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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱船ヤマト28 宴 【大神】【長編】

■大神(長編) 箱舟ヤマト(大神) 小説

箱船ヤマトはこれにておしまい。大円団☆…ならいいのにな…。
色々書き残した事を詰め込んだので無駄に長いです。
ついでにハクバの引っ張ってた所をようやく解消。…書き忘れとも言う。
今回からサブタイトルのタカマガハラ~が消えます。

※設定、月の過去は捏造注意。ウシワカの過去設定もかなり捏造ぎみ。
想像付かないけどウシワカのお母様は絶対美人。お嫁に来て下さい!…あ、人妻?いえいえ気にしませんよ私は!

 今日はここまでです。あと9話で終わりです。

■箱船ヤマト28 宴

 

ミーは穏やかな光に目を覚ました。
昨日も宴の準備で遅くまで起きていたため、少し寝坊してしまったようだ…。
と言ってもまだ朝焼けの時間だ。
身支度を調える。

「月の御方、失礼いたします」
ノックの後に声が掛けられ、一人の女性が入ってくる。
彼女はミーの住む建物に勤める女性だ。

「サンキュー、ユー、ちゃんと休んだかい?」
ミーは彼女に聞いてみた。
昨日は、皆も遅くまで宴の準備を手伝っていたのだ。

「ええ、私はまだマシです。一応朝餉をお持ちしましたが、どうされますか?もう本宮では酒盛りが始まってますけど…お料理も出ていますよ」
彼女はお盆を見せて苦笑した。
どうやら気の早い幾人かはフライングで酒盛りを始めてしまったようだ。

この日のためにミー達は色々、急ピッチで食物を栽培した。
若干の反則技も使ったが、まあ良いだろう。
「ハクバに捕まったらやっかいだし、もらうよ」
幹事のミーは色々やることがあるので、大広間の魔物に捕まるわけにはいかない…。

「うん、デリシャス!
お茶漬けをかき込みながら、ミーは本日の予定を考えた。

午前中は皆で天岩戸を掃除。
そしてランチを食べた後、痛んだ結界を張り直す。…コレが本日のメイン。
五十年に一度のレアーなイベントなので、ミーは密かに楽しみにしている…。
そして後は適当に宴。魔物に見つからないウチに脱走してアマテラス君とランデブー

まあ何とかなるだろう。

「オーケー。じゃあ、ユーもハクバには気を付けて」
「はい!…あ、今行くわー」
女性はうなずき、外から声を掛けられて退出していった。

食後、ミーはバルコニーから眼下に、整然と整えられた街並みを見る。

…変われば変わるモノだ。

この数十年、建築にすっかり魅了されたミーとオタクなスサドは調子に乗って、様々な建物を作り出した。

中心にアマテラス大神が座するやたら横に大きな本宮があり、街の四隅にはアズミ、ハクバ、スサド、おまけでマルコの住居。

そして天岩戸の森から一番離れた、街の隅っこの方…結界の外に続く平野を見渡せる位置に、ミーが住むグッドデザインな塔がある。

ミーはアマテラス君と同居などおこがましいと思って、住居を離してしまった事を毎夜泣くほど後悔している。
眠るときは大抵アマテラス君が来てくれるし昼間もミー達は良く一緒に居るので、本宮がこちらか、どちらかが空になっているのが日常だったが…。
今日も寂しくて死にそうだ。

この街には、今、千五百人ほどの天神族が住んでいる。

今夜から三日三晩、三回に分けてほぼ全員が宴に来るのだが、全くこれほど大規模な祭りだとは。
新年の挨拶が皆で雑煮を食べるだけと言う適当さなので、きっとそんな物だと思っていたら甘かった。
人数が少なければ一度に済んだのだが…ハクバの言うタカマガハラの最盛期などは想像するのも恐ろしい。

ミーはようやく見つかった羽衣を風になびかせ飛翔する。

おそらくアマテラス君はミーとささいな仲違いをした後、天岩戸に籠もる前に何となくそちらに行って、そのままそこに置き忘れてしまったのだろう。
相変わらずのお茶目さんだ。

さて、ミーが今向かっているのは本宮では無く、天岩戸だ。
何か神様的な事情があるらしくアマテラス君は最近そこで寝泊まりしている。
昼から結界を張り直す前に一応掃除をしなければ。と言う訳で。

「グッモーニン!アマテラス君」
さくっと天岩戸に着いたミーは、元気よく足を踏み入れた。
何か若干涼しい気がするケドきっと気のせいだ。

「グゥ…」
アマテラス君が真ん中で寝ている。
「グッモーニン?フフフ…」
ミーはアマテラス君が起きないのを良いことに、こそっと近づき、撫で撫でする。よし折角だから、イタズラ書きを…。額に『大肉』とか、どうだろう!
丁度その時。
「アマテラス様?そろそろお掃除を…」
「っ!!」
ミーは一瞬びくっとしてしまった。
外でせっせと準備をしていたアズミが入って来たのだ。これは危ない。
怒られるトコだった…ミーは慌ててマジックをしまう。ハクバは当然ずる休みだ。

「うーん、起きないなぁ…」
ミーはごまかしついでに、ゴニョゴニョつぶやきながら、アマテラス君に頰をすり寄せ、一緒にゴロゴロする。
『ガウハオヨユ!!!』『ガェウーー!!』『ギョウギャーー!』
筆神達の集中砲火を受けるが、そんな物はミーには通用しない!
『ギョウ!』
「イタッ!?」
お尻にガブリと噛み付かれたミーは振り返った。

『『『『『『『『…(激怒)』』』』』』』』』』
…、そろそろ、お掃除の時間かなぁ!

