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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト13 タカマガハラ⑪ 【大神】【長編】

バトルは脳内補完お願いします。次回から怒濤(笑)のダンジョン攻略。

この話は出発の準備回みたいなモノかも。

 

■箱舟ヤマト13 タカマガハラ⑪


何とか一命を取り留め回復したミーは、アマテラス君と遊ぶ前にマルコの部屋を訪れた。

もちろん目的は買い物だ。
「ン?」
部屋に入ると、アマテラス君が先に買い物をしていた。

マルコの部屋は、はっきり言ってまるごと商店だ。
部屋の真ん中辺りにカウンターがあって、その向こうにいつも彼は居る。

部屋の奥の棚には所狭しと商品が詰め込まれ、カウンターより向こうの床には木箱が乱雑に置かれている。買い取ったものや在庫などが入っているのだろう。
一方こちら側は、特に何も無い。板張りの壁に小さな絵がいくつか掛かっているだけだ。
スサドの乱行により、今屋敷は大変なことになっている。しかし、各個人の部屋はテイストはともかく概ねそのままだ。

…あれ?このレバーは一体何だろう?
ミーは下げてみようかと思ったが、やめておいた。手を引っ込める。
下手に触ると何が起こるか分からない。このダンジョンはとても危険なのだ。
高下駄のおかげで、ミーはあの悲劇から床のトラップには掛かっていないが、注意するにこしたことはない。

この店はいつ来ても開いている。
以前、シャンプーを切らした事に気がつきミーはほぼ素っ裸で夜に訪れた。その時は、
『ムニャ…いらっはいまへ!夜間はさらにお安くしますよ!』
と、椅子に座ったまま眠っていたマルコに言われた。
値段を見ると、寝ながら価格設定したのでは無いかというくらい安かった。

何だか申し訳ないのでミーは買い物は昼間にする事にしている。
しかし、アマテラス君は容赦無く夜…だいたい食事の後に買い物をしているので、ここでアマテラス君とミーが劇的に出会うのは珍しい。

「ワン、ワン!」
買い物が終わったアマテラス君が意味なく吠える。

「グッドモーニング!アマテラス君」
「ワゥ…?」
アマテラス君がミーの存在にようやく気がついた。途端にミーはキラキラし始める。
「そんなにミーと遊びたいのかい?」
「…ゥ?」
何朝から光ってんだコイツ…?と不思議そうな顔をされた。
でもミーには分かって居る。例のごとくミーの目にはデートする光景は丸見えだし、この前のお礼にアマテラス君と遊ぶ約束もしていた。

つまり、アマテラス君はミーの為に朝から準備をしてくれているのだ!

「フフフ…ミーは今から買い物するけど、待っていてくれるかい?」
「…」
アマテラス君は、…別にどうでも良い。と言った感じに後ろ足で首の付け根を掻いたり、道中扇を広げ持ち物を確認したりしているが、本心では、『ウシワカ今日も大好き!やっと怪我が治って良かったね!早く買い物を終わらせて遊んでくれないかな…?キョルン!』と、首を長くして待っているに違いない。

「アハハ。オーケーオーケー、じゃあ、マルコ」
ミーはマルコに話掛ける。
「おおウシワカ殿、いらっしゃいませ!」
マルコが微笑んだ。
「今日は何をお探しですか?」

「あ、そうだ。この前色々手に入れた物を売ってもいいかい?」
ミーはこの前の一件でかなりアイテムを手に入れていた。
「おお、いつも助かります!」
マルコが微笑む。
ミーは懐から持ち物袋を取り出した。
ミーのは、ウサギ模様で桃色の縮緬布の手のひらに治まるくらいの小さな巾着だ。
爪切りを入れたくて月の露店で適当に買ったのだが、思いの外良かった。
何だか見た目よりたくさんのモノが入る気がするし。…ミーは買い物運だけは良い。

ミーはいらない物を売った。
骨董は全部アマテラス君にあげてしまったので、ミーが手に入れたのは、歯車、真空管集積回路、アンプ、コンデンサ、モーターなど。
…要するに細かいガラクタばかりだったが、まあ今は使わないので売ってしまおう。
「毎度ありがとうございます!」
それでも結構な金額になった。さて、次は買い物だ。
「地図って、入って来たかい?」
コレが目的の品の一つだ。
…タカマガハラの地図。そんなモノがあると聞いた時には驚いた。
出来れば早く手に入れておきたいと思っていたが、ミーがここに来てからずっと売り切れだった。この店に来るのは久々なのでもしかしたらあるかもしれない。

