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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■JACK+ ③ 自決(後編) 【オリジナル小説】【JACK+】【ブレイクダンス】

なんちゃってダンス小説、第3話(後編)。ノアはカトリック教徒です。

全12話と言ってますが、実は話数の後に前編、後編、①とか②とか番号が結構ついてて、それもカウントすると全24話になります…。ぎゃふん。

…そしてダンスは次回以降に持ち越しと言う…。

【本文字数 7977文字】

20160110162222

 

 

 

JACK+ ③ 自決(後編)

 


――平和的な協議の結果。

「良いでしょう。まず、今日は昨日落としたB-10に再挑戦、クリアして貰います。その後、C-1~F-1まで、今日中に2にランクアップして下さい。出来なかったらペナルティです」
サラから紙を渡される。殴り書きだった。
ランクアップ、つまりは1000点取れと言う事だ。
ムチャクチャだ、とレオンは頭を抱えた。

Cヒップホップ、Dウォーグ、Eハウス、Fロック。
確かに1は初歩と言えば初歩だが。クリアならともかく、いきなりどれも1000点はムチャクチャだ。そもそも時間が足りないのではないだろうか。

「明日からのメニューはまた作ります」
「分かった、ああ、そうだサラ―」
速水は二三の確認して、それを受け取った。

朝食後。早速、速水の別メニューが開始された。


―。


「…と、まあ、当然だな」
「…痛った…」
その日の終了後、速水とレオンは医務室にいた。

「まあ、なぜか俺はあまり殴られなかった訳だが…。お前ホントに馬鹿だな」
レオンはベッドの上で横になる速水を見て、深い溜息を付いた。
「落としたのは一つだから、また明日取る」
速水は呻きながらそう言った。
「お前な。スケジュール、明日も別のがあるんだぞ?リトライは来週だろ?」
「明日サラに頼む。でなきゃ、一月《ひとつき》で7までは行けない」

速水は予定表を受け取った時、サラに、必ず順番に回らないといけないのか?と確認していた。
そして、お好きな順でかまいませんと言われた。
さらに一日の予定を増やす事は出来るか?と聞き、連絡を直接したいとも言った。
彼女の返答はしぶしぶのイエス。内線を使って下さいと言われた。

妥協点としてはまあまあだと思う。
しかし彼はそれを口にはしなかった。

「お前な…」
レオンは舌打ちした。
「レオン。サラは多分、不可能なスケジュールは立てない。目標だってそうだ。7ってのが俺に出来ると踏んで言いつけたんだと思う。…今日はラストランも無かったし。時間もギリギリできるように調整されてた。…ミスしたのは俺」
「確かに、彼女はそういう感じだが…お前、本当にできるのか。体が持たないだろ」
レオンは言った。

今日は9月20日の金曜日で、明日は21日の土曜日だった。
明後日22日の日曜は安息日で休みだが…、それには土曜のあと一日乗り切らないといけない。

「ペナルティ、命までは取られないだろうから…、きついけど」
速水のペナルティはかなり加減されているようだった。
彼は今日も受けてみて、このくらいなら、吐きはするが死にはしない。そう思った。

「うっかり死ぬって事もあるぞ」
「その時は、寸前でレオンに助けて貰う。その為のナイフだろ」

速水は目を閉じた。

今日、速水は他の項目で1000点を取るため、出来そうなダンスをわざと一つ落とした。
落としたのはペナルティを見るためでもあったが…。
7まで行こうと思うなら、全てに全力で当たっていては、体力が持たないし、効率も悪い。
部屋に行くことさえしなかった。

