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絵、時々文章なブログ(姉)

sungenのブログです。pixivデータ(主に文章)の保管用ブログ。オリジナルイラスト、小説がメイン。


sungen(pixiv genペア)のブログです。


アート、デザイン、漫画、イラスト、小説について語ったり、作品をアップロードしたりします。
漫画、絵、文章を書きます。二次創作は大神。
長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■JACK+ ⑧ ノア① 日常 【オリジナル小説】【JACK+】【ブレイクダンス】

今回短いです。

この話は大した事も起きないし、久しぶりに読んでみたらそのまんま⑦ベスの続きだったのでついでに出しておきます。

ノア編は少し長めで、②ではほんの少し…というか下手したら唯一のダンス描写入ります。しかもブレイクじゃなくてKRUMP。

別にそのままでも良いかなって気もしますが、ちょっとKRUMPのスタイルについてはそこだけ確認して修正したいかも?と言う感じなので、続きはまた後日。

出てくるダンスのまとめ記事も作りたいので動画あさります。

【本文字数 5867文字】 ※今、アンダー生活4ヶ月目です。

20160110162241

 

 

JACK+ ⑧ ノア① 日常


「子供か…」
速水は最後のカードを切り、呟いた。
これで上がり。ジジをめくる。
ジジは予想通り。ハートの二だった。

今、ノアはベスをなだめに個室に入ったところだ。
ここへ来て約四ヶ月。ベスの経過は順調だ。

「どうした?」
レオンがジジを受け取り、残った一枚、スペードの二と合わせ、カードの山に合流させる。
そして混ぜ始める。

「いや…、何とか、生まれた子供を、外に出せないか?ここで生まれたら…多分」
速水は言った。
「運営に、持って行かれる…って事か」
レオンもそれは分かっていたようだ。
速水は頷いた。

「と言ってもこの状況じゃな。産休が貰えただけラッキーだ」

そしてレオンがつらつらと、今の状況を呟く。

…ステージは十日とか七日に一回で『スクール』時代より余裕があって暇。が、ショーケースの準備、練習、レッスン。

それ以外に面倒な仕事の呼び出しがままあり、部屋を出る時は全て目隠し手錠、おまけにガスマスク二、三枚付き。窓も無い四人部屋で、食事は毎度ガスマスクが運んで来る。メニューは豊富だが味は微妙。

救いはマウスとコックローチが余裕で通れる換気口と、エアコン。あとバスタブ付きのシャワールーム、個室トイレ、小さい冷蔵庫があるって事か?これは結構贅沢だな…。

「…ハァ」

一度に言って溜息でしめる。もちろんヤバイ感じの換気口は普段、塞いである。
…いくつかあるので大丈夫だ。

「ハッキリ言って監禁状態。お前、これでどうするって言うんだ?というか、また聞くが。この部屋、本当に盗聴器とか無いんだよな?」

「無い。エリックに調べて貰ったし、俺も探した」
速水はきっぱりと言った。

カメラ及び盗聴器は無い、と速水が太鼓判を押したのは、ここに来て一週間ほどの時だ。

「…お前、やたらエリックを信用してるけど、エリックも運営の人間だぞ?『スクール』にいたとは言え…あのゲテモノの例もあるし、怪しい」
レオンはカードをそろえつつ、至極正論を言った。

ゲテモノ、ことウルフレッド・ミラーは、『スクール』でサラと速水が肉体関係を持ったという、嘘の告発をした張本人だ。
そしてどうやら、ネットワークの運営の中でも、それなりに発言権を持つ人物らしい。

「あの変態、お偉いさんのお気に入りって感じだが…実際何なんだ?」
レオンは速水に尋ねた。
ここで今、ウルフレッドと関わりがあるのは、速水だけだ。
まだ速水のナイフ講座は続いていて、おかしな師弟関係が出来上がっている…。

「何って…」
速水は呟いた。
そして、手元に来た、一枚のカードを見た。偶然だがエクストラジョーカー。
カラーが白黒なトコ以外、どことなく全てが奴に似ている。

速水は舌打ちした。
あやうく握り潰しそうになった。

…。あのゲテモノ。ハンデに利き手じゃ無い右手でやってあげる、とか言って、やっぱり当然両利きだったとか。勝てる訳が無いだろ…!
そして最後は決まって…あの最低最悪な『ナ』の付く憎きペナルティ。何がレッスン料だ…!

