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長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト22 タカマガハラ⑮【大神】【長編】

今回はわくわく温泉旅行編です。

難易度が高すぎて(むしろ意味不明すぎて)カットしようか迷ったミニゲーム付き。
何となくタカマガハラは未開でアカン土地なイメージ。

眠いので今日はここまでです。

■箱舟ヤマト22 タカマガハラ⑮

 


その日、ミー達は温泉旅行に出発しようとしていた。

「オーケー、メンズ!点呼をとるよ!」
「いち」
「つー」
「さん」
「し」
ミー達は今、男女に分かれ点呼を取っている。
ミーは成り行きでメンズの呼係になってしまった。

「はーい、じゃあ女性陣も!」
「ワゥ!」
「に!」
「三!」
「ふぉー!」
女性の点呼係はハクバだ。アズミはと言うと、どうやら今日はお任せモードのようだった。
ちなみにニコニコ笑って言った「三!」番目が彼女だ。

しかし、人数が多い。
数えたら男性がミーを入れて二十五人。女性がわんこのアマテラス君を入れて三十八名。合計六十三名の大所帯だ。
どうしてこうなったのかと言うと。つまり。

『今度、皆で温泉に行きましょう!』(BYスサド)
『アハハ!ヨシ、皆で行こう!』(BYミー)

…と、言うわけだ。

温泉に入りたい天神族いらっしゃい、と。呼んでみたら特にヒマなコレだけが集まった。
まあ、団体旅行には丁度良い人数だろう。ちなみに一泊二日だ。

「さあ、出発だよ!…フフフフ…!アマテラス君は今日も輝いているね!」
「ワン!」
そしてミー達は歩き出した。

森を歩いたり飛んだり、皆と雑談をしつつ進む。
「ユー達は良く温泉には行くのかなぁ?かなり遠そうだけど…」
ミーは遠くを見てぽつりと呟いた。

温泉はあの大きな山の麓にあるらしいが…。
先日うっかり見てしまった温泉には、幾人かが入っていた。
「ふふ皆、温泉が好きですから、あ、ココ渡りましょう」
ハクバが微笑んだ。
ミー達はゾロゾロと高い吊り橋を渡った。

この峡谷は中々風流な感じだ。
澄んだ水が崖の間を縫うようにどこまでも流れて、所々に苔むした岩があり。
その岩の上で水鳥が魚を探している。

ミーは吊り橋の上でアマテラス君とその景色を眺めた。
「ビューティフル…」
思わず呟いた。…タカマガハラは雄大だ。

「ワゥ!」
「あ、行かないと」
アマテラス君がそう言ったので、列から少々遅れてしまったミーは慌てて戻った。


■ ■ ■


何処をどう進んだのか、ミー達はとある山の麓、先程よりさらに大きな峡谷に来ていた。

「フフフ!温泉かぁ…楽しみだね!アマテラス君…!」
その光景を目にし、ミーはニコニコと言った。

…生きたまま、たどり着ければの話だが。

そこは左右を黒い岸壁に囲まれた谷だった。…ただし。
清流の代わりに谷底を流れるのは…真っ赤なマグマだった。

今、ミーや天神族達はその峡谷の上にいて、マグマ流るる底を見下ろしている。
谷底からは幾つも小さな火柱が上がり。舞い上がる火の粉や熱風で顔があつい。
おまけに、左右の岸壁にそのこそここに存在する無数の赤い滝から、常に新鮮なマグマが補充されている。
…大変よろしくない光景だ。

「さあ!ここが最大の難所です!皆、張り切って生きましょう!」
ハクバがほざいている。
「まさか。こ、ここを進むのかい…?」
ミーは『下』を指さした。さっきからグツグツという音がする。

「ん?」
ふと、足元がぐらついたので首を傾げた。小石がパラパラと落ちる音がする。
「ワゥ!!」
と、アマテラス君がミーを引っ張る。

ガラガラッ!!
「うわ!?」

…先程までミーが居た隅っこの地面が瓦解し、谷底のマグマ川に落ち…ジュウ、と一瞬で蒸発した。
瓦解した壁面からは熱い蒸気がブシューと噴き出した。
「月のお方、この蒸気に当たったら危険です!二百度くらいはあります」
スサドが言った。
「…」
さすがのミーもコレには絶句した。この地形は危険度MAXだ。

