読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■方舟ヤマト20 タカマガハラ⑫【大神】【長編】

やや番外編っぽいノリな話です。これまでの真・あらすじ付。そしてウシワカさんのジョギング感覚…。一連の裏騒動にさっくと適当な決着を。思わせぶりなのは次のシリーズの伏線かも?

 ■方舟ヤマト20 タカマガハラ⑫

おや。グッドモーニング、イッシャク君!

ミーは幽門扉を使い、タカマガハラの未来を見た。
予言では無く、約百年後、全てが滅んだその後の様子を。
今のままのミーではオロチを迎え撃つ事など到底不可能。
幽門扉から戻ったミーは、前以上に必死になった。

幽門の先を見せてしまったアズミとも、どこかぎくしゃくしたままだ…。
喧嘩していたアマテラス君とは無事仲直りが出来たケド、これから一体どうしよう?

…と言うのが間違い無くユーが眠っている間にミーが喋った部分だよ!

さてと。ミーはその日も朝からアマテラス君と激しく遊んだ。
当然、生傷だらけになった。

「イタタ…」
「ウシワカさん…程々にしてくださいね」
ハクバがため息を付いた。
今日は珍しく、彼女が戦うミー達のそばにいる。

「サンキュー、ちょ、イタ!」
彼女の容赦無い手当を受けながら、ミーは歯がみしていた。

やはり大神…。ミーが互角に戦えるのは今のところ、草薙剣、沖津鏡、足玉までだ。
…正直、勾玉は苦手だった。
ミーも毎朝の百鬼夜行で鍛えたりはしているものの、本気のアマテラス君にはまだまださっぱり敵わない。
ボキッ。
「ぐえ、きついよ!首!首!今ボキッて鳴った!」
「あ、済みません」

しかしアマテラス君の攻撃パターン自体はだいたい分かって来てしまった。
それは向こうも同じだが…神器の強大な出力にミーがまだ耐えられないと言うだけで、アマテラス君自身の早さには慣れて来てしまった。殺せないというのも痛い。
やはりもっと強い妖怪と戦うのが良いのだろう…、しかし…この平和なタカマガハラにそんな物が居るのだろうか?

そうだ、妖怪といえば。

先日、天岩戸の森に、…結界が張ってあり、妖怪は入って来られないはずの森に一匹の天邪鬼が迷い込んだ。
どうしようも無いほどの雑魚なので適当に昏倒させ離れた場所にポイと捨ててきたが…。
思ったより変化が早い。
アズミが怪我をするまでは平和なのかと思って居たが、どうやらそうは行かないようだ。

ほころんだ結界はハクバが張り直した。

「ここですね…まあ、こんなに破れて」
ミーは興味があったので、その時、その様子を見せて貰った。
やはり彼女達には結界が分かるらしい。もちろんミーにも結界の裂け目が見えている。

彼女は祈るように、うつむき、羽を広げ、胸の前で両手を組んだ。

彼女の体を霊気が纏うのが分かる。…気配はアマテラス君の物に近い。
しかしハクバの体を包むのは、淡い黄色の光だ。
彼女がヒュ、と漂う光を動かす動作をし、結界に出来た穴を塞ぐ。
きらきらと、光がそのほころびにたまり、結界はすぐ修復された。

「へぇ…」
ミーは修復された結界を視て感心した。なかなかの物だ。つなぎ目も見えない。
聞いたところ、天神族で神通力の強い者はだいたいこの術を使えるのだという。
アマテラス君はもちろん結界を張ることは出来ない。

「大きい物は皆で時間を掛けて張ります。この森を覆う結界も時たま…そうですね、五十年に一度くらいの割合で新しいものに代えます」
お座りで見ていたアマテラス君が、ハクバをねぎらうように、わん!と吠えた。
「ふふふ、ありがとうございます」
いまのは、「おつかれさま!」かな。

なるほどアマテラス君の足りないトコを天神族は上手く補っている…。
ミーがそう言うと、ハクバは。
「ふふ、私達は皆、喧嘩はいまいちで…慈母様とウシワカさんは喧嘩上手。確かに丁度いいですね!」
そう言ってにこっと笑っていた。
ミーも微笑んだ。少し、ぎこちなかっただろうか…。


