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■箱舟ヤマト オロチ襲来(後)【大神】【長編】

オロチ後編です。さて長かったこのシリーズも、残りはヤマト内部、ナカツクニ墜落、小話ひとつ、エピローグで終わりです。
あと少しだけお付き合い下さい。終了後に番外編的な小話も幾つかアップしますので、そちらも良かったらどうぞ。

※もう120%捏造です。注意。

そういえばなぜか1とか2とか、見出しっぽい感じになってます。

と言うかもう一気に出しちゃおうかな…。後少しなのでエピローグまで出します。

 

■箱舟ヤマト オロチ襲来(後)

 

1 ウシワカ

「ハァ…」
ウシワカが、寝台に倒れ込んだ。

また今日も、見つからなかったらしい。
ぺろ、と頰を舐めると、彼はもう眠っていた。

心配しすぎでは?とアマテラスは思った。
身体をこわしては、元も子もない…。

とりあえず布団でスマキにしておいた。
布団を掛けようとしたら、結果的にそうなっただけだ…。
あくびを一つしてアマテラスは眠る。
心地よい男の側で。



■ ■ ■


無数の星が街へ降り注ぐ。

「な、何だあれは」「隕石か!?」

ミーは直ぐに駆け出そうとして、足を止めた。
「ミーは行かないと!街が危ない!」
「…月のお方!あの星は一体!!?」
スサドがミーに言う。

「月の民だ!!クソ!」
「何ですって!?」

ミーは自分のうかつさに激昂していた。
「結界は妖怪は通さないけど、今は人は、人は通れるんだった!…ミーのアホ!!何で気が付かなかったんだ!街が危ない!」
ミーは叫ぶ。
負傷者収容の為、街の結界はそのレベルを下げてあったのだ。

その時。
「…っ!」
オロチの咆吼がミーに火炎を吹きかけ、消し炭にしようとする。
ミーは炎を避け飛び立つ。
アマテラス君がオロチに飛びかかる。ミーは寸前で炎を躱した。

ミーはばっと離れた場所にに降り立つ。
…気が付けばアマテラス君達と分断されていた。

しかし、躊躇した。
今ここに戦うアマテラス達を残し、離れる訳にはいかない!
「アマテラス君!!」
ミーは大声で叫ぶ。
アマテラス君達、それにハクバもすでに闘いの最中だ。
彼女は槍を持ち、驚きの通力で大破魔札を使っている。
「ウシワカさん!ここは任せて、行って下さい!!」


アマテラス君が闘いの合間、ミーを永く一別した。


「…アマテラス君!…頼んだよ!!」
ミーはそれだけ言って、その場から跳躍した。


■ ■ ■


「ユー達!」
ミーは街の近くで戦う天神族達のただ中に現れた。

ここははまだ戦真っ最中、皆『妖怪』と戦っている。
無数の流星を目撃して、天神族達がうろたえている。
「あれは!!?」
「何だ!?炎がっ」「街の方向!?」

「っ月の方!?…月の方!?…月の方!ま、街に!!侵入者が!」
この場所からは遠目に街の様子が見える。ミーを見つけたらしい誰かが叫ぶ。

「ユー達はミーについて来て!!街を何とかする!残りはのろしが上がるまで妖怪退治!結界を死守!」
ミーはそこに居た牛頭鬼を殲滅しつつ叫んだ。

空を飛ぶ者は減り、天神族と、妖怪の群勢が依然として地上で切り結んでいる。
すでに一昼夜が過ぎ、群勢増え続け、状況は劣勢。
しかしまだ結界を守る事は出来る!


そして、ミーと二十名ほどは結界を跨ぎ、燃えさかる街へと足を踏み入れた。





そこでミー達が目にしたのは。

悲鳴を上げて逃げ惑う天神族達、そして辺りに響く怒声。銃声。


聞こえた言葉のワースト3は、常闇様万歳、羽狩り、ダイダラボッチ
…忌々しい民め!

