筆運びを見た筆神達はミーに大量の紙と筆を与え、天岩戸からたたき出した。
アズミ曰く、「『せめて木が木に見えるように』なるまで外でやってろ」
…とのコトだった。
ミーは頑張った。雨の日も、風の日も。まさに一心不乱に。寝食を忘れ、時には断食してひたすら描く。一刻も早く、筆技を!!

…その情熱の源はアマテラス君の涙だった。

ミーは試しに描いたアマテラス君の似顔絵で、なんと…彼女を泣かせてしまったのだ。

確かに、アマテラス君の手足がそれぞれ十本以上あったり、アマテラス君の細長い胴体を緑と肌色で塗ってしまったのは微妙だったかもしれない。
背中に常にユラユラ動く触手や、オレンジ色の羽が沢山見えたのでなるべくその通りに描いたのだが、それも逆効果だった。
舌や牙もちょっと長すぎたし、仕上げに全身に描いた赤い隈取りは大量にしたたる血以外の何モノにも見えなかった。…当時のミーはさっぱり分かっていなかったが。


コレはまずい…!?
アマテラス君の初めての涙を見てそう考えたミーはもはや建物に帰ることもせず、天岩戸に泊まり込んで修行した。
おかげで筆神達とは大分仲良くなれたと思う。下っ端的なイミで。
でも、ミーは文字はそれなりに書けるのに、なぜ絵がこうもダメなのだろうか?

とにかく、三年以上かかってようやく筆技の図形修行を許された。
例の異空間に入り渡されたのが、今使っている持ち手の黒い、筆技練習用の筆だった。
…しかし、このだるま筆がまた相当使いにくかった。

ピピピ!

「わッ!」
天岩戸に突然響いた電子音にミーはビクリと驚いた。
…緊急用に付けた内線だ。

筆技の詳しいコトはまたイッシャク君にでも語るとして、ミーは自分の身長程もある筆を床に置き、入り口近くにの壁に架かっている内線の受話器を手に取った。

このかなり旧式の内線は、ミーが建物の倉庫から探し出して来て取り付けた物だ。
だけど本当に緊急用なので使うのはずいぶん久しぶりだ…。

実は修行を初めてからミーは一度も自分の部屋に戻っていない。

顔を合わせているのは、習得の節目に筆神の言葉を通訳をしてくれるアズミくらい。
食事はアマテラス君が一日一回ハクバの差し入れの精進料理を持って来てくれる。
ミーは修行中の身なのだ。贅沢はいけない。
…どうしてもお腹がすいたときは外で木になっているリンゴを矢で射ってこっそり食べる。夜は筆神達と団子になって一緒に休む。壁神を抱っこして眠ると暖かい。

「ハロー?」

『ウシワカさん、おつかれさまです』

「ハクバ。久しぶりだね!どうしたんだい」
ミーはニコニコ笑って言った。
言葉を喋られる生き物と話すのは楽しい。

『最後の筆技に苦戦されているとか。でもあと一つですし…たまには、気分転換にお屋敷へ戻って下さいませんか?』

筆技の修得具合はおそらくアズミが話したのだろう。
ハクバは料理をしながら話しているようで、受話器の向こうで何かを炒める音がする。

ミーは少し考えた。
そろそろ花咲の修得が出来そうな気がするのだが…。

「うーん…」

『実は、ココだけの話…えっと、アマテラス様からの、サプライズ?という物があるんですよ』
ハクバが声を潜めて慣れない月の言葉を使った。
…サプライズ…今日は何かの記念日だっただろうか?しかも。

「アマテラス君が?ミーの為に…?」

『そうです、きっとウシワカさん、喜びますよ!』
それは行かなくては。
「ウェイトアミニッツ?」
ミーは受話器に手を当て、傍らのお猿に聞く。

「ちょっと、呼ばれたから向こうに行って来てもオーケーかい?」

お猿は横になったままマル旗を上げた。「むしろ戻ってくるな」と言いたげだ。
そして、ミーをチラと見て、アゴで天岩戸の片隅を指した。
ミーは阿吽の呼吸で頷く。

「そうだね…、じゃあ掃除してから行くよ」

『ふふふ!たまには栄養のある物も召し上がって下さい。お待ちしてます』
「アハハ、サンキュー」
ツーと内線が切れた。
アマテラス君を待たせてはいけない。ミーは早速、天岩戸の隅にあったモップを取る。