「ああ!有りますよ!やっとアマテラス様が見本を譲って下さいました」
「ワウ」
コケッ!
ミーはちょっとコケた。
「ユーが持ってたのかい!」
どうりで入荷しない訳だ…。
マルコは細かい物は自分で作って売っていたりもする。石けんとか。油とか。

地図は見本がどこかに行ってしまったので複製が出来ないと言っていた。
ミーはてっきり原本が書庫のどこかとか、倉庫とかに置いてあるモノだと思って、マルコに探してもらうように頼んでおいたのだが…。

マルコに聞くと、アマテラス君は天岩戸にしまい込んだモノの、何処にしまったか忘れて居たようだった。…相変わらずのお茶目さんだ。
でもそんなコトを言いつつ、きっとミーの為に頑張って探してくれたのだろう。
「アハハ!サンキュー!」
ミーは感謝の投げキッスをした。
アマテラス君はミーを待つのに飽きたのか、あくびをしてそこら辺に丸くなっていたが。
そうだ、買い物中だった。ミーはマルコの方へと向き直る。

「じゃあ、一枚もらうよ」
ミーはチャリーンと小判で地図を買う。それほど高くない。
ここに来てから約五年…。手に入るのが微妙に遅い気もするが、これから役に立つだろう。タカマガハラの詳しい地理が分かれば、アマテラス君とデートできる場所が増える。
「毎度アリ!」
マルコが言った。
「そうだ、アズミに聞いたんだけど、朱墨や白墨?ってあるかい?」
ミーは聞いた。

アズミが神墨にはいくつかの種類があると言っていた。
アマテラス君は興味が無さそうに寝ているが、ミーは試しに使ってみたいと思う。

「ああアレですか。申し訳ございません。今は無いですねぇ…。大変希少なモノですから」
「なら仕方無いね。あ、どのくらいするんだい?」
希少なのでやはり値も張るのだろうか?
「そうですね…」
マルコがそろばんを弾く。
えーと?
一つが、妖怪牙で百五十本分くらいのようだ。
まあそのくらいはするだろう。

「じゃあ、今から色々遺跡を回って牙とかお金を貯めようかなぁ…?もし入ったら教えてくれるかい?」
ミーは言った。鍛錬にも丁度良い。
「はい、もちろん。いつになるかは分からないのですが」
「まあ、いつでもオーケー」
そんな感じで、ミーは他にもいろいろ必要なものを買った。

買い物を終えたミーは、バサリと桃色の扇子を開く。
これは巾着とセットになっていた。

「うーん、あと足りないものは…」
と、買い忘れが無いか確認していると、アマテラス君がミーの近くにやってきた。
ミーを見上げて、クゥーン?と首を傾げる。
どうやら、ミーの持ち物が気になるみたいだ。
「浮気の証拠なんて無いよ、アハハ!」
ミーは笑ってしゃがみ、扇を床に置き彼女に見せてあげる。
「ワウ」
と、アマテラス君も自分の扇をポンと出して、床に置いた。
どうやら違いが気になるらしい。
ミーは微笑し、説明を始めた。

「ほら、ミーはココではメインキャラ扱いだから、手に入れたアイテムや設定?…ってよく分からないケド、それをコレで確認出来るんだよ」
巾着と扇は連動していて、アイテムを巾着に入れると自動で扇の内容が更新されていく。
「まあ、アマテラス君とだいたい同じだと思うけど…ミーの体力ゲージは太陽器じゃない」

ちなみにアイコンは変更が可能だ。今はウサギにしている。
「わう」
アマテラス君が興味深そうに見つめる。
「フフフ。墨はユーと一緒だ。ユーが早墨ヒョウタンをくれたから、金の縁取りがしてあるね!」
「ワン!」
アマテラス君が嬉しそうにする。
そう、アマテラス君はミーになんと黄金に光る『早墨ヒョウタン』をくれたのだ。
まあ単にアマテラス君が《通》なので使ってなかったから、だけかもしれないけど…。

