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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト32 オロチ襲来(前編)【大神】【長編】

 お待たせしました!やっとこさオロチ襲来(前編)です。
オロチ襲来(主に前編)は視点がウシワカ固定なっていません。

※もうハッキリ言って捏造120%。ウシワカの技も捏造。色々酷いです

オロチは襲来の時いきなりワープしてきたんだと思います。戦いが一昼夜って長すぎだけど、ゲーム時間って事でお許しを。
あと、蝕の時アマ公が弱体化するという風にしようかと思ったんですが、それだと後の展開が面倒だったのでやめました。
玄冬の蝕の時だけのスペシャルイベント?って事にしといて下さい。

 

 ■箱舟ヤマト32 オロチ襲来(前編)

 


ミーの予見というのは、どうやら未来しか見えない。
予見だしそれは当たり前だ。

月では過去を見る人も居たけど、ミーにはその力は無い。
だから、例えば、ハクバが昔タカマガハラでどう暮らしていとか、そう言った物は分からない。…人の後ろめたい過去を覗いてしまうという苦労が無い分、良かったと思えれば良いのだけど。
あいにく、ミーに与えられたこの予見の力は十分にやっかいな代物だった。

見えてしまった未来は、そうなった未来なのだから、そうなる。
先の出来事をのぞき見している、といえばいいのかな。

―何も無い中空からオロチが現れ、タカマガハラを火の海にする光景。

これが見えたのは以前ユーに語った通り、月に帰って、腐った大地に降り立った時だ。
アホみたいに巨大で金色で派手で悪趣味で禍々しい、毒とか、火とか、水とかをどんどん吐き出すヤマタノオロチを前にしてもめげず、ミーとアマテラス君は必死に応戦する。
…まあ、そう言う光景だ。

だけど不思議な事に、その前後は全くと言っていい程、見えなかった。
その時期が近づけば、自ずと先が見えるだろうとミーは思っていたけど…その時に限ってはいつまで待っても、いざオロチ襲来の前日になっても…さっぱりだった。

一応色々な占いも試したけど、『まだちょっと分かりません』と言う、あーハイハイ(怒)と言いたくなる答えが返ってきただけだった。

ミーの予見は、不確定な要素が多い場合はそれが定まるまでは見えない、というのでアタリだと思っていたから、単純にどちらが勝つのか微妙なのだろう。
じゃあ頑張るしかない。そう思っていた。

…ほら、覚えてるかい?
ミーがうっかり青錆色の遺跡ので遭難した時…あれ、イッシャク君にはまだ話して無かったかなぁ。まあ、そういう事が実はあったんだ。

コホン。
それで、ミーはしばらく地下で遺書を書いていたんだけど、その時いきなり…予言はいつもいきなりだけどね。アズミが幽門を開く未来が見えた。

幽門から屋敷に帰ったミーは、彼女達に色々聞いて…その結果、アズミが後先考えずに飛び出した時に、丁度、未来が見えたらしいと分かった。

ミーはそれまで予言に翻弄されまくって、正直もてあましていたから、ようやく一筋の光明を見た気分だった。

この仮説通りなら、ミーが月滅亡の予見をした幼いあの日、決定的な何かがあったと言う事にもなるけど…。それを知る術はもう無い。

そして、実際その仮説は正しかった。

正しいからこその落とし穴もあったんだけど、それは今は置いておく。
決定的な何か。未来を決める誰かの決断。

あの時…。

そう、あの時だったんだ。
ミー達の未来が、定まってしまったのは。


■ ■ ■


ミーとアマテラス君は、たった二人…、荒野にいた。
天神族の本隊はミー達から一里ほど後方、結界の中で控えている。

ここは平原、街の結界の外。今日は天気があまり良くはない。
曇天が重たい感じだ。
かつてミーが初めてこの場所を通った時に比べると、この平原も大分荒れた。
草木が枯れ、至る所に不浄があるのが見て取れる。