筆技の修行は、異空間に置かれたでかい紙に、でかい筆で、図形を書きまくるのだ。
必然的に、そこは神墨の墨ハネでまっくろ。空間から一歩出れば真っ黒なミーは綺麗になるが、黒くなった空間はそのままなので、掃除してから出て行くのが通例になっている。

ミーはお猿と異空間に戻り、水を付けたモップで床をゴシゴシ擦る。
もちろんお猿はごろ寝している。
遠くではミーから開放された他の筆神達が楽しそうにかくれんぼをしている。

「じゃあ、行ってくる」
プライズって何だろう?ミーは歩きながら考えた。
「アっ!!」
しまった…!見えた。全く、忌々しい力だ。
五年に及ぶ修行で忘れかけていたが、ミーは予言者だった。
異空間の中ではあまり未来が見えないのだ。もうここに住もうかな、と言ったら筆神達にギャーギャー言われた。

しかし…これは?一体…?

見えたのは、建物の広間でごちそうを食べるミー達。

アマテラス君のサプライズの内容で無くて良かったが…。
本当にこれで合っているのだろうか…?

 

ミーは自分の予言の情景に首をひねった。


■ ■ ■

 

どうしてこうなった。


森を抜けたミーは、その言葉で頭がいっぱいだ。

「あはは、陰陽師あたーっく!」
「あ!本物だ!!うわー!!」
その辺で天神族の子供達が遊んで居たので訪ねてみる。

「ユ、ユー達。ここの建物って…これでよかったっけ?」

なんか…久しぶりに見た建物はテイストが…大分変わって…。
ナカツクニ風の…。えっと…、武家屋敷だっけ…?
になっていた。

しかもやたらギラギラしている。

「スサドが模様替えしたんだー」
「ねぇ!サインちょうだい!月の人!」
ミーはとりあえず呆然とサインした。天神族の子供達はミーにお礼を言って、また遊びに戻った。

…なるほど。リフォームか。
まあ、ミーは五年近く居なかったのだ…そんなコトもあるかもしれない。
それは良い。だが。

「何で浮いているんだい!!」

その建物は、丸ごと上空に浮いていた…。

■ ■ ■

とりあえず入ろう。…入って良いんだよね??
ミーは飛んで入った。

木で出来た柵の上に乗る。
この程度の物では危険で無いだろうか?…いや、飛べる天神族なら大丈夫か。
普通の庭があり、洗濯ものが干してある。
そしてそれをスサドらしき人物が取り込んでいる。…スサドってアレで良かったけ?
柵の上に突っ立っているミーに気がついたようだった。嬉しそうにこちらに駆けてくる。

「お館様!お帰りなさい!」

ミーは早速ズッコケた。
「お館様って…ユー!コレは?この建物、どうして浮いているんだい?」
「ああ。これは今朝からですよ。ははは、やってみたら出来ました」
そうか、今朝からだったのか。よかった…。
「ハッ!?」
ミーは大分天神族に近づいてきてしまったようだ。全然良くない!!
気を取り直して、問いかける。
「…その服装は…?」
スサドは赤ピンクの宮仕えしてそうな着物を着て居た。背中には矢筒を背負っている。
「良いでしょう?ハクバが遊びで仕立ててくれたんですよ。ナカツクニの武人風の着物です。ああ月の方の物にも少し似てますね?」
どうやら、本気では無くジョークのようだった。ミーはほっとして感想を述べた。
「うーん、まあ少し地味だけど、ナイスだね」
「ははは。私はお館様方にお仕えするモノですから。まあ、動きにくいのでもう脱ぎますけど。中に入りましょう。皆待ってますよ!」

「お帰りなさい!月の方。あ、履き物はそこで脱いで下さい」
アズミがニコニコと寄ってきた。
「イエス…」
ミーは命とも言うべき高下駄を脱ぎ、建物の広間だった場所を見上げた。
…全然違う。
そこは吹き抜けになっていた。外から見た通り、五階建てくらいはある…。
「おや、月の方!おひさしぶりです」
畳に座ってくつろいでいたマルコが手を上げる。
その時、くるっと壁が回転し、料理を抱えたハクバが出て来た。
「ウシワカさん、今日はしっかり食べて下さいね」
さも当然のようにそう言う。
「…お、オーケー」
ミーはとりあえず、旧広間の真ん中にある足の短いテーブルに向かう。
「あ、お館様はこちらに。上座です」
スサドに促され、そちらに移動する。
そこには薄いクッションが二つ、横に並べて置いてあった。
「ん?そう言えば、アマテラス君は?」
ミーはキョロキョロした。天神族の四人は、皆それぞれ左右の席に着いている。
なぜミーがこの席なのかは分からないが、ならば隣はアマテラス君のモノだろう。
アズミが顔を上げた。
「そろそろ部屋から降りて来るはずですが…?ああ、いらっしゃいました」

ガー。
「ワン!」
ちょ、何そのエレベーター!

