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■JACK+ ⑩ 追徴① サロン 【オリジナル小説】【JACK+】

さてここで新展開。サロン編スタートです。
ちなみにレオン達の住んでる街はロサンゼルス近郊のどっか。


クリスマスは本来ミサやって家族で団らんしておとなしくしてるらしいですが、レオン達は皆ダンシング教の信者なので関係ありません。レストランとか休みらしいですが…さすがに外人向けのホテルはやってるはず。

 ※こっそり修正しました。そう言えば、今は街のガラスは割れてないです。…かろうじて。多分、テープとか板とかで雑に補修されていると思います。

【本文字数 15229文字】

20160110162252

 

 

JACK+ ⑩ 追徴① サロン

 

速水朔は珈琲を煎れていた。

ここはレオンの部屋だ。
古びたコンクリのアパートメント。四階建てで、その二階。
2LDK、中々贅沢な造りだ。

地下から出ておよそ三週間が経っていた。

今日は、十二月二十四日。
速水の周囲は十二月…つまり出て来てからずっと浮かれまくっているが、正直速水はそこまででも無い。
速水はキリスト教徒では無いので、この国のこのイベントに対する情熱にはちょっとついて行けない。

それでもレオンが色々準備してくれと言ったので、一応それなりに用意した。
多分、これは近頃とみに沈みがちな速水への気遣いだろう。

…このアパートメントに速水はレオンと仕方無く一緒に住んでいる。
レオンはどうやら速水を監視しているらしい。
――つまり、ノアの言う所の自殺をしないか見張っているのだ。

「カラス…?」
速水は耳を澄ます。後ろを振り返ってみる。
うん、鳴いてない。今日はスズメだけ。
AM9:00、なんらおかしい事は無い。
が、この街にスズメがこんなに居るのかはちょっと分からない。

…可愛い鳴き声だな。

速水は笑う。今日はイブだからか、沢山で楽しそうに歌っている…。

その時、近くで…正直に言えばリビングの片隅から、別の鳴き声がした。
速水は少し驚きそちらを見た。
――鳩もいたのか。

もちろんこれは幻音で、速水がキッチンから見たリビング、ツリーの側には何もいない。
けれど実際にそこに居たような鳴き方だった。

部屋の中まで来るのは久しぶりだな。
速水はそう思った。

珈琲を煎れているとそういうことがたまにある。
匂いに誘われて来るのだろうか…?いや、そんな訳無い。俺がおかしいだけだ…。

―多分、この鳥の鳴き声は自分の心境を反映しているのだろう。
カラスは精神の危険信号…それだけでは説明が付かない事も多いが、速水はとりあえずそう考えていた。

速水はこんな風なので、おかしいと思われないように普段から気を付けている。

速水からすれば、『実際に木の上にいる鳥』も姿は見えなくて声が聞こえるだけだし、『実際にいないが、速水には聞こえる鳥の鳴き声』と聞いた感じは、大した変わりは無いのだが…、もし速水がうっかり「あ、フクロウが鳴いてる」と言うと、周囲は何だこいつ、と言う反応をする。

鳥だけでは無い。たまに聞こえる虫の鳴き声はほとんどがニセモノだ。
小学生の時、蝉の大合唱が聞こえて五月蠅かったので、今日は蝉がうるさいね。とクラスメイトに言ったら、それはトラップだったと言う事もあった。
人の声は、本当にたまにしか聞こえない。でも体調が悪いとやたらよく聞こえる…。

砂糖を入れたエスプレッソのカップ持ってリビングへ行く。
リビングテーブルの上には黒のノートパソコンがある。
速水は椅子に座り、それを開いた。

メールソフトは隼人の勧めで『Mozilla Thunder bird』。


年末と言う事でイギリスに帰国中の圭二郎からWEBメールが来ている。
相変わらず無駄に長い。うっとうしい本文はもう読まずに、添付された写真だけを見る。

…ノアとベスの子供、エリーだ。
可愛らしい寝顔や、愛くるしい笑顔に思わず微笑む。

次に隼人からのメールを見る。隼人は先月日本に帰国し、また磐井の店で働き始めた。
メールの内容は…日本はどうとか、いとこが今日も可愛いとか。…いつも通りだ。

寿の実家にいるエリックからも、こちらは分かりやすい育児日記のようなメールが送られてきている。
サラの行方は依然分からぬままなのに、彼はよくやってくれている。

速水はエスプレッソをゆったりと飲み終えた。

レオンは朝からホームに行っていて、今はいない。
彼は日々様々な人物に会い、さらに仲間を増やしている。

…地下から出る時にネットワークが渡してきた速水のパスポートには、O-1ビザが添付されていた。これは、要するに有名なミュージシャンが全米ツアーなどをする際に取得する卓越能力ビザだ。
速水のそれはご丁寧に、誘拐された日に出国、そして監禁中はずっと仕事をしていたと言う扱いになっていた。

