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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト23 タカマガハラ⑯【大神】【長編】

続きです。今回は農耕編。斜め上を行ったアズミ。
そういや常闇さん二人いた設定でした。月の常闇は未だにぼっちですね。
あ、筆神もまたラスト前には出て来ます。

次回は飛んで二十年後、番外編から始まります。その後は五十年後…。

次回あたりからだんだんシリアスになっていきます。

 

■箱舟ヤマト23 タカマガハラ⑯


ミーは近頃あまり夢見が良くない。
そのせいで今朝も早く目が覚めてしまった。

仕方無いのでミーは床に座って、ベッドで眠るアマテラス君の寝顔を間近で眺めつつ「アマテラス君ふさふさ!」と百回唱える。
「フフフ…アハハ!!フフフフ!」
テンションが上がってきた。良かった、これで今日一日も楽しく過ごせそうだ。
さて、今日の朝ご飯は何かなぁ!


「アハハ!」
皆でにこやかに朝食を食べながらミーは考えた。

…近頃の夢見の悪さは明らかに常闇の仕業だ。

初めは、まあ夢だけだし…と思って放っておいた。
でもあまりにしつこいので、部屋と建物に何重にも結界を張りめぐらした。
自らに防護の術をかけたり、符も部屋中に貼ったり、お香を焚いたり、藁人形に五寸釘を刺したり、安眠枕に換えたりもした。
おかげでミーの部屋今少し人には見せられない散らかりようだ。
だけどそれらが、さっぱりなのだ。効果が無いのにミーも驚いている。

いや…奴はミーの不安定な心につけ込んでいるのだ。

ミーはアマテラス君と共にオロチと戦う、と決めたモノの、肝心のアマテラス君がミーの事をどう思っているのか?
そこにどうも今ひとつ自信が無いのだ。

ミーは忌まわしい月の民だし、タカマガハラに厄災をもたらす原因とか思われてたらどうしよう…最近そればかり考えてしまう。…これではつけ込まれるのも当然だ。

…何か打開策は無いものか…。
ミーは目玉焼きを常闇に見立てグサグサと突き刺しながら、…実は「見立て」は立派な陰陽術の一つなのだが…今頃常闇が悶絶している事を切実に祈る。テーブルの下のアマテラス君をニコニコ見つめた。

アマテラス君は今、アズミの分の目玉焼きをヨダレを垂らしながら狙っている。
しっぱが左右に揺れている。
「ワン!」
ちょうだい!とアマテラス君が吠える。
「ふふふ、アマテラス様、もう、しかたないですね」
あ、珍しくもらえた。
「ワゥ」
ついでにナデナデしてもらえた。今日はすごくアズミの機嫌が良いようだ。
「月の方」
「ン?何だい、アズミ」

「今から一緒に農地の見回りに行きませんか?」
農地。…ミーは閃いた!

「…コレだ!!」
ミーはガタッと立ち上がる。

要するにだ。何か形の見えるモノが有ればいい。
お米とか、野菜とか!
ミーとアマテラス君の愛の結晶!!そして日々それらを共に育てる喜び!!
それさえあれば、ミーには常闇なんかがつけ込むスキは生まれない!!
…コレはナイスな考えだ!!

ミーは笑って言った。
「アハハハハハ!!行こう!アマテラス君!!アズミも!!」
「ワウ!」
アマテラス君はよく分からないけど行く!と大いに乗り気だ。
「あら?アマテラス様?一緒においで下さるんですか?ふふふ」
アズミは文字が見えたらしい。微笑んでいる。
「フフフ!」

ミー達は台風のように飛び出す。他の三人があっけにとられて居たような気もしたが、あっという間にミー達の視界からは消えた。

ミーは勢い良く飛びながら、同じく飛んでいるアズミに自分の考えを説明した。
「それは良いですね!空いている所なら沢山ありますよ。是非使って下さい」
アズミは笑った。

「サンキュー!アズミ!ふふふ、アマテラス君」
「ワウ?」
ミーは抱えたアマテラス君に話かけた。
「野菜が食べたいかい?」
「ワン!!」
…というわけで。ミーはアマテラス君と一緒に野菜を作る事になった。