「アハハハハ!!」
ミーはついに笑い出した。

■ ■ ■

「スサド…やっぱりこの建物はやりすぎよ」

アズミはため息を付き呆れている。
「うふふ、私は結構いいと思います」
ハクバは酢飯を海苔によそいながら笑った。今日はナカツクニ風手巻き寿司だ。
「お館さ…月の方様、後で部屋にご案内します。少し行きにくいですから」
元の服装に戻ったスサドが悪びれずに言った。微妙にまざっている。
「風流ですねぇ」
マルコはのんびり茶をすすっている。

この建物はミーが天の岩戸に籠もりっきりになってから建て換え始め、完成したのはついこの間だという。
天神族には大工のような役割の人達が居て、その彼等や男性が中心となって、女性や子供達は炊き出しをしたり、無意味に踊ったり…。
…要するに暇つぶしか。
建物は時と共に傷むので、何十年かに一度建て替えると言うのはそれなりに理にかなっている。浮いているのは…まあ、ナイスかも知れない。
「ワン」
ミーはアマテラス君に手巻き寿司を作りながらそんなことを聞いた。
ミーも少しもらった。…贅沢が身にしみた。

「ごちそうさま」
ミーは久々にお腹いっぱい食べた。ハクバに礼を言う。
月の民は性能が良いので、少しくらいなら食べなくても問題無い。
まあ、少しやせたが。
お腹がふくれて満足そうなアマテラス君を撫でながら、片付けをするスサドを待っていると、アズミに話掛けられた。
「月の方…修行もいいですけど、今日くらいお部屋で休んで下さいな」
「オーケー、今日はそうするよ」
桜花を修得出来たら、ミーは今度は遺跡で月の資料を整理するつもりだった。
思いの外、筆技の修得に手間取ったので、急がなければ。
「うわ?」
いきなりアマテラス君に舐められた。遊んで欲しいのだろうか?
「慈母様、お待たせしました!」
スサドがこちらに来た。
「ワウ!」
アマテラス君がしっぽを振る。
「行きましょう」

ミー達は、広間に下げたままのエレベーターに乗った。
と言っても、何かのカラクリで動く、とても簡素な仕様だ。
「へぇ…本格的だ」
ミーは感心した。さすがスサドだ。細部まで抜かりはない。
「ふふふ、これからですよ。ご案内しますね」

■ ■ ■

「あ、そこは」
スサドが言った。

エレベーターを降り、二階の踊り場に着いたミーは首をひねった。
そこは細長い形の部屋だった。床は結構深く掘り下げてある。
天井は普通の高さか少し高いくらい。全体的に暗い。
向こう岸に、こちらと同じく板張りの踊り場がうっすらと見える。
しかし…なぜ床底や壁や天井に鋭いトゲトゲが密集しているのだろう?
これでは飛ばないと進めない。

そして、今、ミーが素足で踏んでしまったスイッチは一体…。

「ワウ!!」
バシュ!
アマテラス君が、蔦巻きでミー達をくるむ。
「え!?」
ビュル!!
あっという間にミー達は、対岸の逆コノハナにたどり着き、踊り場にポテンと落ちた。
直後。
ガシャーン!!
とすさまじい音を立て天井が落ちた。
…。
「こういう仕様です。筆技の実践用に作りました」
スサドは嬉しそうだ。

…高下駄を履いて来た方がよかったなぁ。

「ちょっとウェイト!スサド、ミーはまだ墨ヒョウタンを買って無いから、筆技が使えないんだけど…」
技自体は覚えた。しかし神墨が無ければ、基本的には筆技は使えない。
ヒョウタンは、マルコの店で普通に買えるとアズミが言っていたので、修行を終えたら見に行こうと思っていたのだ。
「ワン!!」
「ふふ。慈母様が貸して下さるそうです」
「え、ユーのを!?いいのかい」
アマテラス君が、どこぞから…本当に何処にぶら下げていたのだろう?
ヒョウタンを取り出した。

「サンキュー!…でも筆はどうしようか?何か適当なものは…」
ミーは笑って受け取り、キョロキョロする。あった!
「じゃあ、これで」
「ギャイン!!」
アマテラス君のしっぽをつかんだらガブリと噛み付かれた。顔面から血がしたたる。

