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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■ナカツクニ短編 雨宿り 【大神】【短編】

ピクシブでマイピク限定公開だったナカツクニの小話です。ずっとしまったままだったけどオリジナルの転載を始める前にブログで蔵出し。

また時間に余裕が出来たらナカツクニ短編も書きたいな。

 

 

■雨宿り

小雨が降る都に、一匹の白い狼がやってきた。

「雨だというのに、お前もごくろうだな」
「クゥーン」
門番が話しかける。どうやら顔なじみのようだ。すこし撫でてやる。
「さあ、さっさと通って、どこぞで雨宿りするといい」
もう一人の門番もそう声をかけた。
その顔は微笑んでいる。
憂鬱な雨の中の勤めも、この狼のおかげでほんの少しマシになった気がする。
「あの狼、よく来るなぁ。飽きもせず」
「狼だし、まあ野良なのでしょうけど…行儀のいいやつですよね」
などと、会話を弾ませる。
「ん、いかん。勤め中だったな」
そう言って、また前を向く。

都に入った狼は、きょろきょろと辺りを見回した。
「アマ公、こりゃあ、さっきの兄ちゃん達の言う通りに、どっかで雨宿りした方がいいぜ」
アマ公と呼ばれた狼の、フサフサの毛並みに隠れていた妖精が言う。
雨脚はもう少し強まりそうだった。

しかし、アマテラスはより良い場所を探しているのか、とことこと歩を進めた。

美輪湖に浮かぶ西安京は、雨の日はとても静かだ。
この時期の長雨で、いつもより堀の水が少し増えている気がする。
時折見かける人は皆、傘を差し、うつむいている。
いつもはしゃいでいる子供達の姿も、今日は全く見当たらなかった。

アマテラスが貴族街を通り過ぎる。イッスンの文句が聞こえる。

「ヒミコ様がお待ちですよ」
声をかけたのはここ西安京の女王、ヒミコの侍女だった。
神殿の警備の目をごまかしここまで来たアマテラスは、侍女に体を拭いてもらって気持ちが良さそうにしている。

「ヒミコ姉のとこで雨宿りたぁ、全くセンセの考えるこたァオツだなァ!だが、もうちぃっとばかし急いでくれりゃあ、完璧だったんだがよォ…」
ここに来るまでに濡れてしまったイッスンが呆れ半分に言う。

「さあ、イッスン殿もどうぞ」
優しくほほえむ侍女の差し出す暖かい手ぬぐいにくるまれ、イッスンは、まあ、たまにはこんなのも悪かねぇか、プフフ!と、小さくとぼやいた。

「よお、ヒミコ姉!顔見に来たぜ」
すっかり乾いたイッスンが嬉しそうにピョンピョンはねる。
アマテラスもワンと吠え、パタパタとしっぽを振る。
「アマテラス殿、イッスン殿も、この雨の中よくいらして下さったのでおじゃる」
ヒミコは笑顔で二匹を迎えた。
「フフフ、この雨、もうすぐ上がるでおじゃりますが、よければしばしご休憩なさるとよいのでおじゃります」
ちょうど侍女が茶と桜餅を運んできた。
「ワン!」
アマテラスは嬉しそうに、大きな桜餅にかぶりついた。

「ウシワカ殿…!お疲れ様です」
外門の門番達が身を正す。
「雨の中、お疲れ様」
その陰陽師は、大分雨に濡れていた。羽衣も肩に張り付いている。
「いえ」
門番が一礼する。
そのまま彼は通り過ぎようとして、ふと立ち止まり、珍しく声をかけてきた。

「なにか変わりはないかい?…といってもこの雨じゃ、人もまばらだよね」
そう苦笑する。
門番達もつられて笑った。
「そう言えば、あの白い狼、また来ましたよ。こんな雨の日に」
「特に悪さをする様子も無いので放っていますが。この辺りに、飼い主でもいるのでしょうか?」
変な狼もあったものだ、と、首を傾げる門番達に、ウシワカは笑って言った。
「フフ…まあ、そのうち分かるかもね。雨も…もう上がるね」
陰陽師はおそらく空を見て、そう言うと、去って行った。

「ずいぶんと遅いのでおじゃったな、ウシワカ」
神殿に着いたウシワカに、ヒミコが声をかける。
「まあね。濡れちゃったよ」
ウシワカは水気を軽く払っている。
アマテラスがヒミコの元を訪れるのを予言で知っていたので、わざわざゆっくり歩いて来たのだ。
「この雨で、来客が遅れて、妾はぽっかり暇だったのでおじゃる」
ヒミコが笑って言う。
「アハハ、ソーリィ。アマテラス君はどうだった?」
ウシワカが尋ねると、ヒミコは口元を隠して言った。

「ふふ、今日もお主はいないのか、とおっしゃっていたのでおじゃる」
「え!」
「もちろん、嘘でおじゃる」

うっかり振り返ったウシワカに、ヒミコは微笑んで言った。
「…まあ、そうだろうね」
西安京のおだやかな一日が過ぎていく。

ちょうどそのころ、都の門を出たアマテラスとイッスンは、空を見上げていた。
「雨は止んだけど、なんとも暗いなァ!アマ公」
「ワン!」
「よし、パァーっといくかァ!」
アマテラスが大きく吠える。

いきなり日が差した空を、門番達が不思議そうに見上げていた。

 

〈おわり〉

 

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