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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト25 タカマガハラ⑰【大神】【長編】

■大神(長編) 箱舟ヤマト(大神) 小説

 二十年後、番外編③の続きです。
相変わらずのアホ注意!こんなんで良いんだろうか…けど微妙にこのノリでしっくり来てしまう自分がいる。

※ハクバ関連の話はもちろん捏造です。あくまでこのシリーズの設定っぽい物です。そもそも大体が後付けなので細かいとこはスルーでお願いします。カットしようか迷いましたが、もうこのシリーズのハクバについては書く機会も無いかもしれないので書きました。
あまり勝手に捏造しすぎるのも良くないと思うんですが、情報が無さすぎ!

 

■箱舟ヤマト25 タカマガハラ⑰


「じゃあ、それで行こう。どのくらいかかる?」
「そうですね…十年ほどで大体は」

ミーは今、建物一回の広間でテーブルの上に巻物を並べ、スサド、マルコと話をしている。

「あなた、知ってたんでしょう?月の方が…」
「ふふ、何の事かしら?」

声がしたので見上げると、大分動けるようになったアズミが、ハクバに支えられつつ、何だかドタドタしつつ降りて来る所だった。

「だからー!アマテラス様が…」
「ああ、むにゃむにゃね」
ハクバがポンと手を打ち、人差し指を立てて言った。
「…そうじゃ無くって、はぁ…もういいわ…」
アズミはがっくりとため息をつく。

良く聞こえなかったが…ミー達がどうかしたのだろうか?
この二人はアズミが妖怪に怪我をさせられてから、ずっとこんな感じに言い争っている。
喧嘩をしている訳では無いようだが…?

「アズミ、ユー調子は?」
ミーは今朝も看た所だったが一応聞いた。
「大丈夫です」
彼女が、いつも通りに微笑んでくれたので、先日のやりとりから少々気まずい思いをしていたミーは内心ホッとした。

「オーケー、じゃあアマテラス君、一通り説明して」
「ワゥ?」
一応テーブルの資料を指して言ってみたが、…やはり無理だったようだ。
大変可愛いのでとりあえず撫でておいた。
「仕方無いなぁ、アマテラス君。ああ、座って。畑の件はスサドやマルコと相談して、こんな感じで」

ミーは連日徹夜で作成した計画書をアズミに見せる。
「ええっと…」
アズミは椅子に腰掛け、ざっとソレに目を通した。

(ドキドキ)
…彼女のチェックは厳しいのでミーはいつもドキドキしている。

なぜ知っているのかというと、実は、客分のミーは毎朝は彼女に行動予定表と、一日の終わりにはその日の出来事を書いた日誌を提出しているのだ。
もちろんタカマガハラに来た当初はそんな事はしてなかったのだが…ある時を境に何故か提出を求められるようになってしまった。
…ええと、アマテラス君と畑を作った次の日くらいだったっけ?

そして研究所に籠もってからは、研究の報告も兼ねてしっかり書いたモノを渡していた。
と言っても、ミーはひたすら研究に没頭してしまうタイプなので、お使いをしてくれていたのはアマテラス君だ。

ある日、
『今日はアマテラス君の毛は何本?というビッグな謎を解くよ!コレは良い考えだ!!レッツゴーフォーイット!!』
と予定表に書いて提出したら、大きなバツを付けられてしまった…。軽いトラウマだ。

「良いですね。次を」
彼女が机に巻物を置き『よくできました』のスタンプを押す。ちなみにコレはミーが研究の合間に自作し、彼女にプレゼントした物だ。
「イエス…」
ミーはホッとしつつも、恐る恐る次の巻物を手渡す。
「…うーん、内容は許容出来ますが…タイトルがちょっと微妙ですね」
「え、そうかい?」
ミーは首を傾げた。
ハクバが巻物の表紙をめくり見る。

「タカマガハラ3000…?」
そしてぽつりとそう言った。

「フフフフ…、少し古風だけど、ベリィナイスな計画名だろう?」
ミーはキラキラしつつ言った。
「クゥ」
「えっ、激ダサ?どマイナー?ネタ古すぎ?」
アマテラス君にそう言われた気がして、ミーはショックを受けた。