「ソーリィ、ソーリィ。ちょっとしたジョークだよ。…けど、となると、どうしよう?別に指に墨付けて描いても良いけど」
ミーは神墨を指ですくい、適当に疾風を起こす。
ミーには効かないしアマテラス君も大丈夫だろう。
「うわぁああ!」
スサドが当然落ちた。
「あ、ソーリィ」

仕切り直して。
「今度は羽衣に付けてみよう」
ミーは右の羽に浸した。これでも大丈夫。要は自在に動かせれば良いのだ。
でも、きちんと発動してくれて嬉しい。他にも色々試してみようか。
「ワン!」
アマテラス君も応援してくれている。
「フフフ!奥義も出来るかなぁ!やってみよう!」
爆炎とか?威力弱めで。ミーは羽衣をぶんぶん振り回した。
「あ」
うっかり特大にしてしまった。
ぶぅわ!!
「うがぁあああー!!」
スサドは黒焦げになった。
「あ、ソーリィ」

「…はぁ、ふう、月のお方!凄いですね!すっかり出来るじゃ無いですか!」
復活したスサドがキラキラ褒めてくれた。
「アハハ、サンキュー!」
ミーも笑った。
バーン。と出してあった輝玉が爆発した。
「ぐはっー!!」
あ、導火線…長くしたの忘れてた…。


「さあ!行こう!!」
「ワンッ」
色々試した結果、とりあえずミーは長ネギを手にこの建物を攻略にかかった。

異空間を出て筆技を使うのは初めてだった。
筆神達は、ミーに免状を渡した後は勝手にやれといった感じだった。まあ、ミーは陰陽師なので基本を覚えてしまえば使用や応用には問題が無いと踏んでいた。
実際、今使ってみても大丈夫そうだ。

「月のお方ーぁ…」

あっ。うっかりスサドを巻き損ねて落としてしまった。
…ってユー、飛んで!!

■ ■ ■

さて、ミー達は最上階へ到達した。

スサドを落とすこと十七回。長ネギの感触にも慣れて来た。
霧隠、迅雷、恵雨などの忘れがちな筆技も全て試したが、大丈夫そうだ。

筆技で残る問題は花咲と、あとは…光明のみだ。

ミーは延びたスサドを小脇に抱え、アマテラス君に聞いた。
「ミーにも光明は使えるのかい?それともアマテラス君限定?」
「ワウ?」
アマテラス君が首を傾げた。
「あ、ああ。丁度ここからなら夜空が見えますよ、月の方」
気がついたスサドを下ろした。彼は意外とタフだ。
ミー達は、今何故か天守閣へ行くための外階段を登っていた。
「じゃあ…そこのバルコニーに出たら試してみようか?」
「ワン!」
アマテラス君も乗り気だ。程なく広めのバルコニーに出た。
周りは漆喰の背の低い壁だ。ミーはその上に乗っかる。
「おっと」
「気を付けて下さい」
スサドがはらはらする。
「アハハ、ヨシ、じゃあ上の方に描くよ」
ミーは星空を見上げた。
そして、はっとした。

「凄い…天の川だ」

筆技修行に夢中で気がつかなかったが、そう言えば今日は七夕だった…。
ここに来て初めての時は雨だったので、タカマガハラの天の川を見るのは初めてだ。
月の伝承を思い出す。

ミーは微笑んだ。
「…、恋人達のスィートな時間を邪魔したらいけないね」
振り返り、ストンとバルコニーへ下りる。

「クウーン?」
アマテラス君が不思議そうに首を傾げている。ミーは首を振った。
「フフフ、ミーは光明は…使う必要が無い。それはユーの仕事。そうだろう?」
ミーは光明が使えるか試すのを止める事にした。
「…ワン!」
「うわ!」
アマテラス君が飛びついてきた。
凄い勢いだったので、高下駄を履いていないミーは、尻餅をついてしまった。

「あははははっ」
それを見たスサドが楽しそうに笑っていた。

■ ■ ■

 

頂上の扉の前に来た。

「ふぅ、やっと着いたよ」
ようやく自分の部屋?にたどり着いた。やっと眠れる。
「ワン!」
ミーが扉を開けると、アマテラス君が先に飛び込んだ。
床にトラップが無いことを祈りつつ、ミーも入る。
「あれ?」