月のタタリ場の中に、こっそりと脱出用の施設があったから…まあ、一部はどっかに逃げてのうのうと暮らしていると思ったんだけど。
ダイダラボッチと言うのは、月の荒ぶるビッグな人形で…使われれば、街が数秒で灰になる。


「羽狩りだぁあーー!!」
ミーは丁度その通りにいて天神族の女性の羽を掴んでた男を背後から突いて、光剣を差したまま、速やかに事情を聞いた。

ミーは時間が惜しいのでかなり荒っぽい方法で頭の中をのぞいた。
男は耐えきれずに死んでしまったけど、ミーは頭がおかしくなっていた男からも、正確な情報を吸い取る事が出来た。

彼等は今の今まで、必死に戦うミー達を見て、楽しんでいたようだった。
そしてダイダラボッチが落ちてくるまで、あとわずか。

「…、まずい、皆、森へ!!」
ミーは連れて来た天神族達に言った。

返事は無かった。
別に、彼等がいきなり殺されたとかじゃない。

「レディやチャイルドを森に避難させて!!ユー達!早く!!死にたいのかい!!」
おかしな静寂の中、ミーは叫んだ。

「いやぁあああーー!!!」

ミーの言葉に答えたのは…助けた女性だった。
彼女は腰が抜けて、地面に座ったまま、ガタガタ震えていた。
返り血が、彼女の白い頰や、金色の羽に付いている。

…ミーは思いっきり、下手を打ってしまった。



■ ■ ■

ミーは天神族全員と親しい訳では無かった。
ヤマトを持ってタカマガハラに来た当時時ならいざ知らず。
今はミーがここに居着いた経緯を知らない者も多い。

要するに、ミーを擁護してくれるであろう、アズミやハクバ―その他が居なかったのは確実に痛かった。

天神族は立派だった。
その女性も、何とか戦士達の手を借り…ふらつく足で立ち上がってミーに声を掛てくれた。
「…っ、す、すみません…」
むしろ謝ってくれた。

ミーはカラン、と光剣を取り落とした。
血濡れた手が震えて、持っていられなかった。

…何で彼等の前で殺してしまったんだろう。
平和を愛する天神族。優しい彼等のその前で…。

そもそも、ミーは月でどう生まれてどう生きて、一体何をやっていたんだっけ?

忌まわしい月の民、だけど、だからって、ミーは…!?ミーは…!?

ミーは、月の民を助ける事をあきらめた…!

「森へとは、もしや、救いの方舟ですか…!?」
誰かがそう言った。
「…イ、エス」
ミーは俯いたまま答えた。頭の中はぐしゃぐしゃだ。
ミーは何かを受け入れた…。けど漠然としたそれが何かはまだ分からなくて、先程までの怒りとまだ残っていた理性に変わって、暴走しつつある感情が喉の奥で渦巻く。

バタバタと皆が動き出す。街に非常事態の鐘が鳴り響く。

「行きましょう!下手したら…!!」「急いで!!火が!」
「…、え、あ…っ?」
「負傷者を森へ運べ!」「動ける者は建物を回れ!」「本宮はどうなってる!?」
ミーは降りて来た月の民は殺すつもりだったけど、それからは気絶させて放置した。

前にならえ。
天神族達もそうした。


ミーの行動が無ければ…天神族はきっと月の民も助けてくれるつもりだったんだろう。


■ ■ ■


2 アズミ


―――アズミと五名の女性達は本宮の窓から飛び出し、往来を逃げていた。


衝撃と共に火の手が上がり、本宮を破壊し落ちたおかしなカラクリから、金の髪を持つ人物達が現れた。
そして大広間から悲鳴が聞こえ。きっと皆は…!

彼女達は、ハクバを探しに…偶然大広間から出ていたのだ。

空を飛びたいが、いつのまにか、妖怪が街に出現していた。
結界はまだ保たれているはずなのに!なぜ!?
黒い人の様な、粘土で作られたような、奇妙な人形があたりをうろつき、皆を次々に…。
もっと怖いのは、光を飛ばす小さな鉄の筒を持った、人間―!!月の民!!

彼等がなぜここに!?

「…ぁあ、ぁああ」
路地から大通りを遠くに伺い、カタカタと震える。

月の民が、襲ってきた!?なぜ、一体どうして!
月は滅んだって、あの人は言っていたのに!
とにかく、逃げないと…!

