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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト19 タカマガハラ⑫ 【大神】【長編】

ウシワカと百鬼夜行(最中は手抜き…力尽きた感)です。後半は相当捏造が凄いですが、正直、オロチ襲来のためのつじつま合わせなので…。矛盾だらけです。 なんかよく分からないと思いますが、そこは適当に雰囲気で読み飛ばして下さいマジおねがいします…。ぶっちゃけ書いてる本人にもさっぱり分かりません。

※ ゲームの設定とはこれっぽっちも関係無い捏造設定です。■3、4話後に一気に二十年後まで時間飛びます。

 

■箱舟ヤマト19 タカマガハラ⑫


「やっぱりノーだね」
ミーは言った。

ミー達は今、青錆色の遺跡だった場所にいる。
ここはもはや瓦礫の山だが…一応、状態を確かめにやって来たのだ。

少し離れた木の下では、アマテラス君が丸まっている。

「これだけ壊れていたら、幽門扉はあきらめるしか無いね」
ミーはアマテラス君の方をふと見て呟く。
「…クー」
アマテラス君は一見、昼寝をしている様に見えるがミーの言葉を聞いている。
ピク、とほんの少し動く耳とぱた、と時折動くしっぽがその証拠だ。
「フフフ…」
ミーは少し微笑んで、彼女に近づいた。

あの後、屋敷に戻ったミー達は服を着替えたり、お風呂に入ったり。
久々の湯船はやっぱり格別だった。…と、そういうことはこの際置いておく。

やはり、あの時ミー達が見たのは未来のタカマガハラなのだろう。

そう見せかけて、実は過去にさかのぼってしまっていた!
…なんて可能性は、アマテラス君が行き先を決められるなら、そして今現在の限りなく平和なタカマガハラを見る限りではゼロだ。

「ハァ…」
ミーはため息を付き、アマテラス君の横に腰を下ろした。

アズミに…悪い事をしてしまった…。

彼女はあれから、ハクバや皆に何も語っていないようだった。
いつも通りに振る舞ってはいるが…遺跡から帰ってから、やはり彼女はあまり元気が無いような気がする。

階段を踏み外す回数が増えたし、昨日は足の小指をテーブルの角にぶつけて地味に痛そうにしていた。窓を閉めるときに羽を挟むのはもはや当たり前になってしまった…。

…これ以上アズミのドジがエスカレートする前に、何か抜本的な対策を講じなければ。

ミーは壊れてしまった遺跡の方を見据えた。
ヤマタノオロチ。ミーとアマテラス君で戦ったとしても、敵は強大だ。

やはり、箱舟ヤマト…?
いざと言うときの為に、この國から皆を脱出させる手段を、本格的に検討しておく必要がある。

だが、彼等を…何処へ?
目下常闇の巣になっている月は論外だ。
あの舟のデータを洗い出し、可能性を探ろう。

ミーはアマテラス君に向き直った。
「アマテラス君、これからミーとヤマトに行こう」
ナデナデして少し揺すってみる。
「…グゥ…」
今度は本当に眠って居るようだった。
ミーは苦笑した。
「まったく、ユーののんびりには困ったなぁ…」

タカマガハラの日差しは今日も暖かく、風は緩やかで気持ちが良い。
さらさらとミーの前髪が揺れる。アマテラス君の毛並は今日もフサフサだ。

しばらくしてミーはアマテラス君の耳をやたらと撫でるのも止め、そっと立ち上がった。

確かこちらの方に洞窟があって、アズミはアマテラス君とそこを通って来た、と言っていた。
その会話をした後、アズミは入浴し直ぐに眠ってしまい、そしてその翌日からほとんど当たり障りの無い会話しかしていない…。

ミーは洞窟に向かい歩きつつ、ミーの抱えている問題点について、改めて考えてみる。

実際にオロチと戦うのはうっかり予言をしてしまったミーや、タカマガハラの大神であるアマテラス君だけだろう。
ポアッとした天神族は戦力外だ。
となると今現在は、天神族にあえて数十年先のオロチの襲来を話す必要も無い。
…混乱させるだけだし、月での二の舞は二度とごめんだ。
なので、大まかな方針が固まったら話す。
「…ゴニョゴニョ…よしこれはオーケー!」

