絵、時々文章なブログ(姉)

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長編小説はヘッダのシリーズまとめから探すと楽です。







■JACK+ ⑭ MD⑤ スプリアス 【オリジナル小説】【ダンスパーティー】

お久しぶりです。覚えてる方はいらっしゃるのでしょうか(^^;)

大分間があいてしまいしたが、続きです。あと3話で第1部は完結予定です。

今回は短めですが、次回からはダダ長い予定。12月末を目標に頑張りたい。

そういえば、トイレはドアがあって別になってます。
また暇があったらドア描写足しておきます。正直重要では無いと思う。
多分2,3時間ごとに鍵持った研究員が入ってきて、鍵あけてくれる感じ?
立つのがやっとのバストイレで、一応しょぼいシャワーがあります。

色々変なのは仕様です。なんかおかしいですね。隼人との回想はマイナスのストックに書いてあったのでそちらで…。一部が終わったらマイナスも本腰入れないと。

 

 ■前回

sungen.hateblo.jp

【あらすじ】速水朔(17)は若き天才ブレイクダンサー。彼は『JACK』ことジョン・ホーキングと『JACK+』というダンスダッグを組んでいた。
しかし、世界大会優勝直後の凱旋ステージ上で、速水の目の前でジャックは死亡。
速水は踊り続ける内に、二代目ジャックと呼ばれるようになる。
――そんなある日、彼の元に不思議な手紙が届く――

あと3話で完結という事でカクヨム版が復活しています。おさらい用にどうぞ。

JACK+ 第一部 グローバルネットワークへの反抗(sungen) - カクヨム

 

■シリーズ専用サイトからも読めます。

jack-dance-party

 

【本文字数  5851文字】

20171015003620

 

JACK+⑭ MD⑤ スプリアス

 

α、β、θ、Ω、Δ。五つのチームの主要な研究員がエリー湖、ピーリーアイランドに集結していた。
彼らの目的は当然、サク・ハヤミだった。

――自分達の求めていた力を持つ者が目の前にいる。
プロジェクトチームは、またとない機会に沸き立っていた。

今回、速水を担当したのは、Δチームのオルグレン医師だった。
彼はブラウンの髪をきっちり刈り込み、白衣を着てネクタイを締めている。年齢は五十代半ばで、口ひげを生やしている。

オルグレンは早速、速水を催眠状態にすることにした。
オルグレンはエリックと共にアンダーでも速水を担当していて、副主任のエリックと並び、その道の権威と言われていた。

オルグレンがサク・ハヤミに特殊な薬物を嗅がせて、催眠をかける。
これはアンダーでプロジェクトがイアンの妹、ターヘレフに行った『治療』と同じ方法だ。

「聞こえますか…」
入院着を着た速水はベッドに横たわり、自分に声を掛けるオルグレンを眺めている。

その様子を多数の研究員がマジックミラー越しに、固唾を呑んで見守った。

「ゆっくり体を起こして下さい」
オルグレンに促されて、速水は自ら身を起こした。
オルグレン医師は速水の脈を取って、薬が十分にいきわたったことを確認した。

速水の額には、貼り付けるタイプの脳派測定器がいくつもついている。
ベッド横には計器があって、オルグレン医師にも測定結果が見える。
計器は床下で隣室と配線がつながっていて、数値の変化が同時に見られる仕組みだ。

実験室に置かれた四角いメトロノームが、呼吸より少し早いリズム刻む。
きぃー。きぃー。という音を出す機械がある。

速水がいる部屋の右側の壁は、床上七十センチから上は全面ガラス張りで、マジックミラーになっている。研究室からはこちらが見えるが、もちろん速水のいる実験室からは何も見えない。
隣室側には薄緑色のカーテンがあり、その必要があればガラス張りの窓を目隠しをすることもできるが、今は開いている。
…このカーテンは、研究員のストレスを緩和するための物だ。

奥のデスクでは数値の解析。各チームが連携し、静かに慌ただしく動く。
カメラとマイクで、速水がいる部屋の様子は筒抜けになっている。

メインデスクの液晶は三台。上と横から速水のベッドを映している。残りの一台はオルグレンと計器を映す。メインデスクにはマイクも設置されていて、各チームの研究員が座る。
この場にいるのは各チームの中でも優秀な研究員達で、彼等は世界平和の為にレシピエントの研究を進めている。