「じゃあ、掃除始めましょうー!ちゃっちゃと片付けちゃいましょう!」
「「「「お~…」」」」
どうやらそのようだ。
アズミが目の覚める良い声で、眠そな天神族達の音頭を取っている。
…アマテラス君は起きないが、仕方無い。
先に始めよう。ミーはごみ袋を受け取った。

『フォアフェゥ』
「幽神君…ちょっとどいて。よい…しょっと、ヘビィだね…」

『モフィアフェ!、アフェッ!』
「イタタ、つつかないで!」

ミーはじゃまっこい筆神達の抵抗をもろともせずに掃除を推し進める。

彼等は最近、一応非常時と言う事でここぞとばかり好き勝手に動き回り、結界の外へ行ったりして勝手に妖怪を倒したりしている。
そして各々が戦利品を持ち帰る。おかげでココは聖域だというのにガラクタだらけで足の踏み場も無…、
『ニ゛ャー!!』
あ、壁神ふんじゃった。

…ユーは壁に居れば良いのに…。


■ ■ ■


「ソーリィ、ソーリィ。はい壁」
ミーは引っかかれたあと、壁に壁神をくっつけておいた。

「クァ…」
「あ、グッモーニン!アマテラス君」
しばらくしてアマテラス君が起きてきた。今日は何だか、厳かな感じだ。
用意しておいた朝食を厳かに差し上げる。ちなみにおにぎりだ。
「ワフ」
苦しゅうない、と言われた気がする。まあ、かぶりつく姿はいつも通りだけど。
ミーの小ネタに付き合ってくれる辺り、今日はアマテラス君のノリが良い。

「おや。綺麗なビー玉だなぁ!」
パカッとつづらを空けたらビー玉が入っていた。
「ワゥ!…ワゥ!」
「欲しいの?えっと他には…」
アマテラス君がものすごく欲しそうにしていたので渡す。ミーはそのまま、さらなるアマテラス君へのプレゼントを探し、周辺をガサガサとあさる。
しかし残念ながら取れそうな物は他に無かった。とりあえずゴミ袋に全部詰める。
「ぁゥ」
その間、アマテラス君は桃コノハナを使い上の方を探索している。


実は、天岩戸には上がある。


不定期に桃コノハナが出現し…そこからなんと、上の方へ行けるのだ。
時折、アマテラス君がその先から天神族のベビィを連れて降りて来る。
これが天神族版、ノーマル生命の誕生だ。

まあ今は非常時だからその限りでは無いが…、そんな事より、あの上に何があるのか…ミーは内心穏やかでは無い。…まあ、何だ。
その…アマテラス君の…家族的な何か?とかもし居たら?
イ…イヤ、やはり聖域、細かいところはアマテラス君のみぞ知る物なのだろう…。

そういう感じで、ミーは自分を無理矢理納得させている…、この話はもう止めよう。

「フゥ!大体、クリーンになったかなぁ」
ミーはゴミ袋を三輪の荷車の上に置いた。
「お疲れ様ですー、月の方、アマテラス様」
ゴミ捨てに行っていたアズミが戻って来た。そろそろ外も終わったらしい。お昼はパンと牛乳が支給される。皆は喜んで、伸びをしたりしつつ、箒などを片付け始める。

「ワゥ」
丁度その時、アマテラス君が上からすとんと降ってきた。

アマテラス君は上の方もきちんと見回ってみた物の、今日はベビィが居なかったようだ。
ミーその事実に内心ホッとしたが…アマテラス君の事だ。見回りと言うよりは単におサボりしていただけかも知れない。

「まあ、慈母様…」「あら、お腹が空いたのですか?」
アマテラス君が歩きつつ、近くの天神族達とにこやかに何かを話している…。
ミーは頑張って目をこらしたが、何も見えない。

正直、もうそろそろミーにも文字が見えても良い頃だと思う。

だけど現実はミーに厳しかった。
ミーはもっと、アマテラス君の事を色々知るべきなのだろうか?
例えば、あの上に何があるのかとか…、こっそり見に行ってみようか…とか…でも、ああ…!
「月の方…?どうかしました?」
アズミが出口付近で首を傾げている。

「ああ、ソーリィ今行く!!!!」
そうだ。本日のお楽しみイベントがあったんだっけ…!
ミーは腐っても陰陽師、結界に関することは気になるのだ。

けど。

「アマテラス君…?」
足音が聞こえなくなったので、振り返るとアマテラス君がミーを、ニヤニヤしつつ見つめていた。
「わっ!!?」
果たして、ミーはアマテラス君に誘拐され、勢いよく投げられて背中に乗っけられてしまった。突然の事でミーは思いっきりアマテラス君の背中に突っ伏した。
「うっぷ!毛が!うわ!?」

アマテラス君はピョーンと飛び上がり、蔦巻きで桃コノハナをたどり、大慌てで背にしがみつくミーを乗せたまま…光差す天岩戸、その上の方へザッと飛び込んだ。


■ ■ ■


「うぁ!!」
着いた途端にミーは振り落とされ、顔面から地面にダイブした。
柔らかい草花のおかげでダメージは少ない…って、ここは?