「そうそう、ミーは神様じゃないから、幸玉で墨を強化できない。だけど、ほら、墨の下にあるバーを見て」
ミーは、体力、墨、その下にもう一つゲージバーがある。どうやら墨を手に入れた為、ひとつ下にズレたようだ。
コレは記号では無く、緑色の色で現され、ゲージの横に六桁の数字が付いている。

「アウッ?!」

アマテラス君が何か変な声を出した。どうしたんだろう?
「??まあ、コレがミーの神通力ゲージだよ。今は病み上がりだし八割くらいしかないね…。まだ出来ないけど、いずれはこれを墨の代わりに使える様に修行していくつもりだよ」
ミーはニコニコと未来の展望を語った。

「グゥ…!!!」

アマテラス君が今のうちにミーを殺っておく気になっている。
体を低くし、しっぽを回す。

ミーを誘っている。

「オーケー!!!行こう!」
「ワンッ!!」
ミー達は走り出した。

忍者屋敷から飛び降りる。

タン!

着地したミーは剣を抜き、軽やかに構える。
笑う。
「アマテラス君!レッツゴーフォーイット!!」

アマテラス君が、大きく、低くうなった。

■ ■ ■

「行くよ!」

ミーは光剣と刀を構える。気が錬られ周囲の草がバタバタと揺れる。
「グゥル!!」

先に動いたのはミーだ。短刀を複数飛ばし、地面を駆ける。
カキンッ!とアマテラス君が一閃で払う。
「はぁ!」
その間にミーはアマテラス君に詰め寄っている。光剣を振り上げ飛ぶ。
アマテラス君が下がり、攻撃こそ防御とばかりに真経津鏡でミーを打とうとする。
「ギャイン!?」
アマテラス君がいきなり悲鳴を上げた。
ミーが光剣を振り上げた際に、神通力を込めた札を投げたのだ。
「アハハ!ソーリィ、たまにはこういうのも良いだろう!」

呪符はアマテラス君にの額に張り付き、バチバチと電気を帯びている。
ひるんだアマテラス君をミーは光剣で切りつける。
アマテラス君は丈夫なので、殺しにかかる。

「キャウ!」
足、胴体。アマテラス君の爪が大地に後を残す。
身を返し、背後から首を横なぎに払う。
「ガ!!」
体勢を崩したアマテラス君の両目を、逆手に持ち替えた刀で引き切ろうとする。
しかし、即座に身を引き体を沈め避けられ、アマテラス君の耳を少しかすっただけだった。
ビ、とアマテラス君の耳の端が切れ、小さな血玉が飛ぶ。
「グゥ!」
アマテラス君が躱せ身で離脱する。

ミーから少し離れたアマテラス君が神器を替えた。
剣だ。
天業雲剣…。フフ、そうかい?
お前の力を使ってみろ、見てやる。…低く呻るアマテラス君の言葉が聞こえるようだ。
アマテラス君は今日はミーの筆技が見たいようだ。
バチバチと、雷を纏う最上級の剣に換え、ミーを挑発してきた。

アマテラス君の息遣いを感じる。
ミーは構えたまま、静かに横へと数歩進む。普通ならここで攻守がぐるりと入れ替わる。
…天業雲剣の剣撃を一度でも喰らったら、今のミーには相当に痛い。

アマテラス君の背が煌々と光っている。
剣に力を蓄めているのだ。
こういうときは、まず裏神器や百舌落としを警戒し、アマテラス君の出方を見る…。
もしくは、短刀を投げ、または筆技を使い、アマテラス君が剣に貯めた力を逃がしてから攻撃する…のが賢いやり方だ。


「アハハハハっ!!!」
そんな事、ミーは一度もやったこと無いんだけどね!