「…ウシワカさん?手当が終わりましたよ」
「あ、ソーリィ」
うっかり回想に浸り黙り込んでしまっていたようだ。何の話をしていたっけ?
「屋敷の発電機が壊れてしまったので、一緒に取りに行きましょう、と言う話です」
ハクバが言った。
「えっ?…そんな話してたっけ?」
ミーはあっけにとられた。
「ふふふ、ウシワカさんたら」
「ワン!」
アマテラス君もそう言っているようだし、ミーが聞き逃していたのだろう。
「うーん、何かがおかしいような…。でも壊れたならミーが直そうか?」
「それが…粉々になってしまって」
彼女が語った所に寄ると、スサドが怪しげな機械に動力を貰おうとして、つなぎ方を間違えて爆破してしまったのだという。

「ああ、今朝の大穴はそれだったのかい」
すっかりタカマガハラの生活になじんでしまったミーは言った。

そう言えば、出かけるときになにやらスサドとマルコが壁を修復していた気がする。
一応声をかけたが大丈夫そうだったのでアマテラス君と、屋敷から少し離れたココで真面目に喧嘩をしていたのだ。
ハクバはため息を付いた。
「おかげで、建物も浮かびません…。まあ別にそれは良いんですが、洗濯物は上空の方が良く乾きますね。あ、今晩はその辺でキャンプしましょう!一度、寝袋を使ってみたかったんです」
「アハハ。オーケー。でも発電機って、倉庫とかにあるのかい?」
早速、取りに行くつもりで聞いてみた。さほど大きい物では無かったが、彼女では運べないだろう。
「いいえ、実は、少し離れた遺跡に。でも、そんなに危ない場所ではないです」
「遺跡か…」
別に創れない事はないが、すぐ無いと不便だし、在るならそれを使った方が早い。
それに、以前はどうかは分からないが、今はその遺跡にも妖怪がいるかも知れない。

だが…妖怪はなぜ増えてきたのだろう。
いや、そもそも増えているのか?
その調査も兼ねて、ミーはハクバとアマテラス君でその遺跡を訪ねる事にした。

■ ■ ■


何か必要なものがあるとかで、一度、屋敷に戻り準備を終えたハクバが再び出て来た。

ミーは庭にアマテラス君の似顔絵を落書きをして待っていた。
ミーの絵はかなり上達している…。そばでアマテラス君も喜んでいる。ミーはニコニコと撫でておやつをあげた。
「ウシワカさん、お待たせしました!」
ミーが調子に乗ってさらにアマテラス君とじゃれていると、なにやらハクバが大きな風呂敷を両手に提げて登場した。

「あれ、食べ物かい?」
ミーは聞いた。ランチにしてはずいぶんな量だが…。
「ええ、リンゴと、大根と、お酒です。コレと発電機を交換してもらうんです」
「へぇ、物々交換か。じゃあミーが持つよ」
ミーは風呂敷を受け取った。
「ワウ!」
と、アマテラス君が乗せていいよ!とばかりに背中を差し出して来た。

「おや、サンキュー!」
なのでミーはありがたく乗っかった。
「ワゥ!!」
「おや。違うって?ソーリィ、ソーリィ、あはははっ」
とまあ、そんなじゃれゴトは置いといて、ミーはアマテラス君にお礼を言って、風呂敷を一つ括り付けてあげた。

「ふふふ。じゃあ、行きましょう」
ハクバは少し羽ばたきふわふわと浮いている。
ミーとアマテラス君は歩き出した。

ぶらぶら歩きつつタカマガハラの地図を見る。この地図は手に入るのが遅かったが、最近とても役に立っている。
「ああ、この辺りです」
ハクバが地図を指さした。ミーはそこに赤マルを付けた。
天岩戸の森を抜け、少し開けた原っぱを越えた…山の麓らしい。
何度か行ったが、確かにこの辺りは平和っぽかった。そう言えば、岸壁の上に骨組のような、作りかけ?みたいな塔が立っていた気がする。
あそこにも天神族が住んでいるのだろう…。

「あ、そう言えば、ウシワカさんは平原の向こうの…あの皆が住んでる村がある辺りって、行ったことがありましたっけ?」
そんな事を考えて居ると、ハクバが言った。
「あ、そう言えば無いなぁ…ミーは言葉を覚えて直ぐに、天岩戸に入ってしまったから…。さすがにそろそろ挨拶した方がいいかな?」