「…なるほど。中々、分かりやすくて良いと思いますよ!」
だがスサドはそう言ってくれた。やはり彼はミーのナイスフレンドだ。
「フフフ、ユーならそう言ってくれると思ったよ!!」
固い握手を交わし盛り上がるミー達を余所に、アズミ達は何かを相談している…。

「うーん、何か他に…」「微妙ですな」
「もっと感動的な…」「ワゥ…?」
どうやら必死の抵抗を試みている様子だ。
だがこの計画名が正式採用になるというのがミーの予言だったりする。

「…とりあえず暫定と言う事で」
アズミが『もうちょっと良い感じに』のスタンプを押した。ちなみにコレが一番使用頻度が高い。
その他にも色々検閲を受け、何とか全てにオーケーを貰った。ミーはやれば出来る子なのだ。

「ワゥ」
アマテラス君がミーを呼ぶ。

「アハハハハハハ!…おっと、そうだった」
高らかに笑っていたミーは建物から外に出た。もちろんアズミ達も。

余談だが、ミー達の住まい屋はこの二十年の間に、やたら天井が高くて夏の冷却効率に問題のあったカラクリ屋敷から、ミーが初めてタカマガハラへ降り立った時のあの青い屋根に白壁の建物に戻っていた。構造は以前の物と全く変わらない。
当然、ミーとアマテラス君は同室だ。

「順番に並んで、適当に座ってくださーい」
外では天神族達がワラワラと集まっていた。
アズミとスサド、マルコが名簿を見ながら数を数える。

今ここに、一応全ての住人が集まっている。

男性、女性、大人、子供、老人…。最近、天岩戸から誕生したばかりのベビィ。
みんなそれなりにおしゃべりをしたりベビィは泣いたり寝たりしつつも、指示には素直に従う。

「へぇ…こうして見ると…結構多いね」
「そうですか?全然少ないと思いますけど」
その様子をのんびり眺めていたハクバが言った。ちなみに彼女には前科があるので点呼係からは外されている。…実は連帯責任でミーもだったりする。

「ワゥ!」
アマテラス君は少し離れた場所で蝶々を追っている。
あの時もこんな感じではぐれたんだっけ…。
ミーはつい昨日のことの様に思い出した。

「後は…、ふふふ、ウシワカたんで、全員ですね」
「たんは止してくれないかなぁ…」
アズミが言った。
彼女にウシワカたんと言われる度に、ミーはなぜか姑にいびられている気分になる…。
まあ、良いか。

「アズミ、じゃあ始めよう」
「はい」

そして、ミー達で決めたことを皆に伝えた。

これから妖怪が平原の向こう、村や田んぼに現れ危険なので皆この建物の周辺や平野に新しく家を作り、保護しやすい場所に移り住んでもらう事。
新しく作る予定の畑やあぜ道には結界を張り、アマテラス君やミー、もしくは暇な筆神達が毎日見回りをする。

「移動してもらったら今まで通りにしてもらって大丈夫だよ。ばらけていると結界が張りにくいってだけだから」
ミーは言った。
「あ、結界の外の森や川に用事があるときは、ミーかアマテラス君を連れて行って」

「分かりましたー。アマテラス様、月の方、ご迷惑をかけますー」
「お願いいたしまーす」
心配だったが、天神族達はあっさり頷いてくれた。

「しかし、畑が狭くなると、暇になりますなぁ」
一人が呟いた。

「アハハ!!ノープロブレム!!その件はアズミ達から何か提案があるらしい」
ミーはすかさず言った。

ミーは詳しく聞いてなかったけど、アズミは自信満々に任せて下さいと請け負った。
そういえばハクバが何か倉庫でごそごそしていたが…?
新しい習い事か何かだろうか?

「はーい!皆さん、今から配りまーす」
ハクバを筆頭に、十名ほどの手伝いの女性がスモールな籐籠に入った小さなものを、一人に一つずつ配っている。

一体何だろう?