けれど吹く風はまだいつもと変わらず、そよそよと心地よい。

しかし、ミー耳には、きぃ、きぃ…。と言う小さな金属音が聞こえる。
ミーは光剣を携え、刀を抜き、羽衣を身に纏い…空のある一点を見上げる。

蝕は明日。だがすでにこの辺りの宙域は、歪みきっている。
ミーの真隣でアマテラス君も先程から低く唸り、亀裂を目にしている。


ミーの耳に届く金属音が徐々に大きくなり、亀裂が強い閃光を発し、空間をゆがめ、アマテラス君の唸り声が極限まで達した時。

「…来るよ!!」
ミーは叫んだ。

突如、薄暗かった大地に光が差し込み、身の毛が残らず逆立つような咆吼が聞こえ、何も無かったはずの中空に、突然そいつが現れた。


真・ヤマタノオロチ


八つの首が高速で回転し、大地を削る。すさまじく熱い風が吹き、平原を火の海にする。一つの首が近くを漂っていた罪の無い浮島に頭をぶつけ、粉々にした。
「意外にアホだ」等とアマテラス君が思ったかは定かでは無いが、ミーは思った。

辺り一帯が濃い瘴気に包まれ、地に伏せたオロチの巨体から、黒、赤の妖気の炎が立ち上る。
「アマテラス君!気を付けて!!!」
ミーは用意していた結界をアマテラス君にぶつける。
「グゥゥ!!」
空間に大きく浮かんだ『守』の文字と共に光の粒を纏ったアマテラス君は、そのままヤマタノオロチに突っ込み、まずは挨拶とばかりに飛び上がり縦回転をしながら裏神器・地返玉の連撃を加えた。
連撃の後、炎の首の火炎を躱せ身で避け、ミーの隣にだんっ、と着地する。

『…我、ヤマタノオロチ也』
でかいオロチがミー達を見下ろして言った。
…!オロチは喋るのか。

『…貴様ガ田舎大神カ…。我ラノ君主ノ命ニヨリコノ辺鄙ナ國ヲ、滅ス』
ゆらゆらと揺れる首の内の一つが唸る。
「…ガゥ…!?」
アマテラス君がポカンと口を開け鳴いた。ソノ顔はこいつ、喋るぞ!と言わんばかりだなぁ。と並び立ったミーが思うような、大変憎たらしい顔だった。

アマテラス君がフガフガとオロチを鼻で笑う。
…あ、とんでもない悪口。

『クカカ…ソノ余裕ガ、イツ迄モツモノカナ…?』
ごぉぉという空気の集まる音。
「グゥゥゥ、!?」
アマテラス君が唸り、ミーは目を見開く。

ヤマタノオロチが大音声でいななき。
ぎゅう、と空気が引き絞られ、こちらを向いた首から炎、光、毒、風、闇が同時に吐き出される。

…咆吼の先に、街がある!

「させないよ!」
ミーは吐き出された炎の根元に飛び上がり、立ちはだかり、空中でその火炎を押しとどめた。

青色の五芒星がギリギリと、燃える炎に焼かれる。

アマテラス君がその隙に二段ジャンプで飛び上がり、火炎を出し終えたオロチの首を狙い一閃!
「グゥ!!」
しかし一閃は何かに阻まれた。

アマテラス君は、たん、と地面に着地しオロチから距離を取る。
アマテラス君がまた攻撃せんと、体を低くしたその瞬間。

光の首がアマテラスに襲いかかる。アマテラス君はそれを躱し、そのままオロチの周囲を駆け出す。
一方のミーは何とか炎を街から逸らした物の、五芒星が焼き切れると同時に反動で弾かれ、地面に思いっきり叩き付けられた。

「ぐっ…!」
かなり痛いが、かろうじて受け身を取る。
『人間風情ガ小癪ナ!!!』
火の首が怒り、目障りなミーに牙を向ける。

ナイスタイミングで、アマテラス君が駆けて来た。
ミーはアマテラス君に飛び乗り、鐘楼を指さす。

「…あの鐘楼!アレが結界の要だ!まずは首を攻撃して!」

「!!」
アマテラス君が返答する前に、地の首の攻撃を受け、アマテラス君はミーを乗せたまま飛び退く。
その時、輝玉が爆発した。
一帯に凄まじい爆風を引き起こすが、煙はオロチの吹かせる風により一瞬でかき消えてしまった。