「ウシワカさん!」
ハクバが。
「あら、遅かったですね」
アズミと。
「おや、ご到着ですな」
マルコも。

「あれ?ココってミーの部屋だっけ?」
ミーは首を傾げた。言葉が少しおかしくなってしまった。
キョロキョロすると、確かにミーの部屋だ。
床は板張りだが…、足の短い丸テーブルがあるが…なじんだ寝台や机や鏡台もある。
アズミが言った。
「勝手にお邪魔して申し訳ありません。実はアマテラス様からの贈り物があるんです」
「例のサプライズですよ、うふふ」
ハクバはニコニコ嬉しそうだ。
「ワン!!」
アマテラス君が、てくてく歩き、ミーの見慣れた寝台の下から何かを取り出した。

それは柄が白く、赤色で隈取りの模様が入った筆だった。

アマテラス君がそれを咥え、たしたしと近づいてきた。
「…ミーに…!?」
少し大きめだが常識的な大きさだ…。野菜でも無い。
ミーは震える手で受け取った。

「サンキューッ!!」
アマテラス君を抱きしめる。
「ウシワカさん、実はその筆」
「ワフ」
ハクバが何か言いかけて、珍しくアマテラス君に止められた。
「うふふ!慈母様ったら!」
なんかハクバがクルクル回っている。アズミも両のほっぺたに手を当てて、そっぽを向いている。
…アズミの頰が少し赤い?
何だろう?…まあいいか。
マルコとスサドはいつも通りに微笑んでいるし。

「サンキュー!一生大切に使うよ、いや、今使っても良いかい!」
ミーはものすごく嬉しかった。羽衣をフワフワさせてアマテラス君を見る。

「ワゥ!!」
「オーケー…!」
早速、使ってみる。
アマテラス君に借りた墨ヒョウタンに浸す。
さて、筆おろ…、では無くて、…そう『筆はじめ』は何にしようかな?

そうだ。この筆で例のアレを試してみよう。
桜花「花咲」…、アマテラス君に感謝を込めて、ミーは丸を描く。

「わうぅぅ!」

すると、あっさり『愛!』と出て、アマテラス君がキラキラしながら飛びついてきた。
「えぇ!?」
出来た!?今まで散々やって出来なかったのに?
ミーはベロベロなめられながら、ポカンとする。反射的に撫でる。
「フフフ、筆技、特に桜花「花咲」は、慈愛…心持ちが大切な技なんです」
アズミが笑って言う。
そうだったのか。
なるほど、確かに…それが浄化には一番大切だ。

ミーは笑って飛び跳ねた。
「アハハハ!アマテラス君!ミーはついにやったよ!!」
「ワン!」
二人ではしゃぐ。
慈愛。
月では冷血と言われたミーにも、そんな心があったのか…。

「おめでとうございます!月のお方!」
スサドもやマルコも祝福してくれた。
ミーはアマテラス君にもらった白筆を懐にしまった。
「ふふふ、墨ヒョウタンもありますよ。こちらもアマテラス様からです」
机の方にいたアズミ言った。
「アマテラス君…」
ミーはアマテラス君をまた抱きしめる。
ああ、フサフサ…!
「…アマテラス君。今まで寂しい思いをさせてソーリィ。明日からたっぷり遊ぼう。フフフ!…レッツゴーフォーイット?」
「ワン!」
「ハハ!」
ミーは長ネギを丸テーブルに置きアズミの方へ歩き出した。

カチ。

おや?何か踏ん。
パカッ☆

「ええええーーーっ!」
「っうわぁあああーーっ!?」
ミーとたまたま近くに居たスサドは見事に地下階まで落ちた。まあ、実はミーがスサドの服を掴んでしまったんだけど…。
人間、とっさには飛べないと言う好例だ。

バキィ!!
ミーは頭から落ち首の骨が『ボキッ☆』っと折れる。
「…アゥチ!」
ミーはつぶれたアリのように冷たい床でのたう。
ドスッ!
「グぁは!!」「げふ!」
ミーの上に時間差でスサドが降ってきた。天神族はやはり浮力を持っているのかもしれない。


「ワウッ!?」「月の方っ!?」「ウシワカさん!」「おや?お二人が消えましたね」
上の方でアズミ達が焦っている気がする。

「「きゅー…」」

遠くでバタンと天井扉が閉まる音がし、辺りが闇に包まれた。

上から降ってきたのがマルコだったらミーは死んでいたと思う。
…やっぱりミーには高下駄が必要だ…。

 

結局、それからしばらくして建物は元に戻った。
「あはは。カラクリ屋敷はもうこりごりです!」

スサドはそう言って笑っていた。

〈おわり〉

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