絵、時々文章なブログ(姉)

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■箱舟ヤマト24 番外編③ スサド 【大神】【長編】

いきなり飛んで二十年後です。スサドがサブタイだけどあんまり出てこない。
※建物は初期の洋館に戻りました。ちなみにアズミの部屋は十二畳くらいです。そういえばベランダ付き。このあたりからややシリアス。

(※補足 最後アマテラスも部屋の中にちゃんといます。描写したバージョンも書いたんですが…上手く文がまとまらなかったので、まあいいやってカットしました。一応真ヒロインなのにこの扱い。何かこのシリーズ、実はラブコメな気がしてきた)

今日はここまでです。二話くらいづつアップが丁度良いかな。

 

■箱舟ヤマト24 番外編③ スサド


ある朝、久しぶりに、ウシワカがこの建物に戻ってきた。

「月のお方」
たまたま広間にいたスサドが声を掛ける。

最近、ウシワカは遺跡に籠もってひたすら研究に励んでいる。
そこで寝泊まりし、自分の部屋にも戻っていないようだった。
アマテラスは良く遊びに行っているようだったが、スサドと会うのは一年ぶりだ。

「しばらくぶりだね。スサド。ハクバはいる?」
「調理場です。たまにはゆっくりなさって下さい」
「しばらくはここに戻るよ。予言の時が近いし。また後で」
そう言って調理場に入っていった。ハクバと何か話している。

彼がこのタカマガハラに来てから、もう二十年。
初めあんなに明るかったのに、最近は…。ひたすら研究と喧嘩に打ち込み、あまり戻ってこない。
慈母にハクバが食事を持たせているのは知っている。だが、出会った当初と比べて顔色もあまり良くない気がする。…ちゃんと食べているのだろうか?

その時、突然彼が血相を変え、飛び出していった。
扉を閉めることも無く、外に出た瞬間から飛行する。
「ウシワカさん!?」
ハクバが驚いていた。スサドも驚いた。
「!?…どうしたんだい、彼は?」
二人とも外に出たが、ウシワカはあっという間に見えなくなった。
「アズミの事を話したら急に…!」
ハクバが言った。今日アズミは長雨が上がったので、村の見回りに行ったのだ。

しばらく後、ウシワカが気絶したアズミを抱えて戻ってきた。
「アズミ!?」
ハクバが駆け寄る。
右羽と、背中に傷があった。止血した布に血がにじんでいる。
何かで後ろから袈裟切りにされたような。
「他には怪我人はいない。アマテラス君が子供達に付いてる」
ウシワカは苦々しい、と言った顔をしていた。

「一体なにが…?」
スサドは愕然とした。平和なタカマガハラで、こんな事があるなんて。

「妖怪だよ…。予言の通りに出て来た。手当が終わったら…これからのことを話し合おう。ユーはマルコを呼んできて。ハクバは手伝って」
そう言って、アズミを抱き上げて二階に上がっていった。ハクバがうなずき、慌ただしく水や布の用意をして上がっていった。

「…!」
スサドは、正直忘れていた。
…そうだ、彼が来て直ぐくらいに。確かそんな話をされた…!
彼にはこうなる事が分かっていたのだ。スサドはマルコを呼びに行った。

日が真上に昇る頃、ようやくウシワカが降りてきた。
後ろには少し青ざめたハクバがいる。彼女は血の付いた布を持っていた。
「アズミは、大丈夫ですか?」
マルコが聞いた。
「ノープロブレム、傷は浅いよ。軽く縫ったくらいだ。今は薬で寝てる。一月くらいすればまあ直る。看病はハクバに任せるよ」
ウシワカが微笑んだ。皆を安心させようとしているのがわかる。
「…そうですか」
マルコはそれでも、安心してため息を付いた。彼がそう言うなら心配はない。
ハクバは頷き、手を洗うと椅子に掛けた。
「話が終わったら、彼女につきます」
「それが良い。ミーもこれからはここに戻るよ」
ウシワカはまた、微笑んだ。
「助かります」
ハクバがそう言った。