ミーは身を起こした。

そこに広がっていたのは、色とりどりの花が咲き乱れる、美しいお花畑だった。
白い蝶々と黄色の蝶々が飛んで、小鳥が遠くでさえずり、空気は限りなく穏やかだ。

…ビューティフル。

でも、どこかで見たことがあるような…?
筆神と修行していた異空間に似ている気もするが、あの場所と違いここには豊かな色彩がある。

「…アマテラス君?」
アマテラス君はミーの側であくびをしてころんと丸くなった。
ミーはとりあえず立ち上がり、辺りを見回した。
「…続いてる…?」

地平線の先まで真っ平らな、野原…。

広い空間だ…。天岩戸より確実に。
空を見上げてみると、太陽は出ていないし…雲もまったく見当たらない。
薄い空色で塗りつぶされている。
どこからか風が吹き、タンポポの綿毛が舞い上がる。

アマテラス君が小さくクシャミをした。

「アマテラス君、ここは一体?ドコだい…?」
って天岩戸の上なんだけど、ミーはしゃがんで聞いてみた。
「ワゥ」
アマテラス君は、めんどくさそうに風景を一別して、また目を閉じた。
「見た通りって…、それは分かるけど…。ハァ…」
ミーは少し脱力した。

ため息をついて立ち上がり、折角の機会なので少し歩く事にした。
何も無ければ、アマテラス君が起きるまで昼寝でもしよう。
コノハナは見当たらないし、降りられそうな場所は無いし。
要するに…帰り方がさっぱり分からない。

ミーはキョロキョロしながら歩を進める。

花畑は延々と続いていく。

時折小鳥がいてミーが近づくと飛び立つけれど、それ以外の生き物は見当たらない。
ミーはその辺の草を一閃で刈ってみたり、高下駄で地面を少し掘ってみたりしてみたけど、アリやミミズとかもいない…悪い事をした気分になって元に戻した。

「うーん…」
ミーは少し考えを巡らせた。先程から何となく感じる違和感。
(この空間…綺麗だけど、コレは仮初めの姿じゃ無いかなぁ)

どうにも現実感が薄い…。
試しにミーは、目を閉じてこの場所を心の眼で見た。

「…ええ!?」
そして愕然とした。

ココ、何処!?

それは、あまりに目に映る光景と違った。
辺りは真っ暗で、床、と言うかミーのふくらはぎ位までが、下からの光で照らされている。
…自分の足元が見えない。ミーは確かに立っているのだけど、浮いているように地面の感覚が無い。

天井は果てしなく暗く重く遠い。
あまりの空間の重さに慌てて目を開けたが、やはりあの穏やかな景色はまやかしだったのか、真っ暗なまま。
その上、くるくると絶えず視界が回る。

世界が回ってるのか、ミーが回っているのか!?
まるで布団に潜り、ぐっすり眠っていて、目を覚ましたら上下天地左右を一瞬忘れてしまったような。

これが、天岩戸の本当の姿…!?

アマテラス君!?何処だい!!

ミーはたまらず叫んだ。
だけどそれはこの謎空間に音として発せられる事はなかった。

アマテラス君は何処へ行ってしまったのか姿が見えない。
いや、その辺りでミーを見ている気がする。あるいは…この空間に、溶け込んで?

一歩踏み出したときに何かを踏んだ気がして、まぶしさに目を細めつつ足元をよく見ると…鏡の破片みたいな物がビッシリと敷き詰められている。
ミーの顔より大きい物から、手のひらより小さい物までゴチャゴチャと。

床というにはあまりにその感覚はあやふやで…まるで水の上の蓮を踏んでいるみたいだ。

恐る恐るまた一歩踏み出す。破片が水をかき混ぜたようにバラバラと浮き上がった…。
一歩動いただけなのに浮き上がった鏡の破片達は、やんわりと周囲の暗闇に馴染むようにばらけ…各々が小さな黄色い光の珠になってしまう。

浮き上がった光の球は苗床には戻らず、そのままミーのまわりをふよふよと漂って…、しばらく後、吸い寄せられるように上へと登って…すぐ見えなくなった。

もうこれは途方に暮れるしか無い。


ミーが再び上を見ると、ミーは体ごと向いたのかもしれないけど…やっぱり真っ暗な天井?が果てしなく続いていた。身震いするほどの陰の気。

この先が陰なら、足下の現世は陽なのか?
そう思うと同時に、気が付いた。


この場所は、『道』だ。

…『どこか』への。


でもどちらに、どこへ、どう進めるのかは分からない。
先ほどの光もどこかへ溶けるように進んでいったが…。

この場所自体があまりに大きすぎるのかもしれない。下方からの光で照らされているのはミーの周辺のみで後は暗闇だけど、おそらくもっともっと広い。
ミーが動けば…正直ぐらつくので動きたくないが…おそらくどこまででも、際限なく進めるのだろう。

『…ウシワカ』

ふとその時、なつかしい声を聞いた気がして、ミーは足元の鏡を見た。
聞こえた小さな声と音と、小さく見えた光に意識を引っ張られる。


「…ウシワカ」

呼ばれたミーは、ふと我に返った。
そうだ、ここは月、…ミーの故郷。

見慣れた机、カーテン付きの大きな寝台、板張りの床、掛け軸、漆喰の壁。
部屋の端に小さな庭があり、意味なく竹が生え、鹿威しが置かれている。
さすがに池はない。
小さな丸窓の下には曇った空と陰気くさい街…。

その部屋の真ん中で、綺麗な人が小さなミーの頭に手を置いていた。

…何でユーは悲しそうなのかなぁ?