ミーはかまわず飛び込み切りつける。
上に高く飛び光剣を振り下ろす。今は百舌落としをされる心配は無い。
「ゥ!」
アマテラス君はミーの攻撃に耐え、力を溜め続けている。
ミーが袈裟切りにした刀を返し、再び天へ光剣を振り上げた瞬間、ブン!と雷を纏った天業雲剣が宙を飛ぶ。

即座にミーは刀を鞘に収め体を低くしゃがめて避ける。
刃がミーの羽衣を少し切り裂く。ちぎれた布が風でふわりと舞った。
バチバチ!と天業雲剣の電流を感じる。
そのまま空中でカクン、と糸で引いたように剣の軌道が変わり、ミーに振り下ろされる。
ミーは後ろに引き避けようと、
「あっ!!」
バチィッ!と迅雷をお見舞いされた。ダメージは無いが視界が光に奪われる。
ミーはとっさに手を地面に付き横にハネ飛び距離をとる。
ミーのいた位置に剣が振り下ろされ草花が散った。

ノータイムでヒュ、と風切り音がする。平行に進む剣にアマテラス君が乗っているのだ。
…裏はやはり七支刀か!

ミーの予見は戦闘中に使う事も可能なのだ。
七支刀がミーの動きを追尾する。裏剣のスピードはやっかいだ。
だがすでにミーは、天業雲剣の攻撃を避けたときに白筆を用い、筆技「霧隠」を発動させていた。時がゆがみ、アマテラス君の速度が遅くなる。
ミーは難なく七支刀の攻撃を避けた。

ミーは、そのまま左手に持った筆でスーッ、と一閃。
「キャインッ!」
アマテラス君が跳ねる。
筆技のやっかいな点は不可避であることだ。
今はミーとアマテラス君の二人が筆技を使える。しかし紙に見立てる「世界」は一つ。何が起こるかというと。

ブォ!!
突風が吹いた。今のはもちろんミーではない。アマテラス君に「紙」を奪われたのだ。ミーは防御し強烈な風の中踏みとどまる。
「ミーには筆技は効かないよ!」
ミーもお返しに…!
「ウ!!」

「うわ!」
ザンッ!!

ミーも疾風を起こそうと思ったが先を越された。筆技発動中のミーはうっかり一閃を喰らってしまった。やはりアマテラス君の方が筆技に慣れている。

バシュ。
「あっ!!」

また喰らった。ミーの服が切り裂かれる。もしかして趣旨を忘れてる?
ミーに筆技を使わせてよ!!
しかしそんな事お構いなしに、アマテラス君がミーにバシュバシュと一閃ばかりお見舞いしてくる。

ミーが、わざと避けないと分かって調子に乗ってきたのかも知れない。
バシュ
バシュ
バシュ
バシュ

「あっ、あっ!?ちょっと!ノー!」
しかし、ミーの服がそのたび減っていく…。

「アマテラス君!真面目に、やってくれないかなぁ!」
さすがにミーはたまらず、服を押さえアマテラス君に抗議する。
「ワウ!!」
イヤな予感。大技!?
「ノーサンキュー!!」
ミーはアマテラス君に一閃をした。ギャウ!と鳴きアマテラス君がくらう。
ふう。競り勝った。
「ユー、空気読んでくれないかなぁ…!今回はミーが筆技をするんだよ!」
ミーは光剣と白筆をブンブン振って怒った。

きっとイッシャク君もそれを望んでいるはずだし!
…まあ、今、彼はぐっすり眠っているんだけど。

「ワン!」
あ、大破魔札?そうですか。
面倒だからって、それはひどいんじゃないかなぁ…。

全てのフラグを壊す凶の札をアマテラス君が投げつけた。


■ ■ ■

「アマテラス君、次からはきちんと遊ぶ前にルールを決めよう…」

ミーは右手に筆を持ち、左手に持った羽衣を直しながら言った。
…大破魔札を二回使われた後、最終的に下着一枚になるまで弄ばれた。
かわいそうなミーは、痣が付いたり、擦過傷があったり。踏まれた足跡があったり。
「アゥ?」
アマテラス君は悪びれず首を傾げている。
ポアッとそっぽを向いて、あくびをしたり。
もしかして、狙ってやったのかなぁ…?
素知らぬふりをしつつ、時折、「ザマ見」と言った感じにこちらを見ている気がする。

…目を狙ったり、いきなり札を使ったりしたのを怒っているのかも知れない。
もちろん、本当に目に当たりそうになったら寸止めするつもりだった。
でもアマテラス君なら当然避けられるし。

ミーの控えめな愛情表現なのに…。

「ハァ…、ソーリィ。ちょっとした趣向だよ!ゴニョゴニョ…だけどやぱっりユーって、ミーを虐めて楽しんじゃうタイプなのかなぁ、お転婆なアマテラス君超萌え!ゴニョゴニョ…!」
ミーは腕を組みつつ殊勝に謝った。