「おお、コレは…!!懐かしい!ざっと…、ナンネンぶりじゃ?」

一人のお年寄りが言った。
若者は首を傾げている者も、知っているのか驚いている者もいる。
そうしている間にあらかた配り終えた。

「ワッツ?見せて」「あ、どうぞ」
ミーはスサドの分を見せて貰った。

「…?何だいコレ?」
それは、ミーの手のひらくらいの大きさで、薄くて平べったくて、丸い物だった。
色は白で、特に何か書いてあるわけでも無い。
素材はごくありふれた金属だが、どうやら通力が籠もっている…。

「はい、みなさーん、ソレを衣服に付けて下さい」
アズミの言葉に、皆がいそいそと付ける。
「あ、ウシワカさんの分です」
ハクバが渡してくれた。
「!ミーも!?サンキュー」
ちょっと嬉しい。でも一体、粗品的なコレは何だろう?
受け取ったミーはソレをしげしげと眺めた。


「はーい。コレで戦闘モードに変更完了です。皆さん頑張って妖怪と戦いましょう!」


「えっ!?」
アズミの言葉に、ミーはあっけにとられた。
皆を見ると胸に付けたバッチの色が赤く変化し『戦』という筆文字が浮かび上がっている。

「おお、コレが噂の!」「何か強くなった気がする!」
「よし、戦うぞ!!」「おう!!」

「ええーーーっ!!???ちょっと!!ユー達!!」
ミーは慌てて言った。
「あら、ウシワカさん。付けてあげましょうか?」
ハクバが付けてくれた。
「あ、サンキュ…じゃなくて!!こんな、こんなお手軽でいいのかい!!?」

「月の方。折角ですもの。私達も戦います」
アズミの胸にもキラリとバッジが輝いている。他の天神族と違い、黄色に変化している…。ミーのは緑だ。どうやらコレは神通力の強さ?を現すモノらしい。

「ふふ、これは天神族板の神器のような物です。我々は、通常モードでは幾ら鍛えても、全く強くなりませんから。非常時用にコレがあるんです」
彼女は笑って言った。
「…そんな、ベリィ!!おかしいよ!!」
ミーは思わず素の口調で反論してしまった。

そして、アズミはどこからか数枚の破魔札を取り出し、クルリと回ってびしっとカッコイイポーズを決めた。
「ふふふ!!コレで私達は、通常武器及び攻撃系の破魔札がバッジの色に合わせて使えるようになります!!月の方やアマテラス様に遅れは取りませんよ!」
中々様になっている。
ちなみに衣装も多少変更されている…。

「そ…、そう…」
ミーは何か、もう今までで一番酷い脱力感に襲われた。
…酷いめまいもする。

「あ、でも基本戦うのは男性達だけですから。ウシワカさん、驚いたでしょう!?」
同じく戦闘モードのハクバが笑って言った。
バッジの色は…なるほど、コイツがラスボスか。

どうやらサプライズだったらしい。
「…オーケー、ミーは要するに、暇なメンズをビシバシ鍛えれば良いんだね?」
ミーは側の木に手をつき、人生について考えながら言った。

「ソレもありますが…、皆さん!」
アズミが笑って言った。まだ何かあるのだろうか?

「!ワクワク!」「!サワサワ!」
そう言えば、さっきから天神族達は妙にキラキラした目でこちらを見ている…。

「!ワゥ!ワゥ!」
アマテラス君も、何やらしっぽを振って、!早く、早く!とワクワクモードだ。
一体どうしたことか?

これ以上のサプライズはもうさすがに無いと思うのだが…?


「さあ!ここでお待ちかねの、恋愛解禁です!!来るべき闘いのために、頑張って人口を増やしましょう!」


「「「わぁああーーーーーーーーーい!!!」」」


……ミーはもう、ダメかも知れない…。


■ ■ ■


…恋愛解禁の知らせを聞き、大人から子供、さらには老人まで。
天神族達はどいつもコイツも『ニコニコピョンピョンばんざーい!!』とはしゃぎまくっている。

お気楽すぎるその様子に、何故かは分からないが…ミーの全身からいやな汗がボタボタとしたたり落ちる。
どうやら…ミーの第六勘が何かを訴えているようだ。

えっと…。恋愛解禁…?
ええと…恋愛って何だっけ?その先的な…。
…はっ!?

こ、コレはもしかして、このままだとかなりマズいのでは…!?

「ちょ、ちょっと、ストッーーーープ!!!ユー達、恋愛のなんたるかを分かっているのかい?」
ミーはアセアセしながら叫んだ。
お気楽なこのノリは道徳的にあまり良くない気がする!