このビザはアメリカに三年滞在が可能なので、残り一年半。申請すれば一年延長可能。
おかげで速水はいつ帰国しても全く問題が無くなってしまった。

レオンはネットワークとしては出国の際に、ダンサー達にいちいち問題を起こされては困るのだろう、と言っていた。

確かに約一年半興行し、報酬を受け取った。となると立派な労働と言えなくも無い…。
――誘拐で、強制で、最後にダメ押しで殺人付きと言う最悪な物だが。

憶測で数えてみても、ネットワークに関わりのあるダンサーはかなりの数になる。
そして、そのほぼ…全てが相手の大きさに泣き寝入り。もしくは仕方無く従っているのだ。
最後の契約が嫌で逃げたり、泣く泣く運営に入ったり、そのままネットワークに従って生きている、そう言う者も多いだろう。

レオンはそうした者達に直接話を聞いたり、対ネットワーク組織同士との繋がりを確保したり。そう言うことに奔走し出している。

…レオンと違い速水はほとんど表には出ていない。通訳としてたまにかり出されるくらいだ。

代わりに速水は人を使い、様々な事を調べ始めた。
世界各地のネットワークの所在…ダンサー達の監禁先。スクールの場所。

知れば知るほど、ネットワークはやっかいな組織だった。
資金は莫大。国家予算並み。
それを湯水のように貧しい国や地域に寄付し、逆にネットワークの活動の保証を取り付ける。
となれば当然、その土地の者にとってはネットワークこそが善。
ジョーカーは神。
これは気になって速水も見に行ったが、本当にそう言っている人達がいた。

健康な思考で。感謝の気持ちから――。
子供、老人、女性皆口をそろえ。『ジョーカーは私達の神様です』…確かにそう言っていた。
彼等はジョーカーに救われたと本気で思っているし、実際その通りだった。

速水は、『アンダー』を出てから…著名なミュージシャン、あるいはダンサー、歌手。
様々な人物達がネットワークを潰す画策をしている事を知った。
ジャックもその一人だった。

…この組織を、どうすれば潰せるのだろう。
ジャックの代わりに――。死んだベスの為に。


テーブルの上でマナーモードの携帯が振動した。
…レオンからだ。

「―何だ?」
『ああ。ハヤミ。今朝は具合はどうだ?』
レオンはいつもの文句を言った。
「だから、大丈夫。用が無いなら切るぞ」
速水は言った。
レオンは、朝起きれば具合はどうだ、戻って来たら変わりは無いか。何かあったらすぐ病院へ行け。…速水は孫に心配される老人になった気分だ。

『いや、用ならちゃんとある、ホームに来てくれないか。ずっと引きこもってないで、たまには外に出ろよ。親父が呼んでるんだ』
「……」

速水は少し渋ったが、久しぶりに外へ出る事にした。
出かける前に、エリックから貰った白い薬を一錠飲んだ。

■ ■ ■

午前中の街中を歩く。
今日は曇り。特に静かだ。

まだ道の片隅に寝ているホームレスとか、もう建物の前でたむろしている男達がいる。ごみだらけで治安最悪、といった感じだが。これでも昔よりはいいらしい。

…この街は『キング』の支配下で、だれも速水にちょっかいは出さない。
けどちゃんと用心はしている。

ここではレオンはキング。速水はジャック。

地下から帰って来たレオンと、それにくっついて来た速水は、この街の人々に熱狂的に迎えられた。
レオンの親父曰く、『俺達はお前達のダンスを見ていた』との事で、ここの街にはそんなダンス馬鹿ばかりが集まっているらしい。
レオンは親父に約束通り引退しろと言って、レオンの父親はそれを受け入れた。
…レオンの父親は、速水が思っていたより、まともそうだった。

『そう言えば、お前の兄貴は?何か情報掴んだのか?』
その際、速水は気になって聞いた。
『ああ…だがやっかいだ。某国で強制労働中だってよ』
レオンの言葉に、速水は呆れた。
…ネットワークはそこまでやってるのか――。

「よう、ジャック。ホームに行くのか?」
狭い裏路地で、ダンス仲間に声を掛けられた。
「ああ」
適当に返事をして、そのまま進む。

角を曲がって、さらに進んで。
迷路のような道を通る。途中で速水はいつもの近道を通る事にした。
派手に破れた金網の隙間から、汚い排水路の上に出て、そこに渡された二本組みのパイプの上を通る。
ホームは、少し先に見える五階建ての、古いコンクリートのビルだ。
だが付近の道が細く入り組んでいるので、見えているのに中々たどり着けない…。

イライラし、色々試した結果、この道が一番早いので良く使っている。

カラスの鳴き声がして速水は振り返った。
かーかー!と言う高い声。――ハシブトカラス。ならまだ大丈夫だ。
…ハシボソカラスが、ガーガー、そしてもっと悪い物がギーギー鳴き始めなければ。