「っ、早く、森へ逃げないと!」
アズミが破魔札を取り出す。
「でも、そんな、月の民でしょ!?なんで!」
隣の女性が戸惑う。
「だってあの方の仲間でしょ、だったら…」

皆が顔を見合わせる。
…彼女らは、ある可能性に思い至った。

「だったら…、嘘、そんな!あの人が!?」

ウシワカは…敵だった!?

「まさか!違うわよ!!」
アズミが叫ぶ。
「とにかく、私達は森へ避難します!!皆を!!拾えるだけ皆を拾うの!!」
「「「「「…っ、分かった!」」」」」
アズミの言葉に、皆が武器を構える。全て槍だった。
コレは本宮の無意味な銅像の装飾だったものだが、一応本物で使える。

そしてさらに幸いなことに、彼女達は通力にも特に秀でていた。

「月の民に会ったら、破魔札を一発お見舞いして…多分死なないわ!その隙に、飛んで逃げるの!」
アズミは言った。
「でも、もし月の民が飛んだら!?」
そうだ、ウシワカは飛ぶ!
「彼が例外である事を祈りましょう!行くわ!」

炎と瘴気の中、逃げ惑う天神族達が、幾人も空を飛んでいた。

「皆ーっ!森へ逃げて!!」
アズミが良く通る声で叫ぶ…。


■ ■ ■


「月の方っ!!」
ヤマトの祭壇の前にアズミがいた。

集まった皆、震えている。
そこには目算で百五十名ほどの天神族がいた。
皆怪我をした女子供ばかり。後は老人と怪我をした男達。
かろうじて森に逃げ込んだらしい皆が、すすり泣く。

「…アズミ…!!大丈夫かい!!」
ミーは心底ホッとした。
大分すす汚れているが、大きな怪我はなさそうだ。

ミー達が行った時には、大広間に沢山の死体が転がっていた。
当然本宮は真っ先に襲撃されたのだろう。

…彼女もその時死んだと思っていた。

「月の人、慈母様はどこ?」
ミーが一瞬ほっとしたのもつかの間、ミーの袴をススだらけの子供が引っ張る。
ミーはその子の頭を撫でようとして、止めた。代わりに天神族の女性が抱き上げる。

「さっきから、真っ暗で、…こんな事初めてじゃ…」
「慈母様」「ああっ、怖い…!」
「あの大蛇は…?」「あの人達は、もしかして」

ミーに皆の目線が集まる。
ヨシ、一息で言おう。しぶとい奴らが、常闇に協力して―。

「あ…、あれは、えっと…、その…」
だけどミーは上手く言えなかった。

「月の方!…アマテラス様は?」
アズミが辺りを見回す。

その言葉がミーを正気に戻した。
「…っ!そうだった!アマテラス君!!」
ミーはヤマトへと駆け出す。

「月の方!?」
「アマテラス君はまだ向こうでオロチと交戦中だ!舟のモニタで見る!ユー達、森に月の民を入れないように!」
森にミーが張った結界は、あり合わせの通力できる限り強化した。
後は天神族が頑張れば、奴らはここまでは来られない…!

ミーの言葉を聞いた幾人かがあわててついてきた。

…戦況を見るだけなら、船室の子端末で十分だ。
ミーは子端末を起動させ慌ただしく座標を打ち込む。

見やすいように大画面にした。
船室の壁に大きく、ただれた平原が映し出される。
これは結界の要の塔から撮影したライブ映像。しかし、映像には誰も映っていない。
オロチは、…、何処だ?さっきの場所に居ない!

ミーは生き残った浮島の設備と繋ぐ。

そして幾度か視点を切り替え、ようやくうねる大蛇を見付けた。
「…っ酷い」
一人が震える。
天神族達は、襲い来る妖怪の群れをもう無視し、オロチを大分端まで追い詰めていた。


…それは本当に酷い有様で、文字通り彼等は死力を尽くしていた。


その最前線でアマテラス君は交戦中だ。
「きゃぁ!ハクバ!?」
アズミが悲鳴を上げる。遠くにちらりと見えた、女性。
勇ましく槍を振るう。

「やはり、オロチが彼女を呼んだのか…!」
天神族達は無念そうだ。

「こうしちゃ居られない、負傷者をここに集めて、いや皆を避難させないと!」
「早く我々も行きましょう!」
「月の方は、ここでお待ちを!」
「私も行くわ!」
アズミが言って駆け出す。

…ちょっと待って、今…誰かおかしなコトを言った?
ここでお待ちを?