「月の民さん」
いきなりポンと肩を叩かれる。このむさ苦しいメンは…「天神族十五番」だ。
「さあ、行きましょう…!ほら、少し向こうの底近くの横穴…そこがゴールです!目的地のある山にはココを下って降りるのが近いんです。ははは、お互いに頑張りましょう!私もまだまだ若い者には負けませんぞ!」

《キラリン☆》

ミーは【嬉しくないスポーツマンシップ】と言うトロフィー?を頂いた。
「…ラジャ」
一応、返事はしたものの…コレが一体何の役に立つというのだろう。
ちなみにブロンズだ。

まあ、とりあえず新情報を貰ったのでその穴を確認しよう。
落ちない様に気を付けてと…。ミーはしゃがんで谷底を覗き込む。
深さはおよそ一キロくらいあるようだ…。
横穴、横穴って?
だがぶっちゃけ、煙と熱によるユラユラでミーの視力を持ってしても、全くと言っていいほどそれは見えない。

ブシュー!×6

蒸気は結構な頻度で吹き出している。
ココを飛び降りるのはかなり危険だと思う…。
下手したらマグマにストレートインだ。

「月の方、大丈夫です!ほら、岸壁に足場に出来る岩がたくさん飛び出ていますから…そこを足場にして、少しづつ飛んで下ります」
アズミが中々大きな岩を指してにこやかに言った。足場の一つ一つはかなり離れているが…。
まあ、皆飛べるし、それなら楽勝に違いない。

ガラガラ…ボチャン!!
「…」
その足場の一つは、たった今崩れ落ちていったが。
ミーは、その足場とやらの強度に懐疑的に成らざるを得ない。


「大丈夫ですよ。あ、でもたまに、下から巨大な火柱が上がるので気を付けて下さい。当たるとゲージがザックリと持っていかれますよ」
ハクバは言った。それは恐ろしい。
「っ…私は久しぶりだから、感じが掴めないかもしれないわ…頑張らないと」
アズミも気合いを入れている。
「温泉に入るまでは死んでも死にきれませんな」
マルコが汗を流しつつ言った。

…命かけ過ぎだと思うのはミーだけだろうか。

「あ、ウシワカさんと慈母様は、皆のサポートお願いします。私は安全な岩を教えますから。後から皆で付いてきて下さい。ふふ、私が乗った場所以外は崩れますよ」
ハクバはやっぱり妖怪だった。

「…ハァ…」
ミーはため息を付いた。

そして、気合いを入れる為に、ほどいていた髪をひとくくりにまとめた。

「オーケー、行こう!」
どうやらこの観光はミーに取って大変な試練な予感だ。


■ ■ ■

そしてミー達はハクバを先頭にその崖を下った。

岸壁には幾つもの岩の足場があり、要するにハクバの乗った足場を使い、下へと下へ、何故か時々上へ…と降りていくだけだのだが、ハッキリ言ってかなりキツイ。
何故かカメラは固定だし、壁の穴からは何カ所も蒸気が噴き出している。
ハクバが示した所以外の足場は直ぐ崩れるし、頑丈な足場でも三十秒ほどモタモタしていると下から吹き上げる火柱に当たって崩壊したりする。

…おまけに煙がもくもくしていて視界はかなり悪い。

さらに、天神族達が無意味にフラフラして勝手に落ちそうになったり、何も考えずにもろい足場に乗ったりするので、アマテラス君とミーはその度に彼等の進む方向を、纏めて一閃で導かなければならないようだ。

皆飛べるので降りること自体は何とかなるが…、人数が多いので大変だ。
…って言うかココはそもそもバツルートなのでは無いだろうか…。

彼等は壁からの熱風や巻き上がる風で落ちないようにか、律儀に足場を一つ一つ移動している。


「あれ、しまった!行き止まりだ!」
…そして今、何人かの天神族が、下からの火柱と、蒸気で先には進めないアカン足場に間違って乗っかってしまっている…。

「ワゥ!?」

っていうかアマテラス君…ユーもかい!?
「ユー達、もう少し一気に下まで飛ぶ事は出来ないのかいー!?」
ミーは一応、しんがりなのでその一つ上の岩に乗って叫んだ。
…上から見たところだと、彼等が頑張って足場二つ分の距離を一気に降りられれば何とかなりそうなのだが…。