おまけにやはり無駄!なようだ。

「だから筆技は結界でノー!ほら早く神器で殴って!!」
「ぐゥ!!」
分かってる、とばかりにアマテラス君が吠える。

ミーはアマテラス君の背中から飛び上がり、光剣を抜き、オロチの首の中程へと振り下ろす。
(…硬い!!)
金の鎧に弾かれる。すぐに体勢を立て直し、隣から来た牙と毒液を回避する。
「はぁぁぁっ!!」
そのままつむじ風の様に身を回転させ、オロチを連続で切りつける。

(…!!チッ!!)
ミーは舌打ちした。

黄金色の鎧には、キズ一つ付かなかった。


■ ■ ■



ウシワカ達が苦戦する様子を、スサド達は数ある浮島の一つから眺めていた。



「…なんて、怪物だ…!!」「でかい…!!」「ああ、平原が…!」
今ここにいるのは、闘う事が出来る戦士達のみ。

男達が地上から目を離し空を見ると、…暗雲が立ちこめている。

「地上の様子は!!?」
「まだ、大丈夫です。こちらまでは届きません!」
「合図はまだか!!」
スサドは叫んだ。

(何て巨大な怪物だ…!月の方…!慈母様…!!)
スサドはウシワカの言葉を思い出す。


…ウシワカは意外な程の絵心を持って、オロチの分析をした。

『この絵の通り、ヤマタノオロチはやっかいな鎧を身に纏っている。ミーが視たところ、結界を解く鍵はここ、中心の鐘楼だ。コレがどう見ても結界の要だ。誰が作ったのか知らないケド、おそらく後で付けられたもの…、』
彼は机に置かれたオロチの図を筆の裏で指して言った。
『では、その鐘を破壊すれば結界は解けるのですか?』
天神族の一人が聞いた。
『イエス、筆技が効かない状況ではどうにもならないから、まずどうにかしてソレ破壊するんだけど…』
ウシワカはうーん、と頭に手を当てた。
『ぶっちゃけ、この鎧が…面倒臭いなぁ。下手したら、ミーの通常攻撃は通らないかもしれない』
その言葉に天神族達は、う…、と唸るしか無かった。
ウシワカの攻撃が効かないなら、自分達ではさらに厳しい。
『慈母様の攻撃はどうですか?唯我独尊の数珠もありますし、一番貫通力の高い剣で、通力を溜めれば…』
スサドの言葉に、ウシワカが手元に浮かんだ画面に数値を入力する。
そのままさらに指を動かし、計算をはじき出す。

『うーん…ちょっとキツイね。結界がある場合だと、中身までダメージは行かない。無ければ…、…イエス!それなりに効く。溜めアリなら一閃より少しダメージが高いね』

慈母はあくびをしながら、テーブルの下で寝そべっている。

『しかし、ウシワカ殿と我々が注意を引きつけ、アマテラス様が鐘を叩くにしても、引きつけるにしても…首が多いですね。何か隙を作る良い方法は?』
『…一つ在る…』
『『お!何です?』』
皆が身を乗り出す。
ウシワカは珍しく渋っている様子だ。彼の渋い顔は初めて拝む。
『ハァ…、ウェイト…』
ウシワカは何かとんでもなく大きな数値を打ち込んだ。
『零々々々…、差し引きマイナス!…!おお!月のお方、なんでしょう、コレ?』
スサドは興奮して聞いた。この数値が何なのかはサッパリだが、コレは凄い!