地上に降り立つ。

ミーと機嫌の良いアズミはあっという間に平原を通り過ぎ、天神族が住んでいる辺りに到着した。
「はい、着いたよ」
アマテラス君を優しく地面に下ろす。
「ワン」
お礼らしき事を言われた。思わずハグして撫でた。
「さて、村を回りましょう」
アズミが微笑んだ。

水田の真ん中のあぜ道を三人で歩く。白い鷺やカラスがいる。
そう言えば、ミーは平原よりこちらにはあまり遊びに来たことは無かった。

「今、天神族は、前にもお話した通り三百人ほどいます。それぞれが適当にいくつかの村を作り、一応村ごとに決まった仕事…?をして暮らしています。まとまっていた方が訪ねやすいですから」
アズミが名簿を見ながら笑って教えてくれる。

「ああ、そう言えば。スサドからも聞いたなぁ」
ミーは、タカマガハラの建築に大変興味があったので、以前スサドに尋ねたのだ。
ミー達が住んでいる建物を皆で建てたと聞いたが、さすがに素人には出来ない。どうなっているのか?と。
「大工の様な方達がいるんですよ。他の皆は炊き出しとか、音楽とかやってくれました」
「へぇ…、BGMつきかぁ!」
…大工仕事に音楽が必要なのだろうか…?まあテンションは大事だ。

ミーは歩きながら、聞いた事を思い出す。
タカマガハラは、衣食住の維持の為、個人に大雑把な役割をふっている様だった。
別に変わるのは自由だが皆特に不満も無いらしい…。さすがは天神族。

新しく天岩戸から子供が生まれた場合、アズミやハクバが管理している過去の記録を見て以前やっていた事が分かった場合はそれをやってもらう。
だが大抵は昔過ぎて分からないので、何となく人手が足りない所に住まわせて、丁度良い(つまりはヒマな)大人達に世話をしてもらう。
まあ、皆だいたいヒマだが…。
子供は色々遊ぶ内に自分のやる事を思い出し、何となくやり始める。そしてまた適当な村に住んだり、仲の良い誰かと一緒に暮らしたりする。

そう。つまり。
タカマガハラには、夫婦や、もっと言ってしまえば家族という概念がないのだ。

ミーはまだ見たことが無いが、天岩戸から天神族が生まれて来る…つまり、子供を作る、子孫と言う意味の生殖とは無縁。
ようするに、アマテラス君が慈母として君臨し、全ての天神族はその子供。
皆が家族、兄弟や肉親のようなモノなのだ。
そうなると、当然…天神族同士で恋愛感情なんか生まれる訳はない。
…まぁ、これが月の民ならそれでも多少はあったかも知れないケド。

だがココでは『天神族だから☆』…全てはその言葉で片づいてしまうのだ。
天神族、おそるべし。

しかし皆は「恋愛」と言う言葉の意味を知っていたので、どこで聞いたのかと尋ねると、書庫の本とか、昔話とかで伝わっていると言う答えが返ってきた。
「うふふ、恋って素敵ですね!アマテラス様!」
「ワン!!」
なんて爽やかに皆笑ってたが…。ミーはさすがにちょっと引きつった。

アマテラス君、ユー適当すぎだよ!

大雑把にも程がある。しかし、アズミがくれた資料に依ると彼等は…
「月の方?」
アズミが不思議そうにしている。
「あ、ソーリィ」
いけない。うっかり話がまずい方向に行ってしまう所だった。
だが、スサドやマルコに聞いた深い話は驚くべきモノだった…。
まあ、そんな事は今はどうでも良い。

後で聞かせろ?
…ちょっと、イッシャク君!割り込まないでよ!