「無理ですー!」「わぁー」「熱風が怖くてー!」
…どんくさい彼等には無理なようだ。

その時、壁の穴から少量の熱風が吹き出した。
「きゃぁ!…あっ!?」
驚いたレディが足を踏みはずし、こぼれ落ちてしまった。
「二十一番!」
ミーは叫び、何とか別の蒸気穴から吹き出す熱風を避け、空中で彼女をキャッチする。
そしてそのまま皆が待つ安全な足場に着地する。二つ分飛べるのはミーだけか…。
「あ、ありがとうございます!」
「ノープロブレム」
彼女をポンと置き、ミーは上を見上げた。

「ワゥ!!」
アマテラス君が、天神族レディ七番と三十番を背に乗せて降りて来た。
もちろん、この運び方はアマテラス君にしかできない。
「危ない!」
途中、アマテラス君が火柱に当たりそうになったが、ミーはとっさに筆技「蔦巻」を応用し、アマテラス君を下から巻き取る事に成功した。
「ワン、ワン!」
…アマテラス君は無邪気にはしゃいでいる。
「って、ユー!まだ居るよ!」
「ワゥ!」
アマテラス君が請け負いまた一つ前に戻る。

そして数十秒後、残りのメンズもミーや先にいた天神族に助けられ、ようやく全てがそろった。
…ふと見上げると今までの足場が全て崩壊していたのには心底ゾッとした。

「…よし、何となくコツが掴めたね!壁からの蒸気と、巨大火柱に当たらなければ問題無い!五秒くらいなら、もろい足場も使えるみたいだし。天神族達は放っておいて、あふれたのを下から筆技「蔦巻」で救助しよう。あ、ユーは二人づつ乗せて往復。オーケー?」
ミーは気を取り直して言った。
「ワン!」
巨大火柱に何回も当たっていたアマテラス君も同意した。まあ、ミーもソレに一度当たって死にかけたケド…。

「ウシワカさーん!あと少しですよ!」
ハクバが最下層の陸地で呼んでいる。
「オーケー!」
ミーは言った。…仕組みが分かれば怖くない!


「うぁあーー!!うっかりした!!」

がらがら、ぼちゃん!
…あ、今スサドがマグマに落ちた。まあスサドならいいか。

■ ■ ■

「はぁ、ふう…、全員居るかいー…?」
ミーは息を付いた。


「点呼とりまーす」
ハクバが点呼を取る。
彼女にはちょっと道順を示すスピードが速すぎだとか、途中で上に登ったり、反対側に進む必要があったのか、等、言いたいことは沢山あるが…今はひとまず皆の無事を確かめよう。
「ワン、ツー…、沢山…っと。あ、火は消して!」
ミーは人数を数えた。
「あわわ!」
皆はバタバタと衣服に付いた火を消している。ミーも少し焦げた。
「ケフ。オーケー、皆いるみたいだね…、アマテラス君、皆、お疲れ様!」

ミーは大変頑張ったアマテラス君にご褒美をあげた。
本日のご褒美はサービスでオール大神骨頂だ。

「ワン!ワン!」
しっぽに火が付いたままのアマテラス君は喜んでおやつにかじりついた。

「さて、月のお方、進みましょう!」
スサドもきちんと復活している。
彼を落とした時は焦ったが、結局すぐ彼は復活し、誰一人欠けること無く今の横穴に到着することが出来た。
スサド…彼は一応、それなりの神通力を持っているのかも知れない。

だがミーは…『アマテラス君が他の天神族を落としてしまって、イチからやり直しになった』という悪夢を何回も見た気がする…。

いや、きっと気のせいだね!アハハ!

「さて、そしてミー達は今、トンネルを歩いている訳だけど」
「ワゥ?」
「あ、コレは独り言だよ。アズミ、この先は何処に続いているんだい?」
ミーは丁度隣にいたアズミに聞いてみた。
このトンネルはずいぶん長い…。

「ふふふ、もう少しかかりますけど…、きっと月の方は驚かれますよ」
アズミがふふふと笑って言った。

トンネルの先に何があるのだろう…?