『クゥ』
慈母が、何かをウシワカに告げた。
『ノープロブレム、少し回復に時間が掛かるけど…』
ウシワカが苦笑する。意志の疎通はもはや慣れた物らしい。

『実は―』

そして、スサド達は合図の光明が上がるまで、上空の浮島での待機を命じられた。
戦闘要員は今、固唾を呑み戦局を見下している。


■ ■ ■


そして、地上。

「アマテラス君、下がって!!」「ワゥ!!」
ミーは静かに印を切る。
気を練るミーを擁護しながら戦っていたアマテラスが、一歩下がる。
「ノー!もっと!!」「ワゥッ!!?」
ミーはアマテラスをさらに下がらせ、ユラユラ揺れるオロチと対峙した。

「いくよ!」
月ノ國陰陽術・其の百三十四…!


■ ■ ■



「…えっ!!!?」
スサドは目を見開いた。突如、凄まじい光が足元から――!!

上空に作られた浮島には、戦闘拠点として要塞が建てられ、その浮島自体も、ある高さより上を守る結界の起点となっている。
万が一にも味方の軍勢に影響が出ないように、とのことだったが。

「うあぁあああ!!!」「なっ!!?」「ひやぁあああーーー!!」
島全体が崩れんばかりに揺れ、皆が床に叩き付けられた。

ぎぉぉおおおおおおぉ!とオロチのけたたましい叫びが響く。

そして全てが地に伏せる。

「…っぅ…大丈夫か皆…っ」
起き上がり、スサドは辺りを見回した。皆ひっくり返っている。
「なな、何だ!!あの技!!?」
一人が起き上がりつつ叫んだ。
「うおおおお!!スサド!オロチが!!っ凄い!!」

『ミーの最終奥義、月ノ國陰陽術・其の百三十四、『怨』…って言うのが実はある』
彼はそう笑って言っていたが。

…地上は惨憺たる有様だった。

ウシワカが放った攻撃は、彼の神通力のありったけを攻撃力に変換し、自らの前方に出現させた、身の五倍ほどの赤い逆五芒星からあらん限りの恨みの念を込め射出する。と言う、こんなだだっ広い場所でなければ使えない技だった。

地面がえぐれ、熱を持ち、一挙に発火する。

オロチがタカマガハラを壊しているのか、ウシワカがタカマガハラを壊しているのか。


■ ■ ■


ミーがタカマガハラを壊しているのかもしれない。

「…ハァ…、ハァ…」
ミーはそんな抜群の効果を見とどけて、ふらつき気を失いそうになった。
何とか踏みとどまる。

全霊を込めた攻撃が当ったのは三本、少しの間、隙をつくれればと思ったが…胴体が繋がっているせいか全ての首が地に伏せている。コレはラッキーだ!

攻撃をまともに受けた首の鎧はバラバラに砕けた。
…確かに効果はあった。だがおかげで通力は一気に減ってしまった…。

突然ぐらっと視界が揺れ、ミーは膝を付いた。

「グゥゥ!」
アマテラス君はこの機を逃すまいと、地に臥した光の首を駆け上がり、鐘楼を破壊せんと辺津鏡で殴打、大破魔札も大盤振る舞いする。


大きな音をたて、鐘が砕け散った。


■ ■ ■



光明の気配に、アズミは顔を上げた。

「……慈母様、月の方…」

皆が、戦っている。
本宮のこの広間からは、その様子はうかがい知れない。
ここには女性や子供達、老人達が集まり、天照大神の力と成るべき祈りを捧げていた。


…祈りは力。
天を照らす大神よ!どうか、非力な我らの、祈りをその力に…!!

「…、?」
アズミは首を傾げた。
今、何か視界の端に映ったような…。

ひらりとした…、衣装?

アズミは振り返った。


■ ■ ■


アォーーーーン!!

アマテラス君が遠吠えと共に、天神族への合図「筆技・光明」で周囲を照らし出す。
程なく、上空の浮島から天神族の群れが戦場目掛け急降下する。

しかしそこからががやっかいだった。
鎧がめくれたオロチの身体から、濃い闇がもうもうとわき出たのだ。
「…っ?」
瘴気―。
それは蛇のように形を変え、いや小大蛇!?一つ一つが生きている。
蛇の群れは地を這い、あるいはミー頭上を勢いよく飛び越え、周囲に広がった。

地に伏せたオロチが震え出す。

(…不味い!)
オロチが目覚める!!