アズミ達以外の天神族は、平原の向こうで、いくつかの村をつくって適当に生活していた。
アマテラス君の住んでいるところと屋敷辺りは一応『聖域とその近く』扱いになっているらしい。…というか、アマテラス君に夢中ですっかり忘れて居た。

「また今度、行ってみたらどうです?」
「そうするよ」
ミーは微笑んだ。
「ワゥ!」
アマテラス君はスズメを追っていた。

他にも彼女と色々、雑談をした。
「それにしても、大分、暑くなって来たね…」
ミーは一応夏物の着物を着ていたが、それでも天神族の軽装には敵わない。
タカマガハラは冬より夏が少し長い。やはり風は気持ち良いが…。
アマテラス君も最近よく暑そうにしている。
「じゃあ、今度、皆で涼しい所にも行きましょう!そこは温泉とかもあるんですよ。フフフ」
「温泉…?えっと…どんな物?」
初めて聞く単語だ。
かつて読んだ、あの少々偏った内容の辞書には無かった気がする。
「えっ!ご存じなかったんですか?ええとですね…どんなもの…」
ハクバが驚いて説明してくれた所に寄ると。

温泉とは火山とか、地熱のために熱くなってわき出るお湯…で、お風呂に丁度良いらしい。色々な効能が在り、種類も温度も色々ある。
肩こり、腰痛、リウマチ、皮膚病、美肌、スリ傷、打撲、恋の病。何でも効くらしい。

コレは是非アマテラス君と行かなければ。あ…でも男女別か。

「結構、お湯の色も沢山あるんですよ!フフ」
「へぇ…気持ち良さそうだね!月には無かったなぁ」

そんな事を話して居たら、いつの間にか目的の場所が見えてきた。
「あ、そうです、ウシワカさんコレ」
ハクバがすとんと降りて来て、ミーとアマテラス君に何かを渡した。

「?このペーパーは?」
ハクバもソレを持っている。
「フフフ。これに顔を描くんです。文字でも良いですよ!」
彼女はそう言って、道ばたに正座して『酒豪』とその紙に恐ろしい達筆で書いていた。
…書き初めだろうか?
「はい、筆使って下さい」
「ああサンキュー」
受け取って、アマテラス君を見ると…何かチューリップの様な物を描いていた。
中々上手い。しかし気に入らなかったのか消してまた普通の顔を書き直していた。
描く物は何でも良いらしい。
「うーん」
ミーは悩んだ末、『イズヒア!』と描いた。
「フフ、これ、どうだい?アマテラス君!」
描いた物をアマテラス君に見せてチェックしてもらう。
「ワフ」
…即却下された…。

「さあ、行きましょう」
六回書き直してやっとオーケーを貰ったミーは、何か無難なへのへのもへじを描いたその紙を頭に貼り付けた。っていうか、何か特殊な紙らしく、勝手に張り付いた。
「これ、何だい?」
ミーは心の眼で前を見て言った。
「邪気面紗っていうものらしいです。ほら、天邪鬼が良く付けているアレです」
「ああ、そう言えば…」
ミーは納得した。
ん?…まさかコレをかぶったと言う事は。

そうこうしている内に、目的の塔が見えてきた。


門の前に誰か居る…?


『あっ姐御だギャ!』『お久しぶりだギャ!』


…やっぱりこういうことか。

門番らしい二匹の天邪鬼は、ハクバから酒や果物の入った包みを貰い嬉しそうにしている。
「ふふふ、皆で食べて下さい!」
『ハイ!ダギャ!』
どうやら顔なじみのようだ。
しかし、やはりハクバは…妖怪っぽいと思って居たが、妖怪だったのか。

「じゃあ入りましょう」
「あ、イエス」
「ワン!」

中は、なにやら機械的な構造物だった。
巨大なタービン、電子パネル…、この塔の裏手にあったこぢんまりとした建物に続くアミアミの渡り廊下。
最上階まで続いている吹き抜けの所々で、天邪鬼やら金魚やらが黄色いヘルメットをかぶり働いている…。