唯一困ったのはドジの増えたアズミだが…。
彼女は今はドジでも基本的にはしっかり者だし、しばらく放っておけば落ち着くだろう。
時間が薬というやつだ。
「…ゴニョゴニョ…まあそのうち機会があったら話す、くらいにしておこう。コレは良い考えだ…!ハァ…」

ミーはそれでも少しトボトボと洞窟の入り口へ向かい歩き始める…。

「?」
と、足元に抵抗を感じ、見るといつの間にかアマテラス君がミーの袴のすそを、はしっと甘噛みしていた。

大変何か言いたげな様子だ。…つぶらな瞳が可愛い。

「…アマテラス君、もしかして聞いてたのかい?」
ミーは苦笑した。
「ワゥ」
何と言っているのかは分からない。だけど咎められている気がする。
本当にそれで良いの?と言われているのかなぁ…?

「フフ、一緒に行こうか、アマテラス君。また遭難するとノーだしね」
いつも通りに、微笑みながらアマテラス君を撫でた。
しかしミーは内心余計に複雑な気分だった。

ミーは所詮汚い、月の民。

ポアッとしたアマテラス君は、こんなミーの事をどう思っているのだろう。


■ ■ ■


「あれ…、この穴はなんだい?」

ミーはアマテラス君が得意げに輝玉三式で爆破して作った穴を覗き込んだ。
もちろん、とばっちりはしっかり喰らってあげた。

その穴からは紫色の怪しげな煙が出ている。

「クゥーン?」
アマテラス君は首を傾げた。
「うーん、そこに亀裂があるから爆破する。なるほど、一応は理にかなっているね。アマテラス君、このストレンジな穴は、アズミと来たときに見つけたのかい?」
ミーは今すぐにでも入りたそうにしっぽを振るアマテラス君に聞いた。
「ワン!」
「あっ」
しかしアマテラス君は、ぶっちゃけ妖気プンプンの大変やばそうな穴にぴょこんと飛び降りてしまった。
「アマテラス君、ウェイト!」
ミーも慌てて飛び降りる。そしてミーは地面に着地した。


そこは広い空間だった。
アマテラス君が景気よく爆破した上階の穴あき天井からの陽光は、ここまでは殆ど届かない。
「タタリ場か…!?」
その穴全体に漂う、紫色の濃い瘴気にミーは顔をしかめた。

少し先ではアマテラス君が唸っている。

「っ!!何だ?」
ミーは煙の向こうに巨大な影を見た。って言うか、あのシルエットは!?
「…っ!?」
ミーは息を呑んだ。
そこにいたのは唐草模様の頭巾を被った、もの凄く蜘蛛っぽい妖怪だった。
周りには桃コノハナが咲いている…。

その巨大さにミーは少々ひるんだ。し、し、しかし、よく見ると蜘蛛では無い!
…、こ、これなら大丈夫…、糸を吐かなければ。タコみたいなモノだ!大丈夫!よし!

びしゅうぅー!
その蜘蛛は口から大量の糸を吐いた。

「アマテラス君ー!!頑張ってー」
隅っこでミーは言った。…まあそう言うわけだ。
「ワン!!」
アマテラス君が嬉しそうに吠える。何と頼もしい大神!
…せめて真面目に戦闘の解説だけでもしよう。

「グゥ!!」
辺津鏡を表に装備したアマテラス君が、敵の足の一本を足がかりにして飛び上がる。

上空にとどまり、「筆技・蔦巻」を発動し。見事な筆さばきで敵が胴体に持つかぎ爪に引っかける。どうやらこの敵はこういう手順で倒すモノらしい。
察するにあの腹の中に弱点があるのだろう。

「ギャイン!」
しかし桃コノハナに蔦を繋ぐ寸前に蜘蛛もどきが回転し、アマテラス君ははじき飛ばされてしまった。辺津鏡で殴打するがあまり効いてはいない。

「アマテラス君!手伝おうか?」
ミーはひたすらクルクル回る蜘蛛もどきの周りを走り回っているアマテラス君に言ってみた。正直アマテラス君ならよほど大丈夫だと思うが…。
「ワフ…!」
あ、ちょっと恨みがましい感じに見られた。