気を取り直して。

「アマテラス様、月の方、これから良かったら村の見回りも手伝っていただけませんか?」
アズミは途中、そう言って笑って切り出した。
「ユーのしている仕事だね。どんな事をするんだい?」
ミーは聞いてみた。

「仕事と言っても、困っている事は無いかと聞くくらいですよ」
彼女は笑って言った。


■ ■ ■


そしてミー達は周辺の田んぼや畑を見回った後、とある村に到着した。

今日はここを見るらしい。

「おや、月の方!」
「慈母様。こんにちは!」

暇そうな天神族達がわらわらと集まってくる。
暇そうな天神族達がわらわらと集まってくる。
暇そうな天神族達がわらわらと集まってくる。

そしてミー達はあっという間に人だかりに埋もれてしまった。
老若男女、子供から大人まで。男性から女性まで。

要するに…皆、ヒマなのか。

「じゃあ仕事を始めましょうか」
アズミはミー達を見て一つ笑うと。
すぅ、と大きく息を吸った。

「皆さーーーん!何かお困り事はないですかーーー?今日はアマテラス様とウシワカさんがちゃっちゃと片付けてくれますよー!」

彼女はこの村の隅っこまで聞こえる、大変良い声で言った。

「まあっ!」
「よーし!」
「じゃあまた!」

とたんに群がっていた皆がスーっと家に戻っていく。


「わ、ワッツ!?」

ミーはあっけにとられ左右を見回した。
一体何が起きたんだ!!??
誰も居なくなってしまった…。

『今からココで悩みを聞きます!』と言った途端にこれだ。
道端には乾いた風が吹きすさぶ。ひらりと枯れ葉が飛んでいる…。
ミーが唖然としていると、アズミがニコニコと満面の笑みで帳面を差し出して来た。


「さあ、月の方。皆さんは家に居ますから、この名簿を見て、一軒ずつ訪ねて下さいね」


「え゛っ…!?」
アズミの言葉に、ミーは久々のカルチャーショックを受けた。

家に居る…。??

「あ、…ああ。そ、そういうことかい?お、オーケー…」
我に返ったミーは、何とか名簿を受け取って言った。

どうやら、お悩み相談に際しては、おとなしく家でカウンセラーを待つという、そう言った決まりになっていたようだ。
全くの予想外だが、これは大変行儀が良いと言っていいのだろうか?
大分ココの生活に慣れたと思っていたが、ミーはまだまだだったらしい…。

ふと見ると、アズミはアマテラス君にも名簿を渡している。
「アマテラス様、やり方は分かりますね」
「ワン!」
アマテラス君は慣れた物らしい。さっそく駆け出して行った。


「えーっと…」
そして、今ミーは一人、渡された帳面を持って途方に暮れている。

アズミはさっきからそこの木の下で数人の女性達と女子会らしき事をしている…。
試しに話かけてみたが「終わったら声を掛けて下さい」とニコニコで言っていたあたり、これは時期を選ばない強制サブイベントに違いない。

「うーん…」
パラパラとめくってみたがそれほど多くは無い。アマテラス君と分け合った為、この村の半分ほどだ。
しかし、アズミは普段どのように仕事をしていたのだろう?


クゥーン。

「あ、アマテラス君!」
ミーは遠目にアマテラス君を見つけた。

どこかの家に入るところらしい。
きっと慈母だし、神様だし。きっとグレイトな方法で悩める皆を助けてくれるに違いない。
ミーは参考までに付きそう事にした。

ミーはアマテラス君の後ろで控えている。
ホシは天神族の女性だ。
「困っている事?そうねぇ、最近しわが増えた気が…何とかならないかしら?(チラリ)」
「ワゥ…」
アマテラス君は困っている。さて、お手並み拝見。
と、アマテラス君は異次元から何かアイテムを取り出した。

「まあ!レモン?」
…何という安直な。しかし、お肌には良いだろう。

「慈母様、ありがとうございます!」
「ワン!ワン!」
幸玉がもらえたみたいだ。さすがはアマテラス君!
「ファンタスティック!」
ミーは拍手をした。
「ワフ!」
アマテラス君は得意げだ。
なるほど、こんな感じにすれば良いのか。ミーではアマテラス君に及ぶべくも無いだろうが、頑張ってみよう。
だけど、タダやるだけもつまらない。

「アマテラス君、折角だし…どっちが早く終わるかミーと競争しないかい?」
ミーは不敵に笑い、言った。
「ワゥ?」
「フフフ…。ミーに勝ったら、ユーにグレイトなご褒美をあげよう」
「ワン!」
ご褒美と聞いたアマテラス君は駆け出して行った。

さて、ミーに出来るかは不明だが、やってみよう!ご褒美がかかっているし。
アズミに渡されたメモを確認する。どれどれ…?