(――あの豚野郎、今度こそ殺す――!!)
そう心に決めつつ、速水は続ける。

「本人が、ジョーカーと『お友達』だって言ってた。…あいつ、意外に単純だから。あと別に口止めされてないって言ってたし…」
殺意を押さえ、何となく速水は言った。

運営の情報については、ウルフレッドは聞けば攻略条件ありだが、限りなく教えてくれる。
一体何が目的だか。
速水は『さあ!私達と一緒にダンスで世界平和を――』のくだりはいつも無視している。
下らない誇大妄想だ。

おい、無駄に睨むな…とレオンが言ってきた。
少し目つきが悪かったらしい。

「ん?その話は初耳だな?」
そしてレオンが首を傾げた。
「ああ、そう言えば…」
そう言えば速水は、ウルフレッドがネットワークのトップと直に通じていたという事は、レオン達に話していなかった。
「一応、情報は共有させてくれよ。お前がシャイなのは分かるが。こっちも付き合うのは命懸けだからな」
レオンが苦笑しつつ言った。

「で…そもそも、どう言う経緯だったんだ?コレ」
そしてレオンは机の上の『ある物』を指さした。
気になってたんだ、と続けた。

「ん?―ああ。俺はさっさと出たいから、色々勝手に画策するって言った。それで、『そう言えば、あの部屋って、盗聴器とかあるのか?』って聞いた」

「ハヤミ、お前…馬鹿だろ」
レオンは集めたカードを机にばらけさせた。

『内緒話はご自由に。それがジョーカーの方針。プライバシーって大切よね』
正直馬鹿な事を言った速水は、散々伸された後にそう言われた。
もちろん頭を踏みつけられながら。

「…って。その後、俺はじゃあ念のために確認するから、エリックに道具買いに行かせてくれって、まあそう言った」

『信用できるか馬鹿!―エリックを呼べこの豚野郎!』
そしてこの部屋の盗聴器は完全消滅した。

レオンは溜息をついた。そして目線を左へ。

速水がそのついでに、エリックに買ってきてもらったサイフォン。これで速水は、毎朝やたら美味い珈琲をいれていた。それほど場所は取らないので、大抵ここに置いてある。それはさて置き。

「で、結局どうするんだよ」
「さぁ…」
速水は何も考えていないようだった。

「さぁってお前」

「だって、カードが足りない…。手持ちが少なすぎるんだ。仲間を増やすか、敵を減らすか…」
敵を減らす事は不可能に近い。
あまりにネットワークは巨大な組織で、自分達は監禁状態。
力では叶わない。
「ナイフだって、殺せて三人…五人は行けるか?」
でも、雑魚を殺しても、仕方が無い。
速水はそう言った。

「…仲間を増やす事は出来る――けど、時間も掛かる。今から始めたとして、実行まで、奴らに気づかれては、いけないし…」

「何で、気づかれたら駄目なんだ?」
レオンは反射的に聞いた。
「そんなの、妨害されるに決まってる。画策は自由だけど行動は制限あり」

「じゃあ、どうするんだ?」
レオンは少し笑った。
こいつが――、今度は何を言い出すのか。

「エリックに頼んでも良いけど…バレバレだな。それに、赤ん坊が生まれて、金髪とか、ノアにそっくりだったらどうしようも無い」
速水はお手上げ、と言うように。少し伸びをする。

「げっ。確かに、そうだな。一応、お前の子供だったら、って話だった…そうなると、本気で逃がさないとマズイかもな。と言うか、お前のスポンサー怒らないか…?」
レオンは言った。