「ああ、ウシワカ…その時が来たら…私達の事は良いから…貴方は逃げるのよ」


「それまで誰にも言っては駄目…お父様にも」
その人はそう言って、ミーを抱きしめシクシク泣いた。

ミーは思う。
…そうだ、父上も母上も、年がら年中べたべたして、ニコニコして。笑い合って。
笛を吹いたり、歌を詠んだり。…彼等は幸せそうだった。まったく当てにならないが。
だからミーがしっかりして、この人達を守るんだ。

分かった、絶対に言わない。
ミーはそう答えた。

だけど。
だけど…。


ミーはいつの間にか、不確かな鏡の集まりにぺたんと手をつく格好で座り込んでいた。


「あれ?」
そしてここは建物の中だ。ミーは立ち上がった。
日もとっぷりと暮れ、ミーはいま自室でアマテラス君と眠っているようだ…。
その姿が頭に浮かぶ。
おぼろげな光に辺りが包まれて周りの景色がユラユラ揺れる…。

ふと目を凝らすと…広間でスサドとハクバがテーブルに二人向かいあって座り、深刻そうな顔をしている。これはいつで、何処だろう…。

「やっぱり、ウシワカさんは…」
ハクバが呟く。
そしてスサドがハクバを見る。

「すごく嫌っている風だったけど、本当は月が好きだったのよ。…きっと今までその事に、気がついて無かったんだわ…」
そう言って、彼女が泣いていた。


そして、ミーはミーがミーの部屋で目を覚ますと同時に、また引き寄せられる。


「ワゥ!」
アマテラス君がミーを呼ぶ。
…コレは『ウシワカ、今日も遊ぼう!』と言った所かなぁ?

一面の銀世界。
今、ミーは微笑んで、せっせと建物付近の雪かきに励んでいる。

「アマテラス君、ちょっとウェイト!コレが終わったらかまくら作ろう!…よいしょっと。それにしても…また一段と積もったなぁ。クシュン」
ミーは微笑み、クシャミをしつつ、かき分けた雪を道の脇に盛り上げる。

正直、寒いし完全防備でもやってられないが…これもアマテラス君の為。
この辺りの雪かきをまめにしておかないと、飛べないアマテラス君はさっぱりお出かけ出来ないのだ。
ケド本人はそんな事はつゆ知らず、ひたすらに雪を掘り起こしている…。

それでも気が付くとミーの側に居て、かがんだミーの紺色の半纏の裾をひっぱり、パタパタとしっぽを振る。ああ、コレが萌えか。辞書で見た言葉をミーはようやく理解した!

「ワゥ!!ガゥ」
そしてアマテラス君は埋まりつつまた走る。…アマテラス君は雪色なので、雪に埋まってしまうと見付けにくい。
見失わないようにミーは時折振り返る。そしてミーからさほど離れる気配が無いと分かると、再び下を向き、雪かきに集中し始める。

(そういえば…今はタカマガハラに来て何度目の冬だろう)

…どこか思考が曖昧だ。何故だろう?
まあ良いか。

(雪かきしないと…)
そうだ、そのうち、やたら元気な皆が手伝いに出て来て…。


「っ」
そしてミーは元の暗闇にいた。光が強まり、足元の鏡が見にくくなっていた。
ミーはその中に座り込んでいたのだ…。
はあはあと息が上がり、冷や汗がダラダラ出る。
悪夢では無かったが、無駄に体力を消耗した。

さっきのはミーの記憶か、幻か…?
俯いて考える。
『…、…』
『…、…』
今度は、話し声が聞こえ、顔を上げた。

三人…。闇の中におぼろげに立つ人達を座ったままのミーはひたと見つめた。

一人目のミーから見て右側のにいる、綺麗な人が、小さなミーの頭に手を置いている。
そうだ…こんな人だった。反対側のもう一人は男性。やっぱり、変わらない。
そして真ん中、小さいミーがブンブンと手を振る。あれ、…もしかしてユーは。

そうか予言はここから…、一瞬そんな気がする。

なんだか色々話かけられた気がするけど…そこでミーは意識を手放した。


■ ■ ■


ひっきりなしにガシャンガシャンという音がする。

「あれ…?」
ミーはどこかで目を覚ました。

〈ワイワイガヤガヤ、歌って踊って。飲めや食えやの無礼講〉

〈騒ぎの筆頭はアマテラス大神、そして十三の分神…〉

「ああ、気付かれましたか!」
そこに居たのはスサドだった。
「…良かった!具合はどうですか?」
隣の女性も胸をなで下ろす。

ミーはふかふかのベッドに寝ていて、スサドの他に数人の天神族がホッとしたようにミーを覗き込んでいた。頭がボーッとする。
「ここは…?」
ミーは辺りを見回した。今見えたのは…本日の予言だ。
「本宮です。ええと、覚えていらっしゃいませんか?」
スサドが心配そうに言う。

聞くと、ミーは上の方で気を失って…アマテラス君がそんなミーを背負って降りて来たとのことだった。
どうやら迷惑を掛けてしまったようだ。ミーは恐縮した。
「ソーリィ。ミーはノープロブレム…、…アマテラス君は…?」
ミーが尋ねると、スサドとこの部屋に居た七、八人は苦笑した。
「大広間で宴の真っ最中です。我々は…看病にかこつけて待避を」
どうりで、先程から外が騒がしい訳だ…。

まあ、起きがけに今日の予言があったわけだけど。
それはいつもの事なので置いておくとして。

ミーが寝ている間に、もう宴が始まる時刻になってしまったのか。
けど三日もあるし今からでも十分楽しめる。

でも、何か忘れているような…?
「…?」
ミーは首を傾げた。…宴?

