読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト16 遺跡編③ 青錆色の遺跡2 【大神】【長編】

続きです。今回ウシワカ視点じゃないのは元に戻すタイミングが分からなかったからです…。遺跡編は次で終わり、一回区切りで元のほのぼのに戻ります。

え、ここなの!?ってドラクエっぽいのでこんな事があったような…。

■遺跡編③ 青錆色の遺跡2

洞窟を抜けた先の窪地に、青い遺跡があった。
辺り一帯が山に囲まれ、なだらかな盆地のようになっている。
…これは分かりにくい。
この深い山を普通に調べていたら、もっと時間が掛かっただろう。

「月の方はきっと、空から見つけたんですね!」
「ワウ!」
アズミは無事遺跡にたどり着けてほっとした。
かなり洞窟の探索に手間取ったのだ。

アズミを乗せたアマテラスは、山の中腹から建物の前まで来た。
日が暮れそうになったので、また光明を使う

アズミは入り口の前で、アマテラスから降りた。
扉を光剣で叩き切った跡がある。
「月の方はここにいらっしゃるようですね!」
「ワン!」
アマテラスはアズミを乗せて、遺跡に飛び込んだ…。

「あら?意外と狭い…」
「ワゥ…」
中はアズミ達の正面に立派な階段があるだけだ。
アズミはアマテラスに乗ったまま、コンコンと壁を叩いてみた。
「壁は厚いですね…けどやっぱり、向こうに部屋があるのでしょうか?アマテラス様、上に行きましょう」
「ワン!」
アズミ達は二階にやって来た。
「床の色が違いますね。フフフ。外に掛かっていたカーテンと同じです」
「ワン」
沢山部屋がある。
「月の方ー!いらっしゃいますか-?」
「アォ…?」
しーん…。
返事はない。
「一部屋ずつ見ていきましょう」

アズミ達は、右端の部屋でアマテラス像を見つけた。
「スイッチが押してあります…月の方が押したのでしょうね」
もう一度押してみたが、元には戻らなかった。部屋をさらに調べ、左端の部屋に来た。

「あら?」
「わぅ」
そこには、アズミにそっくりな像が建っていた。
「まあ、私にそっくり。どうしてこんな所に?」

アズミが、アマテラスから降りて立つ。自分より少し大きい像を見上げた。
「クゥーン??」

両手を胸の前で組み、何かを持っている様なポーズだ。
よく見ると、何かが差し込まれていたような穴が空いている。
その差し込まれていたものは、どこかに行ってしまったようだ。
コレも、遺跡のどこかにあるのだろうか…?

アズミは首を傾げた。
「ワン!」
像の後ろに回り込んでいたアマテラスが吠える。
「あら、スイッチがありますね」
見ると、背中の真ん中辺りにスイッチがある。
「…月の方は、こちらを押さなかったようですね?フフフ。忘れたのかしら?じゃあ、押しますよ」
「ワン!」
アズミはにっこりと笑って、スイッチを押し込んだ。

カチッ!

琵琶と、笛の音が聞こえる。

「…え?」

「グゥゥゥゥ!!」
アマテラスが唸る。
ヒュッ!
何か輪のようなモノが風を切った。

「きゃぁ!?」
風が部屋を渦巻く。
風にあおられたアズミが悲鳴を上げる。

「妖怪!?」
その時、虚空から緑天邪鬼が二体、赤天邪鬼が一体。アマテラスの背後に現れた。
アズミはさっと像の後ろに隠れる。
アマテラスは即座に緑天邪鬼を真経津鏡で攻撃する。
バシィッ!バキッ!!
片方をなぎ払い宙に浮かせ、そのままもう片方を攻撃。
仕上げの一閃をくらい、二匹の妖怪が同時に切り裂かれた。
一匹残った赤天邪鬼も、一閃で葬る。
こんなザコはアマテラスの敵では無い。
しかし。
「きゃぁああ!」
像の後ろに居たアズミが悲鳴を上げた。
吹きすさぶ風が、しゃがんだ彼女の羽や肩を浅く切り裂いたのだ。
「ワゥ!!」
アマテラスが、アズミを放り投げて背に乗せた。そのまま、裏神器を道返玉に替え、風に連打攻撃を浴びせる。表は沖津鏡だ。

アマテラスの攻撃を受けた風が本来の姿を現す。
自分の体躯より大きな鎌を掲げた小さな妖怪、それが三匹、アマテラスの攻撃を受けてバラバラに散った。辺りには竜巻が渦巻いている。
鎌鼬!」
アズミが妖怪の名を叫ぶ。
早い!