彼が、即降格でも良いと思ったのは本当だ。
…こんなのは、馬鹿げている。

問題は、大会用メニューが割り込んできた時だが…それまでに幾つ取れるか…。
幾つペナルティを受ける事になるのか…。彼は溜息を付いた。

「俺もナイフ…、練習しないと。レオン、後頼んだ」
速水は思考を巡らせながら、意識を手放した。

■ ■ ■


そして問題の土曜。
速水とレオンはまたペナルティルームに居た。

速水は部屋の中心でまた正座をしている。

「ハァ…、お前なあ。土曜はヤバイ奴だから気をつけろって言っただろ…」
レオンはもう付き添いの保護者と言う感じだ。
「…悪い」
謝罪した。

口調はいつもと変わらないが、速水は完全に開き直ったようだ。
レオンにはそれが分かるようになった。

「ヤバイって、どんな―」
速水がレオンを見上げた時、カチカチャという軍靴の音が聞こえた。

「はじめまして!!」
「―」
なるほど、これはヤバイ。
何がヤバイって、全身くまなく、カラフルな入れ墨がある。前衛的な絵画のようだ。
服装はピンクの軍服で、目元を運営と同じデザインの仮面で隠している。小さなピンクの羽根付きベレー棒を被り…、胸元には何故か勲章がじゃらじゃら。手には鞭、腰にはでかいナイフ
…これに戦場で出くわしたら、間違いなく敵は逃げ出す。

そして今日は集団では無く、一人だけだった。

けど、こんなの相手に、どう生きろって言うんだ…。俺、ここで死ぬのか。
ああ、そういえばもうすぐ、隼人の誕生日だったな。メール送らないと、あいつ心配する。
速水は絶望した。現実逃避もした。

「遅くなってゴメンね、服が決まらなくって!!」
かすれた声で語尾を上げるように喋る。それだけで速水は全身に鳥肌が立った。

その後の彼の行動を見て、速水は自分の目を疑った。
彼が取り出したのは、コップ。それを床に置いて―。

「飲みなさい」
そう言った。

「―、いい大人が、馬鹿やってんじゃない!」

バシャッ!!と鋭い音がした。
「え?」
さすがのゲテモノも、瞬間、何が起きたか理解出来なかった。
速水は多分、ものすごく頭に来たのだ。
何をしたのかというと、間髪入れずにコップ手に取り、そいつに『中身』をぶっかけたのだ。

しかも、なぜか説教付きで。
一部始終を見ていたレオンは、あ、こいつ死んだ。と思った。

「がっ!」
案の定速水は腹を蹴り飛ばされ、壁に背を打ち付け、悶絶した。

レオンが駆け寄る間もなかった。カチカチカチカチと音がする。
ゲテモノが歯を鳴らしているのだ。速水の服を掴み、引き起こした。
「=====!!====!!====!!?」
ゲテモノはとんでもない大声でひたすら悪態を付いた。意味は分からない。
レオンの脳はスラングの解析を全力拒否した。が、やさしくすればつけあがりやがってこのがき!(意訳)だと肌で感じてしまった。

いけない事に、速水は目つきが悪い。
どでかいナイフがその目を映す―。

白刃が間一髪逸らされ、代わりに強烈な前蹴り、宙に浮く間もなく、一瞬で床に叩き伏せられる。まだ止まらない。軍靴が速水の頭を容赦無く踏みつけ、蹴飛ばし。首筋にナイフが振り下ろされ。
速水が跳ね起きてギリギリ避けるも、また蹴飛ばされ壁にぶつかり―。一瞬で鮮血が散る。
ゲテモノが字や絵を描くように、笑いながら、速水の体を切り裂いたのだ。

――やばい!!
「誰か!!早く来い!!あいつ殺されるぞ!!!」
レオンは懲罰室の受話器をもぎ取り、必死に叫んだ。

■ ■ ■

「おまえ、なんでそんな風なんだよ…」
またしても医務室で、レオンは頭を抱えた。

返事は無い。
結局受けてしまったナイフの傷や打撲は、エリックが手当してくれた。
怪我の治療は世話人の仕事でもあるので、彼は飛んで来た。
…肋骨が折れていなくて、良かったです。跡が残らないと良いですが…。
彼はそう言った。
ナイフの傷は深くは無いが―、悪趣味な腹いせだ。

だが、あれは速水も悪い。

ダンサーは身体が資本だというのに。あきれた話だ。
レオンはそう思った。

このままペナルティばかり受けていたら、体が持たないだろう。
…運営が性的ペナルティを採用しているのは、それが、暴力よりも体を壊さないからだとレオンは考えていた。
まあそれもキツイ事には変わりないが、運営は一応その道のプロを使っているし、ヤリ殺されるとこまではいかない。