ピキンと天神族達が固まった。

言わずもがなと言った所か…。

「やっぱりね…。フゥ…ヤレヤレ。ユー達!ここはひとまず、ミーの言う事を聞いて欲しい!」
ミーは手をヒラヒラさせて余裕たっぷりのフリをして言った。
もちろん内心は冷や汗ダラダラだ。

…以前、酒の席で「真偽の程は不明ですが、天神族は月の民や他の人間達とも混血が可能らしいですよ!」という豆知識をスサドやマルコに聞いたが、…まさか、天神族達が突然こんなお祭り状態になってしまうとは。

今すぐに、何か手を打たなければ、オロチの襲来よりも恐ろしい事になってしまう…!
…かもしれない。
ヨシ、ここは一つ…。

「ウシワカさーん?なにゴニョゴニョ言ってるんですか?」
「ワゥ?」「ふふ。しばらくお待ち下さい、ですね」
外野が五月蠅い。ええと、何か皆を引きつけられるようなフレーズを…っと、そうだ!

「ヨシ!!」
考えがまとまったミーは、懐から笛を取り出した。
ソレを頭上に掲げ、クルクル回りビシッとポーズを決める。

「ユー達!!ズバリ!!ミーは、『人倫の伝道師』だよ!!」

そして高らかに宣言した!
「「おおおーーー!!?」」
聞いた事の無いフレーズに皆が驚く。…掴みはオーケーだ!
ミーはすかさず、ビシィっ!!とポーズを変えて言った。

「ミーとアマテラス君が、恋愛に悩めるユー達を、懇切丁寧に、逐一サポートしよう!!」
「アゥ!!?」
他人事ー☆とばかりにその辺の木にあった林檎を囓っていたアマテラス君が驚いた。

フフフ…、ユー、サボろうったってそうは問屋がおろさないよ。
そして…ここからが重要だ。ミーは続ける。

「『あ、コレってもしかして恋?』と思ったら110番!!悩んだことは包み隠さず報告!!レッツロックの前にはイズヒアー!!……要するに事を何か起こす前には、ミー達仲人の許可を得てからにすること。…オーケー?」
ミーは普段の笑みをかなぐり捨てて、…最後の方はドスの言った声で言った。

「「えー、折角」」
アホ天神族達が抗議する。

「アハハハハ!!オーケー?」
「ぶーぶー!」「めんどくさいー!」

「い、い、ね?」
天神族のさらなる反抗は、穏やかな青筋スマイルで封殺した。
「「…はい」」
ミーはめでたく言致を取ることに成功した。
ヨシ、コレでひとまずタカマガハラの風紀は守られた。
「分かればオーケー。フゥ…!」
一仕事終えたミーは、イイ顔で額の汗をぬぐった。

「じゃあ、まとまった所で、作業を…」
アズミが困った様に笑って話を進め出した。

その後、天神族達がせっせと引っ越し作業の段取りを組むのを、ミーはぐったりと、その辺の岩にもたれて眺めていた。

「…」
おや、アマテラス君が何か言いたげにしている気がするなぁ。
だが『産めよ増やせよ!目標は三千人!』的な神様思考はこの際ムシだ。
折角なので笛でも吹こう。

まあ巻き込んでしまった手前、一応同意は得ておこうかなぁ。
「アマテラス君、オーケー?」
「………」
ぽた、と嫌々そうにしっぽが揺れた。


…それからという物のミーは大忙しだ。
新生タカマガハラの都市計画を実行したり、引っ越しのお手伝いをしてお礼にトウモロコシを沢山貰ったり、おじいちゃんの代わりに草取りをしたり。大工さんにお茶とお茶菓子を出したり。あ、ついでに結界も張らないとノーだね。そんな事をしつつ、皆の相談を受けなければいけないのだ。

予定表に書くことが沢山あって、今ミーは朝食を食べながらせっせと筆で記入している。
行儀が悪いが、提出時刻まで時間が無いので仕方無い。アズミの目が光っている。

さて、今朝のメニューはおなじみのハム付き目玉焼きだ。

まず醤油をさっと目玉焼きにかける。
そしてバターを薄く塗ったトーストにのせて、その後に自家製マヨネーズを適量。
ソレをスプーンで馴染ませ、トーストを二つ折りにして頂く…というのがこの國の作法らしい。レタスという葉っぱがあると殊更に美味しい。

初めは戸惑ったが、ミーも今では慣れた物だ。
一口食べる…。何これデリシャス。最後の晩餐はコレで決まりだ。

「あ、スサド。醤油とって」
飲み物を配り終え、席に着いたハクバが言った。
「はい、どうぞ」
スサドが渡す。
「ありがとね」
ハクバはにっこりと笑って言った。

ビビッ!!
「「はっ!!?」」
二人が硬直する。一体どうしたのだ!?

