絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱船ヤマト 作戦会議(前編) 【大神】【長編】

ようやくオロチ襲来…と思ったけど、まずは作戦会議だ!
それにしても、ウシワカの膝くらいの高さの杭って…、みじか…いや、何も言うまい。

今日はここまでです。

 

■箱舟ヤマト 作戦会議(前編)

イッシャク君も知っての通り、タカマガハラは球体じゃない。

…え?ユー、ソコから?まあ、ノーマルな…月とか、太陽とかは丸い。
タカマガハラは…えっと…巨大な盆栽が飛んでるって感じかな。
けど盆栽ってこの國には無いよね…、あれ、あるの?

おさらいだけど、タカマガハラはお日様を中心に回っている。
天神族はその軌道を…天の道、天道と呼んでいた。

その國を誰が浮かべたのか、いつから在るのかはサッパリ分からない。
正直、一個の天体と言うよりは『一応決まった道を通るつもりの浮島』とでも言った方が良い。

ナカツクニの衛星である月と、天道をのんびり巡るタカマガハラ。
この二つはミーの計算では、丁度ぶつかる軌道を取っていた…。


■ ■ ■

「端じっこですか?」
唐突なミーの質問に、絶賛仕事中のアズミと、ハクバも首を傾げた。

タカマガハラが浮島のような形をしているのは知っていたが、端には何か結界でも張ってあるのだろうか…って言うか、ぶっちゃけ端っこの処理はどうなってるんだろう…?もしうっかり落ちたらどうなるのか…ガクブル。ミーがそう聞くと。

「ああ、大丈夫ですよ」
ハクバがお茶を飲み、せんべいをかじりながら言った。

彼女曰く。
タカマガハラの周囲には外敵の侵入を防ぐ結界が張られていて、それが有る限り端っこからは落ちられないらしい。

「強力な結界で、虫一匹通しませんよ。まあ、天気次第ですけど」
ハクバがやや雑に回答する。
「…天気って?」
ミーは首を傾げた。天気次第?

「そう!実は何と、一時間に百ミリの雨、風速三十メートルくらいまでは平気なんです!それがタカマガハラをすっぽり覆っているなんて、すごい結界ですよねー!」
ハクバはイイ笑顔でそう付け加えた。

「えっ?」
ミーは思わず声を上げた。
要するに一昨日降った雨くらいで揺らぐのか。

それでは全く安心できない。
…ちなみに今は梅雨時だ。

「へ、へぇ。それは丈夫だね」
ミーは頰が引きつらせる。いや、きっともう少し行けるだろう。
ホラ天気だし!天気だし!!
妖怪相手なら絶対通さないとかさ!!

ミーはアズミに目で問うた。
妖怪とか、ノープロブレムだよね?

執務机のアズミはクスクスと笑っている。
「ええ。邪の物は絶対に通さない仕組みになっていますから、ご安心を。そもそも物理的に何も透過出来ないんです。固いガラス壁にすっぽり覆われいる感じでしょうか…。あ、ハクバの言ったことはおおよそ出鱈目ですから、気にしないで下さいな」

ミーはホッとした。
どうやら、ミーはハクバにからかわれたみたいだ。
やはり例によってこの國の設定が色々曖昧なのだろう…。

「うーん、なるほど」
…これは実際に見た方が良いかもしれない。

って…アレ?
「でもミー達この前、月に行ったような…」
アマテラス君と、ヤマトで。
この前と言っても、九十年は前の出来事だけど…。
うん、間違いなく行ったよ?

ミーがハクバを見ると、彼女は笑いつつ言った。
「ああ。ほらこの間。ナカツクニに、アマテラス様がお忍びで行ったっぽいでしょ?そういう感じです」

…彼女の『この間』というのは、数千年は前、…タカマガハラとナカツクニと月は交流があったかもしれないの時代の出来事だ。

ハクバの前世の記憶はたいていおぼろげと言うか、…一体どうなっているのだろう?