どこかで羽音が聞こえた。
何だ、本当にいたのか。速水は苦笑する。

落書きだらけのコンクリートの、さほど高くない塀を飛び降り、ホームに着いた。
入り口は開けっ放しで開店休業、と言った感じだが、中に人はちゃんと居る。

「ああ。来たな」
レオンがロビーにいた。待っていたらしい。
「急ぎだったのか?」
速水は聞いた。ゆっくり来てしまった。
「いや。…用事は夜からだ」
「出かけるのか?親父さんは?用って何だ」
速水はまとめて聞いた。
「上だ」
レオンは速水を促した。

「お前、ちゃんと飼い犬の世話しろよ」
建物の奥へ移動しつつ、レオンが言った。
地下へと続く階段から、小さなうめき声が聞こえる。

「もう犬だけど、まだ飼い犬じゃない。ジョーカーについて吐かないんだ」
速水は溜息を付いた。

「吐くまで放っておけば良い…」
地下へは当然行かずに、階段を上る。

「…と言ってもな…。一週間か…。まあそうするか」
レオンは頭を掻いた。
隣の速水を見る。
人の皮を被った悪魔がいる気がする…。

犬というのは、地下で拘束されたままのウルフレッドの事だ。
速水は、地上に出てからわずか二週間で、彼を捕獲する作戦を決行した。
決行というより、強行だ。
エリックにオフィスの場所を聞き、拉致監禁。そして再教育。

『エリック、こんな感じの薬作れないか

『やってみます』

速水は聞き、エリックは答えた。結果、精神破壊に近い再教育が施された。

速水がやった再教育の詳細をレオンは知らない。むしろ絶対知りたくない。



そして可愛そうなウルフレッドは、犬となり――もともと犬だったらしいが。
速水を見ると『ご主人様!』と嬉しそうにする。速水が聞けばネットワークの事もペラペラ話す。
しかし、肝心のジョーカーについてはまだ理性があるのか口をつぐんでいる。

「お前、ホント…。ハァ…」
速水は変わったのか、もとからこうだったのか、それとも悲嘆に暮れているのか。
たぶんどれもが当てはまるのだろう。

二階を過ぎると、赤絨毯の豪華な内装に変わる。三階の廊下を進む。
ホームは意外にワンフロアが広い。

「…あいつ、…結構利己的な奴だから。自分の不利益になる事はしない。多分…俺に従う事が利になるって踏んだんだ。だからなびいた…?…エリックと言い、やな感じだな」
速水は呟いた。

「?エリック?」
レオンは首を傾げた。
速水の思考が意味不明なのはいつもの事だが、エリックがやな感じとは?

「…エリックも、何か隠してる。レオン、何かあった時は…エリックの動向にも注意を払ってくれ。サラが行方不明だし…心配だ」
速水は言った。
「お前、エリックが裏切るって思ってるのか?」
レオンは聞いた。
だが、確かに…もしサラが人質になっていたら…という可能性は、あるかもしれない。

「…いや…分からない。けど、エリックは俺の病気の事、絶対何か知ってる」
速水は言った。
「…?幻聴か?そりゃエリックは医者だったんだろ?」
「ネットワークの、医者だ。怪しいだろ…」

エリックと、彼の連れて来た医者の治療は的確で、速水は回復できた。
…うなされながら精一杯見たが…薬も、点滴も、おかしな処方は無かった。
つまり、日本で入院した時と大して変わらなかったのだが…。

何が引っかかるのか、速水にも分からなかった。

「ハァ…もう分からない。ややこしい」
何が引っかかっているのだろう?
「…まあ、それはまたじっくり話そう。親父」
レオンが扉をノックした。

■ ■ ■

窓を背に、けれど少しずれた位置に置かれた黒皮のソファーに座る白髪交じりの男。
側近が煙草に火を付けた。

歳は六十手前と聞いた。良くそろえられた口髭。
顔の骨格はレオンよりがっちりした感じか。
細身と言うほどでは無い、引き締まった体つき。ブラックスーツ。
精悍な顔立ちは、確かにレオンに似ている…。目元とか、青い瞳とか。眉毛の辺りとかもそっくりだ。

この窓が片面に四つ並ぶ、そこそこ広い部屋には、速水、レオン、この男。それ以外に側近らしい者が二名。
暇なのか、ボディーガードなのか、側でチェスをやっている男が二名。
チェスをやっている男の女なのか、何なのか…とにかく露出度の高い、無口そうな女が二名。