「「!!コレってまさか…恋!?」」

「…ノー、ソレは違うよ」
せめて手が触れあったとかならまだしも、それは無いだろう。
おっと…予定が紙に入りきらないなぁ。よし、二枚目だ。

「うーん。じゃあ、どれが恋ですか?月のお方、ご教授を」
大真面目にスサドとハクバが聞いてくる。
ミーは笑って言った。
「そうだね、恋というのは…」
ミーはエクセレントな説明をする。

「「なるほどー!」」
「そう、月では夫婦が一緒に暮らすのが普通だったけど、ここはタカマガハラ。そこはユー達の好きにしたら良い。さて!フニッシュ!ってアレ?」

ようやく食事の続きをしようと見るが…目の前には全く何も無い。

「ワゥ」

「大変美味しく頂きました。っておっしゃってますね」
アズミがニコニコと笑っている。
ミーはピキンと固まった。
「へぇ…、月って変わってますね。うふふ!私もお見合いって言うのをしてみようかしら?楽しそう!とりあえずスサドで」
「え…、じゃあ。えーと、ご趣味は?…って知ってるけど。うーん、こんな感じかな?」
「アハハ!」
二人の照れた様子が大変微笑ましい。
ミーは仕方無いので非常用の干し柿と残っていた葉っぱをムシャムシャと食べた。

「あの、月の方ー、いらっしゃいますか?」
見ると、数人の女性達が入り口から呼んでいる。
やはり女性達は恋愛に興味があるのだろう。
「オーケー、今行くよ。アマテラス君も…」
「クー」
と見たら、満腹のアマテラス君はテーブルに頭を乗せて眠っていた。
だけどミーには分かる。コレは狸寝入りだ。
ほら、耳が少し動いている。

ミーは微笑んでアマテラス君を撫で、その場を後にした。


…こんな感じが、ミーが到着してから二十年後の様子だったかなぁ。

テメェ、もっと真面目にヤレ。昼寝するから晩飯には起こしてくれ?
おや、ユーってば、何だらけているんだい?
フフフ。もっとシリアスな展開を期待していたのかい?

バッド今は…悲しい出来事より、楽しい出来事を思い出したい。

そうしないと…。


■ ■ ■

…それからさらにしばらくたった頃。

散歩中のミーは箱舟ヤマトの祭壇で、文字通りゴロゴロと暇そうにしていたハクバを見つけた。

「暇だわー。あ、ウシワカさん」
「ハクバ。…暇そうだね」

折角なのでミー達はそこでしばらく立ち話をした。
ここ最近は皆忙しく、彼女とまともに話すのも久しぶりだ。

まあ、アマテラス君はしょっちゅうお昼寝をしているんだけど。
…そして今もお昼寝中だ。

諸々の進み具合に加え、天気の話とか。後は戦闘モードの天神族と戦ったが、なるほど意外に使える…。コレなら多少の妖怪が来ても大丈夫だろう。そんな事も話した。

「また…闘いになるんですね」
彼女はヤマトを見上げて呟いた。

また、と来たか。
思えば彼女も不思議な人だ。

「ユーだけどうしてそんなに、詳しく記憶が残っているのかなぁ?」
ミーは聞いた。彼女は何故か、どの天神族よりも過去の事を良く覚えている…。

折角だし、彼女の事をよく知りたい。いつも適当にはぐらかされてしまってきたが、今日こそは何か聞き出せそうな気がする。

「色々覚えているのが、私の役目なんです。他の皆もそれぞれ得意な事があるでしょう?」
彼女はフワフワと金色の羽を動かして言った。

「…?役目?」
確かに、天神族には皆それぞれ得意な事や、役割や仕事のような物があったりするのは知っている。
だが、彼女が言ったセリフは、記憶の継承自体が彼女の『役目』として定められている…そう言う意味では無い気がした。
そこで、ミーはさらに聞いてみた。
「他より記憶が多いというのは、…ユーが、特別だから?」
それなら納得できるのだが…。
「いいえ。そんな事は無いです。あ。ウシワカさんには、話しておいた方が良いかしら」

