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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■箱舟ヤマト 完結記念 番外短編2 ハクバ語る【大神】

 

 

2 ハクバ語る


皆さん、今日も元気ですか!私は元気!
…っと、まあ、ハクバです。

さて、今日はウシワカさんに私特製のシュークリームを差し入れに行きますよー。

アポ無しですが良くある事なので問題なし。ウシワカさんも研究所にいるはず。
ついでに私も暇なので、一緒におやついただく予定です。

あ、ちなみに今私は、お屋敷の調理場の隠し扉から小さな籠を携えて出て来たトコです。
慈母様はお出かけ中、他の皆もそれぞれ行方知れず…っと。
あら。畳の上でマルコが昼寝してるわ。
「じゃ、ウシワカさんのトコに行ってきます」
一応、一声掛けて屋敷を出ます。
「グォー…」
当然、彼の返事はいびき。


そして私はアズミの書庫を通り過ぎ、一人ぶらぶらと森を歩く。
季節はもうすぐ夏で、日に日に気温が上がっています。

でも今日は風が気持ちいいわ…。

あ、天神族は飛べるけど、時々は歩くのも大切なんです。
悪例が先程のマルコ。…つまり、そういうことです。

道の脇が無作為に掘り起こされているところを見ると、慈母様も今日はこの辺りで遊んでいらっしゃるのかしら?
もしかしたら、この風もどこかで慈母様が起こしていらっしゃるのかも。

さてウシワカさんの研究所が見えてきましたよー。

この研究所は、私にとって懐かしいような物が沢山あって、たまにお役立ちアイテムがあったりして、落ち着くというか、暇つぶしにもってこいと言うか、いわゆる穴場なのよね。

「ウシワカさーん、おやつでーすよー!」
研究所の入り口で、取ったどー!と私は籠に盛ったおやつを掲げる。

「ハクバ!待ちくたびれたよ!ウェルカッム!」
今日も入ってすぐの丸テーブルでウシワカさんはもうスタンバってます。

ではお邪魔しまーす。

テーブルには私作のレースの縁取り付き白テーブルクロスが敷かれ、お皿と食器がセンス良く並べられ、カラフルな可愛い花とかも飾られてますね。ちなみに花は鉢植えです。

「じゃ紅茶入れますね」
勝手知ったる他人の研究所。

私はテーブルに用意された茶器を取り、すぐそばの調理場で紅茶を煎れる。

この研究所をウシワカさんが使い始めたころは、おやつ時は彼が給仕をしてくれて私はお客様状態だったけど、紅茶を煎れるのは楽しいし…って事でまあ、今はこういう感じに。

「サンキュー!フフフ…早く食べたいなぁ…」
その間、ウシワカさんはニコニコして、頬杖ついてテーブルの真ん中に置かれた籠を眺めている。
いつもの光景ですね。

彼はお行儀が良いので、籠に掛かったハンカチをめくったりはしない。ひたすらに耐える。
微動だにせずとにかく耐える。その様子はちょっと面白いです。

「あ、ハクバ。棚にクッキーがあるよ。冷蔵庫に苺ジャムと蜜柑ジャムも作ったんだ。試しに紅茶に入れたらデリシャスだった。取ってくれるかい」
ウシワカさんが座ったまま、奥の棚を指さして言った。

私ははーい、と返事をする。えっと…。
あ、コレね。お皿にいっぱい。
…美味しそう。
一つ試しに食べちゃいましょ。毒味、毒味。

ぱくっ!

…うん!サクッとして美味しいし、見た目もウサギ型で凝っている。
近頃、ウシワカさんはお菓子作りに凝っているというか、慈母様の気を引くために微妙な小ワザを増やしてきた。しかも中々の腕前。
コレは私も負けていられないかも…。

「??ハクバ?」
むむむ、と腕を組む私をウシワカさんが首を傾げて振り返る。
「あ、持って行きます」
「サンキュー」

そして席に着き、二人でぱくぱくとシュークリームを頬張る。

「!!何コレデリシャス。さすがはハクバだ!ちょっとカスタードの味変えた?」
「ええ。お砂糖を減らしてみました…うん、イイ感じ!次は生クリームも入れようかしら」

「もう一個貰うよ。…でも太るかなぁ?」
ウシワカさんが、籠に手を伸ばそうとして引っ込めた。

「ウシワカさんはもっと食べて下さい。あ、私ももう一個!……うーん、でもこの一個が命取りかしら?これは中々難しい問題よ…よく考えるのよハクバ、そう今日食べた物とこれから食べる予定の夕飯のカロリーを計算し…、あー!もう食べちゃいます!ぱくっと!…いや、ダメ待つのよハクバ!ぐむむ…ああ手が勝手に」