アマテラスが躍り出る。
道返玉で一体に遠隔攻撃をする。その時、竜巻がアマテラスを巻き込んだ。
「!!」
アズミが伏せる。飛ばされないように羽を縮め、思わず目を閉じた間に、三体の鎌鼬が連続で斬りかかってきた。
「ギャィ!!」
アマテラスがダメージを受けた。その隙に鎌鼬は元の輪に戻る。
「グゥ!!」
アマテラスは突進をしつつ、疾風を使い、鎌鼬の纏う炎を振り払った。
そして敵がひるんだ隙に容赦無く鏡で殴打し、輝玉で吹き飛ばす。
部屋全体を大爆発が襲った。
「きやぁあ!!」
思わずアズミが叫ぶ。

…後にいくらかの花を残し、鎌鼬が消滅した。
「ウー…!」
アマテラスが息を吐き止まる。

「ああ、怖かった…、アマテラス様、ありがとうございます」
振り落とされないようにアマテラスの背にしがみついていたアズミはようやく顔を上げた。
「ワウ!」
「でも、いきなり妖怪が現れるなんて…。もしかして、あのスイッチを押してしまったせいでしょうか?アマテラス様、とにかくこの部屋から出てみましょう」
アマテラスはアズミを乗せたまま、その部屋を出た。
二階を駆ける。
今までは感じなかった、妖怪の気配がする…。
あのスイッチが原因だろう。罠だったのだろうか?
「月の方ーー!」
走るアマテラスに乗りながら、アズミは呼んだ。
早く、彼を見つけここから出た方が良い。

しかし、返事は無かった。

アマテラスが曲がり、三階へ続く階段の前で立ち止まった。
「…!」
そこにも、妖怪が。
「きゃ…!」
アズミはその風貌に悲鳴を上げそうになった。
長い黒髪…、もたげた首。
紅色の傘を腰に差し、階段の半ばからずるずるとこちらに来る。女の様な妖怪。
あれは…、そう。書物で読んだ…、
「姑獲鳥…?」

きぃぃイイイーーーーィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

妖怪が何事かを絶叫した。
長い爪を振りかざし、腰の傘を抜き放ち、アマテラスに襲いかかる。
「きゃぁあ!!」
アマテラスが飛び上がる。アズミが必死にしがみつく。
表神器に据え替えた道返玉を伸ばし、連打する。…効いていない!
そのまま間合いに飛び込んで来た姑獲鳥が爪でアマテラスを引き裂こうとする。
アマテラスは躱せ身で離脱する。その時。
「あっ!」
ドサッ。
アズミがアマテラスから落ちてしまった。姑獲鳥がソレを狙う。
「ワウ!!」
アマテラスはとっさに疾風を起こした。その隙にアズミの側に戻る。
「ワンッ!」
アマテラスが部屋の隅を見やり、吠える。
「はいっ…!」
アズミは何とか起き上がり、そちらへ向かおうとする。しかし。

そちらにもう一匹。妖気が渦巻き、巨大な影が現れた。

アズミの倍はある、烏のようなそれは、刀を振り上げた…。


■ ■ ■


「…あ」
アズミは目を見開いたまま動けなかった。

動いたのは、妖怪だった。
ただしそれは、何か金色のものに刀ごと胴体を真っ二つにされ、崩れると言う動きだった。
「怪我は無い!?」

「…月の方っ!!」

丁度アマテラスが、姑獲鳥を葬ったところだった。
「ワゥ」
アマテラスが振り返る。

「……やあ、アマテラス君!」
ウシワカは、とりあえず挨拶した。
彼は髪を高い位置で適当な紐でひとくくりにして、何故か上衣を脱いで単衣に袴という姿だった。

「…」
無反応だった。
アマテラスの姿を見て、今すぐ駆け出したかったウシワカは、立ち止まってしまった。
「た、助けに来てくれて、サンキュー…」
「わう」
アマテラスが言ったのはそれだけだった。
ウシワカは二の句が告げられないでいるようだ。