あっさり否定し彼女が語り始めたのは、賑やかだった頃のタカマガハラ…。
話しておいた方が良いというよりは、聞いて欲しいという感じだった。
彼女は、祭壇の縁に腰を下ろした。
ミーもハクバの羽が当たらないくらいの距離を開けて座った。

「もうどれくらい経つのかしら…、あの頃は、大勢の月の民がここに住んでました」
彼女はため息を付いた。

「彼等…月の民は元々、旅の途中でココに立ち寄って、ウシワカさんみたいに住み着いたんですケド。繁殖力旺盛というか。まあ、これは人間なら仕方無いんですけど、まあ、要するにそのせいで、彼等をココでは養いきれなくなってしまったんです」

「そして…次第に天神族達と対立するようになって、…争いが起き。結局、皆ココを離れていきました。この國にある遺跡はその時の名残、幽門も、彼等の研究の足跡です」

「…なるほど…」
あの遺跡群は、確かおよそ二千年前から三千年前の物だった。その辺りの話か。

「…私はその時くらいに、丁度生まれていて。彼等と一緒に月へ行こうとしました」

「え?」
意外な事を聞いたミーは、思わず彼女の方を見た。

それは、まさか。

「…好きな人でも?」
「…まあ、ぶっちゃけノリですけど。…月の民って皆イケメンですから」
彼女は苦笑した。

「アハハ…。うーん…」

しかし、彼女に直接月の民と関わりがあったとは。
おかしなこともあるものだ…。
そしてミーは今得た情報を、ミーの知って居る事と合わせ反すうしてみる。

かつて月の民は、一時、天神族とアマテラス君の住まうタカマガハラで、ハッピーなライフを送っていた。それならば、月の王宮で見つけた手記に書かれた『タカマガハラへ』と言う部分の謎が解ける。

ただの推測だが。おそらく性根の悪い月の民はどこかで迫害され、新天地を求めここに来た。しばらく平和に暮らしていたが、この國は彼等にとっては狭かった。
そして次第に、あまり増えない天神族と折り合いが悪くなり、ドンパチして、この地を去った。まあ、こんな所かなぁ。

喧嘩別れだったからタカマガハラの存在を、ごく一部の者しか知らなかったのか?
しかしたった二、三千年で忘れる物だろうか?
…何か引っかかる。

それに、奴等はココを乗っ取る気だったのでは無いだろうか…?
…その結果、大戦争になったのでは無いだろうか。そして、アマテラス君達が勝利した?
ミーはハクバにそう尋ねてみた。

ミーの言葉に彼女は首を振った。
「いいえ。いくらかの闘いの後、結局…彼等がこの地を捨てたんだと思います。慈母様が…そう、彼らが居なくなって、しばらく寂しそうにしていたのを覚えてます」

ハクバが少し遠くを見て言った。これは彼女が過去を振り返る動作だ。

ミーはホッとした。…どうやら、ミーが思ったより平和的に解決が成されたようだ…。
さすがはアマテラス君。そして、天神族だ。

ホッとしたミーを見て「ふふふ」と彼女が笑い、裾を整えてから立ち上がった。

「あの頃は人も多くて…賑やかだった気がします。さすがに昔過ぎて、うろ覚えですけど」
きっと、ハクバにとってはそれなりに良い思い出なのだろう。
彼女にその時代の記憶が残っていたのなら、ミーに初めから気安かったのもうなずける。

話はコレでおしまいのようだ。ミーも立ち上がる。
「サンキュー、ハクバ。中々興味深い話だった、ところで」
…どうしてユーはそんなに良く覚えているのかな?…気になって仕方無い。

「ふふ。この舟を見ていると…なぜか昔の事を語りたくなるんです」
ミーの言葉を遮るように、彼女が言って、こちらを見たその表情を…何と言ったらいいのだろう。
…親しげな微笑み?
「?」
ミーは不思議な気持ちになった。
だがコレはまた…肝心の部分はぐらかされそうだ。

「私達に、もしもの事があったら。慈母様をよろしくお願いします」

彼女はそう言って、いきなりミーに頭を下げた。
「…ええと」
ミーは予見を思い出し、返答を一瞬躊躇した。

「慈母様は、ウシワカさんの事が大好きですから」

ミーは、その言葉に驚いて、しばらくポカンとした。
ミーが請け負って良いのだろうか?