―あなた方の援助で生まれましたが、違いました。…それは怒るだろう。

「考えるなら今しか無い。生まれる前。レオン、あとノアも何か考えろ。サボるな」

それには答えず。速水は左斜め後ろのノアに言った。
さっき個室から出て来たノアは、自分のベッドに座り足をブラブラさせている。

「だって、もう速水が考えれば?レオンより断然マシ」
レオンは苦笑した。
「まあ…そうだな。おい、ハヤミ、生まれる前って、ベスごと外に逃がすか?」

速水は顎に指を当て考える。
母子共に、…。
「それが出来れば最高だけど…けど、厳しいな…ここで産むって条件だし、外に出てもまた捕まる」

そして捕まれば、ペナルティと言う名の、平和な拷問行きだ。

「だから、必要なのは。意外な切り札。トランプだと、ワイルドカードか、いっそジョーカー?」
速水が呟く。

「―意外な?俺…、馬鹿だけど考える。ベスと、ベスの為に」
いつも暇そうなノアだが、今回は真剣だ。

―ベスとベス?
ノアの言葉に、速水とレオンは首を傾げた。

ノアはベッドから、バッと立ち上がって両手を広げた。

「――名前!決めたんだ。女の子なら、エリザベス!」
「ってお前、ベスと同じ?」
レオンが言った。

「だって、俺はベスが好きなんだ。これ以上の名前なんて思いつかないよ!それで、男の子ならノアか、…ハヤミにする!」
ノアは笑って速水を見た。

速水は目を丸くした。

「ゴメン、ハヤミ。サクじゃサックみたいで、語呂が悪いから」
ノアはそう言った。

そして微笑む。
「俺もベスも、君に…すごく感謝してる。きっと明日もあさっても、一生だってね」


「…え、ああ。えっと…」

時間だから、そう言って速水は立ち上がった。


■ ■ ■


部屋をガスマスクと一緒出た速水は、狭い一室で監視されながら、メールを確認していた。

しつこく頼み、昨日。ようやく隼人とのメールが許された。
許可を得た速水は、ベスの妊娠を真っ先に隼人に報告した。
…そうしないのは不自然だからだ。

隼人からの返信はこうだ。

『おめでとう、朔!とにかくおめでとう!!いや本当におめでとう、思い起こせば君が小学四年の頃、初めて会ったころ君はものすごく無愛想で、ちょっと心配になるくらいコミュ障だったよね。その君に好きな人と子供が出来たなんて!!君が父親になるんだな、いまだに信じられないけど、祝福させてくれ!!圭二郎も「そりゃめでたい!」って言ってお祝いに新作ケーキどっさり作るって意気込んでいたよ。もう一度、心から言うよ、おめでとう』

速水はキーボードを叩いた。
『ありがとう。喜んでくれて。正直不安だった。急だったし。…生まれて落ち着いたら、帰国して二人を紹介するから。――あと圭二郎って誰だ?』

「返事はこれで良いか?」
「―」
側のガスマスクが頷く。
そう打ち返す。

そして速水は退出する。


■ ■ ■

 


速水が出て行った後、ノアとレオンはくつくつと笑っていた。

「見た?あの速水の顔。耳まで真っ赤だったよ」
「あいつも人間だったんだな」
「レオンは何だと思ってた?俺は悪魔」
「まあ、カラスか?」

「こら。明日ステージでしょう。ノア、もう寝なさい」
ベスが個室から出て来た。

「…あ、ごめんもう寝る。レオン俺、先風呂入っていい?」「ああ」
レオンに聞き、ノアは立ち上がった。

「あら?速水は…、今メールしてるの?」
ベスが速水のスペースを見て言った。カーテンが開いている。
速水はシャイなので、ここに来て以来、ほぼずっとカーテンを閉めているのだ。