「つまり、アマテラス様が一緒なら問題は無いんですよ」
アズミがクスクス笑い補足した。
そういうシステムらしい。

「なるほど。アマテラス君が一緒なら。…ってあれ?」
ミーは素直に納得した。しかし。

…アマテラス君が居なければ…、何人たりとも、通さない?

って事は。この前の帰郷時…もしアマテラス君が、こっそりヤマトに乗り込んでいなかったら。ミーは結界的な物にぶつかって…墜落していたんじゃないかなぁ?

まさか、分かってて言わなかったとか…。
ミーの脳裏に恐ろしい可能性が思い浮かんだ。

いやそんな!アハハハ!

『月に帰って常闇とバトる。死ぬかも知れないけど(BYミー)』
→でもミー墜落→瀕死→→→→→→→→→→→治療中→→→→→→→→→→→→『あら無理っぽいしずっとここで暮らしましょうか☆(BY天神族)』までが仮に計算尽くだとしたら天神族…彼等はマジで恐るべき種族だ。
それともスッカリ忘れていたとか?

…どちらにしろ、怖すぎる。

ミーは震えながらアマテラス君のご尊顔を思い出した。ついでに感謝の祈りを捧げた。
アマテラス君がいてくれてマジで良かった。
ミーはアマテラス君に命を救われたと言っても過言では無い。

さすがは大神…一見ポアッとしているが、やはり彼女が居なければこの國は立ちゆかないのだ。
コレはミーも必死で頑張らないと!!何せ彼女は借りがある!

「…ヨシ!オロチが来る前に、一度しっかり見ておこうかな!あ、このおせんべいデリシャス」
決意も新たにミーは宣言した。

「あら…?では今から慈母様と一緒に見に行かれたらどうですか?お仕事はハクバが代わりますから。たまにはアマテラス様とゆっくり骨休めして来てはいかがでしょう?」
「え」
アズミがさりげなく提案し、ソレを聞いたハクバがせんべいを落とした。

「ああ、それはナイスアイディアだね。うーん、けど端って…少し遠いんじゃないかい?」
ミーは懐からタカマガハラの地図を取り出してみる。
「ええっと…」
アズミが地図を覗き込み、西端にマルを付ける。

「この辺りがお勧めです。他はどこも行きにくいですから。ハクバ、貴方はもう休憩終わり!!」
とアズミはニコニコ笑って言った。

「サンキュー!アズミ、ハクバ!!アマテラス君~お出かけだよ!!…っと折角なので一曲」
ミーは親指と小指を立てて元気よく返事をし、ついでに一曲吹いてから、アマテラス君を探しに、彼女達の執務室を後にした。


■ ■ ■


「…ぅわー、グレイト…!」
端っこに到着したミーは思わず感嘆の声を漏らした。
もう少し掛かるかと思ったが。意外に近かった。

それにしても、中々おかしな光景だ。
数メートル先がいきなり星空、というのはどうなのか…。
柵の内側は当然、昼間だ。

足元には、ミーの膝くらいの高さの杭が等間隔に打ってあって、その間に赤い紐が渡してある。
紐の間には『此ノ先・危険』と書かれた紙がぶら下がっている。
それが無いと在るとでは、きっと恐怖感が段違いだろう。

「ハローーーー!」
ミーはとりあえず適当な言葉を叫んでみる。
耳に手をあて静止してみるが…当然、山びこは返って来ない。

ミー達が今いるのは、平原を越え、さらに進んだ先。
タカマガハラの雪山を北とするなら、西側の端っこだった。
ココの反対側…ようするに東端は、天岩戸の森からさらに先の山林が険しく、端を見付けるまでに時間が掛かるのでお勧めでは無いらしい。

北端は山越えルートなので重装備になりがちだし、南の方は何か全体的にジメジメしていて…ミーは一度迷い込んで泥だらけになって底なし沼にはまって、高下駄をスコップで半分泣きながら掘り起こす羽目になってしまって以来、あの最悪な湿地帯には近づいていなかった。

「…うーん」
ミーは恐る恐る、地面が途切れたその先を覗き込む。

「クゥ?」
アマテラス君の声が背後から聞こえる。
どうやらアマテラス君はちゃんと安全な距離を取っているようだ…。

折角来たんだし、結界に触ってみよう…、おっと、微妙に手が届かないなぁ。
「もう少し、前のめりに…。よいしょっと、」
ミーは手を伸ばした。あともう少しで触れる…!