どうやらアマテラス君はこの手のクルクル回る敵が得意では無いようだ。

「仕方無いなぁ…!」
ミーは適当な布で目隠しをした!!よし、コレなら大丈夫。
「ギャフン!!」
アマテラス君に突っ込まれた。
「アハハ!ミーの心眼を持ってすればこのくら」
ミーは見事に回転する足にバキッと当たり吹っ飛ばされた。

バシーン!と壁に叩きつけられてしまった。
「ぐえ…!」

「アウチ…いっ、たたー…」
「…アゥ」
悶絶するミーをアマテラス君がコイツあかん、という風に見ている気がする。

その瞬間、蜘蛛もどきが飛び跳ね、ミー達の居る穴全体が大きく揺れた。

「アハハ、ソーリィ、ソーリィ!久々だったから…本気を出せば…」
ミーの上に、洞窟の天井に生えていた無数の岩棘が落ちてくる。

ミーはそれらを全て華麗に避け、アマテラス君の横に並んだ。
「と、言うわけだよ!さあ、アマテラス君!ミーを乗せて戦うんだ!!」
「アウッ!?」
ミーの言葉にアマテラス君が大口を開けて驚く。

その間にも糸やら足やらの攻撃が届くが、見えなければ怖くない!
「失礼するよ!」
ミーはアマテラス君の上に飛び乗った。
「ワゥ!ワゥ!!」
アマテラス君は冗談じゃない!とばかりにミーを振り落とそうとする。
しかしミーはこの程度では動じない。

「アハハ!コレでミーとユーは一心同体だよ!レッツゴーフォーイット!!」

さあ!戦闘再開だ!!


■ ■ ■

アマテラス君が走り回る。

「ミー達の共同作業!フフ!」
「ワゥ!」
ミーがニヤニヤしていると、アマテラス君が仕事しろ!と吠えた。

「オーケー!」

ミーはアマテラス君の背から大きく飛び跳ね、上空から蜘蛛もどきの後ろに回り込む。
懐から取り出しておいた白筆で桃コノハナと敵の胴体のかぎ爪を繋ぐ。
視界が効かなくともこのくらいなら造作も無い。

『ギィィォオオオオオーーーーー!!!』

回転しようとしていた動きが制限され、不気味な悲鳴を上げ敵がバランスを崩した。
「アマテラス君!」
ミーが言うまでも無く、アマテラス君も「筆技・蔦巻」を発動させる。
「ナイス!」
ミーは降り注ぐ岩棘を避けつつアマテラス君の背に戻る。
「ワゥ!!」
「ヨシ!」
その調子で三本目の蔦を、ミーを乗せたアマテラス君がかぎ爪に掛ける。
「開くよ!」
アマテラス君がどう、と開いた胴体から離れる。


それはまるで腐った花が咲いたようだった。
花の中心には小さな宝舟とその周りを、八つの千両と書かれた橙色の提灯が浮いている。


あの提灯が弱点か!

アマテラス君がミーを乗せたまま飛びはね、花弁に着地する。
辺津鏡で殴打する鈍い音が響く。しかし、あまり効いている様子が無い。
「アマテラス君!一閃の方が早いよ!霧隠を使って!」
ミーは一閃を発動させつつ言った。一度に攻撃するならこちらの方が良い。
「ワゥ!」
さすがのアマテラス君が素早い反応で、すっかり忘れていたらしい「筆技・霧隠」を使い、それに続いて横線を引いた。

バシュ!!