■ ■ ■

「ワゥ!」
ロングなお昼寝を終えたアマテラス君がやってきた。

どうやらお腹が空いたのでミー達を呼びに来たらしい。
「あら、慈母様が…。じゃあ戻りましょうか」
ミーはうなずき、ハクバと共に歩き出す。

祭壇を降りたミーは、ヤマトを振り返る。

「ワン!」
アマテラス君が隙を見せたミーに、どうだ!とばかりに頭突きをして来たが華麗に避ける。
こんな事は、もうすぐ夕飯だが、朝飯前だ。
「きゃっ?!」
しかし隣のハクバは、巻き添えを喰らって尻餅をついてしまった。

「あっ!!ハクバ、大丈夫かい?」「あたた…」
ミーは慌てて彼女を起こした。
「アマテラス君、コラ!怒るよ!…ってヨダレはノー!」
今度はミーに飛びかかって来たアマテラス君に、ミーはぷおー!と本気を出して怒る。

「シッダン!おすわり!」
「ゥ…」
アマテラス君が渋々座る。本日のしつけタイムだ。
ミーは今怒っている。

「一応、ハクバも多分レディだよ。妖怪っぽいけど。オーケー?」
「クゥーン…」
ミーに叱られたアマテラス君が少ししょげて、ハクバにマルを書いた。

「まあ、…ふふ」
ハクバがにっこり笑ってアマテラス君を抱きしめ、撫で撫でした。

「クゥーン!」
アマテラス君が嬉しそうに鳴いた。

…これは察するに、鳴き声を変えるのがめんどくさかったのだろう。

「やれやれ…」
全く。アマテラス君はホントにいたずら大神だ。今もひたすら一閃をミーに当てようと頑張っている。

仕方無いのでミーも少し撫でてあげる。目を細めるのが大変可愛い。
っと、ベロベロと顔を舐められるミー。まあ、良いか。
「アハハ!ようし、ようし!怒ってソーリィ」
「ワゥ!ワゥ!!」
ミーはアマテラス君を転がし、お腹を撫でながらふと思った。

そういえば、…ミーがタカマガハラに方舟ヤマトで降り立った時、アマテラス君はものすごく嬉しそうにしていたっけ…。

あの時はヤマトが珍しいからはしゃいでいたのだと思っていたが。
もしかしたら。

…月の民が、戻って来たと思ったのかもしれない。

「さあ、行きましょうか」
ミー達のじゃれ合いを眺めていたハクバが笑って言った。
「あ、イエス…」

道すがら物思いにふける。

ハクバはかつてあった月の民との争いは大した事は無いと言っていたが、それでもやっぱり月の民を知っているミーとしては、……、…心配だ。

意外に天神族は本音を隠すのが上手い種族だし…。
昔は大勢居たらしい天神族が、ミーが来た時には数百人しか居なかったのも気になる所だ。

…でもアマテラス君にとっての月の民はたぶん悪い物では無い。
うろ覚えのハクバの言う事はうさんくさいが、きっとそれなら、大丈夫だったのだろう…。

ミーを「大好き!」だというアマテラス君を信じよう。

ハクバの事は目下捜査中という事で。
まあ、ミーが何となく気にしているだけだし…またそのうち聞き出せば良い。

「ふわふわ~っと、慈母様、林檎ですよ」
ハクバがふわりと浮かび、木になっていた林檎をゲットしている。
「ワウ!」
我が物顔でアマテラス君が林檎にかじりつく。

「はい、ウシワカさん!」
ハクバがミーに差し出す。
「!サンキュー。真っ赤だ」
ミーはかしりと林檎にかぶりつく。

彼女に取ってもらった林檎は、格別に美味しかった。

〈おわり〉 

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