「…(ワゥ)…、(ワゥ)…」
アマテラス君が後ろからミーを突き落とそうとしているような気がするけど、きっと気のせいだ。
「…アマテラス君?」
ミーは体勢を戻し、一応振り返った。

「クー」
何だお昼寝中か。

フフフ、ミーとしたことが。
タカマガハラの大神たるアマテラス君がミーを…なんてそんな事をするハズが無いよね!

「あ、そうだ」
そこでミーは思いだし、懐から笛を取り出した。
イエス。届きそうだ!
試しにコレで軽くつついてみよう。

「…グゥ…」
アマテラス君は眠っている。よし、コレならきっと、怒られない。

「…行くよ!レッツロックベィビィ!!!」
ミーは光剣を出現させ、全力の限りで結界を叩き切ろうと―?

「ワゥ!!!」
その時、まさに今だ!とばかりにアマテラス君がミーに頭突きをかます。
ミーは柵をどっかーん、と乗り越えた。

「うそっ!!?」
ミーは思いっっっっっっっっっっっっっきり、吹っ飛ばされた。

(お、落ちる!!?)

コレはヤバイ!?

だがしかし、ミーはガッコーーーン!!
と言う音と共に、見えない壁にぶつかった。

「っ…!!、…!!あぐぁ!!」

ミーは頭を抱えてその場で悶絶する。

「…っコラーーッ!!アマテラス君の馬鹿ーーー!」
ミーはプオーと本気で怒った。死ぬかと思った!!落ちたと思った!!
って言うか痛いよベイビィ…。

…分かってたけど、見えない壁があって良かった…。

「…クゥーン」
震えつつ怒るミーを見て、アマテラス君が項垂れる。
おそらくアマテラス君は、端っこの説明をミーに手っ取り早くしてしまおうと考えたのだろう。方法が若干荒ぽいが…まあそれがアマテラス君だ。

「ハァ、痛っう…全く、ユーってば本当に…えーーと、あっちかな。あ、あれか」
ミーはブツブツつぶやき、望遠鏡をのぞく。
「クァ…」
アマテラス君は飽きたのか…ひとつあくびをして、ミーの足元で昼寝を始めてしまった。

ミーはとある星を見付けた。そう、あれがナカツクニのある惑星…。
ずいぶん海が多そうな感じだ。
大分近くになったなあ。今はちょうど月は見えない。

「さてと、アマテラス君そろそろ戻らないと。会議に遅れちゃうよ」
ミーは望遠鏡をしまった。


■ ■ ■


そして今、ミー達は本宮の会議室に集まっている。

この定刻会議は、オロチ襲来が近づいた折に、諸々を話し合うためにまとめ役のメンバーが集め毎日行っている、ミーにとってはもはやおなじみの会議だった。

何の変哲も無い白壁で正方形の広い部屋…、南に小さめの出窓がある。ベランダは無い。
西にある両開きの入り口は緑で、赤い縁取り…この扉は木で出来ている。東側はただの白壁だった。

その部屋の真ん中に長机が置かれ、そこに天神族の男女が合わせ二十名ほど着いている。
窓の無い北の壁には、ミーが予見を元に大きめの紙に書いたオロチ図が貼られ、その近くの空間にヤマトからコピーした天体図が投影されている。

ミーは自分の席を立ったまま、腕を組んで、投影された天体図を眺めている…。
ちなみにアマテラス君はと言うと…、…ミーはチラリと後ろに目をやる。

アマテラス君はお座りしてオロチ図を見つめて「…ワゥ?」と首を傾げている。
ミーが五十年ほど前にオロチ図をここに貼り付けて以来、ごくたまにアマテラス君のこの仕草を見るが、…もしかして、見覚えでもあるのだろうか?