だいたいの話し合いが終わった。
こんな時、何時も皆の意見をまとめていたのはアズミだった。
「アズミが気がついたら、伝えて、彼女の意見も聞こう。あと三刻半後だ」
その彼女がいないのだ。皆不安になっていた。だがウシワカには未来が見えている様だった。
…なら、心配しても仕方が無い。ハクバはアズミの部屋に行った。

「ミーは、子供達を見てこよう。スサドも来て」
そう言って、ウシワカはスサドと出て行った。

丁度、アズミが目を覚ました頃、ウシワカがスサド、アマテラスと共に戻ってきた。
「結界を張ってきたから、とりあえず向こうは大丈夫。スサドから念のために今日は外に出ないように話してもらったよ。アズミは?」
「今ハクバが事情を話しています。存外しっかりしてましたよ」
先程、様子を見て来たマルコが微笑んで言う。
「そう」
ウシワカは少しほっとした様子だった。スサドとマルコを残しアマテラスと共に二階に上がっていった。

ウシワカは軽く扉を叩いた。
「入っても良いかい?」

「どうぞ」
ハクバが中から扉を開ける。

アズミはうつぶせで、布団を掛けられていた。
羽と背中は包帯が巻かれ痛々しい。
「…痛みは?」

「薬が効いているみたいです」
彼女は微笑んだ。

「そう、これは痛み止め。毎食後に一つずつ水で丸呑みして。あと夜中痛んだ時にも使って良いよ。羽は大した事無いから縫わなかったケド、背中は少し縫ったから、そのうち抜糸するよ。半月もかからないかなぁ。お風呂はそれまでノーだよ。あとこれは…」

説明をし薬の入った袋を寝台の横の机に置いた。

「水指しと湯飲み、持って来るわ」
ハクバが言って、ぱたぱたと出て行く。

「ありがとう、ハクバ。月の方も…何から何まで、ありがとうございます」

ウシワカは、おそらく自分のために…薬や道具を用意しておいたのだろう。
そしてハクバも、直ぐ取り出せる位置に必要な物を備えていた、と言っていた。

私は今日、予言の事をすっかり忘れていたのに…。

「ワウ!」

「ふふ、慈母様ありがとうございます」
アズミは傷に障らない程度に手を伸ばし、励ましてくれたアマテラス撫でる。

「ちょくちょく様子見にるよ。まあ、五日くらいで不自由は無くなると思う…寝る時以外」
ウシワカはそう言って笑った。

「…少し良いかい?」
ウシワカが寝台の横の椅子に腰掛ける。
「ええ」


「以前話した件だけど、やはりこの先、戦争は避けられない」


アズミは思わず起き上がりそうになってしまい、ウシワカに止められた。
「…そうですか…」

ウシワカが布団を肩までかけ直す。

「ソーリィ、色々シュミレートしたけど…」
ウシワカの傍らにはアマテラスがいる。

そのまなざしは、何を訴えているのだろう。
アズミには分からなかった。
だが、この國は守らなければ…。
かつて幽門の先で見た、あの光景。

あれが…本当に私たちの未来なの?

アズミはここ何年も、様々な方法を考え続けた。
そして、その答えは。

やはり…彼と同じだった。

「…分かりました。皆に伝えましょう。ウシワカたん、お力を貸していただけますか?」
「!…フフフフッ、もちろん」
その男は、懐かしい呼び名に笑った。

「向こうの村に住んでいる人達を全員こちらに移動させて欲しい」

タカマガハラの村は平原のその先から山脈の麓まで、広く分布している。
もちろん村や畑には、天神族の張った結界がある。
しかし、妖怪はそれを乗り越えて現れた。

「彼等の住む所を作らないといけないけど…その方が結界を張るのに効率が良いから」

「ええ、すぐ取りかかりましょう」
うつぶせのまま、アズミが頷く。
「ユーが起き上がれるようになったら、まずミー達で詳しく話そう…それから皆に。オーケー?」

「はい」

アズミは頷いた。
妖怪に対しあまりに無力な…これからという時に、動けない自分のふがいなさに胸が詰まる。

アマテラスを見つめると、いつもの黒い瞳が見つめ返してきた。

ウシワカは微笑んで立ち上がった。
「…ノープロブレム。焦らなくとも、時間はまだ十分にある。今はゆっくり休んで」

「…はい」
アズミはうつむき、ただ返事をすることしか出来なかった。
ウシワカがお座りをしたアマテラスと、何か目配せをしている。
「…そう?」
どうやらアマテラスはアズミの元に残るようだった。ぽすん、と寝台の近くの床にふせる。
ウシワカは数歩歩き、扉に手を掛けようとして、そこで立ち止まった。