速水は初めてレオンに、この男――彼の父親を紹介された時の事を思い出した。
あの時は三人だけだった。…今日は大賑わいだ。

皆黒のスーツで、女性は黒いドレス。
まるでヤクザ映画だな。こんなのって本当にあるんだ…。

「キング、何か用か?」
速水は聞いた。今はレオンがキングだが、速水はレオンを名前で呼ぶ。
なので、レオンの親父はとりあえずキングと呼んでいる。
彼の親父をそう呼ぶのは、今では速水一人だけだ。

恐い物知らずだな、とレオンに言われた。

「ジャック。親父でいい」
有無を言わせぬ口調だった。
「…恥ずかしいだろ」
速水は溜息をついた。この人物に会うのはこれで二度目だが…。
何で他人に、ファーザーと呼びかけなければいけないのか。

「ボス」
側近の男が彼をそう呼んだ。ボス、それも良いかもしれない。しかし別に速水はこのファミリーに入った訳では無いし。どうした物か。

速水が考えている間に、側近からレオンの親父が手紙を受け取った。
「レオン。今朝、ようやく招待状が届いた」
「―ああ。相変わらず遅いな」
レオンがそれを受け取る。

「招待状?」
レオンが速水にそれを渡した。見ても良いらしい。速水は見る前に聞いた。
「今夜のパーティだ。サンフランシスコの、お堅い、いやお高い?コミュニティ」
「?」
「レオンとお前で行ってこい」
キングが言った。煙草をふかす。

「…」
行ってこい、と言われて速水は手紙を開いた。

確かに招待状だ。レオンの親父の名が書かれている。
あとは場所と日時だけ。

「どう言うパーティだ?」
「ちょっと込み入った話になる。まあ、説明は移動がてらでも出来る。親父宛だが、別に俺でも良い。さあ、行くぜ」
レオンが言った。早速準備に取りかかるらしい。

「?俺は行かない」
速水は言った。
「―そうか、って、おい!行く流れだろ!」
出口寸前でレオンが振り返った。誰かが笑った。

「いや。だってレオンが行けば良いだろ?」
速水は言った。

「お前な。人がせっっかく外に連れ出してやろうって思ってんのに。一応元キングであるクソ親父の命令って事なんだがな」
「命令って言われても。俺はレオンと違ってマフィアじゃないし」
速水は当然渋った。パーティとか正直そんな気分じゃ無い。それに。

「それに。お前が用意しろって言ったから、食材色々買ったのに…」
速水は舌打ちした。
もちろん買いに行ったのはレオンの仲間だが。
「…ん?食材?」
レオンが眉を上げた。
「お前、何かやれって言っただろ。…晩には色々出来る予定…」
だったのだが。
レオンのこの様子では、すっかり忘れていたのか。

「―だから、俺は行かない。…」
…よく考えたら、別に食事に力を入れろとは言われなかったかも知れない。
速水は少し後悔した。
だからと言って今更、パーティ?

「――あ。あー、そうか…」
理解したらしく、レオンが頭を掻いた。
「…」
速水はやや俯いて黙り込んだ。
…何だ、この微妙な感じ。周囲が無駄に沈黙している。

「悪かった。…そんな変な顔で睨むなよ。このパーティはどうしても外せないんだ」
レオンがなだめる様に言う。
「別に料理好きだし。でも食材がもったい無い。明日以降だと…鮮度が落ちる」

おそらく今から一式そろえないといけないのだろう。
パーティはPM8:00からだったが、ここからサンフランシスコだと、車で六時間はかかる。
帰りは…多分、泊まりになるだろう。

「キング。そう言うわけで俺は行けない。大体、俺がいなくても良いんじゃ無いか?」
速水はレオンの親父に言った。
親父は苦笑していた。
「いや、お前も行った方が良い。ネットワークを潰すなら、あそこで顔を売るのは必須だ。コイツだけじゃ心許ない。…女房役が必要なのさ」

「じゃあ行かない」
速水は即、嫌になって即答した。帰って料理だ。

「おい。親父。コイツ単純なんだからからかうな!」
レオンが言った。
周囲は笑っている。レオンのファミリーはかなり平和的だと思う。

「悪かった。食材は何とかするから、ついて行ってくれ」
「…」
やはり親父はまともな人だ。

「――分かった。じゃあ良かったらキングか、誰か食べてくれ。下ごしらえはしてあるから、七面鳥はオーブンで焼くだけ。冷蔵庫にも色々ある。えっと、出来るか?」
「ええ。それくらいなら…」
女性の一人が答えた。さすがアメリカの女性だ。出来て当然という感じか。
速水は一応、親父の机にあったメモとペンを借りて、幾つかの手順をサラサラと記入し渡す。