「…じゃあミーと半分こしようか?」
「ナイスウシワカさん!!」
私は羽をばたつかせた。

「フゥ…そうだアレも取ってこよう」
紅茶のカップを置き、ウシワカさんがおもむろに立ち上がる。
「あ、本借ります」
私は雑誌をそこらへんの棚から持ってきつつ言う。
オーケーと階段から声が聞こえる。

ぱらり…。

私は紅茶を飲みつつ、クッキーをつまみつつ、テーブルに本を広げてくつろぐ。
「へぇ三毛猫って殆どメスしかいないのね。あ、どけます」
「サンキュー」
色々抱えて降りてきたウシワカさんは、幾つかの紙袋を適当に置き、テーブルの上に書きかけの設計図を広げる。

「ハクバ、このデザインで作れそうかい?」
ウシワカさんが聞いてきた。
あ、これは少し前から頼まれていた件ですね。

どれどれ…。私はのぞき込む。

「ええっと…、ハイ。バッチコイです!ウシワカさんはマフラーは進みましたか?」
「イエス、手こずったけど大分上達したよ。ホラ」
じゃーん、とウシワカさんが紙袋から取り出す。

「って…ながっ!」

「端じっこの止め方が分からなくて…」
「貸して下さい」
編み棒を受け取り、やって見せる。

それにしても、ウシワカさんは長いコレとか、その他とか…いつ使う気なのかしら?

冬はまだまだ先なんですけどねー。二メートル級の試作品がいくつか。
でも確かに、始めからすればかなり上達したかも…。手つきも中々良くなっている。

研究の合間の趣味かしら?
聞いてみたらゴニョゴニョで濁されてしまった。

ちりん…。

一階の窓の外には軒があり、アマテラス様を模した、白い陶器の風鈴がそよ風に揺れる…。

風鈴の短冊には「あのよろし」と書かれています。色は水色。
裏は「天照大神」。もちろんウシワカさんの自作です。
っていうか、この風鈴を吊す為にわざわざ作られた軒だったりします。

軒下に立てかけられたすだれが、室内に差し込む初夏の日差しを和らげる…。

すだれの横の地面にはヘチマが植わってます。
側の壁にそって育つように、細い棒でやぐらが組んであったり。
ウシワカさんは『ヘチマたわし』を作ると張り切ってます。

「…もうすぐ夏だね」
手を止め、紅茶を飲んでいたウシワカさんがぽつりと呟いた。

「夏ですねー」
私はクッキーをつまみながら雑誌をめくり、相づちを打つ。

そしてふと思い出して言う。

「…あそうだわ。明日、空調の掃除しようかしら」

今私達が住んでいる立派なカラクリ屋敷は、いささか空調設備に問題があって、毎年季節の変わり目にエアコンを掃除しないといけないんです。しかもそれでも蒸し暑い…。

「ウシワカさん、明日は予定何かありますか?良かったら一緒にどうです?」
私は聞いてみた。

「…う、うーん明日か。…ゴニョゴニョ…どうしようかなぁ。ミーは忙しいし…」
予想通り。ウシワカさんはちょっと渋った。

…最近のウシワカさんはどうもこんな感じ。
月に里帰りしてから、こちらに籠もりっぱなしで、何かに没頭して。
良くて一月に数回。寝る時くらいしか屋敷に戻ってこない。

えっと、コレは多分…。

私はおぼろげな記憶から丁度良い言葉を探す。あ、ボケてませんよ!
まだ若いですよ念のため!

「そう反抗期!」
もとい、思春期かしら?

私はほのぼのした気分になってクスクス笑った。

「??」
ウシワカさんは首を傾げている。

まあ、ウシワカさんが毎年このイベントに参加しないのはハッキリ言って、いつも慈母様が数秒で終わらせてしまうからだったりもします。

「ソーリィ…、ミーは最近ちょっと手が離せない。アレ…?編み目がひとつ飛んでる?オーマイガー!!うわ!こんがらがった!」
どうやら今回、ウシワカさんは不参加で決まりね。
何でかは分からないけど、色々忙しいみたい。

「まあ、慈母様もいらっしゃいますし。別にいいです。アズミに言っときます」
タカマガハラは基本、サブイベントは自由参加だ

「サンキュー、うああ!体中に毛糸が!…ちょっとハサミで切ってくれないかなぁ!」
「でも切ったら、初めからやり直しですけどいいですか?さあ行きますよー」
「えっ…、ウェイト!」
こんがらがったウシワカさんは頑張る心持ちになった。

私はふふふと笑い、ハサミを置いて座り直す。
そして妄想する。

…もし仮にこれがゲームなら、私が毎年の掃除イベントの依頼者で、ウシワカさんがプレイヤー、
って事になるのかしら?