ええと…??
今日の予定を思い出す。

「っ!!ああーーーっ!!」
そしてミーは大声で叫んだ。ソレもそのはず。

そう、ミーはかれこれ四、五十年前から密かに楽しみにしていた、結界の張り直しをうっかり見逃してしまったのだ!

「っ!!シット…!!見逃した…っ!!オーマイガー!!ミーの馬鹿!!うああぁっ」
思わず寝台に突っ伏して、掛け布団を握りしめて唸る。

ああ!楽しみにしてたのに!皆どうして起こしてくれなかったんだ…!

こんな事になるなら『もしミーが昼寝してたら起こして(笑)』って言っておけば良かった!
言われた方は意味不明だろうけど。あのイベント自体、皆はそんなに大した事じゃ無いって感じだったし…言い出せなかったシャイな自分が憎い。

…いや!?むしろ。

「アマテラス君…っあのポンコツ大神っー!!」
あの憎ったらしい笑みが思い出される!アレが全ての元凶だ!!ミーは怒った!!

寝台を飛び出し扉を開け廊下に出る間も惜しみ、謎空間を使ってショートカットする。

折角だから描写すると、ミー達が普段生活している場所からチャンネルが一つずれて、ゴチャゴチャした背景の空間に、この本宮全体の見取り図が表示される。その中で大広間、と書かれた場所に行きたいと考える。ハイ到着!!

何気に屋内で使えるとか、性能が上がった気がするがミーはそれどころでは無い。
さて、もうここは大広間。
アマテラス君はピカピカの太陽光が描かれた金屏風の前の神様席で、酒を飲んで酔っ払い運ばれた料理をカッ喰っている。

「アマテラス君ーーっ!!」
その真横に突如出現したミーは、思いっきり蹴りを入れた。
アマテラス君は間一髪。忌まわしいほど神がかった反射神経で避け、間合いを取る。

「ワゥ?!」
【なんだコイツ、殺られたいのか?】

今…文字が見えた気がするが、きっと気のせいだ。どうせ今回だけのサービスだ。

「ゥ゛~~??」
アマテラス君が体を低くし変な声で唸る。コレは相当酔っている。

「良い度胸だね…。ユーはミーを怒らせた…この恨み、晴らさせてもらうよ!」
ミーは笛を取り出し光剣を出現させた。
「レッツロックベィビィ!」
そして構え、酔っ払ったアマテラス君めがけて、一足飛びに襲いかかる。

大広間の真ん中には入り口から金の縁取りをされた細長い絨毯が伸び、その両サイド畳に座布団を敷いてずらっと天神族達が座り、ひたすら食って飲んでをしている。

ダダ長い金屏風の前には筆神達の席もあるが、大人しく着いているのは魔物と飲み比べをしている幽神だけで後は全てゴチャゴチャに出払っている。

バキッ!!

『ギョウギョアウ!!?』
「ソーリィ!」
ミーはそのうちの一神、その辺を浮いていた燃神を足がかりに跳躍し、アマテラス君に向けて体をひねりつつ光剣を振り下ろした。

「ギャャワゥ゛!!」
酔っ払ったアマテラス君は、躱せ身の動きにいつものキレが無い。

…今ならこの憎き白毛布を殺れる!

ミーは本気の殺意と共に、左腰の刀を逆手で抜き、アマテラス君の胴体を足元から切り上げる。
「ガフッ!!」
「アハハハ!!おっと?」
沖津鏡でのうっとうしい打ち下ろしをミーは、紙一重で躱す。
あくびが出るほどゆっくりだなぁ!

ドゴッ!!

「きゃあ!」「うぁ!!」
ミーに当たらなかった沖津鏡の打撃はテーブルのど真ん中にヒットし、危機一髪の天神族達が酒瓶を確保しつつ逃げ惑う。

バキバキと内装を撃破し、繰り返される演舞。

時折、ミーが巻き起こしたつむじ風、衝撃波に柱が傷つく。
アマテラス君の一閃が天神族達の羽を散らすが、その他大勢は皆ワイワイ笑いはしゃぐばかりで、ハラハラしているのはまだ理性が残っている一部の者だけだ。
ミーは浮き上がったまま広間をビュンビュン飛び回り、酔っ払いのアマテラス君も逃げたり当たらない反撃をしたりする。

「キュァン!!?」
ミーの尋常で無い勢いに焦ったアマテラス君が慌てて爆炎を使おうとするが、ところがどっこい、ミーは最近手に入れた朱墨で大きーくバツを描く。

これぞミーの新技!

「アゥッ!?」
爆炎をキャンセルされたアマテラス君がうろたえる。
「アハハハ!」
そして裏勾玉の連続発射を喰らいつつ、ミーは弾切れリロード中のアマテラス君の元へ駆け、光剣を大きく振り上げ天井スレスレまで飛び上がる。

コレでトドメだ!!

「クゥゥーー!!?」
ああ、アマテラス君のナイスアセアセ!!でも成敗!!