「ご無事で良かった!」
アズミが嬉しそうに駆け寄る。
「…」
ウシワカは、アマテラスを見つめたまま動かない。固まっている、と言った方が正しい。

「あの?お怪我はありませんか?」
アズミが声を掛ける。
ウシワカがパッと振り向いた。
「あっ、アズミ!サンキュー!ユー達のおかげで地下から出られた」
聞くと、こちらのスイッチを入れずに地下に落ちてしまい、抜け出せない状況にあったらしかった。アズミによく似た像のスイッチが、地下階から地上に戻る仕掛けの作動装置になっていたのだ。
「あら、まあ」
アズミはほっとしたような、ウシワカのドジっぷりに微笑んでいるような。

「本当に、出られなくて困ったよ。ユー達が来てくれなかったら危なかった…」
ウシワカは礼を言いながらも、あくびをしているアマテラスが気になるようだった。
ふと、アズミの肩に目を留めた。
「あ、少し怪我してるね。ソーリィ」
「あら。そう言えば…」
ウシワカは懐から持ち物袋を出し、アズミの怪我を手当した。
その間も、丸くなったアマテラスを横目で見ている。
アズミはその様子に少し違和感を感じた。
ケンカ?しているとはいえ…。

…いつものウシワカさんなら、アマテラス様に飛びつきそうなのに…。

「はい、オーケー。…本当に助かったよ」
「いいえ。次からは、アマテラス様とご一緒に出かけてくださいね。行き先もきちんとおっしゃって下さい」
「ソーリィ。…気をつけるよ」
ウシワカはかなり反省しているようだった。
そして、そのまま黙り込んでしまった。
…何かを考えているような…?
しばらくの葛藤の後、ウシワカは立ち上がり、アマテラスの側に行った。
ひざを付いてアマテラスに話かける。
「アマテラス君、ミーは今からこの遺跡を攻略しようと思うんだけど…もし良かったら、ユーも一緒に来ないかい…?」
その目は真剣そのものだ。せっぱ詰まっていると言っても良い。

「ワゥ」
アマテラスは頷いたようだ。立ち上がった。
途端に、ウシワカが無言でアマテラスに抱きつく。

見ていたアズミは首を傾げた。
この様子は…仲直り、とは少し違う気がする。
そう思いつつ、アズミは進み出て言った。
「では、私はどうしましょう?妖怪が出てくるこの状況では、私は先程の様に足手まといになってしまいます。…スイッチは押してしまったら元には戻せないようですし。外で待ちましょうか?」
「いや、日が落ちたら外も危ない。ミーのワガママに巻き込んで済まないけど、ユーも来てもらってもいいかな…?ミーとアマテラス君がいれば、妖怪は心配いらない」
ウシワカが言った。

そろそろ、夜が始まろうとしていた。
光明を使っても良いが、遺跡の攻略にどのくらい掛かるか分からないし、確かに森で一人よりは一緒の方が安全だろう。
しかしなぜ、ウシワカはこの遺跡の攻略にこだわるのだろうか?
そう言えば、飛び出す前にハクバが何か言っていたような…。

「…幽門へ行こうと思っていらっしゃいますか?」
アズミがそう言ったのは、言葉の綾のような物だった。

幽門扉がこの遺跡にあるかもしれない。ハクバがそうウシワカに伝えたらしい。
なら、ウシワカの遺跡の攻略とはすなわち、幽門へたどり着く、そこへ行く事を差しているのだろう…と。
しかし、ウシワカは一瞬、硬直した。
「まあ、折角だし、見つけられたら…。一度、帰っても良いけど。いや…やっぱり帰った方が良いね…」
そう言って、ため息を付いた。アズミに背を向け、アマテラスの方を向く。
「ソーリィ、アマテラス君。やっぱりまた来よう…」

「もしかして」
突然、アズミが言った。

「月の方は、私が幽門の鍵を持っている事を…ご存じなのですか?」


■ ■ ■


アズミは、彼女は聡明過ぎた。

この先程から感じるウシワカの違和感には、きっと何か原因があるのだろう。
…アマテラスの様子も少しいつもと違う。
そう言えば彼は予言者だ。何か予言でもあったのだろうか?
天神族には言わないが、アマテラスとはウシワカはきっと多くの事を話しているのだろう。
そして、ウシワカの目的は幽門扉を見つける事らしい。
なら、私を連れて行こうか迷っているのは?