一番奥には主任の席があって、その席にもマイクもあるが、今は不在だ。

主任の正体を知っているのは、この中ではオルグレン医師とΩチームの最年長研究員、エイムズだけだった。
エイムズは金髪に青い目、髪は良く整えてある。年齢は六十代だろうか。
若干癖のある顔立ちだが…年齢をプラスしても、まだ十分にハンサムと言える。
彼はメインデスクの中心に座っていた。

オルグレン医師、何か異常はありますか?」
マイクを使い、エイムズが尋ねる。
実験室のオルグレンにもあらかたの数値は見えるので、何か変化は無いのか、といったニュアンスだった。

『いいや、まだ変化はないな』
隣室にオルグレンの声が響く。

『…B-ノイズは?』「ゼロです。プラスもマイナスも出て無いですね」
オルグレンが尋ね、θチームの研究員が答えた。
「――やはりおかしいな」「まだ力が解放されてないのかもしれませんね」「ああ」
メインデスクを囲んだ研究員同士が頷き合う。

「シャドーと交信している様子は?」
エイムズが言った。
「脳派を見てもありません」「オルグレン、割り込みに注意しろ」
他チームの研究員達が口々に言う。

指示に頷き、オルグレンが速水に呼びかける。
速水はベッドから足を降ろして、オルグレンの方を向いて座っている。
「ご自分が誰かわかりますか?貴方のお名前は?」

「――はやみさく」
問いかけは英語だったが、速水は日本語で答えた。
『英語で言わせろ』
「英語が話せますか?」
指示が来てオルグレンが言った。
「イエス……」
誕生日、年齢、性別、生まれた街の名前。速水は問われるままに、自分の事を喋った。
次第に質問の内容が変わってくる。

「好きな食べ物は?」「嫌いな食べ物は?」
「今までで一番、楽しかったことは?」
「今まで一番、悲しかったことは?」
「今まで一番、腹が立ったことは?」
「今までで一番、」

『――、おい、反応があるぞ!』
途中、実験室屋に研究員の声が響いた。
『割り込みか?』『いや、違う、シャドーからのメッセージだ』
『読み取れたか?』『一瞬で、無理です』
『もう一度頼む』『どれだ?』

オルグレンは質問を繰り返した。
「好きな食べ物は?」「嫌いな食べ物は?」
「今までで一番、楽しかったことは?」
「今まで一番、悲しかったことは?」
「今まで一番、腹が立ったことは?」
「今までで一番……」

問われた速水は思い出していた。

好きな食べ物、嫌いな食べ物、今までで一番楽しかったこと、悲しかったことを訥々と語るが、どこからか「――違う」と言われた。
仕方がないので、話したい事を話しはじめた。
そうだ――どうせ思い出すなら、楽しかった事がいい。

「今までで一番楽しかったのは、隼人と山に鳥を探しに行ったことかな」
「隼人?隼人って言うのは、俺の親友で、命の恩人だ」

「俺が死のうとしたときに、気が付いてくれて、死ぬなって言ってくれた」
「なんだ、聞きたいのか?」

■ ■ ■

速水の声が研究室に響く。

『俺が=のうと思ったのは、ばあちゃんが死んで、音がゆがんで変になって、もう生きてるのが嫌になったから――、たまに自分でも分からないくらいに、気持ちが落ち込む事があって、…「なら、死んだ方が良いな」「お前は死ぬべきだって」って皆に言われて。始めはいつもの幻聴だって思ってたけど、急に分からなくなって。「じゃあ今から死のう」って思って。========っていう、医者で貰った薬を沢山飲んだ』

『あの時、隼人が来たのは、偶々じゃない。その日別れた時の、俺の==がおかしかったのが心配で見に来てくれたんだ。それで、=日くらいして病院で気が付いた後、隼人は、俺に。「==、===、====」って===』

「?――スピーカーの調子が悪いな」
研究員が首を傾げる。音声が途切れ途切れになっている。

『そうか、こっちは=こえる。数値に==は?』
オルグレンが言った。
「数値か?何も変化は無い。続けてくれ。キーワードを引き出すんだ」
研究員が言った。
「手がかりが無いのが……。エリックめ」
エイムズが舌打ちした。