■ ■ 


「えっ…!?」

トンネルを抜けると、そこは雪国だった。


ヒューヒュー北風が吹いていて、辺りを粉雪が舞っている。
「…えええ?」
ミーは思わず立ち尽くした。

「ふふふ。凄いでしょう?さあ、行きましょうか。目的地は直ぐそこですよ」
アズミが言った。

ミーは後ろを振り返ってみたが、ミー達が出て来たのは巨大な雪山の麓に作られた小さなトンネルだった。それほど長い距離を進んだ気はしないが…なにやら空間に対する術がかかっているのだろう。
「ワゥ!」
テンションMAXのアマテラス君は、さっそく近くにあった特大スノーマンに頭突きをしていた。
「コラコラ、悪戯しちゃノー。皆についていかないと」
ミーは雪のように真っ白なアマテラス君と一緒に歩き出した。
今は雪は小降りなようだ。

って言うか。

「さ、寒い…!」
ミーはガタガタ震えた。
「あら?ウシワカさん、大丈夫ですか?」
ハクバが少し先から話しかけて来た。

「な、何とか…、アマテラス君、カモン!」
と、言いつつミーは自分からそそくさとアマテラス君に近づいた。
「アゥ」
アマテラス君は仕方無いなぁ、と言わんばかりに真経津鏡の出力を上げた。
「あー、あったか~い」
おかげで少しは暖かくなった。
これはミーとアマテラス君が、寒い冬を乗り切るために編み出した生活の知恵だ。
「フフフ…あちち、ちょっと強いかな、うわ!」
「ワゥ?」
太陽のようなアマテラス君に近づきすぎたミーは、少し着物を焦がしてしまった。
少しブルーになった。
「…ミーは所詮忌まわしい月の民…?」
「…」
呟いてみたがアマテラス君にはシカトされた。
ぱた、と揺れたしっぽはおそらくアマテラス君の「あーハイハイ」だ。

そして、ミー達はまばらに木が生える雪原をトコトコ歩き、氷の張った川を滑りつつ渡ったりした。
氷の下には大きめの魚が泳いでいた。アマテラス君は氷を引っ掻いていたが、残念ながらこの凍った川では釣りができないようだ…。

「あ、あそこです」
川を渡りきった辺りでスサドが指さして言った。
「へぇ、中々立派な建物だね…」
ミーはそこを眺めた。どうやらあの木で出来た横に広い建物に泊まるらしい。
あと半刻くらいで着きそうだ。

「意外に近かったね、アマテラス君」
ミーは笑った。目的の雪山はかなり遠くに見えたのだが、近道を通ったおかげでお昼を少し過ぎた位だ。
「ワゥ…!」
アマテラス君が何か言いたげにしている。って言うかヨダレを垂らしている。
「アマテラス様、お腹が空きましたか?じゃあこの辺りでお弁当にしましょう。えーっと。あ、向こうの岩の辺り、ちょうど雪が無いですね」

ミー達は適当に岩に座ったり、木に止まったり、立ったりしたりしたまま各々のお弁当を広げた。
アマテラス君はミーの愛情籠もったお手製のお弁当を平らげた後、皆からのおこぼれをもらいに歩き回っていた。
「あら、慈母様、どうぞ」「ふふ、じゃあ一個さしあげますね」
天神族レディ七番と八番におにぎりを貰い。飛び跳ねて喜び。
「おや、何が欲しいですか」
「ワゥ…!」
その隣にいた天神族メン二十四番からはタクアンを一択で貰っていた。

アマテラス君がしばらく戻ってこなさそうなので、ミーは自分の分のランチを食べ始めた。
お天道様が顔を出し、涼しいながら多少気温も上がってきていた。

ミーの本日のお弁当はごく普通の塩むすび三つだが…大自然の中で食べると又違った味わいがある気がする。
…凄く美味しい。ミーは竹筒からお茶を飲んだ。
「フゥ、たまにはこういうのもナイスだね。少し寒いケド」
「ええ、そうですな。むしゃむしゃ」
ミーの近くにいたマルコが言った。
彼が掲げているおむすびは、ちょっと大きすぎだと思う…。

そして食後。
「あ、いたいた。アマテラス君、そろそろ行くよ」
「…あぅ?」
ミーは木の下でお昼寝していたアマテラス君を軽く揺すって起こした。
「ワン!」
「おかわり!じゃなくて、アハハ…!」
アマテラス君は今日もご機嫌だ。

そしてそこからしばらく歩き、目的の館に到着した。
今日はここに泊まるらしい。

「んーっ、やっと着いた!」
皆が伸びをしている。
「じゃあ点呼を…」
ミー達は点呼を取り、そして何か良く分からない到着の儀式を行った。
ちなみにこの後ミー達はいくつかのグループに分かれて色々な場所の掃除とか、ディナーの準備とかをする予定だったりする。
「では、最後にアマテラス様からのお言葉です」


「ワン!」

…何て言ったか分からない…!!