…もしかして、幽門扉の鍵に関する事なのだろうか?彼女はそこまで閃くように思い当たり。そして先程の質問を投げかけたのだ。

背を向けていたウシワカが、ため息を付き振り返る。

「ソーリィ…、地下に落ちた後、ユーが幽門扉を開ける光景が見えたんだ」
その声には、後悔の響きがあった。
「おそらく、ミーのうかつな行動の結果だ」
そう言ったが、ウシワカには分からなかった。

自分の愚かな行動が先なのか、それとも予言という変えられない事象が先にあったのか。

地下で一人、ずっと考えていた。
ミーは未来をのぞき見出来る…。
自分の行動が原因で、アズミが幽門を開けるという未来が導かれたのか?
それとも、遅かれ早かれ…いずれそうなる定めだったのか?

実はウシワカの目には、皆に語っていないだけで、他にも無数の未来が見えている。
…それには、どういうわけか種類がある。
一つは、時期がはっきり分かる予言らしい予言…オロチの襲来はこれだ。

それ以外の物は、はっと瞬間的に見えるだけの、何時訪れるのかウシワカ本人にも分からない予言。…今回の予言はコレだ。
他にも、いつか皆で平原を歩く。アマテラスに飛びつかれる。
方舟ヤマトの中でアズミと語る。そんな日常的の些末な事など。

そして最後に、これは少し毛色が違うが…自分が進んで見るもの。

だけど、その全てが必ず実現される。
どうしても外れない。…外れてくれない。

「予言…」
アズミがぽつりと言った。

「幽門は地下で、まだ見つけてないけど、ここを攻略したら見つかるだろう。ユーの持っている懐刀で開けてもらっても良いかい?」
懐刀。
アズミは驚いた。
確かに自分は幽門の鍵を、守り刀としていつも持ち歩いている。
…無くさないように。
ハクバが話した訳では無いだろう。
彼女は大昔に「別に、使わないから」と言って自分に箱ごと預けてそのままだ。

アズミは、初めてウシワカに空恐ろしさのような物を感じた。
そして、すぐに彼が今までそれを、できる限り自分達に感じさせないように振る舞っていたのだと気がついた。
「月の方…」
アズミは一瞬、彼を哀れみ泣きそうになって、そんな自分を恥じた。

「はい。…行きましょう!」
アズミは微笑もうとして、微笑んだ。


■ ■ ■

一行は協力して遺跡の三階を攻略し、奥の壁に設置されていた、水流を止めるスイッチを作動させた。

「うーん…つながって無いね。多分あそこだと思うんだけど…」
一旦、地下に飛んで降りていったウシワカが言った。

彼は、水がたまっている地下の奥にそれらしい陸地があったのだと言っていた。
そしてそこの罠が、先程作動させた壁のスイッチで解除されていないか、一応確認に行って、戻って来たのだった。
「ふふふ、ウシワカさん、コウモリみたいに引っかかったんですね」
罠の形状を聞いたアズミがクスクス笑った。
「ワゥ…」
今はアズミをまた乗せているアマテラスも、ニヤニヤ笑っているような気がする。
「……イエス」
ウシワカは苦々しそうに答えた。
この遺跡探検はウシワカの中ですでに、誰にも語りたくない出来事になっているようだった。

「あと、仕掛けらしい物は、アズミの像が持っていたはずの『何か』だけだね。どこかにあるのかなぁ?」
ウシワカがアズミから聞いた像の事を思い出して言った。
さっぱり気がつかなかった…。
何というか、自分はもっとダンジョンを攻略しまくった方が良いようだ…。
ウシワカがそんな事を考えて居ると、アズミが言った。
「もう一度、この館を探してみましょう」
「ワン」
「そうだね」

アマテラスとウシワカとアズミは三人でまた全ての部屋を見直した。
とりあえず、像の手に収まりそうな細い物は拝借して試してみる。
「えーと」
まずはお決まりの長ネギ。よし、ピタリとおさまった!