「一応この手順と時間で。キング、これ鍵。レオンじゃあ準備するぞ」

速水はキングに鍵を渡し部屋を出た。

■ ■ ■


仲間の運転で、レオンと速水は大陸を縦断していた。
黒い車が二台続く。後続車にはボディーガードが二名。

コーディネートは犬に頼んだ。おかげで早く出発が出来た。今はまだ普段着。

周囲はまだ市街だが、道は大変空いている。
この調子なら、余裕を持って宿泊先に着くだろう。その後着替えて再出発だ。
招待状にはブラックタイ、つまりタキシードで来お越しくださいと書いてあった。
犬が速水に選んだのは黒いシャツに、赤いタイ、同じ色のチーフとか…。もう何も言うまい。
ピンクじゃ無いだけ良しとしよう。

「…ったく、お前のせいで、俺の株がまた下がる。後で絶対言われる…って言うか、下ごしらえまで」
レオンはまだぶつくさ言っている。
…立ち去った後、部屋から笑い声が聞こえた。

「…少し置いた方が味が馴染むし…」
速水は言いながら後悔していた。あの七面鳥は…出来れば自分で食べたかった。
せめて皆に喜んで貰えるだろうか。

「食いたかったな…お前、料理は馬鹿に上手いからな…。まあ、パーティか…。そっちはどうだろうな…」
レオンもやや未練があるようだ。
「そうだ、レオン、俺、年開けたら引っ越すから。最近体調も悪く無いし。審査の要らない物件、幾つか紹介してくれ」
速水は言った。

「何だ?いきなり。…いくつかって選ぶのか?」
「一応。あと犬小屋…」
ウルフレッドに関しては、速水は少し罪悪感を抱いていた。
…やり過ぎたかも知れない。

「それは良いが、もう少しあそこにいた方が良いんじゃ無いか?」
レオンは気づかわしげだ。
あの部屋は、元々、組員の為の部屋らしい。
蜘蛛の巣が張っていたが最低限の家具はそろっていた。

「…お前な。俺に掃除させる気だろ」

スクール、アンダー共に、レッスン中にハウスキーパーが入っていた。…それに慣れきったレオンには『日常生活には掃除が必要』という概念が無かった。
レオンの家は無いのかと聞いたら、クランプの師匠の所にいたり、ホームに泊まったり。路上だったり…。うらぶれた答えが返ってきた。

「まあ、近くならいくつかあるから見繕っとく」
車はようやく市街を離れ、何も無い荒野を進んでいる。まだかかる。
速水はジャケットを脱いだ。

「お前、今何歳だった?そういやちょっと背が伸びたよな」
唐突に言われた。
「?この前十九になった」

十二月二日。丁度ベスが死んだ日に。速水はそれを言わなかった。

「じゃ、アルコールはやめとけ。あそこはそう言うのに五月蠅い連中の集まりだ。問題は起こさないで、大人しくしててくれよ」
レオンはそう言った。

■ ■ ■

ここは豪華な建物…どうやら市庁舎らしい。
中心にドームがあって、両翼に建物が広がる、つまりホワイトハウス様の造りで、良くある鉄柵、白を基調とした外観。

速水は車から降りた。
ワルツは出来るかと聞かれ、できると答えた。アンダーでレッスンがあった。
が…あまり好きではないし、面倒なので誘われないように気を付けよう。

移動だけでかなり疲れた。

…この街は海が近いからか、カモメが鳴いている。
これはもちろん速水にしか聞こえない。

後続車からレオンの仲間が二人降りて来る。

中に入ってすぐは広い、真っ白なエントランス。…見事な丸天井。綺麗な建物だ。
長い正面の階段の先には白と金、少しピンクのクリスマスツリー。

階段の手前に男がいて、ハッピーホリデー、と歓迎の言葉を述べる。

大人しくしろと言われたので、速水はずっと黙っている事にした。
別に今日は何かしろと言われた訳でも無いし、ただの付き添いだ。
レオンの後に続く。

レオンは招待状を見せ、代わりにバッジを受け取り階段を上がる。
速水や仲間に一つずつ渡す。

ここからはレッドカーペット。
シャンデリアが無駄に多い。
部屋まで人が一人付き、フロアの説明をする。

マフィア『キング』が呼ばれるパーティとは、どんな物かと思ったが…普通のパーティらしい。
中々、大勢の人で賑わっている。
広間の奥に演奏家達がいて、ピアニストがいて。曲を奏でている。

複数の男女がフロア…装飾の入った絨毯の上…で優雅に踊る。

長テーブルの飾り付けは白と金のクリスマス仕様だ。片隅にまた銀のツリー。
無駄に大きいシャンデリア。
テーブルの上には、軽食が置かれている。

レオンは、給仕からシャンパンを受け取った。コイツには水をと言って速水を差した。
「かしこまりました」
ワルツが続いている…。

「…?」
踊っている顔ぶれを見て、速水は目線でレオンに問いかけた。
かなり有名な俳優。パートナーは女性歌手だ。名前は…。
「ああ。有名どころが来てるな。アランと、ルイーズ」