「ああ。それにしても、運営もハヤミには甘いよな」
レオンが苦笑した。
「やっぱり…仲間に、引き込みたいんじゃないかしら」
ベスは椅子に座った。

「まあ、そうだろうな…。あわよくば、か」
「今、あとどれくらいなの?」
ベスがチームの状況を尋ねた。
レオンが手のひらほどの端末を取り出す。

画面に触れるとプール金、勝率。勝ち数、順位が表示される。

「…貯金は、かなりたまってるな。ハヤミのおかげで。けど、ここに来て四ヶ月か…先は長い」
「ノルマの、五十勝までどのくらいの計算?」
「負け無しならあと一年くらいか…。が、三人だと厳しいな。順位上げて出た方が早いのかもしれないが…、それだと一位限定だしな…」
レオンはうーんと唸った。

ここから出る方法は、主に二つ。

一つは、ひたすらダンスバトルし、ノルマの五十勝をクリアする事。
しかしステージは五日から十日に一度くらい。…どうしても時間がかかる。

二つ目は、総合成績で一位になる事。
メンバーの金持ちが、各試合ごとにダンサーに使った金は全て集計され記録されている。
エース、ジャック、クイーン、キング。
要するに『とにかく四人で稼げ!世界平和のために!』と言うことだ。
そして総合成績で一位にして、最後に二位のチームと闘い勝てば出られる。

これは…チームが二百以上ある現状で、総当たりは無理だから、と言う事らしい。
試合のスケジュールは、レオン達にしてみれば週に一回程度だが、ほぼ年中無休で行われているらしい…。

それ以外にもいくつか裏技がある様子だが…。

例えば…見込まれて運営に入る、と言うのもここから出る方法の一つだ。
おそらく速水は狙われている。
と言うか、そもそもの発端はジョーカーの指示での誘拐だし、あからさまだ。

また、速水のように見込まれ無くとも、ここでの生活に嫌気がさし、出られる見込みも無いので、とにかくガスマスクになったと言う者は多いらしい。
絶対服従だが、『一応』自由にはなれる。
レオン達はここへ来た直後、説明係のガスマスクに聞かされたが、あまり良い方法とは言えない。
さらに言えば、もっと良くない方法だってある――。

「今、何位?」
ベスは聞いた。
「239中、102位。全然だな、が、四ヶ月目にしちゃ相当いいぞ」
レオンが答える。

…速水の演技がオーバーで良かったとレオンは思う。
おかげで一気に貯金が貯まり、順位が何もせず八十は上がった。

「やっぱり、勝ちもそうだけどファンサービスが大きいのね…。私も復帰したら頑張るわ」
「まあ、ゆっくりでも良いんだ。気長にすればいい」
どうせ一年では出られないだろう。

レオンはベスを見た。

「ベス…子供の事だが。俺たちで、…実際は速水がだが―、何とか生まれてすぐに外に出す方法を考えてる。だから心配するな」
「…、」
ベスがはっとした。

「それと、例の事だが――、まずったな」
レオンは頭をかいた。
「例の事?」
「ほら、速水が…」

「レオン、例の事って何だ?」

レオンの後ろに速水がいた。
レオンがガタン、と椅子を鳴らして驚いた。

「っ!!驚かすな…っ!!」

「あら、お帰りなさい、ジャック」
ベスが立ち上がる。

速水は微笑み、ベスの赤い髪にそっと触れた。
「ただいま、クイーン。…髪、伸びましたね」
「そうかしら…」
「良く似合って―」

「―イチャイチャするなよ。それ今朝もやっただろ」
風呂上がりのノアが出て来た。予感したらしい。

速水はクスっと笑った。ベスはクスクスと。
丁度ノアが出て来るタイミングだったので。――そう言う事だ。

「レオン、先入るか?」
速水はスペースのカーテンを外から閉めつつ、レオンに聞いた。
今度はノアとベスがイチャイチャしている。

「ん?ああ」
レオンが立ち上がった。明日はショーだ。

「出たら声かけてくれ」
速水は言って、カーテンに入る。
「ん」

いつも通りの光景だった。

〈おわり〉

 

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