「うふふふふ、あははははっ!」
しかしアズミに爆笑された。
「ワゥ…?」
アマテラスはポカンとしている。
「…、コレは絶対に違うね…」
ウシワカは微妙な顔つきになり、長ネギを抜いた。

その他にも、燭台や、モップ、ドライフラワーや額縁の折れ端。はたまた扉の引き手。
遺跡の物を片端から試したがダメだった。
「うーん、何か根本的に間違ってるようだね」
「わぅ…」
「ふふ、ふふ、あは!」
アズミはウシワカの行動がツボに入ったのかずっと笑っている。
「…はぁ、でも全部この建物の中は見ましたよね?」
息を整えたアズミが言った。
「あっ、もしかして…?」
ウシワカが何かを思い出した。
「いや、でも…ソレはルール違反じゃないのかなぁ?」
「何かお心当たりがあるのですか?」
アズミが言った。この際どんな些細な事でもかまわない。
ウシワカは外を指さして言った。

「…そんな訳無いと思うけど…、裏にあった小屋の中とかは?」

「ワゥ!?」
「あっ!きっとそこです!!」
アズミが手を叩きアマテラスは飛び跳ねた。
ウシワカは首を傾げている。
「でも、変じゃないのかなぁ?屋敷の中にあるのがノーマ」
「良いんですよ!細かい事は。なんだかソレが冒険の鉄則のような気がします!」
「ワン!!」
冒険初心者のウシワカは首をひねりつつ、アマテラスとアズミに引きずられていった。


そして、一行はその小屋を破壊しまくった。粉々になるまで。
「ありました!」
壁に掛けられて『いた』絵の裏に、像と同じ素材で作られた短剣が収められていた…。


■ ■ ■

画龍で出来るだけ小屋を直し、三人はアズミの像の前に戻ってきた。

「でも、剣か…。…もしかしてこの遺跡、ユーに関係有るのかなぁ?何か覚えて居ないかい?」
ウシワカが短剣を見つめて言った。
幽門があることと言い、アズミの像があることと言い…。
「すみません…私は前世の記憶が殆ど無いので…歌くらいしか」
アズミが申し訳無さそうにした。
「そ、ソーリィ。とにかくはめてみようか」
「ワン!」
ウシワカは笑って、アマテラスを見た。

…大分仲直り出来てきたようで良かった…。
アズミは二人をほっとした様子で見つめた。

カチッ!
その剣はぴたりと治まった。
「オッケー!」
「ワン!」

…しーん。

「ワゥ?」
アマテラスが首を傾げる。
「…何も起きませんね?」
アズミも首をひねった。
「うーん…ぴったりなんだけど…あ、抜けないやコレ」
ウシワカが短剣を引っ張ったが、びくともしなくなっていた。

「ワン!」
アマテラスが、突然思い出した様に吠えた。
「おや、アマテラス君?何か分かったのかい?」
「ワン、ワン!!」
しっぽを振って、アズミに何かを訴えかける。
「ええっ…!歌ですか?」
アズミが、びっくりして飛び跳ねた。文字が見えたようだった。
ウシワカは手を打った。
「ザッツライト!きっとソレだ!」
今、羽衣をかぶっていたら、きっと逆立っていた事だろう。

さらにアマテラスが何かを訴える。
「あの歌ですね。分かりました、やってみます」
アマテラスは無言だったが、文字が見えたのかアズミは頷いた。

そして息を吸う。

(あれ…、この歌は…?)

ウシワカはその調べに首を傾げた。
何処か悲しげな旋律…。
タカマガハラに似つかわしくない、そう思う内に短いフレーズが終わり。

像が羽を広げる
ゴゴゴ、と何か音がする。
「ワンダフル!」
ウシワカの目には、地下であの小島から、片隅にあった岸までの道が水の底から隆起してできた光景が見えていた。

「オーケー、じゃあ行こうか」
ウシワカ達は歩き出した。

アズミは先頭を早足で進むウシワカを見た。
珍しく彼は急いでいるようだ…。
早く幽門を見つけたいのだろうか?

ウシワカは三階から、地下へと一気に飛び降りた。
「あ、月の方…!」
アズミが言う頃には、もう彼の姿は地下の暗闇に溶けて見えなくなっていた。

ストン、とアズミとアマテラスが地下に降りる。
そこは水に囲まれた長方形の陸地になっていて、そこから道が延びている。
「あ、月の方の衣ですね」
アズミが足元に畳んであった着物を拾う。ウシワカに渡そうと、振り返る。

サッ!