一閃が発動し、提灯の内の半分ほどが破壊された。
残りはあとわずか!
しかし提灯は堅く、何度も攻撃しないと破壊できない。

「っ」
その時。花弁が揺れた。蜘蛛もどきが復活してしまったのか!?
タイムリミットだ。花弁が閉じる。
「アマテラス君、攻撃を続けて!」
しかしミーは言った。同時に光剣を収める。
「!?」
アマテラス君が瞠目した。

笛を。

途端、ミーの笛から発せられたとてつもない怪音波により、ミー達を飲み込む寸前だった花弁が爆発して砕け散った。ついでに宝舟も、残りの提灯も、誘爆し全て吹き飛んだ。

ミーがさらにフレーズを奏でると殺傷能力のある音符により敵の足がなぎ払われる。
実はミーはこの光景が見たく無かったので、目隠しをしたのだ。


「フゥ…」


荒れ狂う轟音が止んだ後、敵は跡形も無く吹き飛び、洞窟の天井にあった岩棘の大半が砕かれ大小の塊となって地面に転がっていた。

ミーは笛を収め、アマテラス君から降りて、するりと目隠しを外す。

程なく土煙が晴れたので、足元を見ると、アマテラス君がきゅうきゅう鳴いていた。
…一応ミー達の周りには結界を張っていたが、突然の事でアマテラス君は耳がキーンとしてしまったらしい。

「驚かせてソーリィ、アマテラス君。ミーの必殺技はどうだった?」
ミーはアマテラス君をしゃがんで撫でて、ニコニコと聞いてみた。
「ガゥ!!」
最低!空気読め!と言わんばかりに、アマテラス君がミーの着物に噛み付きつつ抗議して来た。
「アハハ、ソーリィ!イタ!」
ミーは再び噛まれた。どうやらアマテラス君のお気には召さなかったようだ。

音で攻撃できたら、カッコイイよね!

…という単純な動機で編み出されたこの技は、しばらくお蔵入りになりそうだった。


「さて、次はこっちかな?」
ミーはその空間に出現した、禍々しい門を眺めて呟いた。

その陰気くさい門には『羅城門』と分かりやすく名前が書かれていた。
ミーの感覚が…「これはまずいって」と、警鐘を鳴らしていた…。


■ ■ ■


「えっと…、くぐるのかい?」
ミーは一応聞いてみた。
「ワン!」
先程ミーがトドメを刺してしまったためか、アマテラス君は喧嘩がし足りない様子だった。

「バッド、アマテラス君、コレはどう見ても凶悪な妖怪の住処」
それも一匹や二匹では無い。下手したら連戦だ。
「ワゥ!」
しかし腕に覚えありのアマテラス君は、喧嘩上等!といった感じですでに戦闘態勢だ。

「はぁ…、オーケー。ミーも行くよ」
そしてミー達はその門をくぐった。


羅城門、その妖怪はどれも通常の物とは比べものにならなかった。
「っ、やはり堅い…ね!」
ミーはアマテラス君と協力をし、今、首の無い地蔵を倒した。
一掃したと思ったらまた、妖気が渦巻き何体もの妖怪が現れる。

「ゥゥゥ!!」
四方を囲まれたこんな状況でも、アマテラス君は楽しそうだ。

「アハハハハ!」
そして、ミーも。


■ ■ ■


…すっかり遅くなってしまった。

「ハァ…ベリィ、タイラード…」
屋敷の庭でミーは肩で息をして言った。
実際、ミーはかなり疲れていた。

水たまりの洞窟の残りを通り過ぎ、平原を大急ぎでアマテラス君の背に乗り駆け抜けて来たのだが…。
平原は広大で、途中で日が暮れてしまった。タカマガハラは広い。

「ワン!ワン!」
アマテラス君はまだまだテンションが高い。
実はあの後、一度穴から出てみたら壊したはずの羅城門が復活していたので、何回も攻略したのだ。
…というか黄金の桃に目がくらんだアマテラス君の暴走が原因だったのだが。

でも中々楽しかったし、良い訓練にもなった。正直…疲れたけど。
また暇を見つけて攻略しよう。
「ワゥ!」
「コラコラ!もうユーは沢山食べたでしょ。これはアズミ達の分だよ」
ミーはミーの抱える桃をヨダレを垂らして食べようとするアマテラス君をなだめた。

吹き抜けの広間に入るとハクバが卓を拭いていた。
卓の隅っこに、ミーとアマテラス君の分の夕食が残してある…。

「あ、お帰りなさい。遅かったですね?」

「イエス、ソーリィ、やっぱり夕飯に間に合わなかったね…」
ミーは大いに反省した。
底なしの体力と、神ならぬ食欲を持つアマテラス君に付き合いすぎるのも良くないようだ…。
しつけはきちんとしていくべきかも知れない…。