何で私がそんな、スサドみたいなオタクっぽい事を考えているのかというと。

…あ、コレはトップシークレットなんですけど。

天神族の中で、そこそこの神通力を持つ私には。実は、ウシワカさんの文字が見えるんです。
今見えたのは。

【エアコンの掃除を手伝う?】
イエス!   ノー、また次回。…と見せかけ颯爽と現れるミー。

…と、まあこう言う具合です。
この『ウシワカ文字』は、慈母様のお言葉とは違って、皆には見えないみたい。
アズミにオフレコで聞いた所、彼女は、「不思議ね。私には見えないわ」と言ってあまり気にしていなかった。そしてパタパタと仕事へ出て行った。

はーい、ここで豆知識!
タカマガハラでは、細かい謎行動や不思議はよくある事だったりしまーす。
天神族はそれを仕様と呼ぶ。

でもソレを差し引いても、…アズミにはそういうちょっとポアッとしたところがあるのよね。とても有能で真面目なんだけど…。

彼女は真面目モードと暇モードの時の切り替えが上手く行かないって感じかしら。
要するに自分の思考に沈んでることが多いから、昨日みたいにうっかり階段を踏み外したりするのよね。
まあ、そのタイミングを見計らって、『あ、ウシワカさんが!』と天井を指さしたのは私だけど。

「ふう。死ぬかと思ったよ!」
と私が色々考えているうちに、ウシワカさんが脱出成功。

それから私達は一緒に、『犬のきもち 7月号~特集・チワワ、その瞳の奥』を読んだり『犬のきもち 8月号~特集・セレブのわんこ』を読んだり『犬のきもち 9月号~特集・犬小屋と犬』を読んだり『猫のきもち 3月号~三色が可愛い!三毛猫』を読んだり『忠犬ハチ公』に涙したりしました。

…あっと言う間に時は過ぎ。

「あら、もうこんな時間。じゃあ、また暇な時に来ますね。あ今日はコレ借りてきます」
私は密かに猫派です。『猫のきもち 4月号~白猫VS黒猫』を持ち物袋にしまいます。

「オーケー!皆によろしく。コレ残りは皆で食べて」
「ありがとうございます」


そうして研究所を出た私は、クッキーの入った籠を片手に、来た道をスキップで戻る。

「散りゆく花火~が♪ドッカーンと~」

ああ、今日も楽しかったわ。

…ウシワカさんは、一流の予言者。
つまり、私の気が向いたときに尋ねれば、お茶の準備をしておいてくれます。

アズミはそれでも、一応約束をするのがマナーだと言っていたけど…、私とウシワカさんは、義兄妹の酒杯を交わした仲。
いえ、実際したわけじゃなんだけれど。まあ、それくらい仲良しって事。

でも実は私…こっそり、ウシワカさんに甘えてるのよね。
ウシワカさんも、分かってて私の我が儘を聞いてくれる気がするし。

本で見た『お兄さん』ってこんな感じなのかしら?なんて勝手に思ってたり…。

おっといけない、親しき仲にも礼儀アリ、よね!

クゥーン。

鳴き声が聞こえ、キョロキョロした私は、遠くに米粒大の慈母様を発見!
「あら、慈母様みっけ。今日もお出かけですかー」
大きく手を振った。

慈母様はどこかあせった様子で全速力…。
道を無視して、原っぱをこちらに向かってギュンギュン駆けてくる。
あら?このままだと…。

「きゃあーーーー!!!」
そしてどっかーん!!と正面衝突。

「イタタ!…ああっ!?」

派手に尻餅をついたその隙に、地面にばらけたクッキーをペロリと食べられてしまった。

「もう、全く。慈母様ったら…」
私は土をはらい立ち上がる。

「ワゥ!!」
慈母様が、切羽詰まった様子でこちらを見た。くんくんと私の匂いを嗅ぐ。

いつもはおやつの時間に現れるんですけど、どうやら今日はどこかで昼寝して寝過ごしたみたいね。
まあ、これも良くあるパターンです。

「今日はシュークリームですよ。あ!…でも、もう食べられちゃったかも?」
ふふふと笑って、微妙な情報を教えてあげる。

「ワン!」
慈母様は『シュークリーム!』と言う文字を出しつつ、研究所の方向へ駆けて行った。

〈おわり〉

 

 

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