さすがに考え過ぎかと、苦笑してミーは会議に集中する。

本日さしあたっての議題は、ミーが持ち込んだ、このままではタカマガハラと月が衝突するかもしれない、と言うこと。


「ああ、ぶつかりそうになるのは、良くあることですから。大丈夫ですよ」
ミーの報告にアズミは、あっけらかんと言い切った。

「…え?そうなのかい?…ってそうなのかい!?」
ミーは、あっけにとられ二回聞いてしまった。

…アズミの説明によると、月とタカマガハラが衝突する心配は無いらしい。

「ほら、デタラメなお天気の話です。その中にざっくり混ぜちゃいましたけど」
ハクバが言った。

信じられない話だったが、アズミ曰く…決まった軌道しか進まないタカマガハラは、障害物にぶつかりそうになった場合、前代未聞の荒技を繰り出す。
何と、このあたり一帯の宙域、ナカツクニ、月、タカマガハラ…それらを巻き込む空間をゆがめ、回避してしまうと言うのだ…!

そして、その間は真っ暗になり、つまり蝕が起こる。
ミーに言わせれば、「暗くすればごまかせると思うなんて、全く、おこがましいよ!」
と言った感じだが。

冬に起きる蝕を自然なモノとすれば、この蝕はタカマガハラの乱暴な回避行動の結果に引き起こされる不自然な蝕だ。天神族達の言う…お天気、とはこういう『蝕』の事も指すらしい。

「まあ、という具合で。天気によりけり、です」
…アズミが苦笑する。

話を聞いたミーは、あきれつつ大きな溜息を付いた。
いや、ミーはまだ信じられないケド…。

「ハァ、ならオロチが来るのは、間違い無く…そのタイミングだね」

そう、問題があるとすれば、その日は――。

ぶっちゃけると、蝕の間は、タカマガハラのセコムが消えてしまうのだ。

タカマガハラを外敵から守るための結界。
それが無ければ、まさに今襲撃して下さいと言わんばかりだ。

「まあ、…それはもう仕方無いですね。ごく当たり前の自然現象ですし、オロチが月のお方の予言された通りに襲来する、と言うことです」
ミーから見て右斜め前に座ったスサドがまとめる。達筆のハクバはスサドの向かい、要するにミーの左隣で書記をしている。

…この「蝕」を自然な現象と言ってしまうのは、学会で少々物議を醸しそうだとミーは思うが、確かにスサドの言うとおりに、自然現象では仕方ない。
やはり最重要の問題は、オロチとどう戦うかだ。

天神族達の強化は滞りなく進んでいる。
色々試し、彼等に使用可能だった通常武器…太刀や槍、弓矢を扱う訓練をし、文献をあさり、妖怪達の弱点を研究し。破魔札を大量に生産。墨瓢箪を三十年かけ地道に栽培し…皆に神墨を配布して筆神の力をフルに活用し、筆技を習得させた。
筆神達は教導や免状の発行に忙しく、天岩戸は大忙しだ。お茶を飲む暇も無い。
おかげでミーはかなり彼等に嫌われてしまった…。

筆技に関しては個人差があり、と言うか、大多数の筆遣いが下手くそ過ぎて、一般的な天神族では桜花くらいしか扱えない。
それでも彼等が強い通力を持っている事に変わりは無いが…元々、天神族は闘いに向いていない種族なのだ。

だが一応、一閃、疾風あたりまで使える者もいる。
そう言った者は、多少の例外があるもののほとんどが男だった。
男性は鍛えればそれなりに力も付き、剣も扱える。
スサド辺りはミーとも中々良い勝負をするようになった。この進歩には驚いた。

しかし女性は、当然だが元々の力も弱く、戦闘モードでも一部の例外を除き戦力としては当てにならない。その分、通力に秀でた者は多い。
ちなみに人口は頑張ったが三千五百で止まりだった。

このようにミー達は色々な対策を講じている。
しかし、オロチの力に関してはその時が来てみないと分からない、と言うのが本当の所だった。

「次に、ヤマトですが…」

最近の議題に挙がっているのは、万が一の時に何処へ逃げるのか。
最悪の事態を想定し、ミー達は何処かへ逃げ延びる事を検討していたが…。
結局、オロチを引き連れたままで逃げられる場所など無い。