…と見せかけて。

ミーは重力を利用し、そのままぽしょっとアマテラス君に抱きついた。

「ワゥ!!?」
アマテラス君が大口を開けて驚く。
「…全く。おイタしちゃ駄目じゃないか。フフフ」
ミーは笑ってアマテラス君を許した。
「!??」
アマテラス君がさらにポカンと大口を開ける。

「まあ要するに、ちょっとした準備運動、と言った所かなぁ?今日は無礼講だし、宴に諍いはノーだよ」
ミーはポフポフとアマテラス君を撫でた。
…どうやらかなり驚かせてしまったようだ。

「…ゥ?」
アマテラス君は少ししょぼんとし、疑わしげにこちらを伺っている。

「ソーリィ。ミーも少しやり過ぎたかなぁ、アハハハハハ、コレでおあいこだよ!」
周りを見ると…中々ロックな感じになっている。

「……ワゥ!」
しばらく後、しっぽがぱたと揺れて了解を示した。
アマテラス君は納得してくれたのか、妥協なのか、とにかくミーの熱い思いを理解してくれたようだ。

もう文字は見えないが、見えたらきっと凄い悪たれ口を利かれているのだろう。
その後のしっぽが、…覚えとけよ?と言いたげな微妙な動きをしている。
それでも許してくれるアマテラス君は、大変優しい神様だ。

「ワフ!」
「ソーリィ、ミーも悪かったから!ヨダレはノーサンキュー!っ酒くさ!」
何かよく分からないまま、アマテラス君がミーの顔を舐めようとして来たのでノーサンキューをしておいた。

長年に渡る試行錯誤の末、ミー達のコミュニケーション方法はこんなワイルドな感じに落ち着いた。

「さてと、じゃあミー達も。アマテラス君、行こうか!」
「ワゥ!」
そしてミー達は仲良く宴席に繰り出す。

「ウシワカさんーこっちこっち!ここ!ここ空いてます!」
「どこも席が一杯だなぁ…あ、あそこ空いてる!」「ワゥ!」
酒樽のそばの魔物は無視し、ミー達は適当な場所に腰を据える。

今日は久々に色々な料理がある。
煮魚、舟盛り、鍋、串、ピラフ、果物、生野菜の盛り合わせ。
各種お酒もこの日のため、酒好き天神族達がたんまり製造した。

「はーいおまち!」
運ぶ係の天神族が新しい料理をひっきりなしに運んでくる。
宴席の片隅には、死んだように動かない者達もいるが…まあ飲み過ぎなので放っておく。

「何飲みます?」
「おや、月の方どうぞどうぞ」「慈母様コレも!」
周りの天神族達が箸や取り皿、グラスなど色々渡してくれる。
「とりあえずディナーから。ミーはハングリーだよ!」
昼から何も食べず、さらに先程少しばかり遊んだので、少々お腹が空いた。
丁度鍋が煮えていたのでアマテラス君にも取り分けて、一緒に食べる。

そこまでは良かった。

「あ…ウシワカさん!みっけた!!」
まず魔物に捕まり。
『ホァファヒィォ!!』『ゲイィォヒィ~~』
…なんやかんやで酔っ払った撃神・凍神に攻撃され。
風神に蹴られ、幽神に潰され…。
断神に囓られ、お猿三匹に頭を殴られて、弓神にハンマーで叩かれ、蘇神に広間を壊すなと説教され、燃神に先ほどのお返しをされ、見当たらなかった壁神が金屏風に引っ付いているのを発見した。
そしてワラワラ集ってきた天神族達にもみくちゃにされ、さらに飲み比べ五十番勝負と称してしこたま飲まされた。

どっせーい!というかけ声と共に何度も乾杯し、ひたすら飲みまくる。
「あ、月の方!」「ウシワカさーん」「ささ、もう一杯!」
「イヤ!ミーは所用が!…、…あ、流れ星!!」
途中でこらアカンと、中座しようとしたミーはもみくちゃにされた。慌てて逃げ出す。

「こっちにも!」「まだまだー」
「の、ノー!もういっぱいいっぱいだよ!!」
「遠慮なさらず!」「ぐっとラック」「液キャベありますから!」
「ってアマテラス君!ちょ、何処行くの!ヘルプミー!」
「ワゥ~♪」
酔っ払いのアマテラス君ともいつの間にかはぐれてしまったようだ。
余興はいつの間にか始まり、今も延々と続いている。
魂を焼き尽くす勢いで皆が激しく不協のBGMを奏でるので、ミーも負けじと笛を吹く。


…どのくらい時間が経ったのだろう。

「し、死ぬ…マジで死ぬ…」
ミーは命からがら大広間から這い出した。
こんな馬鹿騒ぎに真面目に付き合っていたら身が持たない。扉までの距離が果てしなく遠かった…。

「うぁ…」
だがしかし、奴らは廊下でも酒盛りをしている。途中の小部屋も又然り。
何度か見つかりそうになり、その度にミーは慌てて柱の後ろや、梁の上や、絨毯の下に慌てて隠れた。

「アレ、今…月の人居なかったか?ん、何か踏んだ?」
「えっと、…うーん?気のせいじゃないか?まあ、早く酒取りに行こうぜ」
「ああ、そうだった」

「フゥ…」
天神族×2が去り、ミーは絨毯をめくり出て来る。グスッ。少し踏まれた…。
建物の中は何処もかしこも酒臭いので、外の空気を吸いに行こう。
丁度アズミが本宮の外で退屈している頃合いだった。

折角だし何か話そう…。

ミーは回廊を進み、その先の出口から外に出た。


■ ■ ■


…外の空気が心地よい。
両開きで緑のドアを出てすぐに長椅子とテーブルがあり、そこにアズミがちょこんと座っていた。

「あ、いたね」
「ウシワカ様…じゃなくて、月の方」
アズミは言い直した。

近頃、アズミは二人きりの時はミーを様付けで呼んだりする。ミーは呼び捨てで構わないと言うのだが…まあ、コロコロとミーの呼び方を変える彼女のマイブームだろう。

「抜け出して来たんですか?」
「イエス、死ぬかと思ったよ」
笑う彼女に、ミーは苦笑して答える。

今日は暖かく、風も無くて良く星が見える…。

宴に飽きて出て来た天神族の子供達が、彼女の側で遊んでいる。
「アズミー、後で方舟に行こうよー」
「今日はもう遅いし、皆はお家に帰るのよ」
「「えー」」
どうやら彼女は休憩がてら子守をしていたようだ。