「いいえ。あら?それは…、黄金の桃ですか!」
ハクバがミーが卓にコロゴロと置いた桃に気が付いた。

「ああ、アズミが通った洞窟で羅城門っていう妖怪の住処?みたいなモノを見つけて…そこを浄化したら手に入ったんだよ。せっかくだし皆で食べよう。さて、いただきます、ほらアマテラス君もだよ」
「ワフ」
ミーはニコニコと適当な説明をし、アマテラス君共々、手を合わせて夕飯を食べ始める。

「わぁ!じゃあ皆を呼んで来ますね、あ、お食事は暖めますか?」
「ワゥ!」
「このままでオーケーだよ」
しっぽを振るアマテラス君を押しとどめてミーは言った。

今日遅くなってしまったのはアマテラス君のせいでもあるし、甘やかし過ぎは良くない。

「クゥーン…」
項垂れるアマテラス君を見てミーの良心がズキズキ痛んだ。
「あら、そうですか?」
ハクバは笑って、フワリと浮き上がり皆を呼びに飛んで行った。

アズミも来るだろうか?…来るだろう。
皆で桃を食べたら、アズミと二人きりになって…いや、別にアマテラス君が一緒でも良いけど。…いい加減に何か切り出さないと。

「お帰りなさい、慈母様、月のお方」
食器の片付けをしていたらしいスサドがやって来た。
「黄金の桃と聞いて!」
マルコがやって来た。
察するに次はアズミだ。

「さあ!剥きますね、あ。アズミは書庫で食べるって言ってました。何か調べてたみたいです」
ハクバが言った。
…アズミは来なかった。

「そう…、じゃあミーが後で持っていこうかな?」
ミーは言った。書庫なら話すのにも丁度良い。
「あ、私持っていきますよ!それで余った分は貰います」
ハクバが桃を手早く剥きながらニコニコと言った。

彼女は相当この桃が好きなようだ…、なら仕方無いか?

「オーケー、じゃあ…」
ミーはそこで言葉を止めた。
『また今度にしようか』…それは今皆の前で言わなくてもいい。

しかし、自分のコミュニケーションの下手さには嫌気が差す。
月では友達が一人もいなかったし…というか、下手に友人を作って裏切られたら大変なので、なるべく人とは関わらないのが常になっていた。
ミーも幾度か手ひどい裏切りを受けたし、結果的に裏切ってしまった事もある。

そうだ、そんな事は日常茶飯事だった…。

「何かアズミに用がありましたか?」
ハクバが剥いた桃のかけらをつまみながら、首を傾げてミーに聞いてきた。
「ン?いや、ナカツクニって何処にあるのか、少し気になって…。この辺りじゃないのかい?」
ミーは聞いた。
それらしい星はこのあたりの星の海には影も形も無い…。

と言っても星の数は多すぎていちいち全てを調べた訳では無かったが。

「ナカツクニですか?ああ、今はさっぱり見えませんね」
ハクバが桃をむきつつ言った。
「近いのかい?」
ミーは聞いた。
「いいえ、遠いです。えーと今は多分、ざっと…くらい離れています」
ハクバが語った距離は、相当遠かった。ヤマトを転移しつつ飛ばしても数十年はかかる。

これほど離れているとは思わなかった。
「うーん」
ミーが唸っていると、剥かれた桃を皿に取り分けつつスサドが言った。
「でもこの間、月の方が降りていらした時は、近くにありましたよ」

ん?

「ミーが来た時は?じゃあ、ナカツクニって動いているのかい?」
ミーは聞き返した。
「正確にはタカマガハラがです。あの時はウシワカ殿がいらして驚きましたなぁ」
マルコも言った。

え?