ボロボロにされてしまった衣服を画龍で直しながら、先程の戦闘について考えた。
実践してみて分かる事もある…とはいえ。
使える『紙』…いや、『世界』は共通か。
これはとても不便だ。筆技同士の戦闘にこんな弊害があるとは思わなかった。
…きちんとルールを決めないと今回の様に紙の奪い合いで終わってしまう。

だが、ミーが「紙」を使わずに筆技を発動させる事が出来る様になれば、この問題も解消されるはずだ。
それに、戦闘中に刀を筆に持ち替えるのも効率が悪いので何とかしたい所だ。
アマテラス君のしっぽがちょっとうらやましい。ソレがミーにあれば、ミーは迷わず使っただろう。
しっぽってどうやったら生えるのかなぁ?頑張ってみようか…。

ミーは、そんな事を考えつつ直した衣服を身につけた。

「さて」
後は髪を直し、羽衣を頭に取り付けるだけだ。
すっかりばらけてしまった長い髪を手櫛で整える。…本当に丸裸にされたのだ。
ミーは自分の後ろに置いた羽衣に手を伸ばす。スカッ!という音がした。
…あれ?
一番初めに直して、ここに置いたと思ったのだが…。
後ろ手で地面をペタ…?ぺた?ぺた??と触るが何も無い。ストレンジだね?

振り向くと、アマテラス君が少し離れた場所でミーの羽衣を咥えていた。

「ワン!」
咥えた羽衣を一度地面に置き。
アマテラス君がしっぽをパタパタと振って短く吠える。

また咥えて、シュタシュタと駆け出す。
「ヤレヤレ」
ミーは土を払って立ち上がり、気まぐれなアマテラス君を追いかけた。

■ ■ ■

「アハハ!!もう、返して!」
「ワウ!?」
ミーはアマテラス君のスキを付いて、羽衣を取り返した。
「うわ!」
勢い余ってポテンと草の上に転んだ。
「ワフ!」
ぱしっとアマテラス君がミーの手からキャッチした。
あ、また!!取られた!
アマテラス君がそのまま振り回して羽衣にじゃれつく。ああ、布が体の下に!
…土が乾いていてまだ良かった。

少し離れた場所で、アマテラス君が羽衣を足下に置く。
アマテラス君はついに羽衣をゲットした!

「アォーーーーン!!!」
プフフフフ!これぞ完全勝利の雄叫びでィ!

アレ?
ミーは首を傾げ、耳を押さえる。
今『大当たり!』って感じの音楽が聞こえた気がした。
桜の花びらがヒラヒラ飛んだ気もする。それは良い。

でもミーの…気のせいかなぁ?

なんか緑のゴミみたいな物がアマテラス君の鼻先で跳ねていたような…?
幻…??イヤ、これもある種の予言かな…?
…だとしたらかなり不吉な未来だ…!!
震えるミーを余所にアマテラス君はやたら大変、何だかとても満足そうだった。

仕方無い。今日はあきらめよう。
しょんぼりしてしまったミーは、俯いて羽衣をかぶろうとしているアマテラス君に言った。

「アマテラスくんー↑。ミーはそろそろハクバの手伝いをするからー↑」

ミーが戻ろうとする気配にアマテラス君が駆け寄ってくる。
「ワウ?」
羽衣を適当に頭に乗せたまま首を傾げる。
「ちょっとゆがんでるよ。ハイ。気が済んだら返してね」
ミーはアマテラス君に乗っかった羽衣を直し、ハタハタと土を払って、普段使わないアゴ紐を天狗さんのかぶっている小さな帽子から引っ張り出して、アマテラス君のアゴの下で結んであげた。
「アハハ!良く似合ってる。じゃあ、一緒に行こうか」
「わう!」

ミーは羽根付きのアマテラス君を抱きかかえ、一瞬で消えた。

■ ■ ■

「ただいま」

ミー達は居間に現れた。
「お帰りなさい、アマテラス様、月の方」
アズミが居間に突っ立っていた。
「あら?」
アマテラス君がワン!とアズミを見上げる。
「まあ。とてもよくお似合いですよ、ふふふ」
「ワウ!」
アズミが羽衣をかぶったアマテラス君ニコニコ笑って撫でた。
アマテラス君も嬉しそうだ。