ミーは空中にジャンプし、アマテラス君はそのまま大地を猛スピード駆け出す。

一時離脱する為に。

雄叫びと共に、オロチの巨体が高く浮き上がる。
八つの首がそれぞれバラバラにうねり、幾つもの浮島を破壊した。

オロチは回転し、火を吐き、毒を吐き、タカマガハラにあらゆる厄災と破壊をまき散らす。

けたたましい鳴き声が響く。
こちらへ向かう熱風、かろうじて避けたが全てを焼く炎がミーの頰をかすめる。
続く光の首の咆吼もミーは羽衣で受け流す。やはりコレが無くては始まらない!

地上は炎と瘴気で何も見え無くなってしまった。
疾風を―。ミーが上空で疾風を使う、その一瞬先、あたりを切り裂く渦があった。


筆技・竜巻。


「…くっ、ぁあ!!!」
アマテラス君の竜巻は、さすがに凄まじい。上空のミーは危うく吹き飛ばされそうになった。
あたりの瘴気が霧散する。

「月のお方!」
毒の霧が晴れると、浮かんでいたミーの周囲に仲間達が居た。
「スサド!」
彼は破壊された浮島に居たはずだが、飛び出し難を逃れたようだった。
「何人かは負傷しましたが、大丈夫です!」
すでに地上では、天神族達がオロチの分身に向かっている。

「小オロチはお任せ下さい!!援護します!」

仲間の言葉にミーは頷く。
「オーケー、コロチは頼んだよ!!」

ガァアアアアアアア!!

ヤマタノオロチが叫び火を噴きながら、地に戻る。
ごぉぉぉ!!、と言う凄まじい地響き。土埃が巻き上がり…。


オロチは、あたりに数えきれぬ数の分身と、どす黒い瘴気を振りまき…地に潜ってしまった。


■ ■ ■

しかし油断は出来なかった。

「グゥゥ!!」「…っ来る!」
ミーは地上へ降り、上空を警戒する。ミーの側で凄まじい形相のアマテラス君が唸る。


上空に黒いもやが。

「…っ!」
スサドが見上げる。

「ここからが本番だ!!まずはこいつ等を始末して!」
ミーは群がるコロチを一閃で切りながら叫ぶ。
「「はいっ!」」
「ガゥゥ!!」
アマテラス君も、力を溜めた剣を振り回し蛇を切る。

空は曇り、闇が渦を巻き、ゴロゴロと雷鳴が轟く。

――百鬼夜行の始まりだった。


ミーは、目が良いのでよく見える。
緑天邪鬼、赤天邪鬼、黄天邪鬼、青天邪鬼、黒天邪鬼。
鬼灯、朱目環入道、雲外鏡、地蔵一族に何か魚、腐った金魚、馬鹿でかい牛。姑獲鳥。
烏天狗、茶釜のお化け、氷の輪、火の輪、雷の輪っか。
光を背負い錫杖を手にした地蔵、首の無い地蔵―――数多の妖怪が群れを成し、滝のように空から滑り降りる。
天神族達の群れにぶつからなかった妖怪は、土埃となって街近くまで広がってゆく。

その最大の流れとは別に、幾つもの妖気がタカマガハラの大地に、細く黒い水となって注ぎ込まれる。

「…っ、何だ…っこれは!」
天神族の男は異様な光景におののく。

あのはるか遠く、山の彼方。
地平の向こう、街の方角。
そこに幾筋も注ぐ…黒くて細い水。

―まさかあれも全てが妖怪の群れ!?
―タカマガハラは、お終いか…!?

そんな声が聞こえる。

その時、ミーの眼前に蓑をかぶった妖怪十数匹と、気色悪い鬼灯、茶釜が数匹ずつ、巨大名かまくらが二体、三体、四体。次々に下りて来た。

いや、落ちて来たと言った方が正しい。

ぎぃぃ、きぃぃ!!
キィィィーーーーーーーー!!