「ウェイト!ミーも行く!」
ミーは男性の肩を掴む。
「、ですが」
「最悪の場合…舟を動かせるのは…!」
「ミーだけじゃ無い。アズミも出来る」
ミーはアズミに操縦のイロハをたたき込んでいた。彼女は中々優秀で、問題は無いはず。

「ユー。後を頼めるかい?」
「…」
ミーの言葉にアズミは何故か少し迷った。

「分かりました…、ですが、飛び立つのは、みんなが戻ってきてからです。オロチが倒せない場合は、逃げて、必ず戻って来て下さい!!おねがいです…!!」

彼女はミーの袖を握って、必死に訴えた。

…レディの涙には勝てない。

死ぬつもりだったミーは、笑った。
「その時はアマテラス君を連れて、皆で逃げよう。行くよ」
「「「はい!!」」」

ミー達は方舟から駆け出し、飛翔した。


■ ■ ■




「きゃぁああああーーーーーーーーーー!!」

ミー達が飛び立った直後。ヤマトからとんでもない悲鳴が聞こえた。
「月の方ーーっ!!慈母様がぁあ!!」
天神族達が血相を変えヤマトから駆け出してくる。

上空のミー達は振り返った。



■ ■ ■


「―!!」
その直後、ミーの目にはハッキリとある光景が見えた。


アズミ達が画面で見たのは、創痍のアマテラス君が大きく吠え、ヤマタノオロチに飛びかかり、百メートル四方程の岩盤と共に滑落する光景。


…ミーが見たのはそのさらに『先』の光景だ。



アマテラス君はタカマガハラより分離した地面の上でなおオロチに抗戦し、その土が無くなる時、唯我独尊の数珠で、しっかりとオロチを捕らえていた。
星の海でオロチともつれ合う、傷だらけのアマテラス君。
その姿がだんだんと小さくなり―、筆神が飛び去り――金色の珠をばらばらとばらまき、うねり、はじかれながら、暗い星に吸い寄せられ…直ぐに見えなくなった。

タカマガハラの端では戦士達が、皆呆然としている。
「…、どうする!?どうする!?」
スサドが混乱している。
「ああ…っ、慈母様ぁあ!!!そんな!!嘘よ!!」
ハクバはひたすらうろたえている。
「早く、追いましょう!!」
マルコが言う。
「でも…何処へ!?」

「我らの希望、それは慈母アマテラス大神を置いて他ありませぬ」
「我らの大神が苦境に立たされているなら、我々は―…!!」





「そんな…」
ミーは地面にすとんと落ち、がくりと膝をついた。

…アマテラス君は、初めからこうするつもりだったのだ。

ハクバを後釜にして、ミーに彼等の事を任せ…自分は、捨て身でオロチを倒す?

そんな、そんな事、だれも望んではいないのに!!
言ってくれれば、助けたのに!!


「月の方!?」「おい!!慈母様が落ちたぞ…!!!」
その時ヤマトに居た者が、ミーはもう知っている状況を叫んだ。
「何だって!!?」「―っ!!?」
周囲の男達が目を見開く。


アマテラス君っ…!!

「…は、ヤマタノオロチと共に…ナカツクニへ零落…、大神を失ったタカマガハラは停止し、とこしえの闇に閉ざされる」
その最中、俯いたままミーは呟く。
予言をする時、ミーは何故か、それを誰かに伝え無ければならない衝動に駆られる。
「!?」
ミーの周囲の天神族達が固まる。

「街を襲ったのは常闇に取り込まれた月の民、もうすぐ、もっと凶悪で巨大な人形が降ってくる。アレが来たら街どころかタカマガハラ自体が危ない」

皆が息を呑んだ。
「これからユー達はのろしを上げて、スサド達生き残りを回収、そしてミー達は…」

頭が熱い。


「酷い…」
ミーは声を詰まらせた。
ミーには、この先の光景の一部が見えた。


ヤマトは墜落する…。


「ユー達、ナカツクニへ…、逃げよう…!!」
それでもミーは、何とか踏みとどまった。

顔を無理矢理上げる。
アマテラス君を失った悲しみ、後悔、悔しさ、やるせなさ、強い怒り。
ごちゃ混ぜでミーにもよく分からない感情で、涙とか流れているけど、それどころじゃ無い。

