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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■始まったあの日、止まった時の中で①【オリジナル小説】【乙女】

思いつきのネタです。先の展開考えてないので多分続かないと思います。
乙女ゲーム設定で記憶喪失って、アムネシアっぽいですね。

(表紙の写真はhttp://www.photo-ac.com/からの素材です。ありがたい)

20160224220617

 

■始まったあの日、止まった時の中で

世界は止まっている。

「ほら、『…コト』、いいかげん起きなさい!学校に遅刻するわよ」
「…うー」
私は目を擦った。

「行きたくないの」
「何言ってるの、早く行きなさい!」
…階段の下から、お母さんはそう言った。

「はーい」
そして私は家を出る…。


「おはよう、また会ったね。『…コト』ちゃん」
いつもの駅で会う男の人。白い髪に青い目。背が高くて…グリーン系のブレザーで、ネクタイは赤とグレーのチェック。
つまり私が通う高校の制服を着ている。

『…コト』これは私の名前。
ミコトだったかな。もしかしたらマコトかも。
たぶんこのどちらかなんだろう。

私は駅で電車を待つけど、今日も電車は来ない。
「また来ない…」
私は呟いた。
だって仕方無い。一歩家を出れば、皆が止まっている。

「来ないね」
男の人が言った。
私とこの男の人の周りには、通勤のサラリーマンとか、学生とか。
皆止まっている。

…お父さんもこの駅にいる。
あの日は、お父さんと一緒に家を出なかった。

私はたまに…駅でこちらと反対側の階段を下りて、電車を待つ列に並ぶお父さんの顔を見に行く。


多分、春夏秋冬はちゃんとある。昨日は雨だった。
…一年経てば、また春が来る。…のかな?
ただ季節が巡るだけ…?


「どこへ行きたい?君の行きたいところ連れて行ってあげるよ」

どこでもね。
その人は微笑んだ。
「じゃあ、学校…」
私は答えた。

どこへ行こうと、皆止まっている。

「ええ!また学校?折角だから、違う、遠いところへ行こうよ。たまにはサボろう。…コトちゃんは真面目過ぎるよ」
その人が私の手を取った。

「でも、どこへ?だって歩いて行くんでしょう」

駅に来れば、決まってこの人に会える。
だから私は毎日駅に来る。
電車は来ない。

月火水木金。
私はこの人と歩いて学校へ行って、時間割通りに、この人と教科書を見たり、運動したり。
何となく日々を過ごす。
土、日は、この人が家に来て私を外に連れ出そうとする。

私は溜息を付いた。

――私、やっぱり死んでるのかな。

ここは多分死後の世界とか、生まれ変わる前の世界とかで。
私はあの日事故にあったとか、そんな感じなのかな…。

「ねえ、…、貴方。私は死んでるの?」
私は聞いた。
「えっ?…コトちゃんは生きてるよ。止まったのは周りの人だけ」
「それは変。だって私、あの日…きっと死んだの。生きてるって言うなら意識不明とかでもうすぐ死ぬの。…貴方はどこの誰?名前は何て言うの?いい加減教えてよ…」

私はもう二ヶ月、ずっと一緒に居るこの人の名前を知らない。
あの日は四月十日。
今は六月十日…?くらい。

「うーん、信じないだろうから、言いたくない」
その人はまた同じ事を言った。
「何で?名前を呼びたいの。だって、きみ、とあなたどっちで呼ぼうか迷うから…」
「…うーん」
その人は頭を掻いた。

「お願い、今日は、貴方の行きたいところへ連れて行っていいから」

私はここが死後の世界なら、どこへ行ってもいいと思う。
もしかしたら、この人はやっぱり死神で、それで天国か地獄へ行けるのかも知れない。

――どちらでも良いから、この世界から抜け出したい。
何か変わるかもって思って、二ヶ月すごして、変わらなくて。
…私は今そればかり考えてる。

初めの三日は、ゲームみたいで面白いかもって思ってた。
この人はちょっと格好いいし、他に誰も居ないって楽。
けど四日目から不安になった。
だってお母さんだって、一階から声がするだけで家にいないの。
どこかにテープレコーダーでも隠してあるのかもって、この人と家中探した。

「私…怖いの!…恐くて。貴方しか…」
涙が出て来た。
私はホームに立ったまま、うつむいて目を擦って泣いた。
「…コトちゃん」

「美味しい物が食べたい。何でお腹が空かないの?佐奈と話がしたい。須磨君と、土曜日に映画に行こうって約束してたのに…!お母さん会いたい…お父さん…っ」

お父さんは止まったままだ。

須磨君はどこに居るんだろう。

どくん、と心臓が鳴った。
…そう言えば、心臓が鳴ってる。私…生きてる?

須磨君…?
そう…私は確か、彼が好きだったはず…。

――私、須磨君を好きだったの?

思い出せない…!

私はだれなの。

私は、ミコト、それとも、マコト?
自分の名前すら分からない私は。ちゃんと呼んで貰えない私は。

「貴方の名前は?もし教えてくれないなら――

…適当な名前が、思い浮かばない。お兄ちゃん?それは変かも。

あなたを――お父さんって呼ぶから!」
「ちょ、…コトちゃん。それは酷いな!分かった、言うよ、言うから…」

私は期待を込めて見上げた。
「教えて、貴方の名前」
「俺は、…須磨」

須磨?
「え。須磨…?何?」

私は尋ねた。
だって、須磨って。

その人は私の頭を撫でてニッと笑った。
…けどちょっと悲しそうにも見える。
「ほら、俺、俺だよ。須磨アキラ。…コトちゃん、俺と映画行く約束してただろ――、あっ。そうだ、今から行こうよ!」

須磨、アキラ。私の好き?だった人。
けど私の好きな?須磨君はこんなビジュアル系バンドの人みたいにチャラくない。
爽やかで、真面目で。格好いい人だ。

…あれ?
須磨君の顔が、思い出せない…。
もしかしてこの人だったの?

私は彼の顔をじっと見上げる。

いいえ――違うわ。
うん、違う。

「何言ってるの!貴方、ぜんぜん須磨君じゃ無いじゃない。そもそも、目の色おかしいわ。何で青なの?…外人?」
「これはカラコンだよ。俺はれっきとした日本人。ほら、もう行こう」
「あ」

須磨君(偽)は私の手を引いて駅の階段を駆け上がった。

「ちょっと…!」
「ほら、うわっ。もう映画始まる時間だ!」
コンコースを一緒に走り、私達は月曜日から、制服のまま街へとくりだす。

…はなしてよ!
と言いたかったけど、二ヶ月、ずっと一緒だったこの人は、見た目はチャラいけど多分、きっと悪い人じゃ無い。

須磨君の偽者に手を引かれながら、私は思う。

あれ…私、須磨君と何の映画を見る約束してたっけ…?

本物の須磨君はどこに居るの?彼も止まっているの?どんな人だったの?
幼なじみの佐奈はどこに居るの?彼も止まっているの?
私は誰なの?ミコト、それともマコト?
この世界は一体何なの?私の夢?幻?死後の世界?

映画館で、だれかに会えるのかな――?



…ああ。まねごとで良いから、ご飯が食べたい…。

〈おわり〉 

 

続き書きました。

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