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■JACK+ ⑧ ノア③ ステージ【オリジナル小説】【JACK+】【ブレイクダンス】

前回ラストからの続きなので、アンダー生活五ヶ月目頭の話です。
前回に入れたかったけど、それだと前回オチが無かったので(涙)


ちなみに速水とレオンもニアミスしてます。
速水は浸っててスルー。レオンはわざとぶつかられて睨み返し→真面目な話。
これは話し掛けられない。
他のチームは下手したらペナルティくらったかも知れない…。
ふう。ペナルティ編を書かずに済んで良かった。

 

【本文字数 5289文字】 

20160110162240

 

 

JACK+ ⑧ ノア③ ステージ



ステージは種目やその時々によって、会場の広さに違いがある。

初めは小さい場所だったが、順位が上がるにつれ徐々に会場も大きくなっている気がする。
もちろん観客は全員メンバー。皆、目元マスク着用だ。

速水が知って居るだけで六カ所。クランプ専用の会場は二カ所あった。
どうやら同じ州?の色々な場所を転々とさせられているようだ…。
この地方には、コンサート会場が密集しているのかも知れない。
きっと外に出た後で見たら、『あ、多分ここらへんだ。って言うかそのまんま』と思うのだろう。

バトルが一組で終わりと言う事は無く、何組かまとめてバトルする。
これは金の節約を考えたら当然だ。

種目の選択やスケジュールは運営次第だが、一応事前に渡される。
と言っても、『次はブレイクのショーです。この日、この時間に呼びに来ますから、ちゃんと準備しておいて下さい』程度だ。
呼ばれる時間で、だいたいステージの遠さが分かる。遠ければ当然出発も早い。泊まりだった事はいまの所ない。

ネットワークのステージは、なぜか夕方から夜が多い。
また雰囲気とか、色々と無駄にこだわっているのだろう…。

移動中はもうすっかり慣れた目隠し前手錠だが、会場の控え室では外される。
控え室からバックヤード間は自分で動けという感じだ。
もちろんトイレだって移動だってガスマスクの監視付き。出入り口は武装ガスマスクが完全ガード。
ばらけると監視が面倒なので、纏まっていろとか無駄にはしゃぐなとか、特にノアはよく言われる。
ノアは外に出られるのが嬉しいのだろう――。


控え室に着いた速水達は、目隠し、手錠の順で外された。
今回は移動の途中で休憩が入り、軽い弁当を食べさせられた。おなじみのサンドイッチだ。
運営は一応、ダンサーの健康も考えているらしい。

夕刻の本番開始まで、あと一時間ほどある。

ガスマスクは外に出て、一旦鍵を掛ける。用があればノックで知らせる。

速水は靴を確認して立ち上がった。
ノックする。
「じゃあ、その辺でアップして来る」
「ん」
レオンが手を上げる。レオンはまだ外に出ないようだが、これはいつもの事だ。

「あー、緊張して来た。トイレ行こうかな。出番いつだっけ」
それからしばらくして、ノアが言う。
「四番目だな。低い方から順だ」
「じゃあ、そろそろ行っとこう…っと、鍵開けてくれ―、とあれ、開いてる。おい、ちゃんと閉めとけよ!」
ノアは椅子から軽快に立ち上がり、ノックをし、鍵がかかって居なかったので、やる気の無いガスマスクに文句を言いつつ出て行く。

「さて、行くか」
その後、祈りを捧げていたレオンも同じようにして部屋を出た。


■ ■ ■


速水は舞台の袖、近くにいた。
ステージ下の衝立の裏。適当な場所。移動で凝った身体を伸ばし、少し動かす。
振りを軽くさらう。

まだ、速水の耳には周囲のざわめきが聞こえる。

…踊れれば、きっと何処でも同じ――。
かつて速水は、ノアにそう言った。
どうせなら、広い場所で踊りたいよな、とも。

レオンに、どうしてダンスを始めた?と聞かれた。
一緒にクランプをやらないかとも。
かなり心が動いたと言うのが、正直な所だ。

速水はブレイクが好きだった。
技を基本とするブレイクダンスは、速水にとって踊りやすい。
多分、そこそこ向いていると思う。

クランプは――、…興味はあるが、ずっと、一生やるには厳しいだろう。
…クランプはそれこそ命懸けのダンスだ。半端な覚悟では出来ない。

だが、…この先いつまでブレイクをやっていけるのだろうか?