まるで発電施設のようだが…。ずいぶん旧式だ。

「あのー、見学したいんですけど」
不思議な建物をキョロキョロ眺めるミーを余所に、ハクバがニコニコと受け付けらしき緑天邪鬼に言った。

『イヤ、見学者ナンテ何年ぶりだギャ!』
天邪鬼はミーを見て飛び跳ねて喜んでいる。

『ドウゾ!ソッチノ方モ』
そしてミーに青文字で「見学者」と書かれた白いヘルメットを渡してくれた。
「あ、サンキュー」
ミーはポニテをほどいてソレをかぶった。…っハクバは!?
振り返ると彼女はタスキを掛けていた。少しがっかりした。
アマテラス君は耳が出るナイスな犬用ヘルメットだというのに…。
…大変良く似合っている。ミーはパチパチ手を叩いた。
「アマテラス君!ベリィナイス!」
「ワゥ」
アマテラス君は何かいつも通りキョロキョロしているだけに見えるが、とっても喜んでいるに違いない。

そのあと受付で、何処でも自由に見て良いし、何か気に入った物があったら持ち場の人と交渉して貰って帰っても良いと説明をされた。…いいのか、それで。
まあ、差し入れのお礼らしい。
「じゃあ行きましょう」
ミー達は二階へと上がっていった…。


■ ■ ■


「へぇ…」

二階は広いモニタールームだった。

タカマガハラのあちこちの様子が正面に沢山ある旧式のディスプレイ…これってブラウン管?うわ…初めて見た…!に映し出されている。

皆、大変真剣に仕事をしている様子なので話掛けるのは止めた。
「ここは、このタカマガハラの景色を何となく見ている所らしいです」
ハクバが適当な説明をしてくれた。
「どれどれ…?」
ミーは画面をチラ見した。
映っていたのは、綺麗な草花とか、可愛い小鳥とか…。清らかな清流とか。
「あ、ウシワカさん!コレが温泉です!あら、誰か入ってますね」
ハクバが少し部屋の中を歩いて、妖怪達が集まっていたとある壁のモニタを指した。
暖かそうな湯に天神族の女性が数人、肩まで浸かっている。
「…」
…コレはのぞきじゃないのか?
ミーはもちろんそれ以上見なかった。アマテラス君は妖怪達と一緒にガン見していた。

さて、特にこの部屋には欲しい物は無い。

ミー達は部屋を出て、階段を上りつつ話した。意外に愉しい。
「中々、面白いね」
「でしょう?彼等はどうも仲間の生活を見ているみたいですね。ここはもともと、確か…かなり前は月の方達の物だったようなのですが、使われて無かったので、いつからか彼等が住処にしてしまったんです」
「へぇ…不思議だね」
意外と妖怪は賢いのだろうか。
「でも、カラクリを使えるのは、ここにいる妖怪だけなんです。他の妖怪は普通に暮らしてます」
「そうか、例外的な物なのか…突然変異かなぁ?」
妖怪の生態についての謎は深まるばかりだ。ミーはいつか先駆者として論文を書くべきかも知れない…。

そうしていると三階に着いた。
ここは、一部屋まるまる研究室のような所だった。
「へぇ…落ち着くなぁ」

…あれ、何かどこかで見覚えのある物が…。
「あっ!コレ!」
それはミーが無くして探していた曲尺だった。「ウシワカ☆イズヒア」と後ろに名前が書いてある。

ミーは首を傾げた。
どうしてコレがここに?
「あれ!?」
と見ると、ミーの可愛すぎて全く使えなかったマテラス君消しゴム!(自作。30分の1スケール)も机の上にしれっと置いてあるではないか!
これは筆技の修行の後、ミーの画力が飛躍的にアップしたので、造形能力も上がっているのではと思い試しに作ってみたのだ…。我ながらすばらしい出来だと思う。ミーは彫刻の才能があるのかもしれない。

ミーは、もちろんそれを手に取った。
無くしてしまってずいぶんショックを受けたが…こんなところで再会出来るとは…って?
まさか?と思い辺りを見てみると…。

コンパスやら、分度器やら…!コレは全部ミーの物じゃ無いか!