■ ■ ■


まず、ミーはとある茅葺き屋根のお宅を尋ねた。ココには男性が一人で住んでいるらしい。
ミーは何もかかっていない開けっ放しの入り口をくぐった。

タカマガハラの家は基本藁葺きや板屋根で、入り口はのれんだったり、木目調だったり、ピンクのドアだったりと、かなり適当だ。その分住む人の個性が見て取れる。
しかしココは何も無いが…。まあいい。
「ハロー、アズミの代わりに来たよ!何かお困り事はないかい?」
ミーは入るなり、大げさなポーズを決めて言った。

「おや、月の民さん、実は年のせいか最近物忘れがひどくてなぁ…、何を忘れたのか思い出せないんだよ…。これは困った。ああ月の民さんは今いくつだい?参考までに」

「えーっと…」
コレは何とも高度な悩みをぶつけられた。その上質問付きだ。
…っていうかぶっちゃけミーっていくつだっけ?
ミーも忘れてしまったようだ…。

「アハハ。ソレは大変だね。オーケー、じゃあミーが笛を吹くから。何を忘れたのか思い出したら教えてくれるかい?」

ミーは適当にごまかした。

「ああ、それはいい」
ぴろー。
「ああ、思い出した!!」
その男性はワンフレーズも経たない間に飛び跳ねた。効果は抜群だ!
「ソレは良かった!で、何を?」
「うーん、何を思いだしたんだろう?」
…。
「まあ、何か思い出せたなら良いんじゃないかい?ミーはおいとまするよ」
「ああ、慈母様によろしく!」

それから気を取り直してミーは何件か回った。

「何か最近肩こりが酷くて…笛でも聞いたら直るかしら」
ぴろー。
「まあ、体が軽くなったわ!」
ぴろー。
「おぉ、体が軽くなったぞ!なんか飛べるし!」
ぴ。
「…あのー、もう少し吹いてもらえませんか」
「オーケー」

ふぅ。…中々これは大変な仕事だ。
っていうか皆、ミーの笛が聞きたいだけなんじゃないかなぁ…。
とにもかくにも、ミーはようやく最後の横線を引いた。
「ヨシ、アズミの所に行こう」
かなり時間がかかってしまった。さすがにもうアマテラス君は戻っているだろう。

まあ、アマテラス君にご褒美を渡せるならそれも良いかなぁ!
ミーは村の入り口の木の下で待つアズミの元へと帰った。

「あれ?」

「あら、月の方!終わったんですね。助かりました」
イベント仕様から通常仕様に戻ったアズミがニコニコと言った。
喋りまくりの女子会も終わり、今はアズミが一人で座っているだけだ。
アマテラス君の姿は見えない。

「アマテラス君は?もう終わってどこかに遊びに行ったのかな?」
ミーはキョロキョロした。
「ああ、アマテラス様はまだ戻っていらっしゃっていませんよ。ふふ、月の方の勝ちですね!」
聞くと、アマテラス君はいつもこんな感じなのだという。

ミーはアズミが競争の事を知っていたのに驚いたが、いつの間にかミーとアマテラス君の競争はこの村の噂になっていた様子だ。天神族の情報網は侮りがたし、と言った所か。

「アマテラス様はきっと、皆さんの悩みを聞くうちに、遠くに行ってしまわれるのでしょうね」
アズミは微笑んだ。
「アマテラス君らしい」
ミーは笑い、アズミの近くに腰を下ろした。

「お仕事はどうでしたか?」
アズミが聞いた。
「中々大変だったよ。タカマガハラはまだよく分からない事が多いね。でもどうして皆、ミーの笛を聞くとスッキリした顔をするんだろう?」
ミーは苦笑して言った。
「天神族は踊りとか、歌とか皆大好きですから」
アズミはそう答えた。
答えになっている様な、いないような。
「おかげで仕事がはかどったし、まあ良いか。アハハ」
「ふふふ」
ミー達は笑った。