アランが燕尾服の男で、ルイーズは褐色ぎみの肌にブロンドの女性。イブニングドレスを着ている。水色の裾がたなびく。

「…」
速水は車内での説明を思い出す。

一応これは、打倒ネットワークを掲げたパーティらしい。
お堅い、お高い連中、ようするに政府筋が主催している…。

音楽が止み、拍手が起きる。フロアに人が交差する。

「さ、行くか。奥の部屋だ」

奥へと続く、やたら縦に長く黒い扉は開け放たれていて、手前にタキシードのお高いガードマンが二名。
レオンは名乗り、ボス達に挨拶をしに来たと伝える。
部屋の大きさは先程の広間の半分くらいだろうか。

こちらはダンスフロアは無く、向こうよりもテーブルが多い。
つまり立食形式のパーティ。そしてやはりクリスマス仕様。今度は色がある。


そしてレオンは壮年の男性に近づいた。六十くらいか?
男性はテーブルの側で、シャンパンを飲んでいる。

「おひさしぶりです。おじさん。レオナルドです」
「おお、レオンか?でかくなったな」
顔見知りらしい。おじさんはグラスを置いた。

この部屋にいるのは、政府高官とか、警察関係の引退した人物とか、著名なダンサーとか歌手とか、そのパトロンとか。
色々談笑している。…しかし話題は、ネットワーク関連が主。
毎年末の恒例行事らしい。
レオンは幼い頃、元キングと何度か来た事があると言っていた。

「今日は、ようやく親父が引退する気になったので、俺が代わりに…。親父は家で一人寂しくターキーを食べています」
「そうかそうか。まあ、ゆっくりして行ってくれ、キング」
「はい。あとこちらはサク・ハヤミです」
「ほお、彼が噂のジャックか…」

「ほら、挨拶」
レオンが小さく言った。
「サク・ハヤミです」
速水は名乗った。
「おい。お前、もうちょいな…。ミスター・ジミーは奥に?」
レオン言った。

「向こうで遊んでるよ」
レオンに聞いた通り、まだ続きがあるらしい…。

左手奥に、木で出来た扉がある。これは閉じていて、やはりガードマン付き。
「では。失礼します。お前、もう少し笑え。普段の顔で居るなよ。営業スマイル出せ。不機嫌に見えるぞ」
おじさんの所から立ち去る前に、レオンが速水に言った。
「…大人しくしてろって、お前が言ったんだろ」
速水は答えた。

「失礼でしたか?」
一応聞いた。
「いや。大丈夫だ。折角だ。私も遊ぶかな」
おじさんが苦笑した。

おじさんと、速水とレオンはそのまま進み、木の扉の向こうへ立ち入った。
そこは遊戯室で、ビリヤード台が二つ、カジノテーブルが幾つか。ダーツもある。
正方形の木製テーブルが二つあり、それぞれで男達がカードに興じている…。

「ジミー」
おじさんが、ビリヤードをしていた老人に声を掛けた。
老人と言っても、まだまだたくましい感じだ。白い髭、白い髪。
「―ん?」
「レオンと、ジャックが来てくれた。キングのトコは親父が引退したってさ」
「ほお。あのひねくれ者がなー…。良くやったな!」
厳つい老人が鷹揚に笑った。
「苦労しましたよ」
レオンも笑う。

「どうだ、二人とも。一緒にやるか?ん?」
どうやらビリヤードに誘われたようだ。キューを差す。
「俺はやったこと無いです」
速水は言った。
「何だそうか。また次はやろう。カードは好きか?」
ジミーが速水に聞いているようだ。
「別に、普通です」
速水は言った。
「…お前、もうちょい、笑えよ…。いつもの笑顔はどうした?」
レオンが額を押さえた。
速水はようやく苦笑した。
「だってお前、静かにしてろ、キレるな、騒ぐな人を殴るなって言っただろ。今のところ騒ぐ理由もキレる理由も殴る理由も無いし、静かにしてる。カードはした方が良いのか?」

「―お前って、馬鹿だよな」
レオンが呆れて言った。
「まあ、じゃあカードでもするか」
おじさんが微笑みながら言った。
「―あ。じゃあ俺達どきます。丁度上がり、俺の勝ち」
テーブルの男…おそらくダンサー…が言った。もう一人も立ち上がる。

「じゃあ、やるか。四人だしブリッジでいいか」
ジミーがそう言った。

「…これって勝った方が良いのか」
速水はレオンに聞いた。
「まあそうだな。適当に楽しく、良い勝負くらいがベターだ」
レオンは苦笑した。

「じゃあ、楽しみましょう」
速水は笑った。

■ ■ ■

適当に白熱したゲームを楽しんだレオンと速水は、遊戯室を出た。

「さて、もう目的は果たした。後は適当にぶらついて、何か食って、ホテルに帰ろう。周りはダンサーばかりだし、知り合いとか作っても良いぞ」
レオンが言った。
「任せる」
速水は言った。