「ああ、それは多分アマテラス様が置いていったんですよ。ここはアマテラス様の遊び場にもなっていますから」
ハクバは笑って言った。ふとそこの壁を見ると、『天照』と書かれたよく分からない落書きがしてある。
「…アマテラス君」
「…」
アマテラス君は無言で目を背けた。
あれもコレも無い無い、と思って居たら、アマテラス君が持っていったのか。
そして遊び飽きたのでココに置いていったと。
いや…コレはきっと、好きな子にイタズラしたいと言う行動に違いない。

まあ前々回の遺跡の事もあるし…ミーはため息を付いてアマテラス君を撫でた。
「…オーケー。これでおあいこだよ。エクスキューズ、ちょっと良いかい?」

ミーはそこらの天邪鬼に頼んで私物を持ち帰った。
彼等は快く譲ってくれた。
…それにしても、彼等は一応何かについてきちんと研究しているようだ。
妖怪の文字?らしき物が分からないので対象は不明だが。
上の階に行けば分かるのだろうか…?

ミーは持ち物を風呂敷に包み階段を上がって行った…。

 

■ ■ ■

その後、ミー達は何か凄く机が沢山ある階とか、丸ごと工房の様な階とか、色々な場所を見た。

「この建物には、皆や、スサド辺りも良く来るんですよ。あとマルコも。彼等はネジとか釘とか、電球とか…そう言う細かい部品を作って貰っているみたいですね」
「へぇ…」
工房に居た天邪鬼に話を聞いてみると、細かい物なら何でも作って見せると言っていた。
大した職人魂だ。ミーも今度、何か発注してみようか。
「あ、コレなんかどうです?ウシワカさん、見てもらえますか」
「えーと…、見たところ壊れてないけど…動かしても良いかい?」
『ドウゾ、ダギャ!』
ミー達は、すっかり忘れかけていた、使われていない発電機を探し出して交渉した。
丁度良いモノがあって良かった。馬力も十分だ。
前のは古く、よく電気が落ちていた。何と、下まで運んでおいてくれるのだという。
「サンキュー!」
ミーは礼を言った。とても親切だ…。

「あ、ここから上は、全部、何かの研究施設ですね。と言ってもあともう少しで最上階ですが。確か最上階に売店があった気がします。今は何があるかしら?ちょっと見て来ます」
ハクバがふわりと階段の窓から出て行った。天神族ならではの技だ。
「ミー達はゆっくり行くよー」
ミーは窓から上を眺めて言った。はーい、と聞こえた気がする。

「クゥーン」
「あはは」
そしてミーとアマテラス君は雑談をしつつ、ぶらぶらと登っていく…。

「研究って、何について研究してるんだろうね」
ある階の入り口を見ると、『関係者以外立ち入り禁止』という立て看が置いてあった。
「ワゥ」
アマテラス君がソレを無視して、その中に入っていった。
「あ!」
いけない!いや…タカマガハラの大神様だし良いのかな?
まあ、いいや。後二階くらいで屋上だし、ミーも先に上に上がろう。
「アマテラス君、上で待ってるよ」
「ワフ」
アマテラス君はそのまま奥へと消えていった。
さて、上に上がろう!

「フフフフ…でもやっぱり気になるなぁ」
ミーはこっそりとのぞいてみる事にした。静かに歩けばきっと見つからない気がするし。
高下駄を脱いで、手に持って…と。
こそ。

ミーは物陰からその部屋の様子をうかがった。
…確かに研究室みたいだ。
あ、アマテラス君だ。なにやら妖怪に囲まれている。
大きな机…その上に沢山の資料的なモノが置いて…?
って、アレは!!?

ミーがタンスにしまっておいたアマテラス君への愛のお手紙ではないか…!!

結局、自分でも思考がまとまらなくて、廃案にしたのだ。
あのラメ入りオルゴール付の外観は間違い無い。

…恥ずかしいので今すぐ取りに駆け出したい。

だが、あんなモノが一体どうしてココに…?
疑念を抱いたミーは心の眼を凝らした。
どうもこの部屋には見覚えのある物が沢山あるようだ…。

あっちの机にあるのは、ミーが森で試しに食べてみてお腹を壊したキノコの残りだし…。
こっちの机にあるのは、ミーがつまずいて転んでそのせいで川に落ちた変わった形の石だ。

思いっきり証拠用の袋に入っている。

…、もしや彼等はミーについて研究してたり…?
いや、あの白板に書かれた凶悪な似顔絵がまさかミーだなんて事はあるわけが無い。
ミーの小指にあんなに長い爪は無いし、火を噴いたりもしない…。