速水はなぜかその性的ペナルティを免除されている。これはノアの言う通りラッキーだ。しかし、このままだとその分早く身体が壊れる。

実際、きつそうに見える。
それでもいちいち運営に逆らうのを止めないのは、無謀もしくは馬鹿としか言いようが無い。
特に今日はまずかった。あの説教とか意味不明だし。

「はぁ…」
レオンはまた溜息をついた。

速水が一体どんな奴なのか、レオンには全く理解出来なかった。
直ぐ切れるし、短気だし、我が儘で、馬鹿だ。

こいつがジャックだって?俺、このガキと組むのかよ。
足手まといになられちゃ困る。

レオンは内心ずっとそう思っていた。
まだ三日程度の付き合いと言えばそれまでだが…、レオンはこの先も速水と組める気がしない。背中を預けるには、速水はあまりにも頼りない。

速水が特別に馬鹿なのだろうか。それとも?

「それともジャパニーズってのは、みんなこうなのか?…ハァ」

それでも彼はそこを離れなかった。

■ ■ ■


そして日曜日。
「…ハァ」
カフェテラスで、レオンは溜息を付いていた。

レオンにとっては、待ちに待った安息日。
カフェテラスで、ゆっくり誰にも邪魔されずに、珈琲でも飲みながら、朝食でも。
速水はまだ部屋だった。

つい先程。部屋にノアとベスが来た。
この二人は、速水がまたペナルティを喰らったと聞いて、朝食前に様子を見に来たのだ。

そこで心底くたびれた様子のレオンを見たベスが、「ノアと先に行って。起きたら連れてくから」と言った。ノアは速水にかまうなと言ったが、我が儘言わないの、と彼女にキス付きで窘められた。
「ノア。行くぞ」「…」
ベスのおかげでレオンは、やっと速水のお守りから解放された。
しかし、そうそう上手くは行かないようだ――。


「完璧に…速水のせいだね。俺、言ってくる」
レオンの隣でノアが言った。ベスが速水についているので、辛辣だ。
身を翻し出て行く。

レオンも同意見だった。

カフェテラスの移動式ホワイトボード三枚、…これは交流戦まで置かれたままになるようだが…三枚、三台か?とにかくそれの真ん中のやつ―。

その中心に、久々の『欠番表』が張り出されていた。

■ ■ ■

欠番表はすぐには張り出されない。
ミサを行う日曜を待って張り出される。

「ハヤミ!起きてる?」
ノアが部屋に入ってきた。
速水は起きていた。
テーブルに着いて、朝食ついでに出すのか、エリックへのメモに何かを書いている。
ノアは簡易キッチンのあたりに居たベスを無視し、まっすぐに速水の方へと詰め寄った。

「ノア?」
速水は首を傾げた。
「この、人殺しの最低野郎!!」
突然ノアが速水に叫ぶ。
「ノア、何!?いきなり」
ベスが近寄ってくる。

「…欠番だ!!」
ノアは速水の襟首を掴み、ベスに向かって叫んだ。

「それも、二人!お前のせいだ!!」

「欠番…?二人?」
速水が呟く、空きが出来たと言う事は。まさか?

「――自殺だよ!!」

「…!!」
ノアの言葉に、ベスが絶句する。

「…っそんなっ、自殺!!?」
ベスがノアに詰めよる。
自殺は、クリスチャンにとっては、絶対にしてはならない事だ。
「…!?自殺?…俺のせい?」
速水はノアから見れば、何も理解していない顔で聞き返した。

速水は状況を理解しようとしていた。
欠番。すなわち死亡。――金曜のミーティングの時は、全員そろっていた。土曜もおそらくいたはずだ。
ベスは食事前にこちらに来たため、知らなかったようだ。
どういう仕組みで死が報告がされるのか、速水はそれを聞こうとした。
「この馬鹿!!」「がっ!!」
その前にノアが速水の顔を全力で殴り、速水は椅子から転げ落ちた。
「ノア!!止めて!」
ベスがまた殴ろうとするノアを止める。