速水はまだ若いが、さすがに三十、四十までブレイクを続けていられるかは分からない。
故障するかも知れないし、体力が続くかも分からない。
そうなれるのは、ジャックのように選ばれた人間だけだ。

きっと俺には――。

…ネットワークに頼るダンサーの気持ちが分かる。
皆そうだろう―。何かしらの不安を持っている…。

今は踊ろう。

このステージで、――とにかくこの世界で。
それが閉じた世界なのか、開けた世界なのか。

…どちらでもいい程、速水は集中し。
周囲の声は聞こえなくなっていた。


いつの間にか、レオンとノアが側にいた。
「おい、そろそろだぞ」
「…ああ」
速水は一応認識はしていた。ガスマスクも…いたっけ?と言う程度には。

観客の声が、一気に押し寄せてきた。

ああ。やっぱり、俺にはダンスしかない。

■ ■ ■


「なあレオン…」
ステージの後、速水はレオンに話しかけた。

今、たまたまガスマスクが近くにいない。
今日のガスマスクは、たまに居るやる気の無い奴だ。…運営も一枚岩では無いのだろう。

「何だ?」
レオンは答えた。

「俺は、ブレイクが好きなんだろうか」
暗いバックヤードで、速水はそう言った。会場ではまだ音楽が鳴り響いている。
踊っている他のチームのダンスを、ノアは袖から、楽しそうにのぞいていた。

「もっと言ったら、ダンスも…」
「何か迷ってるのか?」
レオンは聞いた。この前、レオンは速水にクランプをやらないか、と言った。
その返事だろうか。

速水が壁にもたれる。少し上を向いた。

「俺は…ダンスって友達とか、家族とかの為に踊る物だって思ってた。俺が上手く踊れば、皆が喜んでくれた。それがすごく嬉しくて。それで十分だと思ってた。プロになろうなんて、思って無かったし――こんな大きなステージに立てるとも」

目線を移せば、華やかなショー。観客の声援。
その中で、踊る――。
こんな快感があると、知ってしまった。

「ああ。…ネットワークは凄い」
舞台を眺め、レオンは言った。

「…ジャックが死んで、俺は悲しかった。ダンス辞めようって思った。けど、とにかく踊って。――俺が踊らないと、ハウスの支配人とか…自殺しそうな勢いだったから…」

速水は額に手を当て、俯いた。

実際は…支配人は自殺しようとしていた、と言うのが正しい。
――あの時、ハウスに戻った自分を褒めてやりたい。
おそらく支配人はネットワークを知っていて、あえてジャックに協力していたのだろう。

「ジャックも、多分…出た後、俺と同じような感じで、日本に来たんだろうな。とにかく世界を、ダンスを見直したくて…。――理由、ちゃんと聞いとけば良かった…」

『俺と一緒に、ダンスで、世界を変えよう』
ジャックはいつもそう言っていた。
速水は、下らない。誇大妄想だ。と言っていつも取り合わなかった。

機会はいくらでもあったはずだ。

あの時、いつでも、もっとしっかり――。聞いていたら。ジャックは死ななかった?
優しいジャック。なんでジャックが…。

ぽと、と涙が落ちた。

「…で、返事は、決まったか?」

「俺は…俺のやりたいようにやる。けど、しばらくこの国で踊るのも良いな」
彼は、言ってまた何処かを見る。

「それは――?お前、もう少しハッキリ言えよ」
レオンは呆れ気味だ。

「…お前と戦う」
速水は言った。

ノアが戻って来た。

■ ■ ■


「あれ、迎え、来てないの?」
ノアが首を傾げた。
ノアはそろそろと思って観賞を切り上げ戻って来た様子だったが、肝心のガスマスクが袖に居ない。
ステージが終わった後はガスマスクが迎えに来て、いつも急かす様に連れて帰られるのだが。

「ああ。控え室に戻るか?」
レオンが速水に聞いた。
「とりあえず…そうしよう」
速水は答えた。

バックヤードを下る。
誰にも会わない。
ショーはまだ続いているので、おかしい事では無い。

レオン達は控え室に戻った。
その手前で、二人のガスマスク会った。
一人は今別れたところで、もう一人は速水達を見て驚いた。
「なんだ、居るじゃ無いか。さっさと帰るぞ」
レオンが言う。
「――中に入れ。まだ掛かる。待っていろ」
彼等にしては、珍しい長セリフを喋った。