そして、それからとりとめも無い雑談をした。

そもそもこの仕事や農地の見回りはアマテラス君の補佐、という名目の物らしい。
一応、慈母であるアマテラス君の負担軽減の為、大昔に誰かが思いついて始めたと言っていた。
アズミは声が良く通るので何となく任されてしまったらしい。

「天神族ってほんとにのんびりしすぎて…、たまにやきもきする事もあります」
アズミはため息を付いた。
「アハハ、イエス。ミーもたまに突っ伏したくなるよ」
ミーはアズミの言に共感した。

実際、彼女は天神族にしてはかなり真面目な方だと思う。
もし仮にマルコだったら全く仕事は進まないだろう。

「あ、そう言えば、アマテラス君まだかなぁ。渡したい物があるのに」
ミーはふと呟いた。かなり経つがアマテラス君は戻ってこない。
「そう言えば遅いですね…?何を渡されるんですか?」
アズミが聞いて来た。
「ああ、農地を見回った時にちょっと貰ったんだよ、フフ…」
ミーは思わせぶりな感じにしてみた。
「まあ。じゃあ後で見せて下さいね」
「アハハ」
と、まあ、そんな感じにミーとアズミはさらに談笑した。

「あ…、そう言えば、月の方」
そしてアズミが何気なく切り出した。
「何だい?」
ミーは首を傾げた。


「…月の方は、アマテラス様の事をどう思っていらっしゃいますか?」


それは悩めるミーにとっては、とんだ爆弾発言だった。

ミーはピキンと固まった。


■ ■ ■

「あっ!アマテラス君」
それからしばらくして、アマテラス君が戻って来た。
ミーは満面の笑みで迎える。

「ワゥ!?」
ミーが先に戻っていたので、アマテラス君は衝撃を受けた。

「フフフ、…お疲れ様。ベリィスローだよ。アマテラス君。ミーはもう待ちくたびれちゃったよ。今回はミーの勝ちだね」
ミーは不敵に微笑んだ。
「…クゥーン…」
アマテラス君が項垂れる。ミーはしゃがんで彼女を撫でた。
「そうがっかりしないで。中々頑張ったユーにはミーからのプレゼントあげるから!ホラ」

ミーは懐からとっておきのアイテムを取り出した。

「あら?それはもしかして…」
見ていたアズミが笑顔になった。

「イエス、これぞ農作業の必需品!『日よけ布付き・麦わら帽子』だよ!ベリィキュートなデザインだろう?」
「ワふ?」
アマテラス君はミーの意見に少々懐疑的だった。

ミーは白い布の付いたそれをアマテラス君に差し出した。

「アマテラス君…これをかぶって、ミーと畑を作ってくれるかい?」

とっておきの殺し文句付きで。

「…」
アマテラス君は少々考えている様子だ。
ミーはドキドキしつつ返答を待った。

その時ふと、アズミが表情を変えた。

「…アマテラス君?」
「クゥ」
アマテラス君がうつむいた。
…ええと、これは、良いのだろうか。
「アマテラス君、とりあえずかぶって見せて。きっと似合う」
ミーは微笑んだが、少し寂しい気持ちになった。
「アゥ」
それなりに喜んでいるのだろうか?
「アハ、ほら動かないで…」
ミーはアマテラス君に、農作業の最終兵器をかぶせた。

「ワゥ?」
帽子をかぶったアマテラス君はコテ。と首を傾げた。

「…アハハハ!!ワンダフル!とってもキュートだ!ほら、ミラーだよ!」
ミーは用意の大きめの鏡を取り出した。本日の予見が冴え渡る。
「ワン!」
どうやら気に入ってもらえたらしい。アマテラス君がしっぽをパタパタ振って飛び跳ねている。

「じゃあ、アズミにもらった畑を見に行こう!」
「ワゥ!」
そしてミー達は駆け出した。

その様子をアズミがしばらく眺めていた。


■ ■ ■


「うわ、グラッシーズが凄いなぁ」
ミーはアズミに貰ったさほど広く無い農地を眺めて言った。

広さは露地栽培な程度だが、実質ミーしか管理する者が居ないのでコレで十分だろう。

しかしそこは見事に雑草だらけだった。

ミーはしゃがんでスコップで少し掘ってみる。
「…土は良さそうだね!」
やはり、タカマガハラの土壌は肥えている。
これなら適当に草を抜いて適当に種を植えて水をやれば、勝手に野菜は育つだろう。