「死んでないんだよ!!アマテラス君は絶対にソコだ!ミー達はアマテラス君を追ってヤマトでナカツクニへ行く!!それで良いね!?」

墜落すると言っても、その前に脱出すれば良い!
そこだけ隠して、ミーは皆に向かい叫んだ。


「急げ!」「平原に!」
「負傷者を救助しろ!」「慈母様が…!?」「一体何が…!」
慌ただしく皆が動き始める。

天岩戸前では取り決め通りに、がこん、と筒に丸い火薬が二人がかりで入れられ、すぐに点火。

バン、と白い花火がタカマガハラの空に咲く。

緊急撤退用の派手なのろし…それを見た皆達は引き返してくるはずだ。
森にいた天神族達は皆、訳も分からずヤマトに乗り込んだ。


ミーは暫く動けなかった。
「月の人、お水を…」
とっと、寄ってきた小さな子どもがミーを気遣う。
竹の筒を渡された。
「…、ありがとう」
ミーはその子の頭を撫でた。有り難く頂く。

そうだ…皆を無事に送り届けるという、大仕事が残っている!

ミーは立ち上がり、虹の橋を渡る。



■ ■ ■


「一人もとり残すな!」「えーん!!」
「奥の部屋へ順に―、立ち止まらないで下さい!」

「あああ…、アマテラス様が…、そんな…ああ」
ミーが舟の中に入ると、相変わらずススだらけのアズミが、ガクリと膝をついていた。
画面には星の海。その他の天神族も皆絶望している。
「皆、ここにいたら邪魔になる!…アズミ!ユーはコントロールルームへ!先にチャージを!ユー達も奥へ!」

ミーは辺りの女子供に言った。彼等はのろのろと頷いた。
だがフラフラした幾人もがミーに聞いてくる。
「嘘…、嘘よ…!」「月の方、慈母様は…!?」

「ノープロブレム、…落ち着いてくれ」
ミーも正直内心ぐちゃぐちゃだったが、何とか、冷静を装う。
そして先程予言の場に居なかった彼等にも、アマテラス君は死んでは居ないこと、おそらくナカツクニに落ちたこと、そしてヤマトで追って助ける事を伝えた。
「…、まだ生きて…?」
アズミ達が安堵する。
「だから早く行かないと。アマテラス君だけじゃ心配だ。アズミ!ミーは残った皆を連れてくる」
「はいっ…!」
アズミが力場から先に登る。

そしてミーは外に出た。
タカマガハラが燃えている…。

その中を、戦って、生き残った物達がフラフラと、負傷者を抱えて飛んでくる。
「皆、早く!」
アズミが虹を出しているが、時折消えかかる。
とにかく皆で負傷者を運ぶ。
森にはすでに月の民や、それが連れてきた黒い人型の妖怪が入り込んでいる。
ミーは問答無用で片っ端から切り捨てた。

天神族達は、ヤマト内部とあわせ、おそらく六百ほど…、よく残った方だ。

そして最後に傷だらけのハクバや皆が戻って来た。

「…ウシワカさん!!慈母様が!!ああ、慈母様が…!!」
「申し訳…っ」
「おい、何だあの巨大な―?!!」
「急げ皆!とにかく乗り込め!後はお前達だけか!?」
入り口で誘導の者が叫ぶ。

「キゥ」
「鹿!?」「何でもイイから乗せて!」
ミーは、火に追われ森を逃げて来た動物達やねこも抱えてとにかく積み込む。


「俺達で…、多分最後だ!」
そう言った最後の者達は、とても少なかった。


「ユー!クトネシリカを!!」
ミーは叫んだ。舟はすでに起動状態で、帆が張られている。

「はいっ!」
スサドが刀を抜き、飛んでくる。
そして扉が閉ざされた。


■ ■ ■


ミーはコントロールルームへ登る。
「ウシワカ様!遅いです!」
アズミがアセアセと操作をしていた。

「ハァ、ハァ。ソーリィ!チャージは!?」
ミーは操縦席に座る。

「まだ全然足りませんっ。五十七%!太陽が、陰っていて!」
ミーはコントロールルームで周囲をサーチする。
回りの空間が不安定すぎる。

外部画像を見る。…予定では、蝕はもうそろそろ終わるはず…だというのに、この暗さは何だ!?