「自殺…?」
頰を抑え、速水はその言葉を反芻した。

ノアは興奮し、激昂し、速水を指を差した。
「お前はここがどんな所か、全然分かってない!!…っ今朝と、あのミーティングの後だって、アメリアとキャシーが言ってた。死んだのはレイと、お前が言った、薬付けの男、トーマスだ!アメリアは泣いてた!!」

レイと言うのは最年長の老人。
アメリアというのは、その老人の孫で速水が、いる、とだけ認識していた子供だった。
そしてトーマスは、かつてジャックに負けた男。
「金曜…ラストにトーマスが居なくても、誰も気にしてなかったけど…」
ノアがチッと舌打ちする。トーマスが遅いのはもういつもの事だった。
単に薬で死んだのかもしれない。見た者はいないのだ。しかし。

「レイが死んだって…?しかも自殺?どう考えても、お前のせいだよ…!!」
ノアは肩を振るわせた。
レイは自殺した、そうアメリアが言っていた。

速水は、ノアを見上げた。
速水は戦力外であろう彼等を、完璧に意識の外に追いやっていた…。

「夕飯で、ミサをするけど、お前は来るな。本当はやっちゃいけないけど、俺たちはファミリーだ。ベス、行くよ!」
ノアが吐き捨て、先に部屋を出て行った。

「…」
速水は呆然としていた。

「あなたが悪いわ。私だって、皆だって、ここで必死に生きてるのよ。悪気は無かったのは分かるけど…」
ベスが静かに言った。ベスはノアを追い部屋を出た。

■ ■ ■

残された速水はベッドに腰掛けた。
そしてひたすら自問をする。答えなんて分からない。


間違いなく、確かに、俺のせいだ。でも。

ファミリー…。
だったら、なぜ、もっと早く助けてやらなかった?
どうして皆、あきらめる?どうして皆、怒らない?

契約だから?

それとも。力が足りないから怒れない?俺だって、たいした力があるわけじゃない。

ただ、とにかくここが気に入らないんだ。許せないんだ。

ジャックは。彼なら――。
彼でも?何も出来なかったのか。

深く俯く。
「…、馬鹿だよな、俺」

ただ一つ分かる。
ダンスで世界平和なんて無理だ。

■ ■ ■


祈りの後の夕食は、静かな物だった。
速水は部屋にずっと居る。レオンはノアに引き留められて、戻るに戻れない。
仕方が無いので、カフェテリアで本を読んで時間をつぶした。
カフェテリアの端には幾つかの本がある。ダンスに関する物が多い。

…普段の日曜には皆で軽くカードをしたり、珈琲を飲んだり、雑談をしたりと結構騒がしいのだが、さすがに今日は静かだった。
欠番はよくある事といえばそれまでだが…いきなり二人。
トーマスは若干微妙だったが、レイは最年長者として慕われていた。

「ノア、いい加減、むくれるな」
レオンは言った。
「ふん!ハヤミは最低だ」
ノアはずっと怒っている。
確かに、速水もマズかったと思うが、あの二人にとっては、良い潮時だったのだろう…。
レオンを初め、ここにいる皆、それは分かっている。ノアでさえそうだ。

レイはここで一番の古株だった。特に才能があったわけでも無いが、皆に慕われていた。
この中で、結婚し、子供が出来て、子供は優秀で外へ出て、外からまた孫が入って来て。

…レイの現役時代、ネットワークはまだまともさを残していたらしい。

「神父を呼び、結婚が出来たのがその証拠だ。それが二、三十年ほどで、ここまで悪くなるとは…思わなかった」
レイは時折そう言っていた。

――家に帰る事も無く、ひたすら踊る。

『こんな人生はおかしい』
彼は心のどこかでそう思っていたに違いない。…思わない訳は無い。
レオンだって、ノアだって、皆だってそう思っているのだ。

だがもう慣れてしまったのだ。

「まあ、速水はちょっと変なんだろうな」
レオンは言って、速水を思い出す。

レオンは、『日本ってのは、平和な国じゃなかったのか?』と速水に出会って思った。

―自分以外の人間は、全く信じない―
目を覚ましてからずっと、速水はそういう目をしていた。
レオンは俺達は違う、敵じゃないと主張はしてみたが、こき使われるだけで終わった。