「あ、それと後…もう一つ。向こうの事だけど」
振り返らずに言う。
「はい…?」

「…」
ウシワカは珍しく、口ごもった。

「いや…、何とかしよう。ソーリィ、忘れて」
「ワゥ?」
アマテラスが何かを言った。

「…オーケー、そうだね」

ウシワカは観念したように、口を開いた。

「アズミ、平原より向こうの水田や田畑は全て放棄してもらいたい。実質ミーだけでは結界の管理がおろそかになってしまう。ならいっそ、無しに」

「…っ、それは…!」
アズミは起き上がりそうになった。しかし留まる。

…タカマガハラの平原より向こう、その先の土地には、この國の全ての実りがある。
ウシワカはそれを捨てろと言っている。

「こちらに作ろう。ユー達ならそれで十分なはずだ」
少しだけ振り向いた、ウシワカの表情は明るくない。

「…ご存じだったんですね」
アズミはため息を付いて、顔を背けた。うつぶせのまま、壁の方を向く。
「ソーリィ。アマテラス君を見ていれば分かる。ユー達にとって食べる事は…」

「…確かに、おっしゃる通りです。本来は必要無いことです。…ごめんなさい」
「…」
語尾が震えて、ウシワカの足を縫い付けた。

あの遺跡から出た時には、おそらく彼は私が付いた嘘に気がついていたのだ。
…本当に、月の民は凄い。
もはや彼一人だけなのかもしれないけれど。

「私達の本来の役割は、アマテラス様にお仕えし暖かい場所を与える。ただそれだけ。だけど、それではあまりにも…」

…切ないでしょう?


いたたまれず、ウシワカが部屋を出ると、丁度ハクバが水差しと、黄金の桃を盆に乗せ階下から上がって来た所だった。

「どうかしましたか?」
にっこりと微笑む。

「…ソーリィ」
ウシワカはぽつりと呟き、階段を下りていった。


■ ■ ■


「アズミ、入るわよ?」
ハクバがコンコン、と木の扉を叩く。
返事は無いが、構わずそっと入った。

「…むー」
アズミが顔を壁の方に向けて、ふてくされている。
つきあいの長いハクバには、彼女が泣きべそをかいていると言う事がすぐに分かった。
「ウシワカさん困ってたわよ」
とん、とサイドテーブルに水その他を置き、そしてソレはあっと言う間にアマテラスにロックオンされる。
「慈母様、コレはアズミの分です。後であげますから」
「クゥーン…」
お預けを喰らったアマテラスは、再び丸くなって目を閉じた。
「あの月の民の男、やっぱり侮れないわ!油断も隙も無いんだから…!」
アズミは次第にべそべそしながらプンプンと怒り出した。
「まあ、良いんじゃないの。…って何の話?」

「少しくらいの、おまけは良いんじゃないのって話よ」
アズミの言ったことはそれだけだった。
しかし、ハクバは得たりと頷いた。

「ああ。それは仕方無いわよ。あの妖怪、私達が張った結界を無視して来たんでしょう?これからずっとあの人の神通力とアマテラス様に頼るんだから。できるだけ負担は軽くしないと」
「あなたは長生きだから良いかもしれないけど…」
アズミはため息を付いて、ささやかに抗議をした。

「そんなにいいモノでもないわよ。…多分ね」

この友人は、たまにこんな顔をする。
「相変わらず、ひねくれてるわね…」
アズミは言った。

ハクバは閉めたままの窓を開け放つ。

「ふふ、そうかしら!この部屋暑いわ。さあ…!」


「闘いの準備をしましょう」

アズミとハクバ、二人の間を静かな風が通っていった。

〈おわり〉

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