ちなみに今はミーも貰った最終兵器を被っている。
月の民は豚のように丈夫な肌を持っているが、それでも日焼けはノーサンキューだ。

「オーケー、アマテラス君!始めようか!」
「ワン!」
ミー達は整地に取りかかる。

…それにしても、タカマガハラの雑草は手強い。しっかり根を張っている。
月では雑草さえも元気が無く、この数倍は楽に抜けた…。
「よいしょ、よいしょ、イズヒアっと!」

しかしコレは罪の無い雑草の命を奪っているという事になるのだろうか?
いいや人とは身勝手な生き物だ…。生きるために不必要な物は残らず排除してしまう物なのだ。そうともコレは必然なのだ。バッド、雑草に生まれなくて本当に良かった。

マイマザー、ミーをヒューマンに産んでくれてベリィサンキュー!!

…とまあ、そんな感じの農作業のテンプレ思考をしつつ、ミーはひたすら手を動かした。
一見して草取りは単純な作業だが、中々奥が深い。…っていうか超楽しいコレ!

「…フゥ、大体終わったかなぁ」
しばらく後、あらかた片付けたミーは作業の手を止めた。
さっきまで草ボウボウだった土地は見事、畑と呼ぶことが出来る様になっていた。

「ワゥ!ワゥ!」
アマテラス君はミーが抜いた雑草の山に乗って楽しそうだ。
抜いた草の体積が減れば運びやすくなるので、まあコレも立派な仕事だと思う。
「わっ!コラコラこっちに飛ばさないでよ」
「ワン!」
「アハ!…おや?」

「…」
先程から、アズミは木陰で何かを真剣に考えている様子だ。
「アマテラス君、少し休憩しようか」
その様子が気になったので、水分の補給がてら、ミーも木陰で少し休ませて貰うことにした。

ミーは立ったまま、用意の竹筒から水をゴクゴク飲んだ。
ちなみにコレは先程井戸で補充したモノなのでまだ少し冷たい。
「美味しい…」
思わず呟く。額から汗が流れる。手は真っ黒だ。

「ワゥ」
しばらくするとアマテラス君もそばに来た。アマテラス君はハッ、ハッと息を荒くしている。やっぱりフサフサの毛では暑いのだろう。
「アマテラス君、ほら、ウォーターだよ!」
ミーは竹筒を傾けた。
「わふっ!」
アマテラス君二本足で立ち、ミーの支える竹筒に勢いよく噛み付き、どんどん水を飲む。

勢いが良すぎたのか、アマテラス君がくしっ、と咳き込んだ。
そしてミーにワンワンと飛びついてきた。
「アハハ!コラコラ!ヨダレはノーサンキュー、じゃなくて、ミーはいま汗でベタベタだよ!」
ミーはしゃがみ、アマテラス君をわしゃわしゃと撫でた。
「ワゥ!」
「アハハ!」
…コレだ!ミーが求めていたのは!
このままミーとユー、二人だけのワールドに突入してしまいたい!!
何だか凄くそんな気がした。

しかし。

「ウシワカ様…、ウシワカ殿…?」

ぴ、とミーはその声で現実に引き戻された。
「アズミ?」
そうだココには彼女もいた。
何が危険なのかは良く分からないが、非常に危険な状態だった…。
ミーは熱さで少々テンションがおかしくなっていたのかも知れない…。
「ワゥ?」
アマテラス君は首を傾げている。

「いいえ、もっと、…そう!!ウシワカたん!!!!」

アズミは立ち上がって叫んだ。一体どうしたのだろう?
って言うか…ウシワカたん!!?

