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■箱船ヤマト27 閑話 きっとそんな【大神】【長編】

閑話休題。イッシャクさんお疲れ…。短いです。

 

 ■箱船ヤマト 閑話 きっとそんな

イッシャクの傍らでスヤスヤという寝息が聞こえる。

今日も酒を飲み語っていく内に、ウシワカは舟をこぎ始めた。
癖になるから、風邪を引くからやめろと幾ら言っても聞きやしない。

例によって、あぐらを搔いて、肘を突いたり、うつむいたままぼーっとして、気が付けば自分の髪を掛け布団の代わりに丸まって、そしてまたイッシャクが布団を掛けたり、布団へ寝かせたりする羽目になるのだ。

今日、また風邪がぶり返したのか、コンコン、と酒にむせたフリをして咳をしていた。
ウシワカは咳をするときは布で口を覆う。神経質な達なのだろう。

「っと、いけねえ…」
イッシャクはぐいと飲んでいた杯を盆の上に置いて、ウシワカを揺すった。
…起きる気配は無い。
やれやれ、とため息を付いて、膝も突いて、よいしょ、と持ち上げる。難儀な事だ。
自分より少し背の高い体は、それなりに目方はあるのだが、枯れ枝のようで…というか痩せすぎだ。

もちろん普段なら、イッシャクからすれば、この男は見上げる程の大きさだ。
今はちょっとした方法で「倍率」が同じになっている。その方が何かと世話を焼きやすいし、自分の数千倍ほどある男がうっかりカムイで倒れでもしたら、小さなイッシャクと狼のアマテラスだけではさすがにどうすることも出来ない。
ウエペケレまで人を呼びに行くと言う手もあるが、その間に下手したら凍死してしまうだろう。

まあ、今となってはそれもできねぇが…。
イッシャクはため息を付く。

この男が、本当に回復するまで、どのくらいの時間が掛かるのだろう。

ウシワカがタカマガハラの事をようやく語り始めたのは、傷も癒え、一人で不自由なく起き上がれるようになった…およそ一月ほど前の事だ。

真面目な話が聞ける、と思って身構えたイッシャクにウシワカが語ったのは、何とも気の抜けるようなタカマガハラでの日常だった。
いや、初めの月の話はそれなりに「しりあす」だったのだが…途中からウシワカの様子がおかしくなった。

それというのは、イッシャクにも原因がある。

仕方の無いことだが、あまりにそこはナカツクニとは違っていた。
初め、ウシワカは感情を排除し簡潔に述べようとしていたが、イッシャクにしたら摩訶不思議で、逐一、分からない事を聞かなければならなかった。

これはイッシャクの理解力以前の問題だった。
…相手は完全な異邦人なのだ。
『大神』の事は天道太子として話に聞いていたとはいえ、言ってしまえば。…なんだそりゃ?の一言に尽きる。
タカマガハラの言葉はどうやらナカツクニの物と同じらしいが、ウシワカは時折おかしな言葉を使うのでそれも訳が分からなかった。

それはもう十を聞けば八、九は分からない、といった有様で。
まだしも不可思議なハズの大神や筆神、陰陽術の概念や予言の力と言ったことの方がイッシャクには理解しやすかった。

ウシワカもこれには困った様子で、なぜ自分がアマテラスと一緒に居るのかを分かりやすく説明しようとして…話す内につらくなってきてしまったのだろう。

どちらからともなく、酒杯を手にしたのが運の尽き。
…尽きたのはイッシャクの運だが。

だが、そのうち、お互いにずいぶん慣れて来た。
ウシワカは酒に頼りながらも、徐々になめらかに、時折楽しげに語るようになり、ようやくここまでたどり着いた。
「ハァ…」
これまでの苦労を思い出し、イッシャクはため息を付いた。頭痛もする。
イッシャクにはここまで来て、ようやく分かったことがある。

…コイツは、あり得ないほど面倒臭い奴だ。

会った時から一筋縄ではいかないと言う気はしていたが…言葉も同じだし、頭も切れそうだし…まあ当然、それなりに話の通じる人間なのだろうと思っていた。
だが、一度、蓋を開けてみればどうだ!?

まさか、まさかと思っていた。

こいつ、まさか…、真面目に語っている?この与太話を!?

そもそも何でアマテラスとの関係を真面目に悶々と悩む必要があんだよ…!?相手は犬じゃねぇか。いや、まさか、冗談だ。きっと神様に仕える従者の気分だろ、そうだよなァ!
そうであってくれ!!

ウシワカが言っていた、カルチャーショックとはこの事か。
それとも、落っこちた衝撃で頭でも打ったのか?…その可能性も高いなァ…。

「…おい、そこの白毛布」
イッシャクはウシワカを寝かせた布団の端で丸まっていた毛布に話し掛けた。
「クー」
…起きやしねぇ。耳が少し動いただけだった。
めんどくさいので、白毛布ごとウシワカに布団を掛ける。
この役に立たない毛布がいつも早々に寝てしまうので、イッシャクだけが面倒な男の面倒を見ることになる。

「あー、眠ィ…」
イッシャクも眠くなって来た。
酒をよけて、空いた場所に布団を敷く。
全く。酒代がかさむぜ…。まあ、ソレはいくらでもやりようはあるが。
飲まないと話さないのだから仕方無い。

この先も、この男はそんな風なのだろうか。
まさかこのまま、狂っていくつもりなのかよ?
月での事、まだ何か在るのか?
どうしてタカマガハラは滅んじまったんだ?

…厳しく問い詰めても話さないのだから仕方無い。
俺に出来るのは聞くことくらい。そして、伝えるのが役割。

乗りかかった舟か。クソ。こうなりゃ、とことん最後まで付き合ってやる!!
天道太子様を舐めんなよォ!

イッシャクは枕元に避けた徳利に手を伸ばし、酒を注ぎ、ぐい、と杯をあおる。
彼は、布団からはみ出たウシワカの頭を見て思った。

…コイツにも、役割があるんだろうな。
俺が天道太子であるように。

そんな…コイツだけの使命が。

〈おわり〉

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