―何としてでも敵を討ち取らなければ、我々に明日は無い―。

いつもの結論に達し、いつものように会議は終了した。
「…ワゥ?」
「ハァ…。あ、グッモーニング」
ミーが溜息を付きながら書類をそろえていると、テーブルの下で寝ていたアマテラス君が起きた。
もちろんアマテラス君の居眠りはいつもの事なので、ミーはヨシヨシと撫でて聞く。

「もう会議は終わっちゃったよ。ミーは今からヤマトに行くけど、ユーも来るかい?」
本日の新事実を踏まえ、ヤマトでのシュミレーションをやり直さなければ。

「ワゥ!」
パタパタとしっぽを振る。大いに乗り気な様子だ。
と言う訳で、ミー達はお先に失礼する事にした。

「じゃあ、ミーはお先に」
ミーが言うと、部屋の中の皆がはーい、と適当に返事をした。

ハクバはうーんと伸びをしているし、スサドは考え中のポーズのままで動かないし、マルコは居眠りしている。他のメンバーもそれなりに和やかな感じだ。
「あ、はい…」
そしてアズミがミーに言って。ミーが去った後皆も順に解散する…かと思いきや。

「温泉とか?それにしても、このお菓子美味しいわー」
「やっぱ温泉よねー。ところでハクバ、コレどうやって作るの?」
「ああ。えっと、今書くから」

天神族達はたわいも無いおしゃべりに興じている。これはいつもの事だ。
お邪魔してはいけないので、ミーは苦笑しつつ、アマテラス君と共に階段を下りた。


■ ■ ■



「慈母様、月の方、どうも。今日もお疲れ様です。会議はどうでした?」

外に出たミー達は、木の下で立ち話をしていた天神族達に出くわした。まあミー以外は皆天神族だけど。

別に会議の内容は秘密でも何でも無いので、皆に話しても構わない。
会議に出席した者が通達するし。

「って感じで…特にいつも通りかな」
「そうですか…」
彼等はややションボリしたものの、でも、頑張らないと!と意気を吐く。

「アマテラス様、月の御方、何かお手伝いが必要な事がありましたら、何なりとお申し付け下さいね…ふふ!」
そして傍らの女性は微笑み、アマテラス君に飛びつきキスしてモフモフして撫で撫でする。
…コレはアマテラス君の筆技だ。
「ワン!」
アマテラス君は撫でられご機嫌な様子だ。
「ユー達、いつも本当にサンキュー」
ミーは恐縮しお礼を言った。

天岩戸から生まれたアズミ達が古株だとすれば、彼等は、ベビーブームで生まれた新しい世代の天神族達だ。
別に若いから会議から閉め出されていると言うコトは無く、単に代表ではないと言うだけだ。会議に参加する代表も、アズミ達古株以外は、年齢ごとにくじ引きで選ばれた者達だったりするし…。

「いいえ、慈母様、月の方、我々は皆家族です!一致団結、皆でこの國を守り抜きましょう!」
「こちらこそ、月の御方にはいつもご面倒をかけてしまって…。あ、ついに娘も桜花が出来る様になりました。よろしければまた家にいらして下さい」
彼女のチャイルドはまだ小さいのに、コレは中々見込みがある。

「へぇ!それはグレイトだ!じゃあ、ええと…明日行っても?」
「ええ、是非。慈母様もぜひ!お食事をごちそう致します」
ごちそうと聞いてアマテラス君が飛び跳ねた。いつも大体こんな感じだ。

「じゃあ、また明日。シーユー!」

そして、ミーはアマテラス君とさらに進む。

子供達が遊び、老人がまた水路で釣りをし、何人かが立ち話をし、昼寝をし、笑い、またフワフワと飛んだりして…要するにいつもの光景だ。

「あ、カマキリ」
ミーが道ばたに目をやると、そこには大きなカマキリが居た。
これは珍しい。ミーはそちらに意識を向ける。

アマテラス君はミーのもう少し先に進んでいて…その辺りの草を意味なく一閃で刈っている。
…おかげでこのカマキリは草むらから逃げ出す羽目になってしまったのだろう。
ちょっと申し訳無い。
ミーは手にとって近くの植木に移動させ、暫く鎌を上げ下げする動きを観察、紙と筆を取り出しスケッチなどしてみる。