「ちょ、ストップ、どう言う事だい!?」

慌てて聞くと、ミーが月からタカマガハラに逃げ延びたその時、タカマガハラの空は真っ暗になって『蝕』が起こっていたらしい。

その時、天神族達は滅多にない珍しい現象なのでワクワクしながら空を眺めていた。

ああ、楽しかった、綺麗だったと笑いあって、欠けた日が元に戻った時に、ミーが落ちて来た…そう言うことだったらしい。…完璧な新事実だ。

そう言えば皆手に何か黒い板を持っていた気がする…。

ミーがアマテラス君と運命の出会いを遂げ、その後皆にワイワイ囲まれて館に向かう時に、誰かがそれを回収していたような光景は何となく覚えている…。

当時は全然気にもしていなかったが、あれは太陽の光から目を守るものだったらしい。

「うーん、となると…?」
もしかして月の滅亡と常闇の暴走には、何らかの周期的な関係があるのだろうか。
これはすぐ検討しないと。

「もう少し詳しく聞いていいかい?」
ミーは身を乗り出した。

「ああ。これに書きましょう」
丁度その時、ごそごそしていたマルコがさっと大きな紙を取り出してくれた。
「サンキュー、マルコ」
ミーはその紙の中心に適当な小円を書き、箸置きをタカマガハラに見立てて置いた。
そして天の川を書き込む。

実際には宇宙はもっと多次元で複雑だが、この紙の上ではこう見るしか無い。

「大体で。このマルが太陽で箸置きがタカマガハラだとするよ、天の川はここ。それで、今タカマガハラはこの辺りかなぁ?太陽を中心に…当然こちらに動く?」
ミーは聞いた。

ハクバが指で箸置きを滑らせて話す。
「ええ、そうですね。こう、回っています。ウシワカさん、筆神の星座をご覧になった事がおありでしょう?」
「イエス」
ミーは頷いた。夜に眺めた事はある。
だが正直、星が多すぎてどれがどれだかよく分からなかった。
形もかなりうさんくさいし。

「その星座が周囲に見える『天道』と呼ばれる道を、タカマガハラは大体百年くらいかけて回っているんです」

「…え…っ、そんな」
ミーは唖然とした。…そんな事初めて聞いたよ?
「すいません、言うの忘れてました」
ハクバが笑って言った。

「図に書きますと、こうですな。順番はこの通りです」
マルコが筆神の文字を周囲に書きつつ言った。

「月のお方、私は昔計ってみたこともありますが、この筆神達の星座は、実際にはそれぞれの星の大きさや距離感がバラバラです。まあ星座とはそういうモノですけど、天道はタカマガハラからはそう見える…その位置をそう呼んでいるようですね。それらが実際にちょうどよく見える位置が、タカマガハラが進む道でもあります」
スサドがマニアックな事を言った。

「あ、そう言えば、それぞれが筆神達の神通力の源になっている星だと聞いた事が…」
ハクバは興味深い事を呟いた。しかし、今はそれは置いておこう。

「なるほど…また詳しく。スサド、後でその時のデータ貸して。…ええとそれで、とりあえず…月は今、この辺りかい?」

ミーは自分の記憶にある位置の辺りを示して皆に聞いた。

「はい、多分あってます。でも確か月はナカツクニに近いはずでは…???」
スサドが首を傾げ不思議そうに答えた。
「うーん、ミーが以前行った時は急いでいたし、月の座標で飛んでしまったから…」

ミーは月を書き込みつつ言った。近いと言う事は、あの辺りの星のどれかか…。

…正直、気にも留めていなかった。
方舟ヤマトは高性能なので、目的地を入力すれば連れて行ってくれる…。
もっとも、転移や、着陸、離陸の操作は手動だが。

「あの…ぶっちゃけ月ってナカツクニの衛星ですよ?」
そんなミーにハクバがミーの耳元でひそりとささやいた。
「えっ!??…アハ、…月はちょっと秘密主義が過ぎたね。上が万事を取り仕切っていたから…」

ミーは彼女のカミングアウトに限りなく引きった。
「はぁ…さっぱり知らなかったよ…」
そして深いため息を付いた。

皆はミーが宇宙を旅したりしているし、ナカツクニを当然知っていると思って、これまで説明せずにいたのだ…。

ミーは陰陽師という職業柄なので、月ではかなり天体に詳しい方だったと思う。
しかし、天道はおろか、タカマガハラの存在、ナカツクニの存在もサッパリ知らなかった。…これではインチキ予言者野郎、自称陰陽師と言われても仕方が無い。
かなりショックだ…。