「えーと、今後の展開についてですが」

白板の絵をもっとよく見ようと、物陰から身を乗り出して眺めていると、その部屋の片隅、仕切りで区切られたスペースから聞き覚えのある声がした気がした。
「こそっ!(おや…アレは?)」
ミーはその妖怪にとても見覚えがある気がした。頭に羽が生えている。
どうやら男だ。
…っていうかスサドっぽい。面紗に『素佐土』って書いてあるし。
彼の周りにはなにやら雑魚妖怪達が集まっている。

「ふむ…、ここで新キャラを投入してみては?」
『真留湖』が言った。
一体何の話だろう?
まるで何かの作品の打ち合わせのようだが…。

「ウシワカさん!」
「ギクッ!」
その時突然肩を叩かれた。
「…、そ、ソーリィ!…ってアレ?」
妖怪に見つかったミーは反射的に謝った。
と、振り返ってよく見たらその酒豪はハクバだった。そうだ彼女は天神族だ!
ミーはほっとした。
「ハクバ…、脅かさないでくれないかなぁ…」
「ふふふ、ウシワカさんって、結構おちゃめですね。慈母様が上で待ってますよ!」
彼女は見つからない内に戻りましょう、と言ってニコニコとミーの手を引っ張った。
タイミング良く現れたハクバの言葉を信じるなら、いつの間にかアマテラス君は上に行ってしまったようだった。

「ワゥ!」
…まあ、そのアマテラス君はたった今、部屋から出て来た所だけど。
アマテラス君は階段へ向かっていたミー達に近づいて来て、何か白々しくしっぽを振っている…。
当然、ミーはあまりの可愛さに全てを忘れ。とりあえずまたニコニコと歩き出す…、

「…っと。あれ?…でも、今…あっちにスサド達が」
だが、少し歩いたところでさっきの光景が気になり、言ってみた。

「…えっ?気のせいでしょう?」
ハクバは笑って言った。
だがしかし、ミーは見逃さなかった。ハクバは今、一瞬アセアセした!
「…ユー達、ミーに何か隠し事かい?」

「「ぎくっ!」」
アマテラス君とハクバはぎくついた。コレは決定打だ。
「あ、そうです、上にかき氷屋さんが出来てましたよー、アマテラス様!早速行きましょう!」
「あっ、ちょ…」

ハクバはニコニコと早口で言って。ミーが止める間も無く階段をピューと飛んで行った。
「ワン!」
そして、かき氷と聞いて走り出そうとしたアマテラス君はと言うと。

「ぎゃぃん!」
ミーにしっぽを捕まれてしまった。
「フフフ、観念するんだね!」
ミーしっぽをがっちりつかんでアマテラス君を手繰り寄せた。
「クゥーン?」
アマテラス君はあくまで小首を傾げている。
…要するに、皆グルなのか!
「別に、取って食べちゃおうって訳じゃ無いよ、ただ少し、そうだね、どうしようか…フフ」
ミーはここぞとばかりに怪しく微笑んだ。しっぽを封じてしまえば、筆技も使えまい。
「ゥ…」
アマテラス君は冷や汗を流しつつ何かを考えた。

べろんっ!!

「うわっ!!?」
ミーはうっかりひるんでしまった!
アマテラス君が、ミーの顔を思いっきり舐めたのだ。ばっちい!

その隙に、アマテラス君はとんでもない早さで階段を駆け上がる。
「アマテラス君!シット!」
ミーは慌てて追った。っと、!?

ガッシャーン!!

急いでいたため、廊下の片隅にあった大きな屑籠を倒してしまった。

「しまった!」
ミーは慌ててソレを起こそうと…、起こし…?

「ああーーーっ!!?」
ミーは思わず叫んだ。

こ、コレは一体…!?

■ ■ ■


「あは、何だいこれ。変なの!あはハハ!」
ミーは屋上で大笑いしていた。

周りにはアマテラス君達。要するに、『素佐土』と『真留湖』もいる。

ミーが屑籠から見つけたそのメモには何か変な設定が書かれていた。
他にも、台本やら、仮面やら。
ミーが一階から徐々に近づいて来たのを見た監督は、机の上の資料とか色々を慌てて透明なビニール袋に入れて、そうだ部屋の外なら多分見つからないだろう(混乱)!
じゃあ、と、とりあえずここに捨てよう!…と言う感じに、とにかく纏めて屑籠に放り込んでしまったらしい。

しかし、まさか天神族の皆がこっそりこんな幻灯を作って遊んで居たとは…。
紙しばいも在るらしい。そう言えば、子供達もごっこ遊びをしていた気がする…。

…超絶イケメンなミーの罪がまた一つ増えてしまったなぁ!アハハ!