描きながら、先程の若者達を思い出す。

さすがは天神族、見事な統率だ。
天神族は世代が違っても、意見が分かれたりと言う事はあまり無い…。
これはやはりアマテラス君の存在があってこそか。


しかし、彼等は本当にミーの言う事を素直に聞いてくれる。けどミーは内心、『ちょっとソコまで信用して貰って…いいのかい?』と言う感じで、少々複雑だ。


…アズミ達以外は知らないが、ヤマタノオロチは…月から来るのだ。


そもそも、オロチが何故目覚め、何故、この國を滅ぼそうとするのか。
それが…分からない。

月を滅ぼしたように、常闇の命令だろうか。あるいは、アマテラス君が単に煙たいだけなのだろうか…。
多くの天神族は何も知らないまま、ミーの予言を信じ、戦う準備をする。
確かに、ミーの予言は外れないが、…これで良いのだろうか。
所詮ミーは部外者。
國を守る、と言う彼等の決断に意を唱えるなど考えられないし…ミー自身も最善を尽くすだけだ。

ミーはスケッチを終えた。
アマテラス君に完成したカマキリを見せる。
「フフフ、我ながらイイ出来だ!ハイ!プレゼント!」
「ワゥ!」
アマテラス君も満足そうだ。
ミーが沢山スケッチをするので、近頃のアマテラス君はそれを集める事に情熱を燃やしているようだ。
もちろんソレを予見していたミーは、すでに街の至る所に色々な絵を隠している。

「じゃあ、行こうか」
「ワゥ!」
そしてまたミー達は歩き出す。

■ ■ ■


街を抜け、天岩戸の森への小道を通り…、ミーとアマテラス君は箱船の祭壇までやってきた。
見上げるヤマトは…相変わらず無駄に大きい。

ミーは柱に備え付けられた宝剣を手に取り、祭壇の端に突き立てる。
虹の橋が架かり、ゆっくりと扉が開く。

「本当は、ミーはこの舟が好きじゃ無い…」
ミーはアマテラス君に呟いた。
「…ゥ?」
アマテラス君が首を傾げる。どうして?と聞いているのかなぁ。

「うーん、やっぱり月製だからかな…。ホラ、カラーリングも地味だし。湿っぽいし」

近頃、月の常闇がうっとうしいから、月の物がうっとうしく感じる。
そんなコト、今更言っても仕方無いけど…。

おまけに最近は、タカマガハラをオロチや妖怪の大群が襲う夢を頻繁に見たりして、疲れるし…。
やっぱりアマテラス君と一緒の部屋にすれば良かった。今夜からでもそうしようかなぁ。

「…わゥ?」
アマテラス君はいまいちよく分かってない感じだ。
行かないならお先に!とばかりにザッと乗り込んだ。

いつも通りのアマテラス君を見てミーは苦笑する。


「ハァ…」
そして、ミーは祭壇の端っこで一人溜息を付く。

そうだ、実際何一つ、解決はしていないのだ…。

月が滅び、月の常闇はそのまま。ヤマタノオロチは常闇の手下。
そのせいでタカマガハラが危機に瀕する。突き詰めれば、月の民の、ミーの責任…。

だが月の常闇は、まさかまだミーに、何か言わんとする事があるのだろうか。

ミーはそれが、…恐い。

…もし、ミーがここに逃げたのが全ての始まりだったら?