…アズミには「花咲」が効くのだろうか?
ミーはふと思い立って、アズミに丸を描いてみた。

「あら!月の方!」

えっ!
アズミがキラキラと駆け寄ってきて、ミーを抱きしめて、ミーを撫で撫でした。
「長い御髪もお似合いですよ!ふふふっ」
「…」
どうしよう。大変な事をしでかしてしまった。
アマテラス君がカクンと口を開けている。
「あ、アマテラス君!イヤコレは!筆技だよ!」
ミーはアズミに抱きつかれながら、アセアセと必死に言い訳をした。
アマテラス君のアゴは落っこちたままだ。

筆技の効果が終わり、アズミは何事も無かったかのように元の位置に戻った。
「ソーリィ…!」
ミーは心の中で彼女に土下座した…。
…他の天神族に見られていなくてよかった。

ミーは「花咲」はアマテラス君限定にしようと誓いを立て、隠し扉から調理場に入った。
「あら、ウシワカさん!おかえりなさい」
「何か手伝う事はあるかい?」
「じゃあ、ソレを全部みじん切りに…」

ミーは料理を手伝いつつ、ハクバに幽門扉の事を聞いた。
ハクバは過去の事を思い出せるので、以前見つけた物意外で心当たりは無いかと訪ねた。
「えーっと…」
ハクバが思い出す。
ちなみにアマテラス君は調理場の片隅で、ハクバを手伝うミーを監視している。
背後からの視線が痛い。
「ああ!確か…東の森に…??あら?違ったかしら」
ハクバは手を打ったが、首を傾げた。うーんとうなっている。
「すみません、おぼろげに青い外壁の大きな建物が浮かんだんですが…、ちょっと場所が思い出せません。幽門はその中の土の有るところにあるみたいです。建物なのに土?…地下でしょうか?」
青色。地下…。
「青って、どんな感じの?」
「そうですね、ピカピカの青錆色?」
ちょっと微妙な表現だが、何となく伝わった気もする。
「なるほど…大きな建物なら、見つけたら分かるかな」
「ええ。形は前のお屋敷によく似てると思います」
それなら大丈夫そうだ。
ミーは方舟ヤマトや月の資料と共に、もう一度、幽門扉についても調べ直すつもりだった。

タカマガハラにオロチが襲来する。

月で見た予言。その先が、どうなるか見られないだろうか…?
もしくは…。
…いや。時を渡るなど不確実な方法にすがっても仕方が無い。
ファンタジーじゃあるまいし。ヤマトで皆を逃がす方がよほど現実的だ。

ミーは過去の遺物は全く当てにはしていなかったし、タカマガハラの七不思議の調査のついでくらいだった。

その時、もう少し幽門扉についてハクバに詳しく聞いておくべきだったのかもしれない。
ハクバは、前世の記憶を『知っている』のでは無く『思い出して』いたのだ。
つまり…いくら沢山前世の記憶があっても、今のハクバ自身は『聞かれなければ思い出せない』と言う事なのだ。
ハクバは以前自分でそう言っていたのに。
…ミーがそのことに思い当たらなかった事が、今でも…いや。今だからこそ悔やまれる。

「サンキュー、ハクバ」
これだけ分かっていればそのうち見つける事が出来るだろう。
ミーは礼を言った。

「いいえ、また何か気になる事があったら聞いてください」
ハクバはにっこりと笑った。

ミーは振り返った。
「あれ?」
アマテラス君は何処へ行ったのだろう?
ミーを監視していたはずのアマテラス君がいなくなっている。

「…!っ!!アマテラス君ーーーーっ!!!」

結局、その日ミーはひたすらアマテラス君に謝り倒した。
五千回は土下座したと思う。

すねたアマテラス君がミーに羽衣を返してくれたのは、かなり後の事だった。
まあ、途中で何処に隠したか忘れていたみたいだったけど…。
その間、ミーは羽衣無しで過ごさなければいけなかった。

その時のことは、イッシャク君が眠って居る間に、全て語ってしまおうと思う。
ミーが、アマテラス君といかにして仲直りしたのか。

準備はオーケーかい…?

〈『遺跡編① 青錆色の遺跡』へつづく〉

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