子供達は少々ごねたが、程なく「じゃあ、アズミ、月の人もお休みー」と言って素直に散らされていく。天神族の子供は中々聞き分けが良い。

さて、天岩戸で幹事の一人だったミーが倒れた後、彼女が代わりに音頭を取ってくれたと誰かから聞いた気がする。
宴の席での記憶なので少々おぼろげだが、とりあえずお礼とお詫びを言わないと。
「ソーリィ、&サンキューアズミ。うっかり倒れてしまって…。大変だったかい?」
ミーはぺこりと頭を下げた。
そして同席の許可を取り、休憩がてらアズミの向かいに座る。

この中庭に作り付けられたテーブルは、タカマガハラの山から切り出した白石材で出来ている。両サイドに同素材で出来た長椅子が設置されている。背もたれは無い。
テーブルの上には、籠に盛られた色とりどりの果物が置かれ…アズミの近くにはグラスと飲み物のボトルが置かれている。

すぐ近くには藤棚があり、良い感じの休憩スペースだ。
ちなみに藤棚の真下にベンチを設置するとたまに毛虫が落ちてくるので、その案は却下された。

「座布団をどうぞ」
「サンキュー」
アズミは大広間からくすねたらしい紫の座布団をミーに回してくれた。

「お酒じゃないですけど。いかがですか」
彼女は氷入りバケツから、ボトルを取り出し微笑んだ。

「貰うよ。フゥ…さすがに少し酔いを覚まさないと。…これがあと二日もあるのか…」
ミーはテーブルに額を乗せてぼやいた。
ハクバとの五十番勝負はきつかった…さすがのミーも、三十でリタイアだ。
今も頭が少しガンガンする。明日は挨拶だけして、どこかの部屋に待避しよう。

アズミが注いださっぱり系のジュースをゴクゴクと飲んだら、少し楽になった。
ふう、と一息つき、思わず呟く。
「…初めて飲む味だ。デリシャス」
「果物を幾つか混ぜてあるんです。梨がベースで…苺とか色々入ってます。お酒が飲めない人用の物です。宴会の時しか作らないので、子供達も楽しみにしているんですよ」
「へぇ」
アズミの心地よい声に、ミーは相づちを打つ。

手にしたグラスに道草を食う子供達の姿がうつり、次第に遠ざかっていく。

…近頃のタカマガハラはベビーブームだ。
道を歩けば子供に当たる。
あちこちでチャイルド達が遊んだりしている…。

「そう言えば…、いや…」
数十年前、ハクバもマルコもスサドも結婚し…ミーの感覚ではフリーダムすぎる家庭を持っていた。
だが、アズミは未だ独り身のままだった。
ミーは常々不思議には思っていたのだが…さすがに彼女に『そう言えば、ユーって結婚しないのかい?』などとダイレクトに聞くのは失礼だろう。
そんな事をしたら某月であったみたいに、往復ビンタされ地の果てまで追いかけ回されてしまうかも知れない。
ミーはかつてあった出来事を思い出す。うん…アレは完璧な失言だった。

「どうかしましたか?」
ミーが悪夢の記憶にうんうん唸っている間、アズミはひたすら微笑みつつ…藤棚を眺めてみたりテーブルの上の葡萄を撫でてみたり、時折、羽を毛繕いしたり、少し羽ばたいてみたり、うーん?と何かを考えるそぶりをする。

ミーと同じく、待ちモードのようだ。
「「…」」
そして無言になってしまった。
だけどミーと彼女が二人きりだと良くある事なので、ミーはさほど気にならない。

ミーはこの後の予定とか、アマテラス君はどうしてるかなぁとか、いつも通りの事を考える。
「あ。そうだ」
しばらくして、もう一つアズミに聞きたかった事を思い出し手を打った。
そうだ。むしろこっちが本題だ。

「ユーは天岩戸の上…って見た事があるかい?」
ミーが言うと、アズミはああ、と言うような顔をした。
「いいえ。アマテラス様は時折登っているようですが…おそらく誰も登ったことは無いと思います。言い伝えでは、あそこがこのタカマガハラの中心らしいんですけど…何がありました?」

彼女はその時、それなりにシリアスな顔をしていた。
興味があるのだろうか?

聞かれたミーはうーん、と唸った。
アレをどう表現したら良いのか。

「えっと…始めは花畑?があって、けど、本当は真っ暗で、明るくて…あ、そうそう、アマテラス君がいなかったよ。だけど側に居るみたいな…??」
もっとナイスな言いようがあると思うが…酒の入った状態の説明ではコレが限界だ。

「え、えーっと…???」
ミーの説明に、アズミが困った顔で首をひねる。
「ソーリィ、上手く表現出来ない。おかしな空間だったけど、害は無いはず」
「そうですか…、それなら良かった。でも、本当に珍しい…」
彼女はミーの害の無いと言う言葉にホッとして、その後再びうつむき、何かを考えているようだった。