一人悔しがるミーを余所に、皆それぞれの作業に取りかかった。
「ワゥ!」
ミーの元にアマテラス君がパタパタと寄ってきた。
「グスッ…ぐすっ、じゃあやろうか…」
ミーとアマテラス君は温泉を準備する係になっていた。
「こっち?」
ミーはアマテラス君の後を付いて建物の裏手に回った。
中通りかかった広い調理場では、ハクバを初めとする女性陣が箒で床を掃いたり、竈や流しを掃除したりしていた。

「呼びに…、あ」
「…あ、来た来た。アマテラス様、月の人。お願いします!」
そこには数人の天神族メンがいて、露天風呂をデッキブラシで掃除したりしている…。
「遅れてソーリィ。えーっと?どうすれば良いんだい?」
ミーは彼等に聞いた。
しかし、かつてミー達がチラ見した映像では、ココにはたっぷりとしたお湯があったはずだが…?掃除の為に湯を抜いたのだろうか。

「ああ、結構落ち葉とかゴミとか溜まるんで、いつも栓を落としてから帰るんです」
聞くとそう教えてくれた。
「へぇ、で、このツルハシは?」
ミーは渡されたソレを見た。うん。コレはツルハシだ。
「後コレもかぶって下さい。地下は危ないですから。あ、顎紐を締めて、ライト付けて下さいね!」
ぽん、と頭に黄色い何かをかぶせられた。ミーは言われるがまま顎紐を締め、カチリとスイッチを押した。
「はい、慈母様も」
「ワン」
アマテラス君もかぶっていた。完全装備というやつだ。

「はい、そしてコレが栓です」
…。それは無いだろう。
それでもミーは背負えるように縄が掛けてある、大きな栓を背中に背負った。
その栓には大変長い鎖が付いている。
「コレは?」
ミーはじゃらりと鎖を持って聞いた。
「後々必要になるんで。あ、入り口はこっちです」
一人が湯船の脇にある大きな穴を指して言った。

ミーは何となくそちらに進み、アマテラス君と一緒に飛び降りた。


■ ■ ■


…えーっと。

そこは深めで広めの縦穴だった。

とりあえずツルハシを持って降りては来たものの…このままでは何処にも進めない気がする。
「ワゥ!」
アマテラス君はやる気満々っぽい。
「真っ暗でよく見えないね…」
一応照らしてはいるが、数歩先がどうなっているのかも分からない。
そもそもミーは一体何をどうすれば良いのだろう?

「月の方ー、コレ、説明書きですー!栓を入れる場所はアマテラス様が知ってます!」
と、少し上から覗き込んだ天神族メンが何かの巻物を落としてくれた。
そうか手順書があったのか!
ミーは巻物をひもといた。

どれどれ…?
あ、ゴチャゴチャしてて微妙に読むのが煩わしい。

「なるほど…ヨシ!やってみよう!」
ミーはとりあえず言った。
「ワン!」
上で天神族達が奏でているBGMのせいか気分が乗ってきた。

ミー達は気合いを入れた!
そして見切り発車型のミーは、久しぶりにキラキラし出す。

「フフフ、アマテラス君。ミーはとにかく適当に掘り進むから、ユーがゴールまでサポートしてくれるかい?コレじゃあ視界も効かないしね。栓はミーが入れるから。オーケー?」

「ワン!!」

ぴー!! -START-

…今の音は何だろう。まあ、良いか。
ミーは適当にまっすぐ掘り進む。

「よいしょ、よいしょ、人を呪わば穴二つ!」

バシュ!

「ぐあっ!?、こっちかい?」
どうやら方向がさっそく違ったようだ。ミーは逆に進む。

「セッセ…セッセと」
「ワゥ!」

ミーが何とか掘り進んでいる間に、どうやらアマテラス君は先に進んだりしているようだが、掘るのに夢中なミーは全く気付かない。

ヒュ、バーン!!!