「…お前、具合でも悪いのか?」
「いや。ここは海が近いから、カモメが…」
鳴いている、と言おうとして速水は口をつぐんだ。
受付で渡されたバッジは、録音機になっているらしい。
それに音楽もうるさいが…。
…無駄な事を言う必要は無い。

「…海が見える所はあるかな」
速水はそう言った。
「暗いから、どうだろうな…バルコニーにでも行くか?」
「一人で良い。レオンは頑張れ」
速水は言って、ボディーガードを一人連れてレオンと別れた。

大広間にさっさと戻る。
ワルツが流れている
要するに、誘われないようにするにはフロアに近づかなければ良いのだ。
じろじろ見られている気がするが…きっと気のせいだ。
万が一声を掛けられたら、『しばらく一人で休みたいので』…これで行こう。

広間の端を通り、適当な窓から外に出る。
海は闇が深くてよく見えない。

速水は正直、退屈だった。やっぱりレオンに任せた方が良い。
今頃レオンは多分、奥の広間の、年配のご婦人達に囲まれているのだろう。
彼女達は、いかにも興味津々という顔をしていた。遊戯室の者達も、ゲームの間中ずっとこちらを伺っていた。

「何か食べるか?」
振り返って仲間に聞く。夕飯はホテルで軽く食べてきた。
「いや。俺は良い。お前のガードだしな。構うな」

そう言われたので速水は外を眺めた。



レオンが小一時間ほど後、ようやく切り上げ広間に戻った所、速水が営業スマイルで女性と踊っていた。

「ありがとう。ルイーズ。……レオン、疲れた」
柔らかな拍手の中、パートナーに声を掛け。…戻るなり速水はレオンに言った。

「お疲れだな」
速水のダンスはかなり様になっていたが、本人的には堅苦しくて苦手らしい。

「ホテルに帰ろう」「ああ」
レオンは笑って言った。レオンも疲れたし、お互い様だ。
バッジを返し、速水達は建物を後にした。


ホテルに着いて、速水は上着をベッドに放った。
ポーズとして連れて来たボディーガード二人と、運転手達は別の部屋だ。

断る度に別の女性が来たのには辟易した。皆、反ネットワーク活動家で、『ジャック』と話したがっていた。

「ふう。あとは連絡待ちだな」
レオンがタイを緩め言った。上手くすれば、そのうち元締めに会えるらしい。
「エンペラーだっけ?俺は良いから、レオンが会いに行けよ」
速水もタイを緩める。
正直、場違いな気がして仕方無かった。ああ言うのは大人の社交場だろう。
速水はまだ十代だ。
――そう言えば、来年で二十歳か。一応選挙行かないとな。

適当な、いつもの部屋着に着替える。

「率直な感想をくれ。どう思った?」
「すごい退屈だった。あと曲がうっとうしい。ワルツは踊りにくい」
速水はベッドの縁に腰掛け言った。

「悪かったな。まあでも顔見せは大切だ。俺たちは反ネットワークですって、地下から出たトコで宣伝しておかないと」
レオンも速水に向かい合い、自分のベットの縁に腰を下ろす。

車中で聞いたが、他に『サロン』…これはフランス語。レオンは実際にはソサイエティと言っている。直訳すると社交界。――は、ここサンフランシスコ以外にも、ブラジル、イギリス、フランス、オーストラリア、中国、ロシアにあるらしい。

「っていうか…頭悪いんじゃ無いか?あんなトコに堂々出入りしてたら、ネットワークに向けて宣伝してるような物だろ」
『私達は、反ネットワークを掲げています』…これじゃやりにくくなるだけだ。

「まあ、その通りなんだが。…ネットワークがあまりにでかすぎて、ややこしい事になってんだよ…何か飲むか…」

そして、レオンはコーラを飲みながら説明を始めた。

「――この世界の公的機関は、なぜかネットワークに対して静観を決め込んでる。噂じゃ、GANの進めてる…何かの『計画』が関係してるらしいが…、その計画が何かは謎。政府、警察、王室、あげく国連バチカンまでもが、ネットワークの裏での乱行に目をつぶってる。お前等仕事しろ!…って話だ」
レオンは忌々しそうに言った。

聞きながら、速水は机で携帯を充電しようと立ち上がる。
「…本当にそうだな。税金がもったい無い」
速水は同意した。

「『サロン』のおかげで、ネットワークの殺人とか誘拐とかがサッパリ表沙汰にならない。…これはどの国も同じらしい。むしろ、『裏ネットワーク』とでも言うか。こっちが正しい、オフィシャルな物のハズなのに、後ろ暗いから皆コソコソしてるのさ」