ん?今何か彼が拾った?
ウシワカが少しかがんで。何かを懐に入れた。
「…わぅ?」
アマテラスが首を傾げる。

「さあ!レッツゴー!」
途端に元気になったウシワカが進もうとする。
「月の方、コレを」
アズミが着物の上着を渡す…。
「ああ、サンきゅ、」

フリをして、引っ込めた。
「ふふふ。今、何を拾われたのです?見せていただけませんか」
「…!!」
ウシワカは手を出そうとしたまま固まった。

「な、何のことかなぁ?サッパリ分からないよ!」
しかし手をヒラヒラさせ、一つに纏めた髪を揺らしてシラを切った。
「あら?紙の束の様に見えましたが…」
「ドキッ!?…気のせいだよ!!」
ウシワカは冷や汗をだらだら流しながら言った。
「えーと、そう、幽門はこっちだよ!アハハ!」
ウシワカはそそくさと歩いていく。

「アマテラス様!!体当たり!」
「ワゥ!」

ズドン!!

「あっ!?」
アズミのトレーナー的な指示により、ウシワカはぶっ飛んだ。懐に隠していた紙束が辺りにヒラヒラと散った。
「あっ!!あっ!!」
かき集めるウシワカを余所に、その一枚をアズミはゲットした。

折りたたんである。

「ふふふ!読んでみましょう!」
「ワゥ!!」
そして、アズミとアマテラスはソレを広げ読み始めた…。

■ ■ ■

―遺書 下書きその四十三―

アマテラス君、ユーを置いて先立つミーをお許し下さい。
ミーは貴方のプニプニした肉球が大好きでした。あとしっぽとか、鼻とか、耳とか、足とか変な隈取りとか、とにかく貴方は可愛いです。

ユーが床に寝てる時にいつもうっかりしっぽを踏んでしまってごめんなさい。
時折うっかり蹴飛ばしてベッドから蹴落としてしまってごめんなさい。
髪の毛乾かすの面倒になってそのまま寝たときに、いつも乾かしてもらってごめんなさい。
前髪が伸びてきたときにいつも切ってくれてありがとう。本当に感謝しています。

あと、天岩戸の蘇神の像の髭を両方折ってしまったのはミーです。あのナイスな像の上に乗っかってみたかったんですごめんなさい。(←コレはマジでごめんなさい)

あと五年前、冷蔵庫にあったユーの分の鯛焼きを食べたのはミーです。

―貴方のウシワカより―

■ ■ ■


それは、遺書だった。
そして最後に『没。鯛焼きの件は秘密で良いかも!もう時効だよね!アハハ(笑)』
と書いて大きな罰が付けてある…。

「…月の方…」
「グルゥ!!」
呆れたアズミと怒ったアマテラスが振り返る。

…五年前、アマテラスが楽しみにしていた鯛焼き…あれを食べたのはウシワカだったのか。
まさか、その発覚を恐れて天岩戸にこもったのか…!?
アズミが遠回しにそう言うと。
「ノ、ノーー!ソレは誤解だよ!!ミーは!」
「…ゥ!」
アマテラスがそっぽを向いた。二人の間は五メートルほど。…陸地の端と端だ。

真ん中に立ったアズミはため息を付いた。…これで仲直りはまた絶望的になってしまった。
ウシワカはションボリしながら残りの下書きを、とても小さな爆炎で燃やしている。
きっとアレにも色々な事が書いてあるのだろう…。読みたいような、読みたくないような。
まあ、このまま灰になれば永遠に読めない…。
アズミは少しほっとした。
しかし。
「ワウ」

バシャーー!!!

アマテラスがソレを水郷で消し止めた。
「アッ、アマテラス君!?」
困惑するウシワカを余所に、前足で飛ばない様に押さえ疾風で乾かし。
画龍で直し、熟読する。ついでにウシワカを蔦巻きでスマキにして押さえつつ。
「ああああーーーー!!!!ストップ!!!プリーズ!!!」
「まあ!!…月の方こんな事まで!」
ウシワカのうるさい悲鳴を余所に、もちろん眷属であるアズミも楽しみつつ手伝った。

そして読み終えた後。ガタガタぶるぶる震えるウシワカの目の前で。
ボォォォォォォォォォォォォォォォ!!
と超特大の爆炎を使い、燃やし尽くした。

「ワウ!」

「い、イエス…」
そして解放されたウシワカは、歩き出したアマテラスの後に付いていった…。

残されたアズミは、タダ一人天を仰いだ。

…もう少し、この方達を見守りましょう。
そして彼女はそんな事をニコニコ考えながら、ふわりと宙を舞って二人を追いかけた…。

〈つづく〉

広告を非表示にする