何だか輝玉の音とか聞こえるような…。
「あうっ!?」
ミーは足元のトゲトゲにぶつかった。コレは痛い。
「…ワン!」
少々反応の遅いアマテラス君がミーに疾風を使う。

「アハハハハハ!!」
ミーはニコニコ笑いながら飛ばされた。
「グゥ…!」
何かアマテラス君に唸られた。

少し飛び、くるっと回って華麗に着地したミーは、とりあえずポーズを決め、そしてそれから進み出した。
アマテラス君がやたらと無駄に恨みの籠もった一閃をしてくる気もするが、きっと気のせいだろう。
「おっと!?」
どうやら足場が無かったようだ。ミーはぽてんと下に落ちた。

バシャン!

っと思ったら下は意外に深い水たまりだった。
「アハハ!!」
ミーは笑いながら岸辺に捕まる。
「ふう、ああびっくりした…アマテラスくーん?」
よいしょ、と立ち上がりまた進む。どうやらアマテラス君はどこか違う通路で道草を食っているようだ。
「あ、金貨」
ミーは足元にあった壷をゲットした。アマテラス君も何やら集めている様子だ。
「フフ、おっと!アハハ!よいしょ、よいしょっ!」
そしてミーは時折、疾風に助けられつつザクザクと快調に掘り進む!

「…おや?」
アレ?ココは行き止ま、






「ワン!!」
アマテラス君がミーを呼ぶ。さっきのは気のせいだ。
「オーケーオーケー、この下かい?」

どうやら、この下にはあったかい水脈が流れているようだ。
ライトで照らすと、地面からほのかに湯気が立っている。
「ワゥ!」
アマテラス君が最後の岩を掘り、ミーはその穴から下を覗き込んだ。
「えーっと、あー、あそこかなぁ?」

地下を温泉の川が流れているのだが…隅っこに穴が開いていて、そこからさらに下の階層にお湯が全てだーだーと流れ出てしまっている様子だ。

…何かが違う気もするが、きっと温泉とはこういうものなのだろう。

「オーケー、アマテラス君、後はミーに任せて!」
ミーは飛び。入る前に…ちょっと温度を確かめて、と。ヨシ!セーフな湯加減だ!
じゃぼんと流れに飛び込んだ。



「アハハハハ!!」
「わぅぅーーー!」
栓のおかげでたちまち一杯になった温泉があふれ出す。当然ミー達も一気に上まで押し上げられる。


「わーい温泉だー」「お疲れ様でしたー」
天神族達がニコニコバサバサしている。

さっき押し上げられた時にちらりと上から見たが、男湯と女湯、二つの岩風呂にはたっぷりとお湯が満たされていた。

「アハハ、アマテラス君、ヤッタね!」
「ワン!」
びしょびしょになったミーはアマテラス君と一緒に跳ねた。
「帰りはこの鎖を皆で引っ張って、栓を抜くんですよ」
一人がカンカン、とミーが渡した鎖の端を鉄杭で打ち付けつつ言った。
「へぇ」
「さあ、これでココの仕事は終わりです。夕飯まで暇なので、慈母様、月の方、皆の様子を見回って来てはいかがでしょうか?」

「じゃあ、そうしようか」
「ワン!」
そしてミー達は館の探検をする事にした。

ミーはアマテラス君にちゃっかり乗せて貰い、泊まる予定の部屋をのぞいたり…。
正面の庭に出てみたり。無意味に井戸も覗いてみた。
さらに途中見つけた池で魚を釣り、魚を届けた先でアマテラス君がつまみ食いをしたり…隠し階段からの地下で、何やら役に立ちそうなお宝を見つけたりした。

そんなこんなで全ての箇所を見回りが終わる頃には、すっかり日が落ち。
「あ、スノー…」
ミーは空を見上げた。
また雪が降り始めたようだ。
「また冷えてきたね。アマテラス君、中に入ろうか」
庭で寄り添い、静かに語らっていたミー達は館の中に入った。

夕食は舟盛り付きだった。大変美味しく頂いた。
そしてお楽しみの温泉タイム。

「ふー」
かっぽん、と言う音が聞こえる。
ミーは露天風呂に肩まで浸かった。

「…そう言えば、ユー達ココには良く来るのかい?」
気になっていた事を聞いた。前回映像でチラ見したあの女性達は、まさかあの近道を通ってきたのだろうか?