それらは着地し、何やら一斉に叫ぶ。耳障りな声だった。

「…レッツロック!…ベイビィ!!」
開始の合図を受け、ミーは光剣と刀を引き抜き、そいつ等に向かい走り出す。
アマテラス君はミーと別れ、逆方向に走り出す。

筆技・霧隠のチート性能を余す所無く使用して、時を遅らせる。
折角なので、バチバチと平原に降り注ぐ雷の柱からあたりに迅雷を走らす。
「ぐぁぁ!」
「うはぁぁ!」
「ほげー!!」
うっかり天神族を数人巻き込んだが…、というか、天神族も攻撃出来るのか!?
「っソーリィ!!」
ミーは駆け出す。
どうやら乱戦につき、筆技のアタリ判定が彼等にも付くようだ。そう言えば、スサドもカラクリ屋敷で筆技を喰らってたっけ…!
そんなよそ事を一瞬考えたのは一瞬だ。

ガシュ!!

ミーは藁蓑妖怪の持つ木の立て看(?)を一閃で破壊、ついでにに飛ぶ烏を連続で三匹落とす。
ミーはまだ必殺技の反動で、通力の必要な大技が全て使えない。
残り一から百三十三まで、出来る事なら妖怪共に喰らわせたかったが、それは通力が回復してからにするとして―。

『グォォォ!!』
ミーは出刃包丁の妖怪を光剣で葬る、こいつ等よりもやっかいなのは、この巨大かまくら!!
かまくら達がミーの回りを取り囲む。
ミーの側の天神族達もそれと戦って居るが、無駄、と言う感じだ。

「ぐぁ!」
負傷者が出る。…、その者は死者となった。

「ユー達!かまくらはいいから、他を!雑魚から倒せ!」
妖怪には五行に沿った特殊な倒し方があるのだ。って言うかコレはどう見ても火に弱いだろう!

(…アレか!)
弱点ぽい灯籠に短刀を投げつける。ギャァ!と悲鳴が上がる。効果は抜群だ!!
分かってしまえば後は打つのみ!紅蓮で仕上げる。

紅蓮の炎が周囲に散る。

天神族達は、皆が飛べると言う利点を最大限に生かし、空で闘い、地上の妖怪と闘い。
仲間の筆技を受け地に落ちた妖怪を刈り取る。
天神族達の中でも、通力に秀でた者は筆技を用い無ければ倒せない妖怪を引き受け、そうで無い者が弓矢、槍、刀で応戦する。

「っ死ねぇ!!妖怪め!」「ぐぁあ!!」「駄目だ!こいつ早い!」
「挟み撃ちに!」「破魔札は温存しろ!」「上から!」「お手伝いします!!」
隊列を組み、背を庇うのも忘れ、勇猛果敢に切り込んでいく。

丸腰の青天邪鬼に天神族が群がる。
「いけ!!」「うぉぉぉ!!」
『ギイィァアアア!!』
そうして妖怪は次々と槍で突かれ死ぬ。

だが、明らかに戦力が足りない。

「ぐぁあぁあ!」「ひっ」
天神族に妖怪が群がる。…っ援護が―!間に合わない!
しかし彼等は、一際大きな爆発に助けられた。

「…慈母様!」「ワフ!!」
機動力のあるアマテラス君は縦横無尽に野を駆け回り、ひたすらに通力と刀を振るう。
そのアマテラス君でさえ、前線で足止めを食う。

その少し離れた場所でミーは戦う。

ここで皆を死なすわけにはいかない!一人でも多く、生き残らせる!!
ミーはその思いで刀を振るう。
いつの間にか、アマテラス君とはかなり離されてしまった。

「ぐぁっ!あちち!!」
隣にいたスサドが攻撃を受け、ついでに焼かれる。
「スサド!」
「大丈夫です!このくらい!」

ミーはスサドの代わりに烈火雲外鏡に一足で追いつき、一太刀目で宙に浮かせ、返す二の太刀で突き殺す。
背後に一閃を二回。そこに居た黒天邪鬼を容易く葬る。
ちなみに今使ったのは右の羽衣だ。
もう一匹、氷唇輪入道の突進を飛び越えて、一閃で動きを止め。空中で身を回転させて光剣で上下真っ二つに切り裂く。
『ギィアアアアア!!』『ゴォィ!!』『ギィィ!!』

断末魔の叫びを上げ、ほぼ同時に三体の妖怪が消える。

『ぎぃぃーー!』『キキキ!!』
ギャラリーの緑天邪鬼がパチパチとウザイ。
敵の拍手はノーサンキュー!!