オルグレンはアンダーで速水を担当したが、催眠をかけた後はエリックが引きつぎ、地下の部屋を追い出されたらしい。結果、重要なシーンは見られずじまいだったと言う。
――いつものことだ、と言ってしまえばそれまでだが。
このプロジェクトには、不可解なことが多い。

ハヤミを保護したがるジョーカー、副主任の裏切り者エリック。
主任は指示を出すだけで姿を見せなかったり、伝言役がなぜか皆ガスマスクをかぶっていたり。いつのまにか人数が大幅に増えていたり、減っていたりもする。

『分かった――、詳しく、=かせてくれるかな』
オルグレンに言われ、速水は話し続けた。
『うん……隼人に会ったのは俺が小学四年の頃。隼人が塾の帰りに、ダンス=くールの前に通りかかって、その時ちょっと、===スクールの同じクラスの奴らともめてた=だけど、……それから==日後……、またちょうど帰りに会って』

『そっちじゃ無くて、君が薬を沢山=んだときの事を。もっと聞かせてくれるかい?――声が聞こえたんだね?それは誰の声?何を言われたの?』
オルグレンが言った。

『父さんと、兄貴にダンスなんかやめて=ねって言われて。悲しくて。でも、=んだばあちゃんと、=んだ母さんと==なかった妹はこっちへおいでって笑ってた……だか…ら、そっちへ……行こう、と……』

速水の体がぐらつき始めて、速水は目を閉じ、深くうつむいたまま動かなくなった。
オルグレンが声をかけても返事は無い。

『駄目だな、一旦中止しよう。次は五時間後だ』
オルグレンがため息をついた。

「マイクのチェックをしてくる」「こればっかりは、時間がかかるな。先に飯にするか」「ルークがもっと使えたら、こんな面倒な…」「だからもっと、強硬な姿勢で臨むべきだ」「ねえカーテン閉める?」「その結果が、産廃だろ?これ以上失敗すると、お前のチームは特に不味いぞ」「エイムズ――主任は何処にいるんだ?来てるのか」「カーテン?そのままでいい」「エリックめ」「分かったわ」
「研究が出来るだけマシか」「あ、あ。聞こえるか」「ああマイクに異常は無いな」
「先に休憩するか。夜間はどうする?」

「――主任はまだだ」
エイムズが言った。

 

■ ■ ■


エイムズが言った時。
主任は広々とした部屋で、ソファーに座って、自分の爪にマニキュアを塗っていた。
主任の背後には何人ものガスマスクがいて、全員武装している。

エイムズは研究員に主人が不在だと伝えたが、彼は主任がここに居て、自分たちを監視している事を知っている。

主任が座るソファーの、テーブルの上にはモニターが二つ。
左のモニターには研究室の様子が、右のモニターには、実験室の速水が映っている。――今はよく眠っているようだ。

「だ、そうよ。あなたたちも休憩したら?のんびり行きましょうよ」
主任は背後のガスマスク達に言ったが、誰も答えなかった。

■ ■ ■

 

速水は唸った。

頭を押さえて、呻いてから目を開ける。
病室のような部屋だった。全体的に真っ白で、部屋にはベッドと…椅子と、サイドテーブルがあるくらいで、他には何も無い。
左手の壁は窓になっているが、マジックミラーなのか向こうは見えない。

確か――。ノアと引き離されて、この部屋にムリヤリ押し込められて。
たぶん眠らされて……今、ようやく目が覚めた。
…いつのまにか入院着を着ていたが、もはやこれは良くある事だ。

『おはよう、ハヤミ』
ベスの声が部屋に響いて、速水はゆっくりと体を起こした。

「ベスか?」
速水は天井を見て言った。部屋にマイクがあるらしい。
『ええ。朝食は必要かしら?』
「貰えるのか?」
『ええ』
「じゃあ頼む」

起き上がった速水は首をひねった。
――鳥達が静かすぎて気色悪い。

しばらく後、部屋の扉がノックされ、主任の…ベスともう一人、金髪の、白衣の男性が白いトレーを持って入って来た。六十歳くらいだろうか。
ベスがベッドの脇にあったキャスター付きのベッド用テーブルをベッドの上に移動させる。
金髪の男性は助手だろうか?食事をテーブルに置いた後、ベスに促されて出て行った。
ベスは残り、ベット脇の椅子に座る。