「速水は、NYのカラスみたいな奴だな。それか逞しい野良猫。人間になれないんだ」
「…」
ノアは黙ったままだ。

周囲の空気が変わって、レオンは顔を上げた。

速水がカフェテリアに入って来た。
アメリアが、連れて来たようだった。
速水はホワイトボードの前で帽子を取り。欠番表を見つめ。

「―」
異国の言葉で、厳かに何かを呟いた。
そこにいる誰も、その意味を理解出来なかった。

「冷めないうちに食べよう」
速水はアメリアにそんな事を言った。アメリアは微笑んでキャシーの隣に座り、祈りを捧げ…速水だけがこちらに向かってきた。
ノアと一言も口を利かず、レオンの前にどかっと座る。

「おい。レオン。食べ終わったら、予習に付き合え。こうなったら二週間で7まで終わらせて、あとは交流戦の特訓をする」
彼はそう言った。
「は?」
ツーウィークと言うのは、聞き間違えでないのか?

「ハヤミ、あなた怪我は」
「なんとかする」
ベスの心配を遮り、速水はひたすら食べている。
彼は痣だらけだし、包帯だらけだし、テーピングもして、酷い有様だった。

その速水がふと顔を上げた。
見ているのはレオンで無くて、その隣のノアだ。
「ノア。お前は俺が嫌いかも知れないけど、俺はそうでも無い。暇だったら、予習手伝ってくれ。…出来ればベスも一緒に」

笑うなよ、そこで。

レオンとノアは心底イラッとして、…ベスは少し赤くなった。
すぐにベスはクスクス笑い、いいわよ、じゃあノアも一緒に。と言った。

そう言われて、断れるノアでは無い。
ぶつくさ言いながら、結局、暇だったらね、と呟いた。

■ ■ ■


「…、で、結局こうなるのか。お前、ホント何なんだ?馬鹿か?馬鹿だろ!!」
翌日、23日の月曜日。懲罰室で、レオンはあきれ果てていた。
しかも、音楽の初歩の初歩、座学1を落とすとは。

「…何なんだろうな」
速水はそう言った。
レオンは少し眉を上げた。今までの反応と何かが違う気がする。
どう違うか考える間もなく、すぐにドアが開き、…、ゲテモノが入って来た。

「無理言って変えて貰ったの!!さぁ、====を殺すわよ!!」

なんてルンルンで言われても。
運営は前回で懲りたらしく、速水の後ろに二人、赤い仮面の男を控えさせている。
…どうあっても、速水に死なれては困るらしい。

「今日のペナルティは水責め!!優しいでしょ!!頑張って考えたの!!====!死ね」

ゲテモノが知恵を絞って考えたようだ。が、まだ根に持っているようだった。
運営が速水の後ろに付き、手錠を掛け、ゲテモノが足で速水の頭をでかい水槽に容赦無く沈める。一分ほど。
「がはっ!!」
速水が息を継ぐ間もなく、また沈められる。
それを延々と繰り返した。一見地味だが、本人は苦しいだろう。
かじかじと頭を踏みつけ、時折顔を思いっきり蹴り飛ばす。ゲテモノは乗っている。

レオンはもはや放置されていた。

彼はする事が無いので、部屋の隅に座って待っていた。
「ゴホッ、…」
今日の速水は大変素直だ。抵抗もしない。
彼の肩を抑える運営も心持ちホッとして、嬉しげにさえ見える。
ゲテモノが飽きたら、すぐに終わりそうだった。

しかし。
ゴホッ、げほっ、カハッ。がッ!!

運営に起こされた所をしたたかに、ゲテモノの足で蹴飛ばされた速水の目を、レオンは見てしまった。
口が切れ、頭から血がにじみ。顔は真っ赤の濡れ鼠。しかし。

「…この前は悪かった。俺、あんたにナイフを教わりたい」
はっきりとそう言った。

――ああノア、お前が正しい。俺は馬鹿だ。
こいつはジャック。


レオンはそれを理解した。

〈おわり〉

 

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