面倒なのであたり周囲に爆炎をお見舞いする。
「残りは頼んだ!」
「はい!」
『ギゥァアアア!』『ギイィ!!』
消し炭にならなかった妖怪を天神族が討ち取っていく。


「ワゥ!!」
そしていつの間にか、ミーはアマテラス君を背に、平原のど真ん中にいた。
「アハハ!!?」
ミーは笑う。

ミーがちょっと目を離した隙にアマテラス君は、大分傷つき薄汚れている。
もちろんミーも無傷ではいられない。

目下、形勢は何とか互角だった。
それはすなわち味方も数多く死んでいると言うこと。
味方と敵の死骸が転がる。

その中で、天神族、妖怪、ミーとアマテラス君。全てが入り乱れ戦っている―。


■ ■ ■


オロチは未だ地に潜ったまま。一昼夜が過ぎた。
日が沈み、朝日が昇る。

そして、その日が陰ってきた。

「…蝕、…!」
ミーは空を見上げ、ぜぃぜぃと息を付いた。



空気が震えている。
太陽が欠け、もうすぐ無くなる…。
…通常の蝕ではない。上から下へ…帳が降りる様に暗くなる。


たし、と小さな足音がする。


「ウシワカさん。慈母様―」
ミーの背後から現れたのは、戦装束のハクバだった。
「…ハクバ!?何故ここに!?」
彼女は確か本宮でアズミ達と共に、祈祷をしていたはず…!?

ミーは彼女の行動を全く予知出来なかった。
しかし…、頭がガンガンする。嫌な予感がする!!

彼女は地に潜るオロチに近づこうとした。


かたかた…、…!


直後、細かい振動が起き始める。
「まずい!」「きゃあっ」
ミーは彼女を抱えて後ろへ飛んだ。

ミー達の周辺を残し、大地にばきばきと大きな亀裂が走る。
亀裂は八本、その中からオロチが首をもたげる。
ミー達の周囲は瘴気の壁に包まれ、蝕の空はそこ蓋をしたようだ。
…瘴気の壁の向こうで、悲鳴と応戦の音が聞こえる。
(皆、持ちこたえてくれ…!!)
各拠点をギリギリで死守し、かろうじて回復に努めることは出来ているが、一昼夜戦い続け皆すでに限界だ…!


だが今は、そちらを援護する場合では無い!

『…待ッテ居タ』
「…っ」
上から発せられたその言葉に、オロチの結界に閉じ込められた、数十人の天神族達が震える。

「ふふ…。私もです」
その中で、唯一ハクバは微笑み…進み出た。


「私が生け贄になれば、皆を見逃して貰えるんでしょう?」


生け贄!!?

「―何だって!!」「―アゥゥ!!」
ミーとアマテラス君は衝撃を受けた。そんな話、全然聞いてないよ!!?
「えええ!ハクバ!?何だって!?」
スサドも驚いた。

「ハクバ…」「…くっ」
だが、周囲は…、やはり、やむを得ないのか…とでも言いたげな反応だ。
もしや、他の者は知っていたのか…?

ミーの疑問を無視し、オロチとハクバが対峙する。
オロチの首が、ハクバギリギリまでに近づく。
ユラユラと不気味に揺れ、品定めするように…。

「…って言う事、ですよね?」
ハクバは何とか踏みとどまる。虚勢を張り、ニッコリと笑う。

『…、タカマガハラノ代表タル貴様ガ、自ラソノ身ヲ、我ニ差シ出セバ…』

って、あれ?あれ?…ハクバはいつから代表になったのだろう?
アマテラス君が代表って…ミーの勘違いだった?
ミーは傍らのアマテラス君を見るが、お座りして、ワフゥーとあくびしている。
もしかしてアマテラス君は『もう隠居です』と言う感じなのか。イヤ、…そうなのか?