いいやそんな訳は無い。…考え過ぎだ。
ありふれた月の民、そんなミーに執着する理由は無い。
アマテラス君やタカマガハラが目的、という方があり得る気がする。

…勝てば良い。

だけど…。
いや。

「あ」
考えに沈んでいる間に、虹が消えそうになり、ミーは慌てて乗り込んだ。


…がらんどうの船内は相変わらずに湿っぽく、暗い。
床や天井の文様がほのかに光っている。

「アレ、もういない…」
入り口をくぐったミーはキョロキョロと周囲を見渡すが、どこにも犬影は無し。
どうやらアマテラス君は先にコントロールルームへ行ってしまった様子だ。

ミーも、通路の真ん中の力場、そこから最上階―コントロールルームへ行く。
ミーはここに新たにサブ端末を設置した。
一見何の変哲も無い白くて四角い、腰くらいの高さの箱だ。
コレはコントロールルームと通信して遊べたり、タカマガハラ各地の様子をモニターに表示出来るので、クトネシリカと併せ子供達には大変好評だ。

ミーは力場に立つ。
しゅ、と言う音がして、体が浮き上がる感覚。
ミーが瞬きする間に、メインコントロールルームに移動する。

「ファ…」
アマテラス君はドームの真ん中で、あくびしながらミーを待っていた。
そして遅い、とでも言いたげな感じの目線をくれた。退屈そうにフラフラとしっぽが揺れている。
「ソーリィ」
ミーは苦笑した。
苦笑したら、何だかアマテラス君がいきなりテンションを上げて飛びかかって来た。
バタバタしっぽをばたつかせ、退屈と見せかけミーに飛びつき思いっきりヨダレ攻撃を仕掛ける悪い子、アマテラス君!
「こ、コラ、舐めないで!ちょっと、アハ!コラ!!」
「ワン!!ワゥ!?」
ミーはもみくちゃにされながらも何とか持ち物袋からおやつを取り出し、アマテラス君をなだめる。

「フゥ、ハァ。…おや?」
ミーが溜息を付いた丁度その時、大変面白い光景が見えた。
コレは…。

「天神族達は、また何かやってるみたいだね」
ミーはおやつを食べるアマテラス君の脇に立ち、笑う。
「…」
アマテラス君は食べかけの神骨頂を床に置いたまま、そっぽを向いた。
「フフ…。まあ、ミーにも内容は分からない。時々見えるけど…秘密の、作戦会議?」
「…」
アマテラス君はキョロキョロしている。
そしてあっと言う間におやつを平らげた。

予見で天神族はたまに、何かとてもバサバサと無駄に羽ばたいたり、身振り手振りをしてみたり。
ミーがコレを初めて視た時は、…何だろう?と思ったが、どうやら彼等流の会話らしい。
おそらく法則性が有るのだろうが、ちらりと見える一瞬の光景だけでは解読出来ないし、今のところはする気も無い。きっと、部外者のミーには知られたく無い話があり、暗号会話をする必要が出て来たのだろう。

…ここに至り、なぜかミーは思春期の我が子の成長を喜ぶ親の気分、と言う感じだ。
彼等にもついに、進化の兆しが…そう思うと中々に感慨深い。

フフ…アマテラス君はその間、ミーを遠ざける役割を仰せつかったに違いない、…なんてミーの考えすぎかなぁ?


「アマテラス君」
ミーはしゃがんで、アマテラス君を真っ正面から見つめる。
そして頭を三回撫でて、耳を触って、軽くキスをした。

二つの黒い目が、ミーを見つめ返している。
ミーがそっと抱きつくと、アマテラス君がミーの頰を舐めた。
…こんなに暖かい生き物は他にいない。
ともすれば、それは痛みだけど。

「…大神であるユーが何を思っているのか、ミーにはいつも分からないけど…ミーはユーに会えて、本当に良かったって、いつも思ってる…」

目を細め笑うと、涙が頰を伝った。

「皆、ミーの事、家族だって…。グスッ」
本当に、いつも彼等はそう言ってくれる…。それがいつも嬉しい。
月では散々忌まれたミーも、ここではただの…。

「ありがとう」

優しい天神族。
ミーは、彼等の為に命を懸けてもいい。
それでアマテラス君が生き、彼等が幸せに暮らせるなら。

ナカツクニには行かない。
オロチは必ず討ち取ってみせる。

忌まわしい月の民として。

…そして、予言者として。

〈おわり〉

広告を非表示にする