「?何かあったのか?」
レオンが聞くまでも無く、押し込まれた。
外から鍵を掛けられた。

速水、レオン、ノアが控え室に閉じ込められる。

「なんだ?…何かあったのか」
レオンが言った。

「――あ!!俺知ってる!」
ノアがはっとして言った。

「「―え?」」
速水とレオンが振り返る。

「本番前、トイレでメモ渡されたんだ!―しまった、忘れてた…!」
そして頭をわしゅわしゅと触る。
「メモ…ってまさか」
レオンが言った。

「これ…!ゴメン!しまった!!」
ノアはメモを速水に渡した。

『6番のショーの後、俺たちの仲間がクーデータを起こす。その隙に逃げろ。身柄は保護する』
メモにそう書かれ。そして簡単な地図が書いてあった。

「「はぁ!!?」」
レオンと、速水は思わず叫んだ。

「ノア!馬鹿っ!おま、なんで忘れたんだ!!」
レオンに言われ、ノアは目をそらした。
「―だって、ゴメン…、俺、ベスが居るからってそこで断った。すぐ出番だったし、踊った後で相談すれば良いかなって思って…」

「おま。アホか!!」
レオンがノアをどついた。

『ゴメン、俺、ベスが居るから。サンキュー!』
ノアは、そう爽やかに言って立ち去ったらしい。
その後で、あ、今ベスは速水の恋人だった…と思い出して不味いなとは思ったらしいが、それだけだ。

「…ハァ」
速水は頭を押さえた。

「ゴメン!ホント、ゴメン!ショーの途中までは覚えてたんだよ!多分!」
ノアはひたすら謝った。どこで覚えたのか両手を合わせる。多分、速水の真似だ。

「…はぁー…」
レオンも頭を押さえた。椅子にどかっと腰を下ろす。

「――が、良かったかも知れないな」
そしてレオンはそう言った。
「…ああ。まあ、もういい…」
速水もレオンの向かいに座った。
「何で!?逃げられるかも知れないんだよ。まあ、俺は嫌だけど」
ノアは言った。

レオンは溜息をついた。
「はぁ…。ノア、お前、もっと社会勉強しろ」
「同感だ…。寝て待つか…」
速水も、少し面白げに、肩を震わせながら、机にぐったりとした。

「??えっと、だから―?あれ?うーん…」
ノアはしばらく考えていた。

■ ■ ■

速水達が思い出されたのは、結局四時間ほど後の事だった。

これは本当につらかった。
「おそい!!馬鹿共!」
イライラが頂点に達した速水はガスマスクを蹴飛ばした。
おー、怖、とレオンが呟いていた。

そして結局、逃げたダンサーは十二組中、六組。
どうやら上位が全て結託していたらしい。
なぜ分かったかというと、ナンバーが削除されていたからだ。
彼等がどうなったかは分からない。逃げおおせたのか、あるいは。

速水達は、ノアのおかげで難を逃れたと言っていいのだろうか…。
そして今、ノアがベスに詳しい経緯を話している。


――ノアは大舞台に少し緊張気味で、個室で落ち着こうとしていた。

「あれ、紙が無い!おーい誰か。ゴメン紙貸して!」

「大丈夫か。ほら、これ」「サンキュー!」
隣の個室に居たらしいダンサーに、上から紙と一緒に渡された。ん?と思って良かった。使うところだった。
「その紙はちゃんとトイレに流せよ」「?うん分かってる」
とりあえず個室で読み、ノアはメモをポケットにしまいつつ、個室から出た――。


「っ」
これには速水も噴き出すしか無かった。多分、この場合の紙というのは…。

そして。ノアは手を洗い。
「ゴメン、俺、ベスが居るから!サンキュー!」
と言って意気揚々と立ち去った。
おまえ、何も分かって無い。流せよ。ダンサーはそう思っただろう。

…多分、メモしまうところはダンサーにはしっかり見られた、とノアは言った。
やる気の無いガスマスクには気づかれなかったハズ…とも。

「俺、馬鹿って思われたかな…」
ノアは少し落ち込んでいる。
「っていうか、メモ流せってちゃんと言えよ!…あっ。もしかして俺のせいで失敗したとか!?」
そして怒り出し、最後にうろたえた。

「大丈夫よ。多分速水達に渡したとか?思ってくれたわよ」
ベスが微笑みながらちょっと雑な慰めを言う。
彼女の顔には『ノアのこういう可愛い所が大好きなの』と書いてある。

「リークしたとは思われてるかもな」
レオンは言う。
「そんな!」
ノアが声を上げた。
「皆に配ってたんなら、まあ、ノアのそれが原因じゃない…と思う。どのみち、バレるならバレただろうし。上手く行ったなら行っただろ…」
速水は言った。
「ああ。ま、どちらにせよ、結果は分からないだろうな」
レオンが真面目な感じで言う。

「そっか、そうだよね!もういいや」
二人の言葉でノアは納得し、ベスと今日のステージについて語り出す。

…ノアはこれで良いのだろうか。
速水は少し考えた。

〈おわり〉

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