黒い雲で日が隠れ、光は地上に届かない。
ヤマトはそれ自体が鉄の要塞だ。このまま炎に巻かれても少しは持つが…。

「この蝕はまだ終わらないのか!?」
「―!!」
ミーの何気ない言葉にアズミがはっとした。
そして急に割り込み操作板を叩き始めた。

「ウシワカ様!ドーム状の結界が復活したら、ヤマトはこの國を飛び立てません!!今すぐ出ないと!」

「…っ何だって!!?」
タカマガハラの結界はドーム状…!!?
さらりと恐ろしい事を言う天神族!

「ユー!!だからっそういうことは先に言ってくれ!!」
アズミの言葉に、そのことを失念していた事を棚に上げてミーは怒鳴った。

「言いました!!」
そうこうしているうちに…結界が戻る!!このまま一気に浮上しなければ。

ミーは横に画面を開き、割り込み、チャージをあきらめ予備燃料で緊急浮上を開始。
幾つもの画面が展開し、上下左右に広がる。
船体から引き絞るような音が聞こえヤマトは急速に始動、船内に張り巡らされたバイバスに動力が行き渡り、青白くまぶしく発光する。
無数のゲージは全て朱いまま一気にMAXまで上がった。

「あと七秒で浮上できます!!」「みんな!耐ショック!!」
アズミが言い、ミーが通信画面に向かい叫ぶ。

結界を抜け。一気に転移する。


船内を映す弐画面には、悲鳴と共に残らず倒れ、伏せる、そんな天神族達の様子が映し出され、外部を映す参画面には吹き飛ばされる木々と、そこからヤマトが急浮上し飛び立つ光景が映し出された。
「ぐっ…、」「ぁああっ!!」
だが操縦席のミー達は急浮上で掛かる負荷がきつく、それどころでは無い。

と言うかまぶしい!?
転移の光を外部モニターでまともに見てしまったミーは目がくらんだ。
そこに揺れが加わり、アズミが倒れそうになったのを何とか引っ張る。
頭を振り、目を細め操作を続ける。
次回はこの外部とのシンクロモニターは必ず閉じよう。

タカマガハラが小さく映る。

良し、…何とか結界は抜けれた…!
「大丈夫かい?」
「え、ええ…」

そして転移も何とか完了、周りは一見穏やかな宇宙。だが――計器を見ると、穏やかどころか、大嵐だ!あちこちにおかしな磁場や大穴がある。ガタガタと船体が揺れ動く。

結界を抜け、空間のひずみを全て検知し避け、ナカツクニへ。距離は―、ミーはめまぐるしくパネルを叩く。
舟を一気にナカツクニ直近まで転移…っ、コレじゃ…出来ない!とにかく目的地の座標を勘で固定する。
周囲の空間は相変わらずバチバチ言って不安定で五月蠅い。それでも何とかミーは舟を安定させようと―。



…異変が起きたのは、そのすぐ後だった。

『月のお方!そちらへ行けないのですが…!?』
こちらへ来ようとしたらしいスサドが画面越しに言う。

「アズミ、確認!」
ミーはアズミに指示を出した。
「…!?ええ?っと?…グリーンです!」
「代わって!」
別のモニターを一つをアズミに押しつけ、ミーは出力を確認する。
確かに動力は正常。なら問題は無いはず―。

ミーの背後で物音がした。

『――、ウシワカさん』
船室にいるハクバが画面ごしに、ミーの向こうの何かを見ている。

隣のアズミが動かず。


ミーが振り返ると――。そこに。
ミーは叫んだ。

常闇ノ皇!!!

こういうときって、驚きの声のはずだけど、ソレは間違い無く恐怖の悲鳴だった。
闇に浮くソイツの中身が、笑っている!!

〈つづく〉

 

 

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