出された食事は、ベーコンとスクランブルエッグ、ライスにサラダと、スープと水。どこか懐かしい、……アンダー産の匂いがした。

…和食が良かったけど、飯があるだけましか。
コーヒーも飲みたかったけど、贅沢は言えないな。

そう言えば、この島に連れて来られてから何も口にしていない。
かなり腹が減った。
「食べて良いか?」
速水は手を合わせて、ベスに食べて良いかと訪ねた。

「…何も入って無いよな?」
一応確認する。ベスがクスクスと笑った。
「ええ。どうぞ。食べながらで良いから、少し、お話しましょうか」
「話?」
少し堅めのライスを口に運びながら、速水が言う。一応、暖かい。

「…そう言えば、ノアはどこだ?別の部屋か?」
思い出して速水は言った。
「……」
ベスは答えない。

「……プロジェクトはレシピエント?とかいうのを探してどうするんだ?」
速水は続けた。
ネットワークは速水の何を欲しがっている?
速水が超能力を持っているのなら納得できるが、そんな気配は全く無いのに。

「そもそも俺は二重人格で?本当にレシピエントなのか?ハッキリさせてくれ。二重人格って……あれは一種の病気だろ?」
速水は言った。
シャドーの事はレオンに聞いたが、そもそも『二重人格』という物が実在するのか?あなたはレシピエントだ、と主任に言われたが…。

速水は顔を上げて、小さくため息をついた。
「エリックは嘘ついてるかもしれないし、犬もだいぶ怪しいし、レオンは――、置いといて、ノアはこれからどうなるんだ?」
ノアの安全が最優先だが、レオンの恨みは晴らしたい…。

「君達がノアを解放するなら、多少、協力してもいい」
速水は言った。
速水は今、とても機嫌が良かった。
意外と食事が美味かったというのもあるし、主任の態度がどこか柔らかくなっていたから。交渉できるかもしれない、と思った。
もちろん、そうそう上手く行くはずはない、けれど言っておく。

「……ノアを解放して貰えるなら。………俺は、どうなっても構わない。……あの薬を飲まされても我慢するつもりだ」
速水は言った。
耐えきれなくなって、死亡、または廃人になる可能性が高いが。
キレたりはしないで、大人しく死のう。

ノアが攫われたのは、速水の巻き添えを食ったのかもしれないし、他に理由があるのかもしれない。速水とノアは血縁があると言うから、それ関連か?
あるいはジョーカーが息子として確保したがったのか。
ノアがGANから逃げ切れる事を祈る。

速水は自分がネットワークから逃げ切れるとは思っていなかった。
ジョーカーがウィルなら、おそらくもう無理だ。
どこへ行っても、どこへ逃げても。あいつは追って来る。
…日本にいたときにも、なんとなく、ウィルの執念深さのような物は感じていた。

――いや、あきらめるのはまだ早い。
…ここに、丁度ライスを食べたフォークがある。
これでどうにかベスを人質にして、何とか?
部屋の外には誰かいるだろうし、明らかに無謀だが……やってみる価値はある。
ベスで無くても、食事を下げにまた部下が来るかもしれない。

速水は食べながら、耳を澄ました。
やっぱり……何も聞こえない。

沢山いたはずの鳥が、なぜか今はどこにもいない。
いつもならスズメの声で目が覚めるし、食事をしていると一羽くらいはそばに寄って来るのに。

「残念だけど。ノアは解放されないわ。六月一日までは」
主任が言った。
「?…六月一日?」
具体的な日付を言われ、速水は眉をひそめた。

「あなたにお願いがあるの」

■ ■ ■

 

Ωチームの研究員、エイムズは隣室でモニターを見ていた。
カーテンは閉められているが、音声と画像は生きている。

研究員ほとんどが辞めてしまった。
当たり前だ。
エイムズが残ったのは、義務感と、狂気に近い好奇心を満たすためだ。

実験室では――魔女と悪魔が取引をしていた。


〈おわり〉

 

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