「えっと…どうしたんだい?いきなり?」
座ったままのミーは、アズミを見上げて言った。
「あ…、えーと、ええと…月の」
アズミは何かオロオロし出した。何か困っている様子だ。

「あっ!」
ミーは思いついて言ってみた。

「アズミ、ユーは、もしかして、ミーの呼び方を変えたいのかい?」

ミーの事ハクバはだけは初めから「ウシワカさん」と呼んでいたが、未だ他の皆は月の方とか、月の民さん、月の男、そんな感じだった。あ、でもマルコもか。

近頃の紆余曲折を経て、ミーは少しはアズミと仲良くなれた気がしていた。
ここに来て、アズミもようやくミーを名前で呼びたくなったのかもしれない…。

「別に、好きに呼んでくれてオーケーだよ」
ミーは笑って言った。バット、ウシワカたん以外なら。

しかし、もしかしたら…コレが生まれて初めての、知り合いからお友達にステップアップの予感?と言うやつなのか…!!
あ、大事なことなので何度も言うが、ミーはまだ友達が少な…、グスッ、イヤ、やっぱり止めよう。

しかしアズミはびくっとした。
「い、いえ!!月の方!い、今のままで!!…良いのかしら?」
彼女は首を傾げた。
「ワン!」
アマテラス君が何かを吠えた。
「…、まあ!…そうですよね!ふふふ!」

「では、月の方、そろそろ日が暮れます、お屋敷に帰りましょう」
そう言って、アズミはアマテラス君と一緒にルンルンで歩き出してしまった。

「え…?」
一人残されたミーはポカンとした。

…結局、何も変わらなかった??
ええ…??


■ ■ ■


「アイムホーム!」

「お帰りなさい」
館に戻ると、ハクバが居間でなにやら難しそうな顔で巻物を読んでいた。
何を読んでいるのか聞こうと思ったが、ちょうどその時。
「あ、月のお方」
スサドが話しかけて来た。今日も当然、建築の勉強の日だ。
「あ、そうだったね。準備したら行くよ。所でハクバ、ユーは何を読んでいるんだい?良ければ教えて」
「ああ、ウシワカさん。ふふふ!これはですね」
「へぇ…!小鳥の飼い方かぁ。どんな鳥を飼うんだい?…ってユー達何でミーを見てるんだい?」
みんながミーを見つめるのでミーは首を傾げた。

「ふふふ。ウシワカたん。そう言えば、羽衣は見つかりましたか?」
「たんは止して。ソレがサッパリだよ…」「ワゥ!」
「ウシワカ殿。良ければお作りしましょうか?」
「うーん…もう少し探そうかなぁ。そのうちひょっこり出てくるかも」

そんな具合に、何の変哲も無いタカマガハラの一日が過ぎていく。



そして夜になり、ミーとアマテラス君はまた自室に戻る。

「くぁ…」
アマテラス君はその辺りの床で丸くなって眠ってしまった。
「フフ、疲れたのかい?」
「クー」
ミーの問いには寝息が返って来た。
いくらか撫でて、ミーは机に向かった。

書き物をしていて、気が付いたら遅い時刻になっていた。
「ふぁ…」
ミーは目を擦りつつ、布団に横になった。と大量の藁人形が目に入る。

これから野菜を育てて行く事になったし、そろそろ、藁人形は撤去しようか。
今日はよく眠れそうだ…。スヤスヤ…。


「ん…?」

しかしミーは途中で目が覚めてしまった。
イヤな夢は見なかったが…すぐに眠れる気もしない…。笛を吹くのは迷惑だろう。
ミーは半身を起こし、床で丸くなっているアマテラス君を見た。

今日訪ねた村々の様子を思い出す。

タカマガハラの住人、天神族…。
彼等はやはり、存在自体が人より神に近いのだろう。

天神族はもちろん刻を刻んではいる。
しかし、零から百になり、また零に戻る。
まるで…短針が無い時計のように。

それが転生すると言う事。
彼等の生命の針は、決して進まない。

では、アマテラス君はどうなのだろう?
ミーはいつか死ぬ人間だ。
アマテラス君は…。

「…」

アマテラス君は。

ミーは寝台から降り、アマテラス君の背を撫でた。

「ユーは、ずっと変わらない存在?」
ぽつりと呟く。

「それとも…ミーと一緒に、先へ進むことが出来るのかい?」

きっと、ミーにとって大切なのは、その一点だけなのだ。

〈おわり〉

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