「そんな、ハクバ…!」
スサドはショックを受けている。
どうやらここにいる中で、事情を知らなかったのは、ミーと、…何故かスサドもそうらしい。そう言えば、彼は天神族達のヒソヒソ話の時にいつも微妙に見当たらなかった気もするが…。

だが、それは今はどうでも良い!

ミーは叫ぶ。
「ハクバ!どうせオロチの言うことなんて、当てにならないよ!きっと『約束シタノハ、阿呆ナ火ノ首ダケダ。後七十人寄越セ!!』…とか何とか言って、反故にするに決まってる!聞いちゃ駄目だよ!!」

ゴウッ!!

っと、火の首の火炎攻撃をジャンプして避ける。
『…』
無言である辺り、図星だったのか?ここぞとばかりに、ミーは指さして笑う。
「アハハハハハッ!ユー?図星かい!?」
「…ワフ?」
アマテラス君に「ちょっと黙れ?この羽毛虫?」と言われたので、ミーはしょぼんと押し黙った。
…そんなキツイ感じで言わなくたって…、いや、本当の所は分からないケドさ…。
ハクバにも失笑された気がするし…。

『…毛虫ハサテオキ。女ヨ』
ミーの意訳は当たっていたらしい。

「わかりました、じゃあ」
「ハクバ…、そんな!?」
頷いて踏み出すハクバを、スサドが止めようと近づく。

ハクバが大きく腕を振りかぶった。バサッと羽ばたく。
スサドがそれを見事にくらい、それに構わずハクバは続ける。

「――生け贄になります、なんて言うと思いましたか!!」

彼女は珍しく、本気で怒っている…!?

「私は、怪しげなお誘いを、わざわざ断りに来てあげたんです!!…貴方が毎夜私の夢枕に忍び込み、昼寝中も、サボり中も、ずっと卑劣な言葉でささやき続けていた、本当の事!」

「っ??…?どういうことだい?」
ミーはハクバを見た。
ええと?

「ウシワカさん、要するに、多分ウシワカさんと同じパターンです。皆には簡単に、生け贄って説明してましたけど」

ハクバのぶっちゃけた説明に、ミーは…唖然とした。
状況がサッパリだが…つまり生け贄はブラフだった…?

そしてミーと同じパターン…というと、まさか…。

「妖怪達が、真に力を発揮するには…、その真逆の力が必要」
ハクバが溜息を付いた。

「天廻の血盟…!?オロチと…!?」
ミーは慌ててオロチを見た。

通力のあるハクバを取り込もうと…オロチはそんな策士なのか!?
…何か倫理的に物申したい言葉が一瞬浮かんだが、さすがにやめておいた。

「もうずっと五月蠅かったけど―、手を貸す!?闇の世界!?そんなモノ、絶対にお断りですよ!」
ハクバが思いっきりたんかを切った。ついでにあっかんべーをした。

「あ、ちなみにコレはタカマガハラの総意です。私達は、戦います!!」
彼女はにっこり笑って、晴れ晴れと宣言した。

それが総意なのか!さすがは天神族!
居並ぶ天神族達も、元代表のアマテラス君も、異論は無いようだ。
スサドもホッとして、新たな決意を胸に、槍を構えオロチを睨む。

オロチが咆吼し、ならばとばかりにハクバを牙にかけようとする。
咆吼…!?
「くっ」
ミーは大音声に思わず耳を押さえた。

…いや、これは、この声は…?

笑って…?




―――燃える街が見え。悲鳴が聞こえる――

―、しまった!
コレだ―!!



「グゥゥゥ!」
アマテラス君が、八握剣に力を貯めながらオロチに向かい駆け出す。
ハクバ、スサド、結界の中の天神族、その外の天神族、―停止していた時が動き出すように―オロチの妖気の結界が消え、平原の様子が見える。

各々が騒がしく戦う、その中でただ一人。ミーはっと振り返った。


〈つづく〉

 

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