「へぇ。終わってるな…」
言いながら、速水は冷蔵庫から水を取り出した。

「ああ。…唯一様子が違うのは、スイスと…チベット?いやウイグル…?らへんだったか。それとお前の国――日本」
レオンは続ける。

「――日本?」
速水はレオンを振り返った。
「あそこはコロコロ支配者が変わるし、極端に飽きっぽいらしくて、…かと思えば皇帝がいたりして、あっと言う間にサロンが廃れたんだってよ」
「あー…、なるほど」
日本人として、その様子は安易に想像が付いた。

「政府権力なんて、あの国じゃお飾り。引き継ぎが出来ないとか何とか。――まあ、それはこの合衆国でも一緒だが、あそこまで酷くは無いと思う」

レオン曰く、この国の歴代大統領は一応、皆をそれなりに纏めている、との事。
だがアメリカは各州の権限が強くて、やたらもめ事が起きる。

狭いし、大したこと無いし。けど微妙に凄くて、微妙にズルイ国。
レオンは日本をそう評した。

「…そう言うわけで、日本では表ネットワークはともかく、裏ネットワークの力が極端に弱い。と言うかある意味無法地帯。それで活動の拠点には丁度いいって、反既存体制派のダンサーは結構、日本に行きたがるんだよ。だからジャックもそっちに行ったんだろう」

「なるほど」
速水は腑に落ちた。
なぜジャックが日本に来たのかと思っていたが、そういう理由だったのか。

「あともう一つと言うか、…――これは別に良いか?大した事でも無いし」
レオンは顎に手を当てた。

「?何だ?」
速水は尋ねた。
「まあ、話すが。豆知識?みたいなモンだ…。裏ネットワークから日本が外れたもう一つの私的な理由は、――宗教だ。ネットワークはヤーウェ勢が中心だしな。無神論者ばかりで、日本は信用できないって」
「ああ…なるほど。けどそれで対立してたら、他はどうなるんだ?仏教とか、イスラム教とか、すごく面倒だろ」
速水は言った。

それに日本を無神論者の国というのはどうだろう。仏教はともかく、確かに神道は日本限定でマイナーかもしれないが…。多神教とか、そう言った所も沢山あるだろう…。イスラム圏とキリスト圏は仲が依然良くない気がする。

「お前、意外に勉強してるな」
レオンは感心したようだった。
が、小学生で習う内容だ。速水は肩をすくめた。

レオンは続ける。
「それが、そっちは一応、『利益のためにガマンしましょう』って事でケリがついてんだよ。…ケリを付けたのは、そもそも裏ネットワークを作ったネットワークの創始者から分かれた奴らだった、ってオチが付くがな」

「…やな世界だな」
速水は溜息を付いた。
…だからやり方がネットワークっぽいのか。

「とにかく、裏ネットワークが国家、警察権力を牛耳ってるから、幹部とか、絶対逮捕出来ないんだ。ここの説得無しにGANを潰そうとすれば、逆に難癖付けて庇いやがる。『今はその時では無い』ってな。…つくづく、腐った世の中だ」

「実質、保護してるって事か…」
速水は両手をベッドについて、言った。天井を仰ぐ。
母体が一緒とは、面倒な話だ。

「だが、この国の『エンペラー』。こいつの協力を取り付けられれば、大分話は変わってくる」
「…どう変わるんだ?」
速水はやや面倒そうに体勢を戻した。顔に掛かった髪を整える。

「各国が動く。三十年前、それで前ジョーカーが逮捕されて幹部もごっそり変わった、『らしい』って親父が言ってた。――結果はどうあれ、『エンペラー』には革命を起こす権力があるんだ」
レオンは言った。

だがな…その革命が上手く行ったとは思えない。特にダンサー達にとってはそうだ。
そろそろ眠そうな声でレオンは言った。

「エリックも言ってたな…。ネットワークはトップの、ジョーカーの権力が大きい組織…。
もう見えない国相手、みたいな物か…もうこんな時間か」

ようやく話が一段落し、速水は壁の時計に目をやった。
午前二時を回るところだった。

「まあ、返事待ちならどうしようも無いな。明日帰るし、そろそろ寝るか」
速水は風呂へ行こうとした。
「――ああ。と、言いたい所だが…」
レオンが起き上がった。荷物をあさる。

「まだ何かあるのか?」

レオンがくたびれた紙袋から、紙束を取り出す。
「実は…年明けまで俺たちは帰れない。招待状はアレだけじゃない。年末は目白押し。つまり、明日も、明後日も…、ああ、七日が最後だな。…見るか?」
暗い顔をしてそう言った。

「はぁ!?」
速水は思わず声を上げた。

「おまえ――騙したのか!!!?」
「…悪いっ!!ホンッっト悪いが、頼む!もう少し付き合ってくれ!!お前言ったら絶対来なかっただろ!!殴るなよ!ぐっ」
レオンは申し訳無さそうに両手をあわせた。もちろんボコボコに殴っておいた。

「来るんじゃ無かった…」
その後速水は項垂れた。

〈おわり〉

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