そして彼女は、懐から見覚えのある小刀を取り出した。

…あの幽門を開くキーだった懐刀だ。
コトッと置かれたソレを何故か彼女はミーにくれるらしい。もちろんミーはそんなレアアイテムを貰うわけにはいかないと断ろうとした。しかしやはりアズミは頑固で言い出したら聞かない。
何でも、何となくミーが持っていた方がいい気がするとか、もう自分には要らなさそうだからとか。意外に役に立つとか、神格的な御利益があるとか、肩こり腰痛に効くとか。
最終的に、「…まあ、そんな感じですどうぞ!」と言われ、勢いに負けたミーは受け取った。

「サンキュー、アズミ。大切にするよ」
無くすといけないので、懐の奥にしっかりしまう。
「ええ」
彼女はなぜかスッキリしたように笑っていた。

その後、彼女と適当な雑談を交わしたけど、その内容はあまり覚えていない。
ええと、明日出る屋台についてとか、大広間の惨状だとかそう言った事だったと思う。
ミーは途中で少しウトウトして、頬杖を付いたのはハッキリ覚えているけど…いや、さすがに眠ってはいないと思う。


「ワン!…ワゥ?」
「スヤスヤ…あっ、グッモーニン…!」
ミーは顔をぱっと上げた。
アマテラス君がミーを探しにやってきたのだ。

「うーん…よく寝たっけ?」
「アマテラス様」
ミーが伸びをする間に、アズミが立ち上がってアマテラス君の背中を撫でる。アマテラス君はしっぽを元気に振ってわうわう。そしてテーブルの上の物を平らげる。底なしの異袋だ。
ミーもお迎えが来たので立ち上がり、腕を組んでしばらく適当に佇む。

「あ…。そう言えば、結局…結界の張り直しを見逃しちゃったんだっけ。…ユー、どんな感じだったんだい?」
ミーは思い出して溜息を付いた。
わぅ?とキュートに小首を傾げたアマテラス君に聞いてみても、答えが返って来る訳は無し。
お言葉が見えたのはやはり一度限りのサービスだったみたいだ。

ミーはかがんでアマテラス君の頭を撫でつつ、仕方ないなぁ、と苦笑した。
アマテラス君が目を細める。

「結界を張るところが見たかったけど…まあ、また五十年後があるか…」
ぽつりと呟く。

「あ、まだやって無いです」
「へぇ。そう…、って、えええ!?」
ミーは思わずスッ転んで、振り返った。

アズミは星空の下で、いたずらっぽく笑っている。

「実は…月の方がきっと楽しみにして居るだろうって、皆が言い出して夜中に延期に。私や、皆もきっと予見されていると思って言わずにいたんですが…、ふふふっ。ご存じ無かったんですね!」
「ミーだって、全て見ている訳じゃないよ!…アハハッ」
本当に可笑しそうに彼女が笑うので、スッ転んだままのミーもつられて笑った。

そしてミーはアマテラス君に聞いてみた。
「アマテラス君、イッツ、サプライズだったのかい?」

「…ワン!」

ああこのドヤ顔は本当だ。計画通り!とは恐れ入った。さすがは大神!

アマテラス君が褒めて!と飛び跳ねる。全く、ユーってば本当にいたずらっ子だ!
「ソーリィ!全く、今回はミーがうっかりしてたよ」
「ワゥ!」
ミーはアマテラス君を抱きしめ、ひたすらソーリィとサンキューを繰り返した。

所詮、予言者。大きな出来事はミーには見えてしまう…。
まあそれはもう仕方無いのだケド…。でも、どうして今回は分からなかったのだろう?
そのせいで色々誤解して、うっかり沢山の物を壊してしまった気がする。
まあ、それは画龍で直せば良いか。
筆技は本当に便利だ。

「さあ、善は急げです!そろそろ皆が用意してますから、広間の酔っ払い達を移動させないと。行きましょう、月の方!アマテラス様!」
アズミはやる気満々だ。ミーもテンションが上がってきた。
「オーケー、じゃあ競争だ!」

「えっ、ええ?」
例によって周りに出歯亀がわんさか居るのは知っていたから、ミーはアマテラス君を担ぎ上げアズミの手を取って、ニコニコ笑いつつ、皆を置き去りにし勢いよく飛び立った。


■ ■ ■

「うにぁ~!よし、やるわよ~」

「はいはい。貴女は見学ー」
遅れて来たハクバは酔っている…そんな彼女はアズミに戦力外通告されてちょっと落ち込んだ。

「しょぼん…」
「ハクバ、ウェルカム!」
ミーはハクバを呼んだ。
星空の下、ウシワカさ~ん!とハクバが絡んで来たのでミーはヨシヨシとなだめる。
ついでにお手!と待て!もさせてみた。ミーはトップブリーダーなのだ。
「って、私は犬ちゃいますよ!」
「「アハハハ」」
ミー達は笑った。
程良く酒も入り、皆大変ノリが良い。

結界の柵から少し離れた大きめの木の下に、ミーとアマテラス君にハクバ。
その付近に老人や見学の子供達も佇む。

そして天神族達が優雅に舞い、祈り、結界を張り直す。

「ワンダフル…」
いや、ビューティフル…。

小さな光の珠が集まり、森を覆った神通力の環はミーのそれを遙かにしのぐ。

あまりに神々しくて、目を開けていられない。
仮に、ミーに神通力が無かったとしても辺りを埋め尽くす光が見えるだろう。
(本当に、彼等は凄い…)

アォーーーーーーン!!

最後にアマテラス君が大きな遠吠えをした。

そして、その後は変わらぬ無礼講。
そう言えばまだ宴の一日目だとか、ミーはもう考えない事にした。


〈おわり〉

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