「ええと。そうでも無いですね、普通に来ると遠いし、近道は大変なので。でも温泉好きの女性陣は頻繁に来てるみたいです」
「へぇ…。じゃあ普通に来ると、どのくらいかかるんだい?」
ミーは適当に酒を飲みつつ聞いた。

「ええと、一週間くらいでしょうか?慣れれば飛んで三日くらい?」
三日か。…まあ温泉好きなら大丈夫だろう。意外に天神族はすばしっこいのかもしれない。

「ウシワカ殿、一杯どうぞ」
桶に入れて浮かべた徳利から、天神族メンが酒をついでくれる。これがいわゆる裸のつきあいというやつか。
ミーは笑って受け取った。
「サンキュー。風流だなぁ!」

「きゃー!」
隅っこでは無謀にも女湯をのぞいた天神族メンが、桶を頭に喰らっていた…。

「ああ、良い湯だった…」
持参の浴衣に着替えたミーは脱衣場から出て来た。
「わん」
何となく女湯に入っていたアマテラス君だ…!ミーを待ってくれていたらしい。
「アマテラス君!お湯はどうだった?」
ミーは聞きながら撫でた。
「ワフ!」
大変満足そうだ。ミーは思わずハグして撫で撫でした。

「ふふ、慈母様ったら!」「お二人は仲良しさんですね!」
浴衣姿の天神族の女性達が微笑んでいる。

ミーはアマテラス君にも浴衣が必要かも?と真剣に考えていた。
「…いいや、自然のままが一番だね!あはは」
少し酔ったのかもしれない。


その後、皆で卓球をし、その後はそれぞれの部屋で恋話などしつつ、消灯時間になりアズミが回って来たので仕方無く眠りについた。
惜しむらくはアマテラス君と別室になってしまった事か…。
今回は男女別行動なので仕方が無い。でも次回はきっと混浴…はおこがましいかなぁ…ふふ!
うとうと…。
「ファ…」

そして、ミーは心地よい眠りに落ちた…。


■ ■ ■

翌朝。起床したミーは目を擦りつつ寒さに震え歯磨きをし。アマテラス君と皆と朝食を食べ。
そして栓を皆で頑張って抜いて、館の片付けをした。
アマテラス君と出発の儀式をし。帰路につく。

「…はあ、やっと着いた。中々楽しかったね!」
あの谷を越え…何故か帰りはとても簡単だった…無事屋敷に下帰り着いたミー達は、にっこり笑って言った。

「フフフ…」
今回の旅行で、ミーにもついに同姓のフレンドが出来た。ミーはそれを足がかりにタカマガハラを征服する予定だ。フレンドがいっぱいな人生…野望は膨らむばかりだ。
「ええ、たまには良いですね!あ、月の方も点呼ですよ」
アズミも笑って言い、ハクバの方にパタパタと歩いて列に並ぶ。
そうだミーは係だった。名簿を取り出す。

「じゃあ、点呼とりまーす。女性陣ー、ワン!」
「ツー」
「三!」
「ふぉー」

「オーケー、メンズ!点呼をとるよ!」
「いち」
「つー」
「さん」
「し」
ミー達は今、男女に分かれ点呼を取っている。

「…オーケー、メンズ。全員いるみたいだね!解散!」
ミーは解散の合図をした。
「ふう、帰りますか」「あー、疲れた」「そこでお菓子の残り食べるか」「あ、良いな」
皆がバラバラと別れる。
「…?」
「…?」
「…?」
「…?」
ふと見ると、女性達が何やら無言で首を傾げている。
「あれ…ユー達?どうかしたのかい?」
ミーは聞いてみた。
ハクバはミーにすっと名簿を見せ、筆を渡した。
「ん?どれどれ…、ひいふうみ…あ゙っ」
数が合わない。
ハクバはいつの間にか自分を数えるという…初歩的なミスを犯していたようだ。
「えっ!?ハクバ、誰が足りないんだい…!?」
ミーは慌てて上から名前を呼んだ。そう、上から。
「ワン、って言うか…、」

そこにいた全天神族がさーっと青ざめた。
…カラン。
ミーは筆を落とした。

「うぁあぁ!!アマテラス君ーーー!!???わぁああああああああああ」

ミーは全てを放り出し、全速力で駆け出した。

〈おわり〉

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