…間違い無く情報は隠されていた。

だが、どうしてそんな事をしていたのかは全く謎だ。
月の民がナカツクニやタカマガハラを見たく無い理由でもあったのだろうか?
いや、理由があったとしてもすでに失われていたのかもしれない…。

気を取り直したミーは、さらに図に数字や矢印をかき込みつつ言った。

近いのに全く見えない。考えられるのは…?
「それでも少なくとも、ミーがいた月の首都の空からはそれらしいモノは全く見えなかった…、多分こうなって、ほら、こちら側に、同じタイミングで回って、ナカツクニから見えない部分だけ発展していたんだと思う。情報は完璧に統制されていたし、星の海に出ることもほとんど出来なかったし、首都は年中曇り空だし。月の裏でも、あのタタリ場の中では空なんて見えない…」

ミーはそれから幾つかの質問をし、確認した。
「えっと…軌道はこういう感じになっていると思います」
ハクバが若干ひょろひょろした筆遣いで、大きな環を紙全体にかき込みつつ言った。

「…つまり、ここもナカツクニも太陽を中心に回っている、けどその軌道は重なっていない。近づくのは百年に一度の蝕の時だけ…そういうことかい?」
「ええ、太陽がナカツクニに隠れるんです。でも、星読みに関する事は私達より、本の虫なアズミの方が詳しいです…ああっ!!」
急にハクバが声を上げた。

「ウシワカさんの分が!」
「ワゥ?」
「ああっ!?」
お皿を見るとミーの桃は、綺麗サッパリ無くなっていた。
もちろんアマテラス君が美味しく頂いてしまったのだ。

「…アマテラス君。今夜のおやつは抜きだよ」
ため息を付いてミーは言った。
「アゥ!?」
アマテラス君はアセアセした。

「マルコ、コレ貰っても良いかな?あ、代金は払うよ」
ミーは書き込みの入った紙を貰った。
「毎度あり。そうです、ウシワカ殿、タカマガハラの宙域図を探しましょうか?分かりやすいかは微妙ですが…」
マルコが聞いて来た。

察するにここの物は非常に個性的なタッチでかかれているのだろう…。
きっとタカマガハラがでんと中心にあったり、なんだかよく分からない絵だらけだったり。

しかしそれはそれで興味深い。部屋に飾ったらナイスだろう。

「そうだね、じゃあ参考までにお願いするよ。観測とシュミレートはヤマトで可能だし。…フフフ!アマテラス君…」

これからしばらく、アマテラス君と天体のロマンに浸る日々が続きそうだ…。

「ワゥ?」
ミーの熱い視線を受けたアマテラス君は首を傾げた。

…ふって沸いた新事実にミーは不謹慎だがワクワクしていた。
タカマガハラはおかしな島の形をしているが、何故ここには四季があるのだろうかとか疑問が沢山湧いてきた。

まあ、ここは大神の住まう國だから別に何でも良いのかも知れないが、知は足元に山ほどあるのだ。


■ ■ ■


「…、…こんな近くにあったのか…」

ミーはヤマトのコントロールルームで、シュミレートした月周辺の映像を眺めた。

あの後、ハクバはアズミの元に、食べるつもりの黄金の桃を持って行った。
ミーはついて行こうか迷ったが、好奇心に勝てず方舟ヤマトに来てしまった。

ミーは今日はアズミには会えない。
実は今朝、起きてすぐにミーが夜中に部屋でそのことをうーうー悩んでいる様子を予見していたのだ。

でもこの後、一応書庫をのぞいてみよう。

…それにしても、天神族は不思議だ。
彼等は普段さっぱり使っていないだけで、皆…膨大な量の知識を持っている。

「ワゥ!」
「アハハ、アマテラス君、それは触れないよ」
アマテラス君はさっきから、宙に浮かぶナカツクニを取ろうと飛び跳ねている。
ミーはそのかわいらしい様子に微笑んだ。
「じゃあ、ミーはお月様を取ろうか?」

けれどミーはそれに手を伸ばす事は無く、ただアマテラス君を見て笑っていた。

〈おわり〉

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