「ふふ、私は別に隠さなくてもいいと思ってたんです」
ハクバはミゾレ味のかき氷を食べつつそう笑って言った。
この塔の屋上には赤い敷物が敷かれて、なにやら風流な傘が立ててある。
ミー達はその敷物に座って。台本的なモノを眺めている。

「この後だけど、どうなるんだい?」
ミーは『素佐土』言った。
「新キャラを投入しようと思うんですが、なかなか思い浮かばなくて…」
彼は悩んでいるようだったので。
「フフフ。じゃあ、ミーから…」
ミーはナイスなアイディアを提案をしておいた。
「ああ!それは良いですね!」
どうやら採用が決まったようだ。

聞くと実はアズミも密かに続きを楽しみにしていたのだと言う。
「私たちだけでは大変ですから、下請け妖怪に色々発注していたんです。アズミが最近ちょっとおかしいので…これを見て元気になって欲しくって」

酒豪…じゃ無くてハクバは、某記録媒体を指しながらそんなことも言っていた。
若干、方法が間違っているような気もするが、タカマガハラのユニークなコミュニケーション方法としては当たり前の事なのかもしれない。

ミーはかき氷を食べるアマテラス君を眺めながら言った。
「ミーも、アズミを誘ってどこかにでかけようかなぁ…」

アズミが最近元気が無いのは、そもそもミーのせいだった。
しかし、ミーはそんな彼女にどう謝れば良いのか、それともそっとしておいた方が良いのかわからずに悩んでいた。
しっかり者のアズミなら放って置いても大丈夫なのでは…?と思ってさえいた。

だがやはり、直接、彼女と話した方が、きっと良い。
ミーはうっかり、何かを間違えるところだったのかもしれない。
コミュニケーションは大切だ。…皆には感謝をしなければ。

「そうだ!温泉に行こう!!」
ミーは思いついて言った。
伏線はしっかり張ったし、もう大丈夫だろう。
「ああ、それは良いですね!あそこは涼しいですし、せっかくだし、皆でどうでしょう?」
スサドが笑って言った。
「ワン!」
アマテラス君も賛成のようだ。
「アハハ、じゃあまた今度、皆で行こうか!」
ミーは笑った、しかし。

『ア!オ前ラハ!!』
うっかり面紗を外していたミー達は、休憩に来たらしい職員(もちろん妖怪)に見つかってしまった!
コレは非常にまずい!
ミーは彼等に指名手配されている凶悪犯かも知れないし。

「あわわ!アマテラス君!皆!逃げるよ!」

ミーは達は慌てて周りの台本やグッズをかき集めて言った。
「ワウッ!!!」「「ラジャ!!隊長!!」」
アマテラス君とハクバとスサドが良い返事をする。

「かき氷がまだ…」
ミー達は食にこだわるマルコを置いて、塔の最上階から飛び降りた。

着地し、原っぱをノリで一気に駆け抜ける。

「はぁ、ああ、びっくりした…」
安全な場所まで逃げたミー達は、はあはあと息を付いた。
「ワン!」
アマテラス君は仮面をかぶり大変楽しそうに飛び跳ねている。
試しにミーもかぶってみたら何だか拍手された。
「今度は実写版ですね!」
スサドはそう言っていたが、ミーはそのオファーを断っておいた。

「まだ羽衣が見つからないし、…役者も一人足りないしね」
そう思わせぶりに微笑んで。

その後ミ達ーは、天岩戸を覗いて濡神をビクビクしつつ撫でたり、釣りをしたり、アマテラス君とじゃれ合ったりした気がする。
そして結局、ミー達がうっかり発電機を置いて来たことを思い出したのは、すっかり日が暮れてしまってからだった。

けれど、そうだ…後でマルコがちゃんと発電機を持ってきてくれたっけ。
その後、折角だからって皆でキャンプをして。

…あの日は本当に楽しかった。

〈おわり〉

広告を非表示にする